
2025.06.10
【プロ直伝】メキシコ流タコスの本格レシピ(トルティーヤ、カルニタス、サルサ、ワカモレ)。疑問も解説!
ここ数年の世界的なムーブメントを背景に、日本でも路面店やフードコートに専門店がオープンしたり、レストランのモダン系メニューとして登場したりと、注目が高まっているのがメキシコ料理「タコス」です。手巻き寿司のように、好きな具材を好きなように包める自由なファストフードとして、自宅でタコスパーティーを楽しむ人も増えています。
そんな話題のタコスですが、いざ日本で出回っているレシピを調べてみると、例えば、タコスの具材は挽き肉のタコミートやレタスにシュレッドチーズ、タコス生地のトルティーヤはパリパリのかたいものや小麦粉で作ったものがほとんどです。
しかしそういったレシピは、日本流にアレンジした味だったり、メキシコからアメリカ南部に渡って発展したテクス・メクス料理だったりと、本場メキシコの味とは異なるようで…。
そこで今回、東京・西麻布のレストラン<No Code(ノーコード)>の久松暉典(あきのり)シェフに相談したところ、本場メキシコのタコスを教えてもらえることになりました!
久松シェフは、NY発星付きのモダンメキシカン東京店にてシェフ経験があり、2025年6月に<No Code>のシェフに就任。料理テーマを新境地メキシカン×フレンチに一新して勝負を挑む、注目の若きシェフです。
今回の記事でご紹介するレシピには、久松シェフが本場メキシコを旅して現地の味をインプットしつつ、独自のこだわりを反映したオリジナルのポイントが満載。タコスの素朴な疑問についての解説もあります。とても長い記事ですが、最後までお見逃しなく!
目次
レシピをご紹介するまえに、本場メキシコのタコスについてご紹介しましょう。
そもそも「タコス」とはどんな料理?
タコスはメキシコの国民的料理として、屋台や家庭、レストランなどあらゆる場面で楽しまれています。トルティーヤと呼ばれる丸い生地に肉や魚、野菜など、地域ごとに異なる多彩な具をのせ、好みでサルサと呼ばれるソースやライムを添えて食べます。
タコスの起源は諸説ありますが、もともと紀元前(日本の縄文時代のころ)に始まる古代メキシコ文明の時代から、とうもろこしは主食とされ、焼いたとうもろこしの生地に魚や昆虫、豆類、野菜などを包んで食べていたそうです。これが「詰め物」や「小さな塊」を意味する「taco」と呼ばれるようになったと考えられています。
16世紀には、スペイン人ベルナル・ディアス・デル・カスティリョが著した『新スペイン征服記(La Historia Verdadera de la Conquista de la Nueva España)』に、タコスのような食べ物の存在が記載されています。
ちなみにメキシコ料理は、2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。紀元前からの長い歴史に加え、とうもろこし、豆、チリ(唐辛子)、パクチー(コリアンダー、香菜、シラントロ)、トマティージョ(トマティーヨ、ほおずき科の野菜)、サボテン(ノパル)など、独自の食材や調理法をもつ食文化が世界で認められました。
タコスの生地(皮)、トルティーヤとは?
