
2025.09.18
【プロ】さつまいものレモン煮(甘煮)の人気レシピ。はちみつでツヤ増し&甘さ引き出す! アク抜き、日持ち…
さつまいもにレモンの爽やかな酸味と香りをまとわせ、しっとりと煮含めた「さつまいものレモン煮」。さっぱりとした甘さは箸休めにふさわしく、作り置きができるので、普段のおかずとしてはもちろん、お弁当のおかずとしてもマスターしておきたい一品です。
作り方は、基本的にさつまいもを砂糖とレモンで煮るだけなので一見簡単そうですが、甘みと酸味の味付けのバランスや、さつまいもの甘みが引き出せない、色が黒ずんでしまうなど、意外に悩みが多い料理といえます。
そこで今回は、畑仕事をライフワークとし、野菜本来の持ち味を活かしたレシピで人気の料理研究家・植松良枝さんに作り方を教えてもらいました!
「さつまいものレモン煮は冷蔵庫で1週間ほど保存がきく(日持ちがする)ので、多めに作るのがおすすめです。記事の最後に、レモン煮をリメイクした簡単なおつまみサラダのレシピと、すだちを使った和風仕立てのアレンジもご紹介するのでお見逃しなく」
目次
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素朴な疑問を解消!「さつまいものレモン煮」の作り方Q&A
レシピをご紹介する前に、まずは「さつまいものレモン煮」作りで多いお悩みについて、解決方法を教えてもらいました。
Q:レモン煮におすすめのさつまいもの品種は?
A:しっとり感強めで、ホクホク感も楽しめる品種がおすすめ
さつまいもは品種によって食感の違いが大きく、「紅あずま」に代表されるホクホク系、「シルクスイート」「なると金時」などのしっとり系、「紅はるか」「安納芋」のようなねっとり系に分類されます。
レモン煮にはしっとり感が強めで、適度にホクホク感も楽しめる「なると金時」「五郎島金時」「シルクスイート」などがおすすめ。
ねっとり系の品種はやわらかくなりすぎるので基本的にレモン煮には向きませんが、本格的な収穫がはじまる10月前に収穫された早生(わせ)のものは、ねっとり感が少なめなので美味しく作れます。
「今回のレシピでは、ねっとり系に分類される『紅はるか』の早生のもの使用しました。ねっとり感がまだ少なく、しっとりとした食感と紅はるかならではの甘みが楽しめます。そのほか私のお気に入りの品種は、石川県金沢市の砂丘地で栽培される『五郎島金時』。こしあんを思わせる、さらっとした口当たりに仕上がります」
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Q:レモン煮におすすめのさつまいものサイズや、選び方は?
A:細くて小さめ、皮がすべすべしていて真っすぐなもの
さつまいものレモン煮は、さつまいもの皮をむかず、皮の美味しさや色味の美しさも楽しみたい料理です。
輪切りにしたときにひと口で食べやすい、直径3.5~4㎝の細く小さめのもの、皮の色が濃くてすべすべとした、凹凸の少ないものを選ぶといいでしょう。筋が少なく、キメ細やかな食感に仕上がります。
Q:さつまいもの甘みを引き出す方法はある?
A:重ならないように鍋に並べ入れ、煮汁が冷たい状態からじっくり煮る
さつまいもを煮るときにポイントがあります。煮汁が全体に回り、さつまいもを重ならないように並べられる直径が大きい鍋やフライパンを使うこと。そして、煮汁が冷たい状態から弱火でじっくり20~25分煮ることです。
こうすると、さつまいもに含まれるでんぷん質がゆっくりと糖に分解され、甘みがしっかり引き出されます。また、ほんの少し塩を加えると、より甘さが引き立ちます。
ちなみに、芋掘り体験などで入手したさつまいもは、新聞紙で包んで冷暗所に2~3か月寝かせると、余分な水分が抜けでんぷんが糖に変化し甘みが増します。なお、流通しているものはそうして貯蔵したものを出荷していることが多いので、家で寝かせる必要はありません。
Q:甘みと酸味がちょうどよい味付けにするのが難しい…
A:甘みはいったん冷まして味をなじませる。レモンは加えるタイミングにポイントあり
さつまいもの甘い煮汁は、少しとろみがつく程度まで煮詰めます。温かいうちに味見をすると、少し甘みが足りないように感じますが問題ありません。いったん冷ますことでしっかり味が入り、ちょうどよい甘さに仕上がります。
酸味の元となるレモンは、さつまいもを煮て10分くらい経った途中のタイミングで加えましょう。こうすると酸味が甘い煮汁とよくなじみ、輪切りのレモンにもほど良く火が通って、そのまま食べても美味しくなります。
レモンは最初から加えると酸味が飛びやすく、レモンの皮から苦みが出てしまいます。反対に最後に加えると酸味がとがった印象になり、輪切りもそのまま食べるには酸っぱすぎる仕上がりになるので注意しましょう。
Q:さつまいもが黒くなるのを防ぐには?
