2017.07.04
味噌作りのQ&A。カビ・保存方法・賞味期限を徹底解説
家で味噌作りをする人がじわじわと増えています。自分で作った「手前味噌」は格別の美味しさ。でも、天地返しのタイミングや保存容器の選び方、カビ対策など、できあがるまでにはあれこれと疑問や不安が湧いてくるものです。
以前、WEB FOODIEで味噌の作り方を教えてくれた料理研究家の小島喜和さんに、失敗しないコツと素朴な疑問の解決先を伺いました。
Q.家に冷暗所がありません。作った味噌はどこに保存すればいい?
A.シンク下など室内の涼しい場所に
パントリーや床下収納といった十分なスペースがないマンションなどでは、手作り味噌の保存場所に困るもの。比較的暗くて涼しいといえば、キッチンのシンク下収納です。ときどき扉を開けて風を通しましょう。味噌を入れた保存容器の下にはスノコやレンガをかませて直置きしないように。
Q.天地返しはしなきゃダメ?
A.しなくて大丈夫ですが、できれば1回だけ
味噌は、空気に触れやすい容器の上の方から発酵していきます。そこでムラなく発酵させるために、味噌を容器から一度出し、上下を入れ替えるのが「天地返し」。でも家庭で作るぐらいのサイズの容器であれば、天地返しをしなくても発酵するので心配ありません。完全放置をしていた方が美味しくできあがるという話もあるぐらい。
ただ、深めの容器で作ったからどうしても心配……というのであれば、8月あたりに1度だけ、様子を見るぐらいのつもりで行ってみてもいいでしょう。
Q.味噌ができあがったら重石は外していい?
A.食べる直前まで外さないで
作ってから丸1年、食べはじめるまでは外しません。1年以上食べないで熟成させる場合も、食べはじめるまでは重石をしておきます。重石は、味噌に均一に重さをかけて密閉するために乗せるもの。重石によって水分(たまり)が上がってきて表面を覆うと空気に触れなくなるため、カビが生えにくくなります。発酵が進んだら軽いものに変えてOK。
Q.たまりが溢れてしまうのですが、どうすれば…
A.重石が重すぎるのでは?
容器に乗せている重石が重すぎて過剰にたまりが出てしまっているのかも。作りはじめは味噌の重量に対して約3割の重さの重石をのせます。
逆にたまりが出てこないのは、重石が軽すぎるからです。あるいは、味噌の量に対して容器が小さすぎる可能性も。たまりが上がってくる分のスペースも考えて容器を選びましょう。
Q.容器のフチに出てくる白いものは放っておいていい?
A.カビです。取り除いてください
容器のフチに、白い輪のように見えるふわふわとしたものが現れたら、それはカビです。環境ごとに黒や青のカビが生えることもあるのですべて取り除きましょう。味噌の表面を覆っている透明の膜のようなものはカビではなく酵母なので、気にしなくて大丈夫。
Q.カビが生えてしまった場合の対処法は?
A.見つけたらすぐに取り除いて、消毒します
カビは、見つけたらすぐにスプーンなどですくうように取り除きましょう。キッチン用の消毒液やアルコール、焼酎を吹き付けたふきんやキッチンペーパーでカビの発生しやすい容器のフチを拭きます。味噌の表面に蓋するビニール等は新しいものに替え、よく消毒してから再度被せましょう。
カビを取り除いた後に気をつけたいのは、蓋の開け閉めの頻度。カビが生えていないか気にしすぎてたびたび蓋を開けると、空気が入ってかえって逆にカビが生えやすくなります。あまり神経質にならず、1年に1度か2度、様子を見たときに目にしたら都度取り除けば十分です。
Q.蓋はビニール以外のもので代用できる?
A.ゴミ袋、さらし、ガーゼも使えます
味噌の熟成過程で空気に触れないように蓋をしますが、家庭で作る場合は密閉性が高くて消毒しやすいビニールが便利。厚手のものが販売されています。もし入手できない場合はラップなどでもかまいませんし、さらしやガーゼも使えます。
Q.できあがった味噌が変色するのを防ぐには?
A.発酵を止めたいタイミングで冷蔵庫へ
色が変化していくのは発酵が進んでいるからで、それ自体は悪いことではありません。少し食べてみて好きな味に仕上がっていたら、扱いやすいプラスチック製の容器などに入れ替え、冷蔵庫へ移しましょう。発酵がゆるやかになるとともに変色もゆっくり進むようになります。
Q.手作り味噌に賞味期限はある?
A.ないと言っていいでしょう
発酵が進めば常温でもカビが生えにくくなり、冷蔵庫で保管しておけばずっと食べ続けられます。常温で置く場合は濃い焦げ茶色になっていきますが、そのぶん味も深まり、むしろ長期熟成の味噌の方が価値は高いぐらいです。
Q.容器で味は変わる?
A.木の樽を使うと、ほのかに香りが違います
陶器、ホーロー、プラスチック製の容器では味が変わることはありません。木の樽で作ると、かすかにいい香りがします。ただしヒノキは食品には向かない香り。多少の滅菌効果があり、香りのおだやかなスギの樽が合います。
プラスチックは1年間の味噌作りには便利ですが、長期熟成させるには容器そのものが変色したりするので、向いていません。
Q.アルコールのような匂いが気になります
A.麹の匂いなので大丈夫
発酵、熟成の過程で匂うのは麹そのものの香りで、味への影響もなく、気にする必要はありません。
Q.きちんと発酵しないのですが……
A.麹が死んでしまっている可能性が
発酵を促す麹菌が死滅してしまっているのかもしれません。麹は60度以上になると死んでしまいます。そのため、茹でた大豆が熱いまま麹を混ぜてしまったのが、考えられる原因の一つ。あるいはよく混ぜていないせいでムラが生じたのかも。また、麹菌は使わないまま年月が経つと死んでしまうため、発酵しません。
味噌作りに慣れないうちは、一つひとつの現象に驚いてしまいますが、「あまり神経質にならないことも大事」と小島先生。
特にカビは、手をかけすぎることが逆効果という場合も……。
「そもそも味噌作りにおいて、カビは生えて当たり前のもの。気になって熟成過程で何度も覗いてしまうのが一番ダメなんです。大らかに構えてできあがりを待ちましょう」。
徐々に慣れればコツがつかめるもの。ちょっとしたアクシデントも味噌作りの醍醐味として楽しみましょう!
基本の味噌の作り方
<材料>
- 大豆(乾燥)…1kg(ふやかすと2kgぐらいになる)
- 麹…1kg
- 塩…500g
- 水…400ml
<作り方>
- 大豆を水でよく洗ってから、柔らかくなるまで一晩水に漬けておく。
- 5〜6時間ゆでる(圧力鍋なら20分)。柔らかさの目安は親指と小指で潰せるぐらい。
- 大豆を潰し、水を入れて冷ます。その間に塩と麹を混ぜ合わせておく。
- すべてを合わせて容器に入れ、蓋と重石を乗せる。梅雨明けに一度カビのチェックをする。天地返しをするなら8月頃に。作ってから約1年寝かせれば完成。
小島喜和さん
テーブルトップディレクター。季節のめぐりとともに暮らす日々。手仕事を行う楽しさ、美味しさを伝えることをライフワークに、自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、【季節の手仕事教室】を開催している。『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。
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