タコスの生地は「トルティーヤ(トルティージャ、tortilla)」と呼ばれ、スペイン語で「小さなケーキ」や「小さな円形のパン」を意味しています(torta=ケーキ、-illaは小さいものを表す接尾辞)。
メキシコの家庭ではトルティーヤは手作りしていた時代もありましたが、最近、とくに都市部ではお気に入りのトルティーヤ専門店から買うことが多くなっています。日本なら、近所のお気に入りのパン屋さんに食パンやバゲットを買いに行くような感覚ですね。
●タコスの生地「トルティーヤ」は2種類ある。本場メキシコではとうもろこし粉、アメリカでは小麦粉が主流
実は「トルティーヤ」の原材料は、とうもろこし粉の「コーントルティーヤ」と小麦粉(薄力粉、強力粉)の「フラワートルティーヤ」の2種類があります。どちらも水分を加えて、丸く薄くプレスしてから焼いて作ります。
前出でご紹介したように、とうもろこしを主食とするメキシコでは、タコスに使う「トルティーヤ」といえば「コーントルティーヤ」が主流です。ちなみに、焼いたトルティーヤを三角形にカットして素揚げしたものが、トルティーヤ・チップスです。
一方、「フラワートルティーヤ」は、メキシコ料理の一部がアメリカのテキサス州に渡って、テクス・メクス料理として発展していくなかで、現地で調達しやすい小麦粉を使ったトルティーヤが生まれました。アメリカ全土とメキシコ北部でも食べられています。伸ばしやすい生地なので、大きく焼いて具材をたっぷり包む、テクス・メクス料理のブリトーにも使われます。
また、アメリカで一般的なタコスの生地には、「コーントルティーヤ」を素揚げしてパリパリ食感に仕上げたU字形の「ハードシェル(タコシェル、シェルは殻の意)」があります(対して、焼いただけのやわらかいトルティーヤは「ソフトシェル」)。これはテクス・メクス料理」として誕生し、世界的なカリフォルニアのタコスチェーン店<タコ・ベル>がアメリカ全土に広めたとされます。
味わいは、コーントルティーヤはとうもろこしの香りが高く、歯切れのいい素朴で軽やかな口当たり。フラワートルティーヤは味や香りの個性は強くなく、ふんわりとやわらかな食感です。
●本場メキシコのトルティーヤには「マサ粉」が必須! 日本で一般的な「とうもろこし粉」との違いとは?
ここまで読んで「本場メキシコのトルティーヤを作るなら、とうもろこし粉を買えばいいんだ!」と思いがちですが、実は、日本の製菓・製パン材料の専門店などで見かけるとうもろこし粉はグルテンがないため、水分を加えて練ってもパラパラとひとまとまりにならず、トルティーヤ(生地)がつくれません。
本場のとうもろこし100%のトルティーヤを作るためには、とうもろこしに特殊加工を施した「マサ粉」と呼ばれる専用のとうもろこし粉を手に入れる必要があります。初めて知った方が多いと思いますので、マサ粉を含め、とうもろこし粉の種類と違いについて、以下に解説します。

とうもろこし粉にはいろいろな種類がある。①マサ粉(ホワイト)、②コーンフラワー、③コーンミール、④コーングリッツ
【①マサ粉】
とうもろこしの実を、メキシコの伝統的なニクスタマル(ニュクスタマル)と呼ばれる製法で処理してから、すり潰し乾燥・粉砕したとうもろこし粉のこと。
その製法とは、とうもろこしの実をアルカリ性の石灰を加えた水で煮たあと、ひと晩寝かしてから洗うという工程です。石灰の効果で皮がやわらかくなって溶けることで、とうもろこしの香ばしい風味と粘りが生まれます。マサ粉に水分を加えて練ると生地がまとまり、トルティーヤが作れるのはこの製法があってこそというわけです。
メキシコには200種類ほどのとうもろこしがあるといわれ、色の違いは品種の違いに由来し、マサ粉にはイエロー、ホワイト、ブルー、ピンクなどがあります(ピンクは色粉が使われることも)。
【②コーンフラワー、③コーンミール】
乾燥させたとうもろこしをそのまま粉砕したもの。コーンフラワーはコーンミールより粒子が細かい。パンや焼き菓子、揚げ物の衣などに使われます。ただし、マサ粉のような粘りはないため、単体ではトルティーヤ生地は作れません。
【④コーングリッツ】
とうもろこしの皮と胚芽を取り除いた胚乳部分を、粗く粉砕したもの。コーンフレークなどのシリアルやコーンブレッド、イングリッシュマフィンに使われます。粒子が粗くマサ粉のような粘りはないため、単体ではトルティーヤ生地は作れません。

右はマサ粉で作ったトルティーヤ。左はコーンフラワーと小麦粉と混ぜて作ったトルティーヤで、黄色が濃く、もちっとした食感。とうもろこしの香りと味わいは、断然マサ粉のほうが強い
タコスの具材、本場メキシコの定番とは?
