
2025.09.06
【プロ】簡単かぼちゃのスープ(ポタージュ)人気レシピ。甘みを引き出す蒸し煮に注目!
かぼちゃが美味しくなる秋にさしかかると、作りたくなる「かぼちゃのスープ(かぼちゃのポタージュ)」。トロッとなめらかで、かぼちゃそのものを味わうようなこっくりとした甘さと、美しいオレンジ色がたまりません。
基本的な材料は、かぼちゃ、玉ねぎ、バター、牛乳(または生クリーム、豆乳)だけ。作り方は具材を煮て、ミキサーなどで攪拌するだけ。一見、とてもシンプルな料理なのですが、いざ作ってみると期待した甘さにならず、つい砂糖を足してしまった…なんてことも。
そこで今回は、畑仕事をライフワークとし、野菜本来の持ち味を活かしたレシピで人気の料理研究家・植松良枝さんに、コンソメや生クリームは不要で、しっかりかぼちゃの甘みを引き出せる、プロのレシピを教えてもらいました。たっぷり多めに作って、冷凍保存するのがおすすめです!
甘みを引き出す! かぼちゃスープの作り方Q&A
まずは、かぼちゃスープ作りの素朴な疑問について解説してもらいましょう。
「かぼちゃ本来の甘みを存分に引き出したスープを作るには、かぼちゃの品種、選び方や、加熱方法がとても大切です。次のポイントを押さえれば、砂糖の甘みやコンソメなどのうまみ、生クリームのコクに頼らなくても、十分味わい深いスープが作れます」
Q:かぼちゃスープにはどんな品種がおすすめ?
A:甘みとホクホク感が強い「西洋かぼちゃ」を選ぶ
一般的に食用として流通している国産のかぼちゃには、大きく分けて「西洋かぼちゃ」と「日本(東洋)かぼちゃ」の2種類があり、スープにおすすめな品種は甘みとホクホク感が強い西洋かぼちゃです。
流通している約9割は西洋かぼちゃですが、日本かぼちゃとの見た目や味わいの違い(特徴)や代表的な品種について知っておきましょう。
●西洋かぼちゃ
見た目は皮がツルツルとなめらかで、緑色が主流だが、オレンジ色や灰白色のものもある。でんぷん質が多いので、味わいはホクホクとした食感で甘みが強い。スープ、煮物、プリンやパイなどのスイーツなど、幅広い料理に適している。
【主な品種】九重栗、えびす、夢味、みやこ、ロロン、栗天下、雪化粧、打木赤皮甘栗、奥会津金山赤、コリンキー(※)など
※コリンキーは未成熟で収穫するサラダ向きの品種。スープには向かない
●日本(東洋)かぼちゃ
名前の通り、主に日本で古くから栽培されている種類。見た目は皮がデコボコして粉っぽく、縦の溝が深いのが特徴。ひょうたん形の品種もある。水分が多いため、味わいはねっとりとした食感であっさりと淡泊。煮崩れしにくく、しょうゆとの相性がよいので和食の煮物などに向いている。
【主な品種】黒皮、鹿ヶ谷、小菊、鶴首、バターナッツ(※)など
※バターナッツはなめらかな食感でスープや菓子にも向く
Q:美味しい完熟かぼちゃの見分け方・選び方は?
A:ヘタがかたくて茶色、皮と果肉の色が濃く、ずっしり重いものを選ぶ
かぼちゃの収穫時期は6月~10月。収穫後にしばらく寝かせる「追熟」という熟成期間を経ることで、甘みやホクホク感が増した状態で一般的に流通されています。
熟成期間を経た完熟かぼちゃのヘタは茶色でコルクのようにかたく、持ったときにずっしりと重く感じられます。形は左右均等で、皮の色が濃く、切られた状態のものであれば果肉の色が濃いものを選びましょう。皮が緑色のかぼちゃで一部がオレンジ色に変色しているのは、熟成している証拠です。
丸ごと購入したかぼちゃのヘタが青くやわらかい場合は、茶色くかたくなるまで室温において追熟させてから食べるのがおすすめです。
Q:かぼちゃの甘みを引き出すには、どんな調理法が最適?
A:少ない水分でじっくり蒸し煮にすれば、甘みがしっかり引き出される
かぼちゃの甘みを引き出すためには、いきなりたっぷりの水を加えて強火で煮るのはおすすめしません。
まずは鍋底が焦げないくらいの少量の水(100mlほど)を加え、かぼちゃが自らの水分で汗をかくまで、弱火でじっくりと蒸し煮にすることが大切です。
すると、かぼちゃに含まれるでんぷん質が酵素の働きでゆっくりと糖に分解され、甘みがしっかり引き出されます。
その次に、ミキサーにかけるためにかぶるくらいの水(300mlほど)を加え、やわらかくなるまで煮るという2段階の加熱方法に分けるのがおすすめです。
Q:それでも甘みが足りなければ、砂糖を足す?
