2022.11.20
ゆでて干すだけで簡単! 手作り干し芋の作り方。ねっとりした食感にハマること間違いなし
素朴な味わいが魅力の干し芋。保存食として古くから親しまれてきた食べ物ですが、最近ではヘルシーなおやつとして、再び注目を集めています。実はこの干し芋、ご家庭でも簡単に作れるって知っていますか? 作り方はさつまいもをゆでて切って干すだけ。条件さえ整えば2日間であっという間に完成します!
そこで今回は、手作りならではのねっとりした食感と素朴な甘さが楽しめる干し芋の作り方を紹介します。教えてくれるのは、「干し芋大好き! 仕込める分だけ、いつもたくさん作っています」という、料理研究家の小島喜和さんです。
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サイズ、品種…干し芋にぴったりなさつまいも選びのポイント
ポイント① さつまいもは大きいものより、小ぶりなものをチョイス。形が悪いものでも作れる!
干し芋は、使用するさつまいもの形が悪くても問題ありません。小島さんの地元・高知県では大きくて形のいいさつまいもは、いも天などの料理に、形の良くないものは干し芋にまわすことが多いそう。ただし、干し芋は丸ごとゆでることが大切なので、鍋に丸ごと入るサイズのものを選びましょう。
さつまいもは個体によって、黒いみつのようなもの(上写真)が付着しているものもあります。これは「ヤラピン」というさつまいもに含まれる成分が変色したもの。こちらは味には影響しないので、特に気にせず干し芋作りに使って大丈夫です。
ポイント② どんな種類のさつまいもでもOK! 特におすすめなのは紅はるか
干し芋はどんな品種のさつまいもでも作れますが、小島さんがおすすめする品種は「紅はるか」。干し芋にすると、しっかりした甘さとねっとりした食感が楽しめます!
一方でホクホクした食感が特徴の品種「坂出金時」「紅あずま」「鳴門金時」や、しっとりした食感の「シルクスイート」は、「紅はるか」に比べるとかためな食感の干し芋に仕上がります。好みによって使い分けるといいでしょう。
ポイント③ 掘り立てのさつまいもは、余裕があるなら1か月ほど寝かせると甘みがアップ!
さつまいもは掘り立てよりも、じっくり貯蔵して熟成させると、おいしさがアップすると言われています。条件が良ければ、さつまいものでんぷんが糖に代わり、甘みがぐっと増すのだとか。
干し芋はどんなさつまいもでも作れますが、秋の収穫期に出回っているさつまいもで作る場合、余裕があるなら寝かせてから仕込むのがおすすめ。保存方法は2枚重ねた新聞紙でさつまいもを1本ずつ包み、風通しのいい冷暗所に1か月ほど置きます。
ただし、秋の収穫期以外に出回っているさつまいもは、もともと貯蔵されていたものを出荷している可能性が高いため、すぐに干し芋作りを初めても大丈夫です。
さつまいもは掘り立てよりも、寝かせた方が甘みが増すんですね! 勉強になります。どんなさつまいもでも作れるなら、いろいろな種類で試して食べ比べてみると楽しそう!
それでは実際にレシピを見ていきましょう。
Q&Aで徹底解説! 干し芋の作り方(レシピ)
<材料>
- さつまいも(紅はるかなど)…好みの量
「さつまいもはお好きな量だけ仕込めます。ただし、乾かすので、ザルに広げられる量を超えないように気をつけましょう」
Q:干し芋を作る時期のおすすめは?
A:地域にもよりますが、とにかく寒く、乾燥しているときがいいので、11月中旬以降の寒い季節に行うのがおすすめ。気温よりも空気が乾燥している湿度であることが大事なので、天気の見極めは慎重に。
Q:どんな日に仕込むといい?
A:干し芋を仕込むときは必ず天気予報をチェックすること。晴れの日が最低2〜3日以上続くタイミングを選んで。干し芋の大敵は湿気です。前日に雨が降った日の翌日は、空気が湿っているので避けましょう。よく晴れてからっからに空気が乾いていて、日がしっかり当たる環境で作れば、2日程度で食べ頃の干し芋が完成します!
<作り方>
1. さつまいもを水からゆでる
鍋にさつまいもを入れ、たっぷりの水を注ぎ中火にかける。沸騰したら弱火にして25〜40分ほどゆでる。
Q:さつまいもはゆでた方がいい? それとも蒸すのがおすすめ?