メキシコで王道といえるタコスの具材は、カルニタス(カーニタス、Carnitas)。スペイン語で「小さな肉」を意味する伝統的な豚肉料理です。
豚肩ロースやバラ肉など脂の多い部位を使い(皮や内臓を加えることも)、たっぷりのラード(豚脂)で煮る(コンフィにする)調理法。油脂が蓋代わりになって水分が抜けにくいので、ホロホロとやわらかく仕上がり、刻んだりほぐしたりしてトルティーヤにのせます。
煮込むときには、香りづけにオレンジやにんにく、ローリエ、シナモンなどを加えるなど、地域や家庭によっても作り方が違います。今回の記事では、久松シェフ流のオリジナルレシピをご紹介します。
ほかに本場メキシコで定番のタコスの具には、以下のようなものがあります。
- カルネ・アサーダ(牛肉のステーキ)
- 白身魚、えび、ソフトシェルクラブなど魚介のフリッター
- ラムのバルバコア(現地はヤギが主流)
- ノパル(サボテン。野菜系タコスといえばこれ)
「上記はあくまで本場メキシコのクラシックな具材の例です。基本的にタコスの具は、好きなものを自由に楽しんでのせればOKです。個人的には中華系の料理、青椒肉絲やエビチリも合うのでおすすめ。僕の師匠である米澤文雄シェフのチリコンカンをのせてもおいしいですよ!」(久松シェフ)
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タコスのサルサ(ソース)、本場メキシコの定番とは?
サルサとは、タコス生地のトルティーヤに具材をのせ、好みでトッピングするソースのこと。メキシコ料理では、タコスのトッピング以外に、煮込み調味料に使うこともあります。
本場メキシコで定番のサルサをいくつかご紹介します。
【サルサ・メヒカーナ】
フレッシュのトマト、玉ねぎ、ハラペーニョ(青唐辛子)などを刻んで混ぜたもの。名前はメキシコの国旗の赤、白、緑の3色から由来している。ピコ・デ・ガヨとも。
【サルサ・ロハ】
赤いソースという意味のサルサ。完熟トマト、ハラペーニョ(青唐辛子)、玉ねぎ、にんにくなどを焼いて風味を立たせ、パクチー(コリアンダー、香菜、シラントロ)などをミキサーにかけて煮詰めたもの。
【サルサ・ベルデ(ヴェルデ)】
緑色のソースという意味のサルサ。メキシコ独自の野菜トマティージョ(トマティーヨ)という食用ほおずき科の野菜を使った、さわやかな甘みと辛みがある味わい。
【サルサ・チポトレ】
チポトレ(チポトレ・モリタ、モリタ)という、完熟した赤いハラペーニョを乾燥・燻製にした唐辛子を使った、香り、辛み、うまみが強いサルサ。缶詰のチポトレアドボを使うことも。
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以上がタコスについての解説でした。
※参考文献・サイト:タコス ニッポン発、メキシカンタコスの新しい風(柴田書店)、dancyu 2019年8月号「ホントのタコス。」特集(プレジデント社)、メキシコ料理テピートレシピブック(パルコ)、ミートエクスプレス「タコスとは?」(https://meatexpress.jp/)
さあ、大変お待たせしました! 続いて、本場メキシコの味をリスペクトしつつ、<No Code>久松シェフオリジナルのエッセンスを加えたタコスのレシピを紹介していきましょう。
本場メキシコのタコスパーティーを準備するポイント
今回は、タコスの生地「①コーントルティーヤ」、豚肉を使った具材「②カルニタス」、具にかけるサルサ「③サルサ・クルーダ」、付け合わせとしてアボカドを使った人気のディップ「④ワカモレ」をご紹介します。すべて久松シェフのオリジナルレシピです!
