2022.12.16
人気洋食店が教えるビーフシチューのレシピ。驚くほどやわらかで野菜のエキスがたっぷり!
クリスマスや誕生日など、お祝いのごちそうにぴったりなビーフシチュー。市販のルウを使えば簡単ですが、特別な日だからこそ、時間をかけて作ってみるのもいいですよね。でも、肉がかたくなったり、市販のルウの味に頼るしかなかったりと、納得できるおいしさにする方法ってなさそう…。
そこで今回は、人気洋食店<グリル満天星>日本橋三越店の料理長、古見竜二シェフに、家庭でお店の味に仕上がるビーフシチューの作り方を教えてもらいました。
ちなみに、ビーフシチューの要となるデミグラスソースとは、一般的には小麦粉をバターで炒めたブラウンルーに、フォン・ド・ヴォー(だし)を加えて煮詰め、赤ワインやトマトを入れてさらに煮込んで作ります。<グリル満天星>では、バターを使わない昔ながらの製法で、1週間かけて作る秘伝のデミグラスソースを使用しているそう。
でも「1週間もかけて作るのは無理!」と心配はご無用。今回は市販のデミグラスソースで代用しつつも、プロならではの肉の仕込み方、野菜のうまみを凝縮させたソースの作り方など、初心者でも無理なく挑戦できるコツが満載ですよ!
洋食のプロが教えるビーフシチュー作り4つのコツ
コツ① 肉はしっかり焼くことで、煮崩れなし&ホロホロ食感に!
ビーフシチューの主役である牛肉は、煮込む前にしっかりと焼きかためることで旨みを閉じ込め、煮崩れを防止します。このひと手間によって、長時間煮込んでも溶けてなくならず、かつ口の中でやさしくとろけるような食感に仕上がります。
コツ② 野菜は具ではなくソースの一部。じっくり炒めてソースに溶け込ませる
玉ねぎやにんじんなどの野菜は、具材としてではなく、ソースの一部と考えるのが洋食のプロ。最終的にビーフシチューのソースは、野菜と肉を2時間ほど煮込んで旨みをしっかり引き出し、野菜をつぶしてスープに溶け込ませ、こして仕上げます。そうすることで、野菜のおいしさを余すところなく閉じ込めたソースが完成!
コツ③ 煮込むときはチキンブイヨンを適宜足して煮詰まりを防止
「よく煮詰めて水分を飛ばした方が、味が凝縮しておいしいのでは?」と考えてしまいますが、早めにスープが煮詰まってしまうと、肉はかたいまま、味だけが濃くなってしまいます。長時間じっくり煮込むためには、チキンブイヨンを適宜足して水分量を調節しましょう。
コツ④ 煮込み終わったら、1時間以上冷まして味をなじませる
煮込み終わったらアツアツをすぐに食べたくなってしまいますが、いったん冷まして肉に味をなじませることで、ビーフシチューが完成したといえます。今回の4〜5人分のレシピであれば1時間以上おいて、食べるときに温め直していただきましょう。
野菜が溶け込んだソース、一体どんな味になるのか気になります! プロならではのひと手間を加えることで、市販のデミグラスソースでも見違えそうですね。それでは、実際にレシピを詳しく見ていきましょう。
牛肉がとろける! 洋食店<グリル満天星>が教えるビーフシチューの作り方
<材料>(4〜5人分、直径24㎝深さ15cmの鍋を使用)
- 牛肉(塊)…1kg ※今回はショートリブ(バラ)を使用。ランプ(モモ)もおすすめ
- 塩、こしょう…各適量
- 【香草】
・タイム(乾燥)…小さじ1/2(フレッシュの場合1本)
・ローリエ…1枚
・パセリの茎…1枝分
・あれば、長ねぎ…8~10cm長さ - 玉ねぎ…1個
- にんじん…1本
- セロリ(葉を除いた白い部分)…1本分
- 好みで、にんにく…3かけ
- トマトペースト…大さじ1と1/2 ※トマトジュース200ml、または角切りの生トマト600gで代用可
- 赤ワイン…200ml
- チキンブイヨン(顆粒コンソメを湯で溶かしたものでもよい)…400〜500ml
- デミグラスソース(市販)…300〜400ml ※缶より冷凍のものがおすすめ。メーカーによって味や濃さが異なるので好みで調整を
- サラダ油…適量
- 【好みで付け合わせ野菜】
・季節のゆで野菜(ゆでたブロッコリーなど)…適量
・にんじんのグラッセ…材料と作り方はこちら
