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2024.02.14

砂糖なしでも甘い!「発酵あんこ」のレシピ。炊飯器で簡単に作れます

発酵あんこのイメージ

「発酵あんこ」をご存じですか? 砂糖を一切使っていないのに甘く、栄養価が高いことから、注目を集めている食べ物です。一般的なあんこと味や作り方はどう違うの? どんな栄養があるの? そんな疑問がわいてきますよね。

そこで今回は、発酵あんこの基本的な情報やレシピについて、発酵料理の研究家であり、栄養士でもある橋本加名子さんに教えてもらいました。

「発酵あんこは市販品も出回っていますが、炊飯器や温度調整ができるヨーグルトメーカーがあれば手軽に作ることができます。とっても美味しくて栄養豊富なので、ぜひ手作りに挑戦して欲しいです!」

まずは発酵あんことはどんな食べ物なのか、さっそくチェックしていきましょう!

橋本加名子さんのレシピ一覧はこちら>>

発酵あんこ作りに使えるバットやボウルはこちら>>

砂糖なしでも甘くなる「発酵あんこ」とは?

「発酵あんことは、ゆで小豆(あずき)と米麹を発酵させて、自然な甘みをつけたあんこのことです」

一般的なあんことの作り方の違いは?

一般的なあんこの作り方は、ゆでた小豆に砂糖を加えて炊きます。一方、発酵あんこの作り方は、ゆでた小豆に米麹を混ぜ合わせ、60℃で10時間ほど保温するだけ。すると、米麹に含まれる酵素が働いて(発酵して)甘くなります。これは甘酒の作り方と同じ原理です。甘酒は米麹だけ、または米麹とおかゆを使い、発酵あんこはゆで小豆を使うという材料の違いはありますが、いわば甘酒作りの応用編というイメージです」

一般的な砂糖を加えて煮る「粒あん」のレシピ>>
米麹で手作りする「甘酒」レシピ>>

なるほど、それで砂糖を使わなくても甘くなるのですね! 味や食感も違いますか?

「砂糖を使った一般的なあんこよりも、発酵あんこはやさしい自然な甘さです。見た目は麹の粒が残りますが、甘酒と同じようにふやけているので粒の食感は気になりません。フードプロセッサーにかければ、こしあん風になりますよ」

発酵あんこは、栄養面でも注目されていますね。

「小豆には、腸内環境や肌質の改善が期待できるタンパク質、食物繊維、ビタミンB群、カリウム、鉄、亜鉛などの栄養素が豊富に含まれていますが、その多くが水溶性で、たくさん摂っても尿や汗として排出されてしまいます。そのため、毎日摂ることが理想的といわれています。でも、砂糖を多く使った一般的なあんこを毎日食べるとなると、糖分の摂り過ぎが心配ですよね。その点、砂糖を使わない発酵あんこなら、カロリーは約13%、糖質は約30%抑えられます」

一般的なあんこは砂糖が多く入っていることが気になっていたので、それは嬉しいです!

「米麹にも発酵の過程で乳酸菌、酵素、ビタミンB群などの栄養素が生まれ、納豆やヨーグルトなどの発酵食品と同様に、腸内環境の改善や免疫力アップなどが期待できます。うま味成分のアミノ酸も豊富に含まれていますよ」

小豆、米麹の栄養成分について、詳しい解説はこちら>>

「発酵あんこ」砂糖を使わず甘くする2つのポイント

続いて、作り方のポイントをチェックしていきましょう!

「発酵あんこ作りは、『小豆をゆでる』→『ゆでた小豆と米麹を混ぜて10時間ほど保温する』のたった2ステップです。小豆と米麹は同量なので、覚えやすいレシピです」

【ポイント①】約60℃をキープする温度管理が重要。米麹を糖化させ、甘みを最大限引き出す!

米麹とは、蒸した米に麹菌を繁殖させたもの。発酵あんこは、この米麹の麹菌に含まれる酵素(アミラーゼ)が、発酵の過程で米や小豆のデンプンをブドウ糖に変えて甘さを生み出す「糖化」という現象を利用します。

米麹の糖化酵素は、50℃以下の低温だと働きが弱まります。逆に65℃以上の高温でも、働きはとても弱まり、酵素そのものが壊れて糖化しません。つまり、糖化させるには、温度管理が最も重要です。

米麹の酵素は50~65℃であれば充分働くとされていますが、適温は約60℃。その温度をキープしたまま8~10時間保温して、甘さを最大限引き出しましょう。

今回、保温するための道具として、炊飯器を使います。炊飯器がない場合でも作れるように、温度調整ができるヨーグルトメーカー(※)や、電気毛布とクーラーボックスを使った方法もご紹介します。

※60℃の温度設定ができる機種を使ってください。温度設定ができないヨーグルトメーカーは40~43℃の設定になっているので、発酵あんこ作りには向きません。

【ポイント②】小豆はやわらかくなるまでゆでること。芯が残ったかたいままだと発酵あんこの甘みが引き出せない!