A:塩麹を使って蒸し煮にするのがおすすめ。甘みだけでなく、うまみも増す
かぼちゃを蒸し煮にするときに塩分を加えますが、おすすめは「塩麴」。塩でも構いませんが塩麹を使うと、砂糖やはちみつなどの調味料を使わなくても十分甘さを引き出せます。
塩麹とは米麹、塩、水を混ぜて発酵させた調味料。塩味だけでなく、発酵により甘みやうまみが加わっているので、素材の味を引き立てる効果があります。
とくに野菜の美味しさを引き出してくれるので、トマトソース、ミートソース作りでも、塩の代わりに使ってみてください。
かぼちゃの甘みを引き出すために、2段階の方法で加熱するのですね。今まで試したことがなかったので、どんな味になるのか楽しみです! それではお待ちかね、レシピのご紹介です。
蒸し煮で甘さを引き出す「かぼちゃのスープ(ポタージュ)」のレシピ
<材料>(6~8杯分)
- かぼちゃ(西洋かぼちゃ)…正味400~450g(皮つきで約500g)
- 玉ねぎ…1/4個(40g)
- バター(食塩不使用)…40g
- オリーブ油…小さじ1と1/2
- 塩麹…小さじ2 ※塩(天然塩)小さじ1/2~2/3で代用可
- 牛乳…300ml ※豆乳で代用可、生クリーム適量加えてもよい
- 塩(天然塩)…小さじ1/2
- 好みで黒こしょう…適量 ※シナモンやクミンなどのパウダースパイス、オレガノなどのハーブでも
「玉ねぎは入れ過ぎると風味が強くなるので、かぼちゃの重量の10%くらいの分量を目安にしてください」

今回使用したかぼちゃの品種「栗天下」。皮は黒味がかった緑で、果肉の色が濃い。栗のようにほくほくとして、甘みが強いのでスープには最適
<作り方>
1. かぼちゃはワタを取り除き、皮を厚めに削いで、1.5㎝厚さに切る。玉ねぎは繊維に沿って5mm厚さの薄切りにする
かぼちゃは種をスプーンでくり抜き、皮を包丁で厚めに削ぐ。
「緑色の皮がついたままだとスープが濁った色になってしまいます。気にならなければ皮つきのままで構いませんが、鮮やかなオレンジに仕上げたい場合は削ぎ落しましょう。
削いだ皮は素揚げして塩をふったり、細切りにしてきんぴらにしたりすれば、捨てずに美味しく食べられるので無駄になりません。ちなみに、私が気に入っている『奥会津金山赤』という品種など、皮がオレンジや赤みがかったかぼちゃを使う場合は色が濁らないので、皮つきのままでもOKです」
さらに1.5㎝厚さのひと口大に切り分ける。
かたいかぼちゃを切るのが怖い! 植松さんおすすめの切り方はこちら>>
玉ねぎは横半分に切り、繊維に沿って5mm厚さの薄切りにする。
2. バターで玉ねぎが透き通ってくるまで弱火でじっくり炒める
鍋にバターとオリーブ油、玉ねぎを入れて弱火にかけ、焦がさないようにじっくりと炒める。
「バターだけだと焦げやすいので、オリーブ油も使います。玉ねぎは色がつきすぎると香ばしい香りがかぼちゃの味よりも目立ってしまうので、透き通る程度に炒めましょう」
玉ねぎが透き通ってきたら、かぼちゃを加える。
塩麹を加え、ざっと混ぜ合わせる。
「塩麹がない場合は塩でも大丈夫です。かぼちゃを炒める必要はないので、全体にバターがなじむ程度に混ぜ合わせます」
水を100ml程度加えてフタをし、焦げつかないようときどき混ぜながら7分ほど蒸し煮にする。
「焦げつきそうになったら、少量の水を足してください」
7分ほど蒸し煮にして、かぼちゃが汗をかいた状態。
「これでかぼちゃの甘みが引き出されました」
3. さらに水を足し、かぼちゃがやわらかくなるまで煮る
水300mlを加え、火を強めてフタをする。煮立ったら再び弱火にし、かぼちゃが完全にやわらかくなるまでさらに煮る。
「かぼちゃによって火が通る時間は異なりますが、8分程度を目安にしてください」
4. ハンディーブレンダー、またはミキサーでなめらかなペースト状になるまで攪拌する
煮終わったら火を止め(上写真)、ミキサーやハンディブレンダーでなめらかなペースト状になるまで攪拌する(下写真)。機械が耐熱の場合はそのまま攪拌し、そうでない場合は粗熱をとってから攪拌する。
「かぼちゃスープを保存しておくなら、この撹拌した状態(牛乳を加えるまえ)で容器に小分けにして、『かぼちゃスープの素』として冷凍保存するのがおすすめです」
「かぼちゃスープの素」の保存方法、保存期間、食べ方はこちら>>
