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2019.10.15

【プロ直伝】ひと晩水につけなくてOK! 栗の渋皮煮のレシピ。手間はかかれどシンプルな作業です

栗の渋皮煮のイメージ

一度はチャレンジしてみたい栗の渋皮煮。実は栗の皮とは2種類あります。いちばん外側を覆う皮はつやつやしたかたい鬼皮(おにかわ)、それをむくと現れる皮が、茶色のしわがある渋皮(しぶかわ)です。

渋皮は渋みやアクが多いため、下ゆでしてアクをとる作業を数回繰り返すのが一般的。さらに鬼皮をむくときに渋皮を傷つけないことが難しいとされています。

「そうしたことから、栗の渋皮煮は難易度が高く、手間暇かかるイメージがあります。でもポイントさえ押さえれば、工程自体はとてもシンプル。私が研究した方法なら、栗の皮をむくまえにひと晩水につけておく必要はなし。栗を買ってきたら、すぐに作り始められます」。

そう話すのは、料理研究家の小島喜和さん。栗の渋皮煮が大好物で、毎年必ず作るのだそう。そこで初めてでも失敗しにくい栗の渋皮煮の作り方を教えてもらいます。

記事の後半では、栗の渋皮煮の保存方法、食べ方のアレンジとして「栗の渋皮煮のトライフル」のレシピも解説。「無心になって栗仕事に没頭できる瞬間が、とても幸せです」と小島さんが語る、渋皮煮のポイントに注目です!

小島喜和さんのレシピ一覧はこちら>>

持っておくと便利!栗の鬼皮むきに使える包丁はこちら>>

栗の渋皮煮を上手に仕上げる3つのポイント

栗の渋皮煮は一つひとつの工程を丁寧に作ることでおいしく、美しく仕上がるお菓子。特に気をつけるべきポイントは以下の3つです。

ポイント① 栗の渋皮だけをきれいに残せば美しい見た目に!

渋皮煮の肝ともいえるのが鬼皮をむく工程です。いかに渋皮を傷つけず、鬼皮だけを取り除くかがとても重要。ポイントは栗を熱湯につけることと、包丁の入れ方です。

ポイント② 栗のアク抜きをしっかり行えば渋みのない仕上がりに!

渋皮ごと食べるお菓子なので、砂糖で煮る前に数回ゆでこぼして丁寧にアク抜きをします。アク抜きが不十分だと渋みが残ってしまうことも。ゆでこぼす回数は栗の状態によって変わるので、その都度ゆでたときの煮汁の色に注意しながら判断します。

ポイント③ 栗はやさしく煮て形をキープし、やわらかな食感に!

煮崩れしないよう、栗を煮るときの火加減も重要なポイント。栗が鍋の中で踊らないように、コトコトと静かに煮ます。

実際に作り方を見ていきましょう。

プロが教える「栗の渋皮煮」の作り方

栗の渋皮煮の材料

<材料>(作りやすい分量)

  • 栗…500g
  • 砂糖(写真は洗双糖。きび砂糖やグラニュー糖など好みのもので)…鬼皮をむいた栗の重さの60%量
  • バニラビーンズ(あれば)…1/8本
  • 重曹…小さじ1

<作り方>

1. 熱湯に栗をつける

熱湯に栗を入れている様子

まずは鬼皮をむくための準備をします。鍋に湯を沸かして火を止め、熱々のところに栗を4〜5個入れ、5分ほどつけます。栗に火を入れないため、5分たったら素早く鬼皮をむきます。

「水にひと晩つける方法もありますが、いろいろ試した結果、熱湯につける方法が時間がかからず、いちばんやりやすかったので、私はいつもこの方法でむいています。鬼皮をむく作業は栗が熱い状態で行いたいので、面倒でも一気に全量入れるのではなく、鬼皮をむくペースに合わせて数個ずつ熱湯につけましょう」

2. 栗の底から鬼皮をむく

鬼皮をむいている様子

5分ほどたったら栗を熱湯から取り出し、栗の底(ざらざらした部分)に包丁のあご(刃元)を入れ、少し削り取ります。その削り取った部分の空洞をきっかけにし、再び包丁を入れて引っぱり上げるようにして鬼皮だけをむきます。

「細心の注意を払って栗に包丁を入れます。ここで渋皮を少しでも傷つけてしまうと、ゆでこぼしている間に煮崩れてしまうため、渋皮煮には使えません。

一度きっかけさえ作ってしまえば、あとは引っぱり上げるだけなので、スムーズにむくことができます。栗は必ず熱々の状態で作業しましょう。包丁を持たない方の手に軍手をすると、熱くても作業しやすいですよ」

3. 残りの鬼皮をむく

鬼皮をむいている様子

残りの鬼皮をむいていきます。2と同様に空洞の部分に包丁を入れ、引っぱり上げます。包丁で作業しづらかったら、指でむいても大丈夫です。

「最初に熱湯につけた栗をむき終わったら、鍋を再度火にかけます。沸いたら火を止め、栗を4〜5個ずつ入れ、鬼皮をむきます。これを繰り返し、すべての栗の鬼皮をむいていきましょう」

栗の渋皮に傷をつけてしまった様子

「写真のように少しでも渋皮が傷ついてしまったらNG。ほとんどの場合、最初に栗の底に包丁を入れるとき、もしくは栗の先端をむいているときに渋皮を傷つけやすいので気をつけて。少しでも傷ついてしまった栗は渋皮煮にはせず、栗ごはんや煮物などに活用してください」