【作る順番のポイント】トルティーヤは温かい状態で食べるために、最後に作ること!
タコスパーティーの準備をする場合、以下の順番で作るのがおすすめ。なお、時間は目安です。トルティーヤは温かい焼きたてで食べてほしいので、最後に作りましょう。または焼いたトルティーヤが冷めてしまったら、食べる直前に軽く温め直すといいでしょう。
※2と3は、アボカドを加える前まで作って冷凍保存しておき、食べるときに仕上げるのもおすすめ
【食材のポイント】本場のタコス作りのために、購入すべきメキシコ食材はこれ!
【①マサ粉】
トルティーヤ作りに使用。専門店や通販での入手する必要がありますが、小麦粉やコーンフラワーで作る味わいと比べて、とうもろこしの香りが格段にいい。
【②ワヒーヨ(ワヒージョ)】
タコス具材のカルニタス作りのとき、豚肉のマリネ用の材料として使用する、メキシコのミラソルという唐辛子を乾燥させたチリ(チレ、唐辛子)。日本で見かける乾燥の赤唐辛子よりサイズが大きい。湯につけて戻して使い、烏龍茶や昆布出しのような甘さ、香り、うまみがあります。
【③トマティージョ(トマティーヨ)】
サルサ作りに使用。メキシコの食用ほおずきの水煮の缶詰で、やさしい甘さがあります。見た目はグリーントマトに似ていますが、まったく異なる野菜。最近日本でも、生のものが群馬や沖縄の一部で栽培され始めましたが、手に入りやすいのは水煮の缶詰です。
これらは、メキシコ食材を扱う専門店や輸入食材店、オンラインショップ(通販)で販売されています。
※編集部調べ:東京では五反田「南米市場キョウダイマーケット」(通販あり)ですべて扱いあり。マサ粉は麻布十番「日進ワールドデリカテッセン」、広尾「ナショナル麻布スーパーマーケット」でも扱いあり。ただし必ず事前に店舗へ確認してください。
【レシピ① タコスの生地】マサ粉で作るコーントルティーヤ
本場メキシコ流の「マサ粉」を使って作る、トルティーヤのレシピです。とうもろこしの香りと味わいが楽しめます!
<材料>(1枚20g、直径10㎝、10~11枚分)
- マサ粉…100g
- 塩…1g(マサ粉の重量の1%)
- ぬるま湯(ひと肌程度の38~40℃)…125g(マサ粉の重量の125%)
「今回は、日本で手に入りやすいホワイトとブルーのマサ粉を使いました。どちらのマサ粉を使ってもレシピの分量は同じです。
僕は風味が落ち着いているナルメックス社のブルーが、いろいろな具材と合わせやすいので気に入っています。具材を包んだときの色の組み合わせで選ぶことも。色によって風味がわずかに異なりますが、プロでも微妙な差しか感じられないので、好みで選べばOK」
<作り方>
1. マサ粉に塩、ぬるま湯を加える
ぬるま湯は、全量を一度に加えてよい。
「塩気を感じないくらいの少量の塩を加えることで、とうもろこしの風味がより立った生地が作れます」
2. 粉全体に水がいきわたるように混ぜる
初めは指先で全体に水を回すように混ぜる。
ある程度水分がいきわたったら、手で握るようにして粉と水をなじませていく。
3. 生地をこねる
ある程度ひとまとまりになったら、手の平の付け根を押し付けるようにして生地をこねる。
生地を丸めたときに、指で押すと跡がつく程度のやわらかさになるのが目安。
「小麦粉とは違ってとうもろこし粉はグルテンフリーなので、こねすぎかなと思っても心配はありません。粉と水分を一体化させるイメージで、生地の表面がなめらかになるまでこねましょう」
こね終わったら乾燥しないようラップをかけ、常温に10分ほどおいて、粉と水をなじませる。
「生地を休ませるときは冷やさないでください。生地が冷たい状態で焼くと、焼きあがりが悪くなります」
4. 1玉20gに計量して丸め、プレス機を使って押し伸ばす(まな板で代用可)
生地を1個20g~22gに計量して丸める。
「トルティーヤは温かい焼きたてを食べてほしいので、すぐに焼かない場合、丸めた生地はラップをかけるか保存袋に入れて乾燥しないようにしてください」
タコスを食べる直前に、生地をプレス機で押し伸ばす。厚みのあるチャック付き保存袋の3辺を切り開いたもの(またはクッキングペーパー)で生地を挟むようにしてプレスすると、プレス機に生地がくっつかず作業がしやすい。
「プレスした生地は乾かないうちに焼きたいので、このタイミングで生地を焼くフライパンを準備しておきましょう。フライパンのサイズによりますが、1~2個プレスしたら、すぐに焼く。焼けたら、また次の1~2個をプレスしてすぐに焼く、という流れがおすすめ」
「トルティーヤ専用のプレス機は、なるべく大きくて重いものが、きれいに薄くしっかりプレスされます。僕は薄く美しく仕上げたいので、上下を返して2回プレスしています」
●専用のプレス機がない場合、まな板で代用すればOK!
