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2018.05.30

フレンチの名店がフライパンだけで作る! 豪快な塊の牛肉を完璧にローストするプロのレシピ

肉料理に定評のあるフレンチの老舗<北島亭>の大石義壱シェフが、豪快なかたまり肉の焼き方を伝授します! なんとオーブンは不要。フライパンひとつで肉のローストはもちろん、付け合わせ、ソースまで完成するから驚きです。今回紹介するのは、1キロ(!)の牛肉をジューシーに焼き上げる「牛イチボ肉のロースト」のレシピです。

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フライパンは熱しない! 強火もNG!? シェフが教える肉のロースト4つの新常識

大石シェフが教えてくれる肉焼きのスタイルは、「オーブンじゃなきゃいけない?」「強火で焼き固める?」といったこれまでのイメージを覆すテクニックが満載。これを知ったら、理由もなく思い込んでいたことが沢山あった! と気づくはずです。

新常識1:オーブンは使わず、フライパンで焼き上げる

ローストビーフなど、「かたまり肉のレシピにはオーブンが必須」と思われがち。しかし、野菜を下敷きにして肉をのせ、ボウルをかぶせることで低温オーブンの状態が作れるので、フライパンでOKなのです。

新常識2:フライパンは熱しない!

「フライパンは煙が出るまで熱する」のがステーキを焼く時の鉄則とよくいわれますが、実はそれが肉の外側に火が入りすぎてかたくなる原因に。冷たいフライパンに肉を入れて加熱するのが、やわらかく仕上げる秘訣。

新常識3:弱めの火で、じわじわ加熱する

ステーキやローストは、「肉の外側を強火で焼き固める」イメージがありますが、新常識2と同様、それも肉に火が入りすぎる原因。弱火でじわじわ加熱、がジューシーに仕上げる鉄則。

新常識4:肉汁は出ても大丈夫

焼き上げた肉をカットするときに「肉汁が出てはいけない」というのは思い込み。肉の温度が上がれば肉汁は出てくるものなので、逆に肉汁が出ないということは肉がぬるいということ。熱々ジューシーな美味しさを堪能したいなら、肉汁が多少出るぐらいが美味しいのだそう。

やわらかジューシー。北島亭直伝! 「牛イチボ肉のロースト」レシピ

新常識4つを踏まえたローストのレシピをご紹介。1キロもの大きな肉ですが、どこを食べてもやわらか&ジューシーに仕上げられる一生もののレシピ。肉は脂が多めの部位がおすすめ。多少焼きすぎてもパサつかず、失敗しにくいのだそう。今回はイチボ肉を使って解説していきます。

牛イチボ肉のローストの材料

材料(4人分)

  • 牛イチボ肉…1kg ※ロースやサーロインでも代用可
  • 玉ねぎ(くし形切り)…1個分
  • にんじん(1㎝幅の輪切り)…1本分
  • じゃがいも(1㎝幅の輪切り)…1個分
  • しいたけ(軸を除いて半分に切る)…2枚分
  • グリーンアスパラガス(ハカマを除いて3㎝幅の斜め切り)…4本分
  • さやいんげん(ヘタを取る)…8〜10本
  • タイム(生)…2〜3本
  • バター…100g
  • 水…1/2カップ
  • 塩、こしょう…各少々
  • 牛脂…適量

※牛脂はかたまり肉から除いたものを使用する。店で肉を購入する際に伝え、脂ももらっておくとよい
※野菜は好みのものでOK。切り方も好みの形で大きめにカット

下準備

  • 牛肉は常温に戻す(火の入りを均一にするため必ず行う)。冬場は冷蔵庫から出して1時間、夏場は30分ほどを目安に。
  • 野菜は塩をたっぷりと入れた湯で軽く下ゆでし、ペーパータオルなどで水気を拭いておく。

