2020.12.03
【初心者必見】ふっくらつややか、美しすぎる黒豆レシピ。プロの煮方・戻し方を初公開!
おせちの人気料理「黒豆の蜜煮」。作り方はレシピによってさまざまで、豆を水に浸す時間や煮る時間が違ったり、下ゆでをしたりしなかったりと、結局どれが正解なのかわかりません。せっかくハレの日のお正月に作るなら、プロが作るようなツヤツヤとした美しい見栄えと、特別なおいしさにこだわりたい!
そこで今回、初心者でも失敗なく作れるプロ直伝のレシピをご紹介します。教えていただくのは東京・四谷三丁目にある<日本料理 鈴なり>店主・村田明彦さん。ミシュランガイドで1ツ星の経歴をもつ名店が、メディアで初公開するレシピです! どこよりも丁寧にプロセスを紹介します。
※こちらの記事は三越伊勢丹オンラインストアの特集記事より流用、一部編集・加筆をして掲載しています。
<鈴なり>村田さんの味を家庭で楽しむ!本格総菜のお取り寄せはこちら>>
▼プロが丁寧に解説した、おせちレシピ一覧はこちら
これが村田流! 黒豆の蜜煮のポイント
黒豆の蜜煮は一部地域によって「シワがあり、かための食感のほうが、縁起がいい」という場合もありますが、村田さんが目指すのは次のような仕上がりです。
・邪気を払う黒色はより濃い色に
・皮にシワが寄らずツヤがある
・ふっくらとやわらかな食感
・煮汁がにごらず透明感がある
・たくさん食べられる上品な甘み
まずは、村田流のポイントを押さえておきましょう。目からウロコの技が満載です!
◆黒い色にする方法はいろいろある。プロは還元鉄!
黒色は邪気を払うといわれ、プロは漆黒の黒色にこだわります。プロが使っているのは「還元鉄」という食用の鉄粉。驚きの黒さに仕上がりますが、通販でないと入手困難です。家庭で作るなら還元鉄ではなく、南部鉄器のような「鉄製の鍋」で煮れば、簡単に濃い黒色にすることができます。
または還元鉄の代用として、市販の「鉄製の玉」(鉄玉、鉄卵とも)や、「さびた釘」をガーゼで包んだものを使ってもいいでしょう。ただし少し赤みがかった黒色になります(下写真)。
◆豆を水でもどす時間は、最低でも12時間、できれば24時間
6時間くらい水に浸けるレシピを見かけますが、村田流ではNG! 最低でも12時間、できれば24時間かけることが大切です。
水でもどす時間が短い黒豆は、下ゆでに6~8時間かかります。実は水分をしっかり含ませた黒豆なら、下ゆでに3~4時間(新豆だと1~2時間)と短時間ですむのです。
◆豆をやわらかく、おいしく煮るため「重曹」と「塩」を使う
重曹は黒豆の皮をやわらかくしますが、その反面、ズルッとむけやすくなるので、これを防ぐために塩が活躍します。さらに塩には豆の風味を抜けにくくする効果もあり、下ゆでした湯を捨てても豆本来の風味がしっかり残ります。
◆コトコト煮なくてOK! 「さっと煮て冷ます」を繰り返すだけ
調味料を入れた煮汁で何時間も煮るレシピを見かけますが、村田流なら煮込みは不要。豆の下ゆでは3時間ほど必要ですが、そのあとは「シロップで10分煮て冷ます」を3~4回繰り返すだけでOK。焦げつく心配がなく、黒豆を煮る鍋が何時間もコンロを占領しないのがうれしい!