まな板や底が平らなフライパンを使って、体重をかけて押しつぶすといいでしょう。直径10cmの小さいサイズになればいいので、さほど難しくありません。
「今回のようにマサ粉を使ったメキシコ流のコーントルティーヤ作りでは、押し伸ばすのが基本。麺棒を使って丸く伸ばすよりも簡単です」
今回の生地の場合、サイズは1個20gが直径10㎝、厚さは1.5㎜~2㎜になればよい。
「今回のコーントルティーヤは直径10cmで小さく感じると思いますが、パクッとひと口で食べられるサイズがメキシコでは主流です」
5. 温めたフライパンで生地を焼く
フライパン(できれば鉄製がよい)を中火でしっかり熱し、プレスした生地をのせて焼く(油はひかなくてよい)。生地のまわりが少し浮いて色が変わってきたら、上下を返す。フライパンや家庭のコンロの火力によって異なるが、片面30秒~1分ほどが目安。
生地が自然と膨らんできたら(ただし膨らまないこともある)、ヘラやフライパン返しを押しつけて焼く。焼き色はしっかりつけなくてもよい。
6. 焼きあがったトルティーヤは蒸らして、冷めないように保温する
焼きあがったトルティーヤは、水でぬらしてかたく絞った布巾に挟んで(または保存袋に入れて)蒸らし、冷めたり乾いたりしないように保温する。
「焼きたてのトルティーヤはかたいですが、蒸らすとしっとりやわらかくなります。トルティーヤは温かいほうが断然おいしいので、食べる直前に焼きあがるのがベスト。もし作り置いて冷めてしまったら、食べる直前にフライパンやトースターで軽く温めてください」
●素揚げするだけ! トルティーヤ・チップスのレシピ
焼いたトルティーヤ1枚を三角形になるよう6等分に切り、180℃の揚げ油でカラッとするまで揚げて、油をきる。
「焼いたトルティーヤは味が落ちるので冷凍保存はおすすめしません。余ったら、トルティーヤ・チップスにするのがおすすめです」
【レシピ② タコスの具】豚肉をラードで煮込む、カルニタスのレシピ
続いて、本場メキシコの味に久松シェフのこだわりを反映した、タコスの具材「カルニタス」のオリジナルレシピをご紹介します。
メキシコではおなじみのうまみのある唐辛子ワヒーヨ(ワヒージョ)を使ったマリネ液(カルニタスマリナード)がポイント。ラード(豚の油脂)で煮込む(コンフィ)時間は最低1時間。時間に余裕があれば、2時間じっくりと煮込めばホロホロに仕上がります。

※写真はイメージです。一部、実際の量と異なります
<材料>(作りやすい分量)
- 豚肩ロース肉(塊)…500g ※3~4cmの厚切り肉でもよい
- 豚バラ肉(塊)…500g ※3~4cmの厚切り肉でもよい
- 塩…10g(肉の重量の1%)
- 【カルニタスマリナード】
・クミン…3g
・オレガノ…1.5g
・ブラックペッパー…3g
・ベイリーフ…1枚
・クローブ…1粒
・ワヒーヨ(ワヒージョ、乾燥)…30g
・にんにく…18g
・ワヒーヨの戻し汁…適量 - ラード(市販)…適量(500g目安) ※米油で代用可
- オレンジ(1.5㎝厚さに切る)…1個
- ライム(1.5㎝厚さに切る)…2個
「生のオレンジやライムを使うと、フレッシュ感と皮の苦みがプラスされるところが、僕のこだわりです。もし市販のジュースで代用する場合は、無糖のものがいいでしょう」