小豆をゆでるときは、指でつまんで簡単につぶれるくらい、豆の芯がなくなって充分やわらかくなったと確認できるまで、しっかりゆでましょう。

小豆のかたさが残ったままだと、米麹による糖化がうまく行われず、甘くない発酵あんこになってしまいます。なお、かたい小豆はいくら長い時間発酵させてもやわらかくなりません。

自然なやさしい甘さが美味しい!「発酵あんこ」の作り方

発酵あんこの材料

<材料>(作りやすい分量)

  • 小豆…150g
  • 米麹(乾燥)…150g ※板状の場合はバラバラにほぐしておく
  • 小豆のゆで汁(足りなければ水を足す)…200ml ※米麹(生)を使う場合150~180mlに減らす
  • 塩…少々

米麹には「乾燥」と「生」の2種類がある。違いは水分量と発酵力

乾燥の米麹と生の米麹の比較イメージ

米麹には「乾燥」と「生」の2種類あり、水分量と発酵力が異なりますが、どちらを使っても発酵あんこは作れます。

乾燥の米麹(写真左)は長期保存できるために乾燥し加工しているので、生の米麹に比べて水分量が少なく発酵力が弱いです。板状になっている場合はバラバラにほぐしてから使いましょう。生の米麹(写真右)は水分量が多くしっとりしています。小豆のゆで汁200mlの分量を少し減らして150~180mlにして作るといいでしょう。

<作り方>

1. 小豆をゆでる。鍋に小豆と水を入れて強火にかけ、煮立ったら弱火で3分ゆでてザルに上げる(渋切り)

小豆をゆでこぼすイメージ

小豆は軽く水洗いして、直径22cm程度の鍋に入れ、水をひたひたに注いで強火にかける。煮立ったら弱火にし、3分ほどゆでたら火を止め、ザルに上げる(写真)。

「この小豆をゆでこぼす作業を渋切りといいます。このひと手間で小豆の渋み、えぐみを取り除くことができます」

2. 鍋に小豆を戻し、水600mlを加え、小豆がやわらかくなるまで弱火で40分ほど煮る

小豆を煮始めたイメージ

小豆が煮えたイメージ

1の鍋に小豆を戻し入れ、水600mlを注ぎ、中火にかける(上写真)。煮立ったら弱火にし、小豆が指で簡単につぶれるくらいやわらかくなるまで、40分ほど煮る(下写真)。

「途中で小豆が水面から出るようなら、お湯を適宜足してください。煮る時間は目安で、豆の種類や鮮度によって変わります。豆の芯がなくなるまで、しっかりゆでましょう」

3. 2を小豆と煮汁に分け、60℃まで冷ます。小豆、米麹、煮汁、塩を炊飯器の内釜に入れて混ぜ合わせる

炊飯器に煮汁を入れるイメージ

ボウルの上に置いたザルに2の小豆を入れて、小豆と煮汁とに分ける。煮汁は計量カップに移し、200mlを計量する(足りなければ水を加える。生の米麹を使う場合、150~180mlに減らして計量する)。小豆はそのまま冷まし、60℃まで冷めたら炊飯器の内釜に米麹(板状になっている場合、細かくほぐす)、計量した煮汁とともに入れる(写真)。

「小豆が熱すぎると、米麹の糖化がうまくいきません。炊飯器に入れるまえに、適温の60℃にいったん冷ましましょう。また、水分が少ないと糖化がすすまず、甘みの少ない仕上がりになり、多すぎてもシャバシャバと水っぽい仕上がりになります。煮汁の水分量はきちんと守りましょう」

炊飯器に塩を入れるイメージ

塩を加え、混ぜ合わせる。

「塩を入れると、甘みが引き立ちます」

4. 炊飯器に内釜をセットし、ぬれぶきんをかけ、フタを開けたまま8~10時間保温する

炊飯器にふきんをかけるイメージ

炊飯器に3をセットし、水でぬらしたふきんで全体を覆う。炊飯器のフタを開けたまま保温ボタンを押し、2~3時間おきに混ぜ、甘みが出るまで8~10時間ほど保温する。4時間以上経ってもパサパサと水分がない状態なら、60℃程度の湯を少し加える。

「炊飯器のフタを閉めると70℃前後の高温になり、米麹の酵素の働きが鈍ったり壊れたりして糖化しません。フタは必ず開けた状態で保温してください。また、乾燥して水分が飛ばないよう、ぬれぶきんをかけます。ふきんが乾いてきたらぬらしたり、2枚重ねたりして湿度を調整しましょう」

炊飯器がない場合の作り方はこちら>>

完成したイメージ

写真のような状態になり、甘みが出たら完成。

【アレンジ】こしあん風のなめらかな食感にしたい場合、フードプロセッサーで攪拌する

こしあんにしたイメージ

「粒がなく、なめらかな食感が好きな場合は、フードプロセッサーにかけてください。こしあん風の口当たりになります」

【発酵あんこの保存方法】

煮沸消毒した保存容器に移し、冷めたら冷蔵庫で約5日保存が可能です。ただし、冷蔵庫に入れた場合、発酵が完全に止まるわけではありません。徐々に発酵がすすみ、乳酸菌が働いて酸味が感じられるようになるので、なるべく早めに食べきりましょう。

すぐに食べない場合は、小分けにしてラップで包み、保存袋に入れて空気を抜いて冷凍庫へ。冷凍で約1か月保存が可能です。

【実食】発酵あんこ。うま味たっぷり、甘さ控えめでも大満足! より美味しくなる食べ方は?