カットした野菜

1. 牛肉のすべての面に塩、こしょうをしっかりふる

牛肉に塩をふっている様子

塩は一般的な肉の下味に比べると、ちょっとびっくりするくらいにたっぷりふります。

「塩は焼いている間に流れ落ちるので、表面が白くなるくらいしっかりとふってOK。脂の多い部位は、多少、塩気が強い方が食べやすいですよ」

2.  冷たいフライパンに、牛肉の脂身部分を下にして入れ、煙が出るまで中火にかける

フライパンで牛肉を焼いている様子

「フライパンを熱してから肉を入れ、表面を焼き固める方法が主流でしたが、実はこの方法では肉が縮むし、表面はかたく黒く仕上がるしでいいことなし。焼き色は最後につければOKです」

3.  煙が立ってきたら、弱火にし、牛脂を加える

牛脂を加えた様子

「煙が出るのは『温度が高すぎる』、『油が少ない』、『油が酸化している』という合図。弱火にして牛脂を加え、一度温度を下げます。玉ねぎの芯やにんじんの端の部分など、野菜の切れ端もうまみになるので、このタイミングで牛脂と一緒に入れてもいいでしょう」

4.  脂身に焼き色がついたら、残りの面もさっと焼く

焼き色のついた脂身

10分ほど焼くと、脂身にいい焼き色がつきます。

肉の他の面を焼いている様子

「脂身以外の面はさっと焼くだけ。焼き色をつけるのではなく、肉の表面の温度を上げて、全体に均一に火を通しやすくするのが目的です」

5. 肉を取り出して、下ゆでしたじゃがいも、にんじんをフライパンに並べ入れる

野菜を下に敷いている様子

肉をいったん取り出し、火の通りにくい根菜から加えます。このとき、油の量が多ければ少し取り出して調整を。取り出した油は取っておき、最後に作るソースに加えます。

「それでも余る場合は、炒め物を作るときに使ったりすると肉のコクが出て美味しいですよ」

6.  野菜の上に肉を戻し入れ、ボウルをかぶせて蒸し焼きにする

野菜を下に敷いてボウルをかぶせている様子

肉をフライパンに戻します。

「肉が直接フライパンに接しないよう、野菜を下に敷くことが大事。さらに上からボウルをかぶせて低温オーブンの状態を作ります。火加減はずっと弱火のままで大丈夫です」
※ボウルは非常に熱くなるため、素手で触らず、ふきんなどを使用してください。

7. 5分ほどたったら、玉ねぎとしいたけを加える。ボウルをかぶせてさらに蒸し焼きにする

玉ねぎ、しいたけを加えている様子

玉ねぎとしいたけを加えたら軽く混ぜ、平らにならします。

野菜を下に敷いてボウルをかぶせている様子

牛肉を、先ほどとは違う面を下にしておき、ボウルをかぶせてさらに火を入れます。

8. 5分おきに牛肉の様子を見る。そのつど、野菜は軽く混ぜ、牛肉は下にする面を変える

牛肉の弾力を確認している様子

「牛肉は端を触って、火の入り具合を確認します。野菜は焦げないよう、ときどき混ぜて。肉は下から火が入りやすいので、常に一番やわらかい面を下にするといいでしょう」

肉の弾力で火が入っているかどうかを見極めるのは難しいのですが、5分おきに触り続けることで、火の入り方の変化を感じることができます。最初のうちは生っぽいぶよぶよとした感触ですが、次第に弾力が出てくるので、感触と時間の両方を目安に加熱していきます。