「牛肉は、脂が多くてやわらかいショートリブ(バラ)がおすすめですが、脂が苦手な方はランプ(モモ)でもおいしく仕上がります。市販のデミグラスソースは、缶入りのものだと缶特有の匂いがついていることもあるので、手に入るようでしたら冷凍のものを使ってみてください。その場合は、解凍してから使いましょう」
<下準備>
【香草】の材料は長ねぎに切り込みを入れて開いたもので包み、「ブーケガルニ風」にたこ糸で結ぶ。
「シチューの風味付けに使う数種類のハーブの束を、ブーケガルニといいます。煮込んでいる途中でまとめて取り出しやすくするために、たこ糸で縛ってまとめておくのが一般的。
ただし、今回ブーケガルニとして使う【香草】の材料は、細かい粒になっている乾燥タイムや、乾燥したローリエなので、たこ糸で巻くことができません。そこで風味づけにもなる長ねぎを活用するのが便利。お茶パック(フィルター)やペーパータオルなどで代用してもいいでしょう」
<作り方>
1. 野菜を切る
玉ねぎは3cm大、にんじんは1cm厚さのいちょう切り、セロリは3㎝大に切る。にんにくは半分に切り、芽があれば除く。
「野菜の大きさを揃えることで、火の通りが均一になります」
2. 牛肉を切り、下味をつける
牛肉は5〜6㎝大に切る。塩、こしょう各適量を片面にふったら上下を返し、同様に塩、こしょうをふって下味をつける。
「牛肉は大きめにカットし、下味をしっかりつけましょう。食べ応えがでますし、煮込んでも肉自体の味がしっかり感じられるようになります」
3. 牛肉を焼いて、全体にしっかり焼き色をつける
フライパンにサラダ油適量をひいて中火で熱し、2の牛肉を並べて焼く。焼き色がついたら返して、全体にしっかりと焼き色をつける。肉はいったん取り出し、火を止める。
フライパンに赤ワインを入れ、フライパンに残った肉のうまみを赤ワインで洗うように溶かしておく(あとで使うので捨てないこと)。
「肉の表面を焼きかためるイメージで、全体をしっかり焼きつけます。ここが最大のポイント! 長時間煮込んでも形が崩れず、肉の存在感が際立った仕上がりになります。肉の旨みも逃すことなく味わえます」
4. 野菜を炒める
鍋にサラダ油適量をひいて強めの中火で熱し、1の玉ねぎ、にんにくを入れる。塩小さじ1/2(3g)をふって炒める。
「塩をふることで玉ねぎの水分が飛びやすくなります。焦げないよう気をつけながら、しっかり炒めて甘みを引き出しましょう。にんにくは好みで入れなくてもOKです」
玉ねぎが透き通ってきたら中火に落とし、にんじん、セロリを加えて、鍋底に焦げつかないように木べらなどでかき混ぜながら、野菜全体にツヤが出るまでしっかり炒める。
5. トマトペーストを加えて炒め、赤ワインを加えて半量になるまで煮る
トマトペーストを加えて炒め、酸味を飛ばす。
「トマトペーストの代用として、トマトジュース、生のトマトを使う場合も、同じように酸味を飛ばすイメージで加熱し、野菜にしっかりなじませます。生のトマトで代用する場合は、角切りにして加えます」
全体がなじんできたら、3の赤ワインを加え、水分が半量程度(写真上)になるまで弱めの中火で煮込む。
「3で肉を焼いたフライパンにワインを入れてから、鍋に移すといいでしょう。フライパンに残った肉の旨みを余すことなく活かすことができます」
6. デミグラスソース、チキンブイヨンを加える
4の鍋にデミグラスソース、チキンブイヨン400mlを加えて、中火でひと煮立ちさせる。
「市販のデミグラスソースは、メーカーによって味や濃さが異なります。最初は少なめに入れて味見をしてから足すなど、好みで調整するといいでしょう」
7. 焼き色をつけた牛肉、香草を加えて煮込む
5の鍋に3の牛肉、下準備しておいた香草(タイム、ローリエ、パセリの茎)を加え、肉がソース(煮汁)から少しはみ出す場合はチキンブイヨン適量を注ぐ。ひと煮立ちさせてアクが出てきたら除き、弱火にして2時間ほど煮込む。
「煮込んでいる途中も様子を見て、肉がソース(煮汁)から出そうになったら、その都度、肉がかぶる程度にチキンブイヨンを足してください。ソースが煮詰まり過ぎるのを防ぎます。アクは出てきたら、その都度取り除きましょう。雑味が出ず、ソースのツヤが増し、味わいがさらに上質になります」