A:さつまいもがやわらかくなればいいので、ゆでるのでも蒸すのでもどちらでも大丈夫です。大切なのは、丸ごと加熱すること。切ったり、皮をむいたりしてからゆでてしまうと、さつまいもの旨みが外に逃げ出してしまうので、気をつけましょう。電子レンジやオーブンで加熱したさつまいもは、干し芋には不向きなので、避けてください。
2. やわらかくなったらザルにあげる
さつまいもに細串を刺してスーッと通るくらいになるまでやわらかくなったら、ザルにあげ、手で持てる程度の温かさになるまで冷ます。
「さつまいものゆで加減は、竹串よりも細い細串が抵抗なく刺せるくらいまでが目安。加熱が短いとかたい干し芋になってしまうので、少しゆですぎなくらいがちょうどいいでしょう」
3. さつまいもの皮をむく
さつまいもが冷めたら繊維の多い先端を切り落とし、皮をむく。
「皮は包丁で端っこを引っかけてからそのままスーッと引っ張るようにしてむきましょう。手でむくのでも構いません。皮の近くに旨みがあるので、薄くむくことがポイントです」
4. さつまいもを切る
皮をむいたさつまいもは、1cm幅の斜め切りにする。
Q:輪切り、斜め切り、縦に切る…どれがおすすめ?
A:大きいものは斜め切り、小ぶりなものは縦に切るといいでしょう。輪切りでも構いませんが、表面積が小さいとすぐに乾いてかたくなってしまうので、気をつけて。大切なのは大きさよりも厚みです。1cmほどの厚みでカットすると、食べ応えもありつつ、程よく水分も残ったしっとりした食感に仕上がります。
5. ザルに広げて天日干しする
切ったさつまいもをザルに重ならないように並べ、2日〜1週間天日干しする。
「陰干しではなく、直接日光が当たる場所で干すといいでしょう。あれば干し網のようなものに入れると、動物や虫除けになります」
Q:何日間干したらいいの?
A:干す日数は天候によって変わりますが、空気が乾燥していてよく晴れたタイミングであれば、2日程度で食べ頃の干し芋が完成します。途中で曇ったり、太陽に当たらなかったりすると、3日〜1週間かかる場合も。干す日数は様子を見ながら調整しましょう。
Q:夜はどうすればいい?
A:日が暮れたら、部屋の風通しがよく寒い場所に置きましょう。暖房が効いた部屋に置いてしまうと、カビが生えることもあるので、気をつけて。
Q:おすすめの干し具合は?
A:小島さんがおすすめするのは、干して2日ほどたった表面が乾いていて中は半生のような状態の干し芋(写真①)。やわらかく、甘みもしっかりと感じられます。干す日数が長くなると(写真②)、かたくはなりますが、その分保存期間も長くなります。かたい干し芋も噛み応えがあっておいしいので、好みで調整しましょう。
Q:失敗することもある?
A:さつまいもはかなり個体差があります。良質なさつまいもで作った干し芋は断面がきれいです(写真①)。さつまいもによっては切った断面が白くなるものも(写真②)あり、食感があまり良くありません。そのまま食べるより、少し火であぶってからバターをのせるなど工夫するとおいしく食べられるでしょう。
また、湿気が多かったり、気温が高かったりと、条件が整わない環境で干し芋を作ると、カビが生えてしまうこともあります。
素朴な甘さがたまらない! 手作り干し芋のできあがり
毎日様子を見ながら、時間をかけて作った干し芋。ぽってりしたかわいい見た目に愛着も湧いてきます。お味はというと、素朴な甘みがぎゅっと凝縮して、まるで上品な芋羊羹をいただいているよう。何より、半生のようなねっとりとした食感がたまりません。こんな味が手作りで再現できるなんて、とっても贅沢です!
Q:手作り干し芋の保存方法は?
A:ファスナー付き保存袋に入れ、空気を抜いて袋の口を閉じ、冷蔵庫で保存します。保存期間は干し具合によって異なるが、4日〜1週間を目安に食べきるのがおすすめ。1枚ずつ重ならないよう平らに並べて冷凍用保存容器に入れると、冷凍も可能です。1ヶ月を目安に食べきりましょう。
さつまいもさえあれば、いつでも好きな分だけ作れる干し芋。品種や干し具合によって毎回変わる味も楽しく、思わず干し芋作りにハマってしまいそう! ぜひ、天気予報をチェックして、仕込む日を決めてみてください。
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小島喜和さん
テーブルトップディレクター。季節のめぐりとともに暮らす日々。手仕事を行う楽しさ、美味しさを伝えることをライフワークに、自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、【季節の手仕事教室】を開催している。『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。
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