日本料理のプロが教える「黒豆の蜜煮」レシピ
全体の流れは下記の通り。2~3日かけて作りますが、実際の作業はとても簡単です。
【1日目】
・豆を水でもどす(12~24時間)
【2日目】
・下ゆでする(3~4時間)
・洗ってゆでこぼす
・シロップを作り10分煮て冷ます(3~4回)
【3日目】
・できればシロップで10分煮て冷ます(2~3回)
・しょうゆを加えて仕上げる
2日目で完成にしてもOKですが、3日目の作業をプラスするとよりおいしくなります。お正月に食べるなら12月29日か30日に作り始めましょう。
材料(直径20cmの鍋で作りやすい分量)
- 黒豆…200g ※豆選びの解説はこちら
- 還元鉄…小さじ1
※鉄鍋で煮るか、市販の鉄玉、さび釘で代用可。色にこだわらなければ、なしでもよい - 重曹…小さじ1
- 塩…小さじ1
- <シロップ>
・水…1,000ml
・黄ザラメ…300g
※好みの砂糖で代用可。黄ザラメと比べて、白ザラメはよりすっきり、上白糖はよりしっかり、キビ砂糖など精製度の低い砂糖はよりコクのある甘みになる - <仕上げ用>
しょうゆ…大さじ1
作り方
1.黒豆を洗い、水に浸して12~24時間おいてもどす
黒豆をそっとザルに入れる。
「今回使ったのは丹波黒豆です。表面にうっすら白い粉がついているので、洗い流します。黒豆の皮に傷がつくと破れる原因になるので、扱うときはとにかく丁寧に!」
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ボウルに水を入れ、黒豆の入ったザルを入れる。ザルを上下にそっと動かしながら、黒豆をやさしく下からすくい上げるように洗い、一度ボウルの水を替える。
「直接豆に水をかけず、ボウルに水をためた中でやさしく洗いましょう。水が少し濁ってアクが浮いてきます。洗ってからは豆が乾燥してシワが寄りやすくなるので、空気に触れないように水につけたままにすること」
大きめのボウルに水1,400ml(分量外)、還元鉄、重曹、塩を入れて混ぜる(★鉄の鍋で煮る場合、還元鉄は入れなくてよい。または鉄玉かさび釘で代用)。
洗った黒豆を手で受けながらそっと入れる。ラップをかけて12~24時間おく。
「浮いてきた豆は虫食いなので、除いてください。黒豆を水でじっくりもどすことが最大のポイントです。暑い季節に作る場合は、水温が上がって腐りやすいので、冷蔵庫に入れて24時間以上もどすと安心です」
24時間かけてもどした黒豆。水は黒くなっている。表面に重曹の白い気泡が出ることがあるが気にしなくてよい。
浸水時間による黒豆の違い。写真左から「浸水前」「浸水1時間」「浸水24時間」の黒豆。浸水1時間の途中では豆にしわが寄るが気にしなくてOK。丸形だった黒豆が24時間後には楕円形になり大きく膨らむ。
2.豆がやわらかくなるまで、3~4時間下ゆでする
もどした黒豆を鍋につけ汁ごと入れ、鍋の9割ほどの水位になるよう、水を足す。フタをせずに強火にかける。沸騰するまで、ときどき木ベラを鍋肌から差し込み、鍋底をそっとかき混ぜる。
「底にたまった還元鉄が鍋底に焦げつかないよう、沸騰するまでときどき混ぜます。白い泡がどんどん浮いてきますが、これはアクではなく重曹のかたまり。取り除かずそのまま煮ていきます」
ポコポコと煮立ってきたら弱火にする。厚手のキッチンペーパーに1か所空気穴をあけ、鍋にかぶせてフタにする。
モコモコと白い泡がどんどん浮いてきて、ふきこぼれそうになったらキッチンペーパーを端に寄せ、箸を使って鍋に泡を戻す。泡が落ち着いてきたら、キッチンペーパーを取り除く。
「白い泡には豆に黒色を定着させる成分が含まれています。最初は重曹の炭酸成分が反応して泡立ちますが、徐々に炭酸が抜けて落ち着きます。火を弱めても吹きこぼれそうなら、いったん火を止め、静まったら再び火にかけましょう」
鍋の中の表面がユラユラと動く火加減に調整し、豆がやわらかくなるまで煮る(ふたはしてもしなくてもよい。ふたをする場合、少しずらす)。煮汁が黒豆よりも2cm上になるよう、煮汁が減ってきたら湯を加える。