「2時間ほど煮込んだ状態がこちらの写真。肉も野菜もサイズが小さくなり、全体のカサが下がってきます。肉がソースにひたひたに浸っている、このくらいがベストな煮詰まり具合です!」
8. いったん牛肉を取り出してソースをこす
鍋から牛肉と香草を取り出し、野菜とソースをこし器などに上げ、レードルなどでつぶしながらスープをこす。
「野菜の旨みたっぷりのエキスをソースに移すイメージでこしましょう。こし器がなければザルなどで代用してください。野菜は2時間も煮込んでいるためとてもやわらかく、簡単にこすことができます。また、香草は一緒にこしてしまうと香りが強すぎてしまうので、必ず取り出すのを忘れないこと!」
「こし終わったソースは、サラッとしていてツヤがある見た目です。ここで味をみて、物足りなければ塩、こしょうで調整しましょう」
9. 牛肉を戻し入れ、1時間以上そのままおいて完成
最後に鍋に牛肉を戻して、粗熱がとれる程度に1時間以上おき、味を落ち着かせる。食べるときに温め直し、器に盛る。好みでゆでたブロッコリー、にんじんのグラッセを添える。にんじんのグラッセの作り方はこちら>>
「1時間ほど落ち着かせるひと手間も、おいしくいただくための大事なポイントです。食べるときにもう一度温めていただきましょう。添える野菜は、季節に合わせた野菜でOKです」
ホロホロの牛肉に、野菜の旨みが凝縮された爽やかなソースが絡む! プロ直伝のビーフシチューが完成
手間暇かけたビーフシチューは、大きくカットした牛肉が存在感満点。ツヤのあるソースも美しく、見た目だけでも食欲をそそります。いざ食べてみると、牛肉は箸で切れるほどやわらかく、口の中でスッとろけるよう。
野菜のエキスたっぷりのソースはほのかに酸味が感じられ、肉の甘みと溶け合って絶妙なバランスです。野菜をソースに溶かし込んでいる分、具材が少なく物足りなさがあるかと思いましたが、肉と野菜の豊かな旨みがじんわりと広がり、大満足のひと皿。クリスマスや誕生日など特別な日のメインディッシュは、極上のビーフシチューで決まりです!
付け合わせにぴったり! 洋食店のキャロットグラッセ
今回は家庭で作りやすいキャロットグラッセのレシピも教えてもらいました。
<材料>(4人分)
- にんじん…1本
- チキンブイヨン(市販、顆粒コンソメで代用可)…にんじんがかぶるくらい
- 無塩バター…大さじ1
- 塩、こしょう…各少々
<作り方>
- にんじんは1cmの輪切りにする。
- 鍋にバターを入れて中火で熱し、バターが溶けたらにんじんを加え、塩、こしょうをふって軽く炒める。
- 2にチキンブイヨンを入れ、沸騰したら弱火にして、にんじんに竹串がスッと入る程度まで煮たら一度火を止める。煮汁を捨て、余分な水分を飛ばすように中火で炒めて照りを出す。
日本橋三越本店<グリル満天星>では、1週間かけて仕上げるビーフシチューが堪能できます!
昔ながらの手間を惜しまないフランス料理の技法で、毎日こしながら1週間かけて煮込むデミグラスソースを使った「ビーフシチュー」(イートイン 3,520円・税込)は、お店のスペシャリテのひとつ。歴史ある洋食店ならではの奥深い味わいを、ぜひ堪能してみてください。
※取扱い:日本橋三越本店 新館9階
取材協力/グリル満天星 日本橋三越店
1988年東京・麻布十番に本店を創業。フランス料理で鍛えた技に工夫を重ね、日本人の口に合う洋食メニューが楽しめる人気店。店舗ごとに職人が手間を惜しまずに仕込むデミグラスソースを使った、「ハヤシライス」や「オムレツライス ドゥミグラス」にファンが多い。古見竜二シェフは、2006年より日本橋三越店の料理長を務める。
店舗のご案内について
記事でご紹介している<グリル満天星 日本橋三越店>は、日本橋三越本店 新館9階にございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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