4. 栗のアクを抜く。重曹を入れた湯で、栗をゆでる

栗を熱湯に入れている様子

鍋にたっぷりの湯を沸かし、重曹を入れます。栗を加え、再度沸騰したら煮汁の表面がふつふつするくらいの火加減にして10分ほどゆでます。

「栗をゆでこぼす最初の1回のみ、アクをしっかり抜いて渋皮をやわらかくするため、重曹を加えます」

5. アクをすくう

アクをすくっている様子

「アクはすくった方がいいですが、最終的にはゆでこぼすので、そこまで神経質に取る必要はありません。ゆで始めて5分ほどたったら、2回目のゆでこぼし用に別の鍋にたっぷりの水を入れ、火にかけておきましょう」

6. 10分ほどたったらザルにあげ、湯を沸かしておいた別の鍋に入れる

栗のアク抜きをしている様子

10分ほどたつと、写真のように煮汁が黒っぽくなります。ザルにあげて水をきり、すぐに湯を沸かしておいた別の鍋に入れ、今度は重曹なしで同様に10分ほど煮ます。

「このゆでこぼしの作業を2〜4回繰り返します。ゆでこぼす回数は栗によって異なるので様子を見ながら調整してください。10分ほどゆでたときの煮汁が、黒っぽい色から透き通ったワイン色になったら、渋抜き終了の目安です」

7. 渋抜きが終わったら煮汁を半分捨てて水を注ぐ

栗のアク抜き終わりの様子

煮汁が写真のような透き通ったワイン色になったら火から外します。煮汁を半分ほど捨ててその分、水を足します。

「急激に冷やすと栗が割れてしまうので、気をつけましょう。手が入れられるくらいの温度まで下がればOKです」

8. 栗の渋皮の表面をそうじする

渋皮のそうじをしている様子

竹串を上下に動かし、こするようにして渋皮の表面の繊維を取り除きます。

「渋皮は傷つけず、表面の繊維だけを取るようにしてください。濃い茶色の部分がきれいに取れると、栗の表面に美しい木目のような模様が現れます」

9. 筋も1本ずつ取り除く

渋皮のそうじをしている様子

栗に入り込んでいる太い筋も竹串の先に引っ掛けるようにして、1本ずつ取り除きます。

「渋皮をそうじし終わったタイミングで、栗の重さを計り、砂糖の量を計算します」

栗の渋皮のそうじ前と後のイメージ

10. 栗を煮る

栗の渋皮煮を煮ている様子

鍋に栗を入れ、ひたひたになるくらいの水を加えます。砂糖の半量を加え、バニラビーンズを包丁で半分に裂き、種をこそげ出してさやごと加え、火にかけます。

「鍋は栗が一段で入るくらいの大きさがベスト。今回は鬼皮つきで500gの栗に対し、直径18cmの鍋を使用しました。

私は自然な甘さを楽しみたいので、砂糖はミネラルが豊富で茶色い洗双糖を使用していますが、グラニュー糖やきび砂糖など、ほかの砂糖でもおいしく仕上がります。バニラビーンズは甘い香りがつくので入れていますが、なければ省いてもOK。お好みで加えてください」

11. 煮立ったら残りの砂糖を加え、アクをすくう

アクをすくっている様子

煮汁が沸騰し、1回目に加えた砂糖が溶けたら、残りの砂糖を加えます。再び煮立ったらアクをすくいます。

「砂糖は一度に加えると栗に甘みが入っていかないので、2回に分けましょう」

12. 落としぶたをして静かに煮る

落としぶたをして煮ている様子

中央に穴を開けたクッキングシートをかぶせ、表面がぐらぐらしないくらいのやさしい火加減で20分ほど静かに煮ます。

「栗の渋皮がこすれて傷つかないように、木ではなく紙の落としぶたを使用しましょう」

13. 火を止め、そのまま冷ます

栗の渋皮煮の煮上がりの様子

20分ほどたち、煮汁がとろっとしてきたら、火から外してそのまま冷まし、味を含めます。

「完全に冷めたら好みでブランデーやラム酒などを加えて洋風にしても。洋酒の風味が加わり、奥深い味わいを楽しめます。作ったその日にも食べられますが、翌日からの方が味がなじんでいっそうおいしくいただけますよ」

ほっこり旬の味わい。絶品栗の渋皮煮の完成!

栗の渋皮煮のイメージ

手間を惜しまず丁寧に作った栗の渋皮煮。艶やかで美しい見た目は、まるで宝石のように輝いています。味わいは上品でやさしい甘み、ほくほくとした食感が特徴。渋みはいっさいなく、栗の風味が存分に堪能できます。ひと粒ずつ大事に食べたい、お茶請けにぴったりなひと口菓子です。

【栗の渋皮煮の保存方法】

自家製の渋皮煮は煮沸消毒した保存容器に入れて、冷蔵庫で1週間ほど保存可能。もし多めに作った場合は、毎日火を入れると2週間ほど持ちます。

それ以上は、砂糖の浸透圧の関係で栗がかたくなりがちなので、やわらかくておいしいうちに食べきるとよいでしょう。

【アレンジレシピ】渋皮煮を使ったスイーツ「栗のトライフル」も試してみて!

栗のトライフルのイメージ

丁寧に作った栗の渋皮煮はそのままでも十分おいしいのですが、タルトやマフィンなどお菓子にアレンジしても◎。

「グラスに食べやすく切ったスポンジケーキや栗の渋皮煮、ラム酒を効かせたホイップクリームを入れて、渋皮煮のシロップをたっぷりかけると、簡単に『栗のトライフル』ができあがります。おいしい渋皮煮のシロップを余すことなく楽しめるので、おすすめですよ」

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小島喜和さん

小島喜和さん

テーブルトップディレクター。季節のめぐりとともに暮らす日々。手仕事を行う楽しさ、美味しさを伝えることをライフワークに、自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、【季節の手仕事教室】を開催している。『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。

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写真:矢野宗利
文:ケイ・ライターズクラブ

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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