「グラグラと沸騰させると豆がおどって皮が破けるので、火加減には気をつけて。常に煮汁が豆よりも上になるよう、湯を加えて調整します。ここで水を加えるのはNG。急激な温度差が起こり豆の皮が破けやすくなります」
3.3時間煮たら、一度黒豆のやわらかさをチェックする
親指と人差し指で黒豆をつまみ、力を入れずにつぶせたら下ゆでは完了。火を止める。まだ煮足りないようなら、やわらかくなるまでさらに煮る。
「新豆のほうがひね豆(=1年前に収穫した豆)より早く煮えますが、ひね豆のほうが新豆より味が濃いので、私の店ではひね豆を使っています」
4.豆を煮ているあいだにシロップを作る
黒豆の下ゆでが終わる少し前のタイミングで、シロップを作る。別の鍋に水1,000ml、黄ザラメ(好みの砂糖で代用可)300gを入れて中火にかけ、砂糖が溶けたら火を止める。
5.煮汁を捨てて還元鉄と重曹を洗い流し、一度ゆでこぼす
鍋を流しに移動し、鍋肌から水を少しずつ注ぎ粗熱をとる。ザルを重ねたボウルに黒豆を水ごとそっと移す。鍋はきれいに洗っておく。還元鉄の代用で鉄玉を使用した場合、このタイミングで取り出す。
「流しに還元鉄の粉が残って、流しがさびることがあるます。気になる人は厚手のキッチンペーパーで還元鉄をこしながら、湯を捨てるといいでしょう。念のため、作業が終わったらすぐに流しを丁寧に掃除しましょう」
ザルを上げてボウルの水を捨て、上写真のようにボウルの端から水を注ぎ、ザルを上下に静かにゆらして洗う。ボウルの底に還元鉄が残らなくなるまで、5~6回繰り返して洗う。
「食感と味の含みをよくするために、還元鉄と重曹の炭酸成分を洗い流す作業です。水にさらすことであっさりとした味に仕上がります。鍋とボウルに水を注ぐときは、黒豆に直接当たらないようにしましょう」
次に洗った黒豆をゆでこぼす。黒豆の水気をきり、きれいに洗った鍋にそっともどし、豆にかぶるくらいの水を鍋肌から注ぐ。フタをしないで強火にかけ、沸いたら弱火にして5分ほど煮て火を止める。途中、白い泡(炭酸成分)が浮いてきたら丁寧に取り除く。
「水で洗った黒豆を温め直すために行う作業です。炭酸の成分を除き、水分をほどよく抜くことで、シロップがより染みやすくなります」
6.シロップに黒豆を加える。10分煮て冷ますを3~4回繰り返す
4のシロップを中火にかけ煮立たせる。5の黒豆はそっとザルに上げて、熱いうちにシロップの鍋に静かに入れる。ザルが熱いので、持つときにふきんやミトンなどを使うとよい(上写真はやっとこを使用)。
「シロップと黒豆はどちらも温めた状態で合わせることで、豆の皮が破けにくくなります。熱いのでやけどに注意して行いましょう。初心者はシロップの火をいったん止めてから、黒豆を入れてもOKです」
弱火にして、白い泡が浮いてきたら除く。泡が落ち着いてきたら、豆が空気に触れないように厚手のキッチンペーパーに1か所空気穴をあけ、鍋にかぶせてフタにする。10分ほど煮たら火を止めて、粗熱がとれるまでそのままおく。これを3~4回繰り返して、好みの甘さになればよい。
「実は黒豆に味を含ませるために重要なことは、煮る時間は重要ではなく『温めて冷ます』こと。ちなみにシロップと豆を合わせてからは、いくら煮ても豆はやわらかくなりません(浸透圧の関係)」
できればひと晩おいて、さらに10分煮て冷ます作業を2~3回行うとよい。
「2日間にまたいで煮ると、味がよく染みるのでおすすめです。煮て冷ます回数が多いほど、シロップが煮詰まって甘みが強くなります。私の店ではシロップの量が1/2~1/3に減るまで煮詰めます」
好みの甘さまで煮詰めたら、仕上げに中火にかけてフツフツ煮立ってきたら、しょうゆを加えて火を止める。そのまま冷ませば完成。
「しょうゆを加えることで、キリッと締まった甘さに仕上がります」
豆の味がふわっと香る上品なおいしさに感激
食べてみるとふっくら、ほっくり、皮までやわらか。今まで食べた黒豆の蜜煮は甘さが勝るばかりでしたが、この黒豆はすっきりとした上品な甘み。さらっとした舌触りのあと豆本来の風味がふわっと広がり、いくらでも食べられます!
