2016.02.01
缶詰博士オススメ! 八戸の美味しさがギュっとつまった「いちご煮」
2015年は「グルメ缶詰」が大ヒットした。グルメ缶詰とは価格がだいたい300円以上で、それ一缶を開けるだけで立派な一品料理になりうる、という新しいジャンルの缶詰だ。
一方、これまで各地には長年親しまれてきた「ご当地グルメ缶詰」とも呼べるものがあった。青森県八戸市にある<味の加久の屋>の『元祖いちご煮』がそのひとつ。いちご煮とは、苺をコトコト煮込んだ料理……というのは冗談で、うにとあわびの潮汁(うしおじる)のことである。
「中身よりも名前の由来が気になる!」という方もいると思うが、それは読み進むうちに判明していくだろう。
コハク酸のうまみが凝縮
イージーオープン式のフタを、ぱかっと開缶! ほの白い汁しか見えないが、具は沈んでいるのである。開けただけですばらしい磯の香りがして、貝のうまみ成分「コハク酸」まで感じられるような気すらする。これが常温でも匂い立つのだから、ますますスゴイことである。
汁こそ、味わうべし!
鍋で温めて器に盛りつけてみよう。トッピングは千切りの大葉がオススメである。うにが乳白色の汁に浮きつ沈みつしている。実はこれがいちご煮の名の由来だ。
八戸はよく霧が出ることで知られているが、霧のなかで海岸沿いを散歩していると足元に野いちごが生えていることがある。この野いちごが霧に浮かぶ様子と、汁に浮かんだうにの様子がそっくりなのだ。料理を開発した料亭旅館のご主人がそこから思いつき「いちご煮」と命名したという、ちょっとロマンチックな話なのであります。
何はともあれ、中身はうにとあわびの汁なのだから、うっとりするほどうまい。うにはかたまりで入っていることも、輸送中に揺られて小さくなっていることもある。しかし、うにが砕けているからといって悲しんではならぬ。いちご煮は汁こそ命。うにとあわびのうまみが溶け込んだ汁はミルキーで、驚くほどうまみが強い。ひと口すするだけで清酒が1合は呑めそうである。
地元の人オススメは炊き込みご飯
八戸の人にとってもいちご煮は高級料理で、そうそう食べられるものではない。熱々の汁でいただくのが最上だが、それはハレの日だけのこと。日常でいただくときには炊き込みご飯にすることが多いのだという。
いちご煮の缶詰には汁が約400ml入っている。だから2合の米を炊くのにちょうどいい。何も足さずにそのまま炊いても美味しいが、<味の加久の屋>に教えてもらったバターを加えるレシピを、僕は気に入っている。バターのコクが汁によく合うのだ。今回は、具材としてまいたけを加えてみた。その時期の旬の食材を足すことで、缶詰料理にも季節感というものが生まれるのであります。
材料(2~3人分)
- 元祖いちご煮……1缶
- 米……2合
- まいたけ……適量
- バター……10グラム
- 白こしょう……適量
作り方
① 米は洗って水を切り、土鍋(炊飯器でもOK)に入れる。缶詰の中身を汁ごと加え、30分浸けておく
② まいたけ・バター・白こしょうを①に加え、いつも通りに炊く
③ よく蒸らし、さっくり混ぜれば『缶成』!
黒川勇人(くろかわはやと)
タレント・缶詰博士・ものづくりナビゲーター。平成16年より世界の缶詰を紹介する「缶詰blog」を執筆。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認の「缶詰博士」としてTVやラジオ、新聞など各種メディアに出演。著書には、「日本全国『ローカル缶詰』驚きの逸品36」「缶詰博士が選ぶ『レジェンド缶詰』究極の36」(共に講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=シェフズセレクションにてお取扱いがございます。
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