<作り方>
1. 【カルニタスマリナード】を作る
【カルニタスマリナード】のワヒーヨはヘタと種をとり、沸騰させた湯(分量外)をひたひたに注ぎ、5分ほどおいて戻す。戻し汁は捨てずにとっておく。
「皮膚が弱い人は、唐辛子を触るとき、必ずビニール手袋をしましょう」
【カルニタスマリナード】のすべての材料をミキサーに入れる。ワヒーヨの戻し汁はミキサーが回るくらい(100~150g目安)を加え、なめらかになるまで撹拌する。写真のようになればよい。
2. 豚肉を角切りにし、塩をふる
豚肉は3~4㎝角に切り、塩をふって軽く混ぜ合わせる。
「2種類の豚肉は、常温に戻す必要はありません。冷蔵庫から出してすぐに切ってOKですが、表面にドリップ(水分)が出ている場合は、臭みを除くためにしっかりとキッチンペーパーで拭き取ってから、塩をまぶしてください」
3. 豚肉の表面に焼き色をつける
大きいフライパン(今回は直径24~26㎝を使用)を用意し、サラダ油大さじ2(分量外)を入れて強火にかける。温まったら豚肉を重ならないように入れ、全面に焼き色をつける。一度に焼けない場合は、2、3回に分けて焼くとよい。
「豚肉を重ねないことがポイント。重なってしまうと蒸れてしまい、肉の臭みが残ってしまいます。表面を焼いて肉の臭みをとるのが目的なので、中まで火を通す必要はありません」
ボウルにザルを重ね、焼き終わった豚肉をあけて油をきる。
4. 焼いた豚肉をカルニタスマリナードに漬ける(マリネ)
3の豚肉はボウルに移す。【カルニタスマリナード】を加えて、しっかりと手で混ぜ合わせる。ラップをかけて常温に10分程度おき、スパイスやハーブの風味を肉に移す。
「このときも、皮膚が弱い人は、必ずビニール手袋をしましょう。カルニタスマリナードは多めに作って、好きな肉を漬け込んで(冷凍してもOK)から、焼くなどして使ってもいいですよ」
5. 漬け込んだ豚肉を鍋に移し、オレンジ、ライム、ラードを加えて煮込む(コンフィ)
4の豚肉が入る大きめの蓋つき鍋を用意する。マリネ液ごと豚肉を鍋に移し、オレンジとライム、ラードを加える。強火にかけ、ラードが溶けて煮立ってきたら、ふつふつ沸くくらいの火加減にし、蓋をして煮込む。豚肉にラードがひたひたにかぶっていなければ、適宜ラードを足す。煮込み時間は最低1時間、時間に余裕があれば2時間煮込む。
「蓋は必ずして煮込んでください。ラードが足りなければ、米油でもいいでしょう。お店では贅沢にバターで煮ることもあります。鍋底が焦げつかないように、ときどきヘラでかき混ぜながら煮込んでください。煮込んでいる間に、サルサ、ワカモレ、トルティーヤを作りましょう」
6. 煮込んだ豚肉をボウルに取り出す。鍋に残った煮汁は肉汁と油脂に分ける
煮込み終わった状態。豚肉はボウルに取り出し、オレンジとライムは取り除く。
鍋に残った煮汁は、上澄みに油脂、底に肉汁が分離しているので、まずは鍋をそっと傾けて、別のボウルや容器に油脂だけを取り出す(上写真)。鍋の底に残った肉汁は、豚肉が入ったボウルに移す(下写真)。