発酵あんこのイメージ

まずはそのままの食べ方で。砂糖を使っていないので、甘さはごく薄いのかと想像していましたが、充分甘い! でも、甘みはくどくなく、スッキリとしていて、小豆本来のうま味や風味がしっかり感じられます。

あんこをヨーグルトにのせたイメージ

お次は橋本さんおすすめ、3~4時間水きりしたヨーグルトと合わせる食べ方です。ちょっと意外な組み合わせに感じるかもしれませんが、ヨーグルトの酸味のおかげか、発酵あんこがフルーティーな味わいに。あんこで糖分やカロリーを摂り過ぎる罪悪感が軽くなるどころか、腸活にも良い組み合わせで嬉しくなります!

あんこ餅のイメージ

発酵あんこの食べ方は、基本的に普通のあんこと同じと考えればOK! つきたて餅にのせて定番のあんころ餅にしたり、あんバタートーストにしたり、寒天でかためて羊羹にしても美味しいです。ほかには、ココナッツミルクと合わせて東南アジア風のお汁粉にするのもおすすめ。

いろいろな食べ方を楽しめる、砂糖を使わない発酵あんこ生活、はじめてみませんか?

Q:発酵あんこの材料、小豆と米麹の栄養成分とは?

A:小豆の栄養成分には、タンパク質、食物繊維、ビタミンB群、カリウム、鉄、亜鉛などが豊富に含まれていて、高血圧や高脂血症、むくみ、貧血などを抑制する働きが期待できます。また、抗酸化作用を促進し、アンチエイジングが期待できるポリフェノールとサポニンを多く含んでいます。

米麹の栄養成分には、発酵の過程で発生する、乳酸菌、アミノ酸、酵素、ビタミンB群などが多く含まれます。乳酸菌は、腸内で便秘や下痢、肌荒れなどを引き起こす悪玉菌の働きを抑制し、腸内環境や肌質の改善、免疫力を高める働きが期待できます。アミノ酸はうまみ成分を含んでおり、酵素とともに新しい細胞の生成を促し、肌質を改善する働きが期待できます。ビタミンB群は代謝を促し、疲労回復が期待できる栄養成分です。

炊飯器がない場合の作り方

【方法① 温度設定ができるヨーグルトメーカーを使う】炊飯器よりも手間いらず。低温調理器でもOK!

ヨーグルトメーカーで作るイメージ

「発酵あんこ」の作り方3で、炊飯器の内釜の代わりに温度設定ができるヨーグルトメーカーの容器に入れ、フタを閉める。ヨーグルトメーカーにセットし、温度を60℃、タイマーを8時間に設定してスタートボタンを押す。3~4時間おきに混ぜ合わせる。

「60℃に温度設定ができる機種に限られますが、炊飯器を使うよりも手軽に失敗なく作れます。同様に、60℃に設定できる低温調理器を使っても簡単に作れます」

ローストビーフ、温泉卵、発酵食品が簡単に作れる「低温調理器」はこちら>>

【方法② 電気毛布とクーラーボックスを使う】酸味のある仕上がりになる

クーラーボックスで作るイメージ

「発酵あんこ」の作り方3で、炊飯器の内釜の代わりに、保温性の高い厚手の鍋に入れてフタをする。電気毛布で鍋全体を包み、設定温度をいちばん強くしてスイッチを入れ、クーラーボックスに入れて密閉する。4~5時間おきに混ぜ合わせ、甘みがでるまで10時間ほどおく。

「この方法だと、米麹が糖化するのに最適な60℃よりも低い50℃以下で保温され、でき上がりまでの時間も長くなります。すると麹菌よりも乳酸菌が優位になり、酸味のある仕上がりに。酸味が苦手な方は、炊飯器か温度設定ができるヨーグルトメーカー、低温調理器で作ることをおすすめします」

橋本加名子さん

橋本加名子さんのお顔

料理研究家、栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。タイ料理、ヴィーガンタイ料理、和食、発酵の料理教室「おいしいスプーン」主宰。企業で働きながら子育てをした経験を活かし、「体にやさしくて、作りやすい家庭料理」を提案し続けている。飲食店のプロデュースやフードコーディネートにも携わる他、雑誌、書籍、ウェブサイト等で活躍。『ホットクックお助けレシピ』シリーズ(河出書房新社)、『たんぱく質の10分おかず』(ART NEXT)など著書多数。

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撮影:菅井淳子、矢野宗利(米麹の乾燥と生の写真)
文:香取里枝

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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