牛乳を加えて混ぜ合わせ、火にかけて温める。
「今回、牛乳は300ml加えましたが、あくまで目安なのでお好みの濃度に合わせて、分量を加減していただいて構いません。牛乳のかわりに豆乳を使ったり、よりクリーミーな味わいが好みであれば生クリームを加えたり、アレンジも楽しめます」
塩で味をととのえる。器に盛り、好みで黒こしょうをふる。
「お塩の適量も濃度によって変わるので、小さじ1/2を目安に味を加減しながら加えください。黒こしょうのほか、シナモンやクミンなどのパウダースパイス、オレガノなどのハーブなどを合わせると、また違った表情が楽しめます」
【実食】かぼちゃスープ(ポタージュ)。こっくりとした甘さがたまらない! たっぷり作って常備しよう
オレンジ色したスープをスプーンでひと匙すくうと、トロリと口にすべり込み、こっくりとした甘さが広がります。なめらかなのに、ホクホクとしたかぼちゃを食べているような舌触りと、かぼちゃ、玉ねぎ、バター、それぞれのうまみやコクが一体となった美味しさが染み渡ります。
コンソメも生クリームも使わず、これだけかぼちゃの持ち味を生かせるとは驚きです! 朝、昼、晩、どんな食事シーンにもマッチするので、かぼちゃの美味しい季節にたっぷり作って常備するのがおすすめ。みなさんも、ぜひお試しください。
●「かぼちゃスープの素」の保存方法、保存期間、食べ方
かぼちゃスープの保存は牛乳を加えるまえの状態で、「かぼちゃスープの素」として冷凍保存するのがおすすめ。
作り方4でペースト状に攪拌したあと、清潔な保存容器に移し、粗熱がとれたら(または粗熱がとれてから容器に移し)フタをして冷凍庫で保存します。容器は1人前または2人前の小分けにするのがおすすめ。冷凍保存期間は2~3か月です。
食べるときは、半分ほど解凍してから小鍋に移し、弱火にかけ、煮立ったら牛乳適量を加えて好みの濃度にのばします。温まったら塩適量で味をととのえてください。
かたいかぼちゃを切るのが怖い! 植松さんおすすめの切り方
スープを作るには、かぼちゃを切る作業が必要。でも、皮がとってもかたいかぼちゃ。「いくら包丁を入れても、かたくて切れない」、「切るときに指を怪我してしまった…」なんて声も。
そんな時は、床に置いて切るのがおすすめ。こうすれば安定した状態で、体重をしっかり乗せ、力に自信がなくても安全に切ることができます。
床にダンボールまたは重ねた新聞紙を敷き、かぼちゃを置く。包丁の刃先をかぼちゃの奥側に突き刺し(上写真)、そこを支点にして手前側に体重をかけて下ろす(下写真)。
「てこの原理の要領で奥から手前に包丁を下ろせば、少し体重をかけるだけでも十分な力が伝わり、安全にかぼちゃを切り分けることができます」
捨てないで! 名脇役おかずに変身「かぼちゃの皮のきんぴら」のレシピ
スープにするために削ぎ落としたかぼちゃの皮。捨てるなんてもったいない! かぼちゃの皮は実よりもβカロテン、ポリフェノール、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれ、えぐみがなく、かぼちゃ特有の甘みもしっかり感じられるので、素揚げやきんぴらにすれば美味しくいただけます。
特にきんぴらは、砂糖やみりんなしでもほどよい甘さが感じられ、しょうゆだけで味が決まるお手軽さ。皮ならではの食感と香ばしさがあとを引き、冷めても美味しい名脇役おかずになり、お弁当にもおすすめです。
<作り方>
- かぼちゃの皮は細切りする。
- フライパンにオリーブ油を熱し、かぼちゃの皮と好みで赤唐辛子を入れ、焼きつけるように炒める。
- 縁色にツヤが出てきたらしょうゆを回しかけ、ざっと混ぜ合わせる。
※分量はすべて適量です
レシピ/植松良枝さん
旬の野菜を使った料理を得意とする料理研究家。料理教室「日々の飯事(ひびのままごと)」を主宰。野菜づくりがライフワークで、季節に寄り添った食と暮らしに関するアイデアを発信している。
さらに国内外を旅し、多くの食文化に触れた経験から生み出される、世界各国のエッセンスを取り入れた料理も人気。『バスクバルレシピブック』(誠文堂新光社)、『春夏秋冬 ふだんのもてなし』(KADOKAWA)、『ヨヨナムのベトナム料理』(文化出版局)など著書多数。
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