熱々のときより冷めたほうが、ねっとり感が出て味が締まっていく気がします。ハレの日にふさわしい、手をかける価値のあるプロのレシピ。ぜひお試しあれ!
【保存方法①】冷蔵保存で7日間
汁ごと清潔な保存容器に入れ、表面にラップをかける。または密閉袋に入れ、空気を抜く。どちらも冷蔵庫に入れ、7日ほど保存可能。
【保存方法②】煮沸した保存瓶で半年間
煮沸消毒した保存瓶に黒豆を入れ、黒豆がかぶるくらいまで煮汁を注ぐ。鍋に水と瓶を入れて、フタ(煮沸消毒済み)を少しずらしてかぶせる。中火で5分ほど煮立たせたら火を止め、フタをして取り出し、そのまま冷ます。半年ほど冷蔵庫で保存可能。
【番外編】もっとくわしく知りたい! 黒豆のあれこれQ&A
Q:黒豆の選び方は?
A:産地の違い、新豆・ひね豆の違いで選ぶといいでしょう。
【産地・品種】
黒豆の産地は兵庫や京都、岡山、北海道などが有名。「丹波黒(大豆)」という品種は粒が大きく「丹波黒豆」と呼ばれます。なかでも兵庫県の篠山(ささやま)産で、とくに粒が大きいサイズは「飛切(とびきり)」と呼ばれる高級品。普通サイズと比べるとサイズは2倍、値段は3倍ですが、特別な正月にはおすすめ。
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【新豆、ひね豆】
新豆とひね豆(=古い豆)があります。<鈴なり>では味が濃いひね豆を好んで使用しています。
・新豆…12月ごろから出回る豆。古い豆より水分が多く、水でもどす時間が短く、下ゆでにかかる時間も短い。色は薄く、値段はひね豆より少し高い。
・ひね豆…1年前に収穫した豆。新豆より水分が少なく、水でもどす時間が長く必要だが、味が濃い。
Q:黒豆をもどすとき、湯につけてもいいですか?
A:季節や気温、豆の質によっては、湯でもどすと臭いが出て失敗したり、傷んだりすることがあるので、水でゆっくりもどす方法がおすすめ。
Q:弱火にしてもグラグラ沸いてしまい、火加減が難しいです
A:家庭のコンロで豆がおどらないくらいのごく弱火にするのは、意外に難しいもの。100円ショップなどで、足がついた焼き網などをコンロとにかませて、鍋底にあたる火力を弱くするのも手!
こちらは、コンロと鍋のあいだにかませて熱を拡散し、鍋底にあたる火力を弱くするヒートディフューザー。
<日本料理 鈴なり>村田明彦さん
<なだ万>の本店で13年間修業を積み、2005年に<日本料理 鈴なり>を創業。確かな技術に裏打ちされた温故知新な料理が評判を呼び、2012年から続けてミシュラン1つ星を獲得。気さくな人柄と作りやすいレシピが人気で、メディアでも活躍中。
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