「取り分けた油脂は、表面にラップをかけて冷蔵庫で保存できます。スパイスやハーブ、肉の香りが移っている香り油として、野菜の炒め油やチャーハン、パスタオイルなどに使えます。また、メキシコではトルティーヤを焼くときに、生地の表面にこの油脂を軽く浸してから、トルティーヤを焼き、タコスの具材を包むシェフもいます。気になる人はお試しを」
7. 豚肉を食べやすい大きさにほぐす
豚肉を手やフォークを使ってほぐす。手でほぐす場合は、火傷するくらい熱いので粗熱がとれてから行う。
「丁寧に細かくほぐしてもいいですし、大きくほぐしても食感に変化が生まれて楽しいですよ」
【レシピ③ タコスのサルサ(ソース)】トマティージョで作るサルサ・クルーダ
本場メキシコで定番の緑色のソース、食用ほおずきのトマティージョを使った「サルサ・ベルデ(ヴェルデ)」のひとつ、「サルサ・クルーダ(生のサルサの意)」のレシピです。
「一般的なサルサ・ベルデは、テクスチャーがさらっとしていて、食べるときにタコスからたれてしまう。そこで今回ご紹介するレシピでは、サルサ・ベルデをペースト状にしてからアボカドを加え、粘性をプラスしました。酸味のあるさわやかな味わいがカルニタスにピッタリです」

※写真はイメージです。実際の量と異なります
<材料>(作りやすい分量)
- 【サルサのベース】
・トマティージョ(缶詰、水気をきる)…130g
・玉ねぎ(1.5㎝角に切る)…30g
・青唐辛子(ヘタをとる)…10g ※チューブのハラペーニョで代用可
・ライム果汁…70g
・パクチー(コリアンダー、香菜、シラントロ、茎ごと粗く刻む)…20g - 塩…2g
- アボカド(種を取り皮をむく)…1/2個(70g)
「生の青唐辛子は見かけたときに購入し、冷凍保存しておくのがおすすめです」
<作り方>
- 【サルサのベース】をミキサーに入れ、なめらかなペースト状に撹拌し、塩で味をととのえる。
- アボカドを加えてさらに攪拌する。
「塩の量はトマティージョの酸味の個体差によって、好みで調整してください。
このレシピでは多め(約240g)にできます。好きな油を加えてドレッシングしたり、焼いた野菜や茹でた野菜のディップにしたり、焼き魚や魚のカルパッチョのソースにしたりしても楽しめます」
●サルサのベースは冷凍保存しておくと便利
「このサルサはアボカドを使っているので、日が経つと色が悪くなっていきます。作り置きしたい場合は、アボカドを加える前の【サルサのベース】を保存袋に平らに入れて冷凍保存しておき、食べるタイミングでアボカドを加えるのがおすすめです。なお、アボカドを加えなくても美味しいですよ」
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【レシピ④ タコスの付け合わせ】アボカドで作るワカモレ
ワカモレのレシピはいろいろありますが、久松シェフは、まずは青唐辛子をアクセントにしたワカモレのベースを作ってから、アボカドを加える作り方が「味の調整がしやすく作りやすい」といいます。
最後に加えるアボカドは、細かめにつぶしたものと、ざっくり切ったものと2種類のテクスチャーを合わせることで、食べたときの食感に変化を生み出すのも、久松シェフならではのポイントです。
ちなみに、ワカモレはタコスの具材のひとつと思い込んでいましたが、久松シェフによると、あくまで前菜、付け合わせという存在なのだそう。もちろんタコスにのせて食べるのは自由です!