A:下処理と保存で気を付けたい3つの原因を解消する
さつまいものレモン煮は、酸化防止が期待できるレモンを使っているので、変色の心配はありません。それでも、さつまいもが黒っぽく変色する場合は、次の3つが主な原因と考えられます。それぞれの対処法を解説します。
①アクが残っている
さつまいもは切ってから空気に触れて時間が経つと、黒く変色する性質があります。これはさつまいもに含まれる、ヤラピンやタンニンと呼ばれるアクの成分が作用するから。また、アクは食べると苦みなどを感じる原因にもなります。しっかりアクを抜くためには、切ったら必ず5~15分水にさらし、途中で2~3回水を換えましょう。
②皮の変色部分が残っている
さつまいもの固体によっては、皮の一部が傷ついて茶色く変色していたり、前出のヤラピンという成分を含んだ白い汁がにじみ出てきて乾燥し、黒い蜜のようにかたまっていたりします。
これらの変色部分は食べても安全ですが、煮ている途中で黒ずんだり、口当たりが悪くなったりするので、あらかじめ包丁で取り除いておきましょう(写真)。
③保存するときに、空気に触れている
さつまいもに残っていたアクの成分(ヤラピンやポリフェノールの一種のクロロゲン酸)が空気に触れて酸化したと考えられます。保存の際はラップで表面をぴったりと覆い、空気に触れないようにすると対策は万全です。
さつまいもの選び方や火の入れ方の違いが、仕上がりに差を生むのですね! 疑問を解消したところで、いよいよレシピをご紹介します。
しっとり、甘酸っぱい「さつまいものレモン煮(甘煮、煮物)」プロのレシピ
<材料>(作りやすい分量)
- さつまいも(直径3.5~4㎝の細めのもの)…約400g(約6本)
- レモン(国産)…1と1/2個~2個
- 煮汁
・水…100ml
・白ワイン(または日本酒)…100ml
・砂糖(グラニュー糖、きび砂糖など好みのもの)…80g
・塩…小さじ1/4 - はちみつ…大さじ2 ※砂糖35gで代用可能
「レモンは皮ごと使うので国産を選んでください。水と砂糖だけで煮るレシピをよく見かけますが、私は水と同量の白ワインや日本酒を加えます。意外に感じる人がいるかもしれませんが、より深い味わいになるので、ぜひお試しください。お酒の分量は多いですがアルコール分は加熱により飛ぶので、お子さんでも安心してお召し上がりいただけます。
また、砂糖だけでなく、レモンと相性の良いはちみつを使うと甘みが豊かになり、ツヤが出てしっとり仕上がります」
<作り方>
1. さつまいもは厚さ1㎝程度の輪切りにし、水に5~15分さらしてアクを抜く
さつまいもは端を切り落とし、厚さ1㎝程度の輪切りにする。皮に変色した部分があれば、削ぎ落しておく。
「輪切りにすると、煮ても皮がはがれずきれいに仕上がります」
水を張ったボウルに入れ、2~3回水を換えながら5~15分さらして、しっかりアクを抜く。
「水は濁らなくなるまで交換してください」
2. レモンは1/2個を薄い輪切りにして種を外し、残りは果汁を絞る
レモン1/2個はごく薄い輪切りにし、種を外しておく。
「輪切りにしたレモンは食べても美味しいので、食べられない種は外しておきましょう。ごく薄く切ると、食べやすい味わいになります」
残りのレモンは果汁を絞る。
「果汁は大さじ2ほど使います」
3. 直径26㎝程度の鍋またはフライパンに、さつまいもを重ならないよう並べ入れる。調味料を加え、紙蓋をかぶせて火にかけ、沸騰したら弱火で10分ほど煮る
直径26㎝程度の大きい鍋またはフライパンに、水気をきったさつまいもを重ならないように並べ入れ、煮汁の材料の水、砂糖、白ワイン、塩を加える。
真ん中に穴をあけたクッキングシートをかぶせて紙蓋にし、さらに木蓋や耐熱皿(写真)などをのせて中火にかける。煮立ったら弱火にし、コトコトと10分ほど煮る。
「紙蓋をすることで煮汁に対流が生まれ、ひたひた程度の煮汁でも全体に回ります。クッキングシートの真ん中に穴をあけておくと空気が抜け、さらに木蓋などをのせると重しになって、さつまいもが浮きません」
4. はちみつ、レモンの絞り汁を加え、レモンの輪切りをのせてさらに10~15分煮る
蓋を外し、はちみつ(上写真)、2のレモンの絞り汁(大さじ2程度)(下写真)を加える。
「レモンと相性の良いはちみつを加えます。はちみつは、ある程度砂糖蜜が煮詰まってから加えることで、はちみつの甘みや風味がさつまいもとよくなじみます。また、レモン果汁も途中で加えることで、甘い煮汁にレモンの酸味がよくなじみ、ちょうどよい甘みと酸味のバランスに仕上がります」
2のレモンの輪切りを上に並べる。
再び紙蓋をぴったりとかぶせ、さつまいもに火が通るまで弱火でさらにゆらゆらと10~15分煮る(木蓋や耐熱皿はのせなくてよい)。
「冷めるとさつまいもの食感が締まるので、十分やわらかく煮ましょう」
5. さつまいもがやわらかく煮えたら火を止め、そのまま粗熱がとれるまで冷まして味を含ませる
煮汁に軽くとろみがつき、さつまいもがやわらかく煮えたら火を止め(写真)、紙蓋をかぶせたまま粗熱がとれるまで冷まして完成。
「ゆっくりと冷ますことで、味がさらに入っていきます」
●「さつまいものレモン煮」の保存方法と保存期間(日持ち)
粗熱がとれたら清潔な保存容器に移し、空気にふれないようラップをぴったりと密着させる。容器の蓋をして、冷蔵庫で7日ほど保存可能。
【実食】さつまいものレモン煮。しっとり食感に驚き! レモンの爽やかさが箸休めにぴったり
紅と黄色のコントラストが美しい「さつまいものレモン煮」。しっとりとキメ細かく、上品な甘みと柑橘類特有の爽やかな酸味が見事に調和しています。まさに箸休めにはうってつけのお味。さらに、さつまいものレモン煮は、蒸しパンの具や、サラダにリメイクしても美味しいそうです。なるほど、たくさん作って冷蔵庫に常備しておくのが正解です!