牛肉のほかの面を下にして焼いている様子

5分おきにボウルを開け、野菜を混ぜて肉の焼き面を変えます。これを繰り返しながら肉全体にじわじわと火を入れていきます。

9. 15分ほどたったら、野菜を取り出す

野菜を取り出している様子

野菜に火が通ったら、いったん取り出します。

10.  脂身の面を下にし、ボウルをかぶせ、さらに15分ほど蒸し焼きにする

牛肉の弾力を確認している様子

再びボウルをかぶせ、5分おきに牛肉のかたさを確認しながら火を入れます。

11.  一度火を止め、ボウルをかぶせたまま10分ほど肉を休ませる

牛肉を休ませている様子

「30分ほど蒸し焼きにしたら、完全に火が通っていなくても、いったん火を止めて休ませます。そうすることで肉汁を落ち着かせ、火の入り具合を均一にすることができます」

10分ほどたったら肉を触って確認し、指先で押してみて跳ね返るような弾力があれば、火入れは完了。

12.  強火で肉に焼き色をつける。同時に、アスパラ、いんげんを加え、さっと炒める

アスパラ、さやいんげんをソテーしている様子

肉を焼き始めてから、強火にするのはこのタイミングだけ。表面全体に焼き色をつけます。

アスパラ、さやいんげんを取り出している様子

緑の野菜は色が抜けやすいので仕上げの段階で加え、さっとソテーしたら取り出します。

13.  バターを加えて火を止める。フライパンを斜めにし、スプーンでバターをすくいながら牛肉にかける

バターを牛肉にかけている様子

バターは絶対に焦がさないように、きつね色の状態をキープします。スプーンで牛肉にバターをまわしかけることで、全体を温めると同時に、肉にバターの香りをまとわせます。

14. 牛肉を網に取り出し、ボウルをかぶせて休ませる

網バットの上でボウルをかぶせている様子

バットの上に網をのせて肉を置き、付け合わせとソースを仕上げる間、少し休ませて肉汁を落ち着かせます。

15. フライパンに野菜を戻し入れ、強火で炒める。タイム、分量の水を加え、軽く炒めたらできあがり

完成した付け合わせ

肉を焼いたフライパンで、付け合わせの野菜を仕上げます。フライパンに野菜を戻し、タイムと水を加えて軽くゆすりながら炒め、全体が温まって野菜が艶やかになったら、付け合わせ兼ソースの完成です。

肉を切り分け、野菜とともに器に盛り付けし、フライパンに残ったソースをかけてできあがり。

食べた瞬間、肉汁が口の中で踊り出す! レストランの完璧な火入れが実現

牛イチボ肉のローストのイメージ

見てください。この美しい断面! ひと口食べると、ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がります。やわらかいのに、噛み切りやすい……まさに完璧な火入れ。端もパサつくことなく、どこを食べても牛肉のうまみが感じられます。牛脂で炒めた付け合わせの野菜も、コクがあってとっても美味! 素材のよさが最大限いかされたひと皿に「うまい!」と驚くこと間違いなし。

「牛肉の中心部分は、食べるとき切った断面に塩をふってあげるといいでしょう。サイズが小さい肉を焼くときも、気を付けるポイントは一緒。全体の焼き時間は短くなりますが、肉を常温に戻して、焼くときは必ず野菜を下に敷き、弱火で焼く。真ん中ではなく、端っこを触り続ける。転がしながら全体を意識して焼く。そういった点に気をつけて、美味しいものを作ろうと思えば、食材はちゃんと応えてくれますよ」

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取材協力/北島亭

北島亭の大石シェフ

東京・四ツ谷にある、骨太でクラシックな料理を提供する老舗フレンチレストラン。シンプルでありながら、素材のよさを最大限引き出した豪快な料理は根強いファンも多い。取材に答えてくれた大石義壱シェフは、オーナーである北島素幸シェフのエッセンスを受け継ぎつつ、和の仕立てを料理に取り入れるなど、新しいメニューにも意欲的に挑戦している。

文: FOODIE編集部

写真:菅井淳子

催物のご案内

伊勢丹新宿店本館地下1階=シェフズセレクション/キッチンステージにて、開催期間の間、<北島亭>の料理をイートインにて提供。食べ応えたっぷりな前菜とメインディッシュのコースが楽しめます。

開催期間:2018年5月30日(水)~6月19日(火)
各日午前10時30分~午後8時/ラストオーダー:午後7時
 *6月5日(火)・13日(水)はセミナーの開催のため
  午後12時15分からの営業となります。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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