<材料>(作りやすい分量)
- アボカド…2個(140g)
- 【ワカモレのベース】…30g ※レシピは以下
- 【ワカモレのベース】(作りやすい分量)
・玉ねぎ(1.5㎝角に切る)…75g
・パクチー(コリアンダー、香菜、シラントロ、茎ごと粗く刻む)…25g
・ライム果汁…60g
・青唐辛子(ヘタをとる)…7.5g ※チューブのハラペーニョで代用可
・塩…10g
<作り方>
- 【ワカモレのベース】のすべての材料をミキサーに入れ攪拌する。
- アボカドは種をとって皮から外し、5㎜角に切る。
- ボウルにアボカドの半量を入れ、泡立て器やフォークなどで粗くつぶす。1.の【ワカモレのベース】は30gだけを加えて混ぜ合わせ、残りのアボカドを加え、ざっくり混ぜる。
●ワカモレのベースは冷凍保存しておくと便利
「ワカモレのベースは多め(約160g)にできるので、保存袋に平らに入れて冷凍保存(下写真)しておくと便利。食べたいときに、必要な分だけ割って、アボカドと混ぜて作るといいでしょう」
「手作りしたトルティーヤを180℃の油で素揚げして、トルティーヤ・チップスを添えてもいいですね。また、焦げ目をつけてじっくり焼いたセミドライトマト(レシピは以下)やフェタチーズを添えると見栄えが華やかになりますよ」
●トッピングに! ミニトマトのセミドライのレシピ
<材料と作り方>
ミニトマト適量はヘタを除いて横半分に切り、オーブンシートを敷いた天板に並べる。150℃のオーブンで20~30分ほど焼いて、セミドライにする。トマトから出た水分がなくなる程度が目安。
【実食】とうもろこしを感じる本場トルティーヤに、豚肉とさわやかなサルサが相性抜群!
焼き立てのトルティーヤにカルニタスをのせ、サルサ・クルーダを好みの量をトッピングし、パクチーを飾ったタコス。久松シェフより「親指と中指で挟んで包むように食べてみてください」とアドバイスに従い、いざ実食!
トルティーヤのとうもろこしの香りに包まれたカルニタスは、ラードで煮込んでホロホロになっていますが、豚肩ロース肉の赤身のうま味とバラ肉の脂の甘みが、フレッシュならではのオレンジとライムのさわやかな酸味によって驚くほど軽やかに感じられ、煮込み料理特有の重たい印象はまったくありません。
さらにサルサ・クルーダのベースになっているトマティージョのやさしい酸味と甘みが優しく包み込み、初夏を感じさせる、さわやかなタコスの味わいになっています。生地と具とサルサ(ソース)、というシンプルな構成ながらも、メキシコのストリートフードをフレンチ的な手法で洗練させた久松シェフならではの「メキシカン×フレンチ」を体験できる美味しさ!
付け合わせのワカモレも、久松シェフが目指すアボカドの食感のアクセント、リズムを存分に感じられるレシピで、既製品とはひと味違う面白さがあります。
ブレイク必至の「タコス」をホームパーティーで披露するなら、現地の味に忠実、かつモダンで洗練された久松シェフのレシピで、ゲストをもてなしましょう!
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取材協力/<No Code>久松暉典さん
1993年生まれ、大阪府出身。辻調理師専門学校卒業後、都内の数店のレストランで経験したのち、東京・六本木<Jean-Georges Tokyo>にて、シェフの米澤文雄氏に師事する。青山一丁目<The Burn>、広尾のNY発モダンメキシカン<OXOMOCO 東京店>のシェフを経て、米澤氏が独立した東京・西麻布<No Code>のスーシェフに着任。
2025年秋以降に米澤氏がサウジアラビア、台湾と海外へ拠点を移すため、後継者として2025年6月にシェフに就任。料理のテーマを新境地「メキシカンフレンチ」に一新し、紹介制を改め、予約を一般開放する。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
※オンラインストアでは商品によりギフト包装が出来ない場合がございます。詳しくは各商品ページの「ギフト包装」をご確認ください。
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