最後に植松さんおすすめの、簡単サラダにリメイクするレシピと、レモンをすだちに替えたアレンジレシピも教えてもらったので、こちらもぜひ作ってみてください。
【おつまみサラダにリメイク】さつまいものレモン煮 クリームチーズあえのレシピ
さつまいものレモン煮を使った、クリームチーズと混ぜ合わせてサラダ風にするリメイクレシピをご紹介。シナモンや黒こしょうなどのスパイスをアクセントにすると、表情がガラッと変わります。パンやワインと合わせて、おつまみとしてもおすすめです。
<材料>(2人分)
- さつまいもの甘煮(汁気をきる)…5~6切れ
- さつまいもの甘煮の煮汁…適量
- クリームチーズ…60g
- 塩…少々
- シナモンパウダー(または黒こしょう)…適量
<作り方>
- ボウルにクリームチーズを入れ、ゴムベラなどでやわらかくほぐす。
- 「さつまいものレモン煮」はところどころ皮をむく。
- 1に2と「さつまいものレモン煮」の煮汁、塩を加えて混ぜ合わせる。
- 器に盛り、シナモンパウダー(または黒こしょう)をふり、好みでパンを添える。
【和の柑橘でアレンジ】さつまいもの甘煮 すだち風味のレシピ
植松さんイチオシの、さつまいもの甘煮のすだちを使ったアレンジレシピをご紹介します。レモンとは違った柑橘使いに注目!
「すだちはレモンよりも香りが繊細で、煮ると風味が飛びやすく皮が退色してしまため、煮るときには加えません。さつまいもの甘煮を作ってから、果皮や果汁をふりかけて仕上げます。すだちは『和』の調味料と相性が良いので、白ワインではなく日本酒を使い、しょうゆを加えました。かぼすや青みかんでもおすすめです。さつまいもは厚めに切ると、和食らしい美しさが楽しめます」
<材料>(作りやすい分量)
- さつまいも(直径3.5~4㎝の細めのもの)…約400g(約6本)
- 煮汁
・水…100ml
・日本酒…100ml
・砂糖(グラニュー糖、きび砂糖など好みのもの)…1/2カップ(90g)
・しょうゆ…小さじ2 - すだち…適量 ※かぼす、青みかんで代用可
<作り方>
- 「さつまいものレモン煮」の作り方1と同様に、さつまいもを切って水にさらし、アクを抜く。ただし、さつまいもは1.5㎝厚さに切る。
- 「さつまいものレモン煮」の作り方3と同様に、鍋またはフライパンに水気をきったさつまいもを重ならないよう並べ入れ、煮汁の材料を入れて紙蓋と木蓋(または耐熱の皿)をかぶせ、強火にかける。
- 沸騰したら弱火にして、煮汁にとろみがついてさつまいもがやわらかくなるまで20~25分煮たら火を止め、粗熱がとれるまでそのまま冷ます。
- 器に盛り、半分に切ったすだちをのせる。おろしたすだちの皮をふりかけ、すだちの果汁を適量絞っていただく。
レシピ/植松良枝さん
旬の野菜を使った料理を得意とする料理研究家。料理教室「日々の飯事(ひびのままごと)」を主宰。野菜づくりがライフワークで、季節に寄り添った食と暮らしに関するアイデアを発信している。
さらに国内外を旅し、多くの食文化に触れた経験から生み出される、世界各国のエッセンスを取り入れた料理も人気。『バスクバルレシピブック』(誠文堂新光社)、『春夏秋冬 ふだんのもてなし』(KADOKAWA)、『ヨヨナムのベトナム料理』(文化出版局)など著書多数。
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