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2025.03.27

【プロ直伝】NY流チリコンカン本格レシピ。スパイス、粗挽き肉、黒ビールにコツあり!

チリコンカンのでき上がりイメージ

挽き肉とたっぷりの豆をスパイスで煮込んだ「チリコンカン(チリコンカーン)」はアメリカの家庭やレストランで大人気の料理です。ホットドッグやナチョスやタコスなどに合わせるなど、食べ方のアレンジも多数あります。

ちなみに、日本の多くの人が初めて食べるチリコンカンといえば、給食に出てくるチリコンカンですよね。子どもが食べやすいようにスパイスは控えめで、豆は日本でおなじみの大豆の水煮を使い、味付けは甘いケチャップが強めになっていることが多いようです。実はこれ、本格的なアメリカの味とはまったく異なるのです。

そこで今回は、東京・西麻布にレストラン<No Code(ノーコード)>を構えるシェフ、米澤文雄さんに、現地アメリカで親しまれているチリコンカンの味を再現できる本格レシピを教えてもらいました。

今回ご紹介するレシピは、米澤さんがニューヨークの三ツ星レストラン「ジャン・ジョルジュ」に勤めていた頃、仕事終わりに通っていたパブでよく食べていたという、思い出の味をイメージして作ってくれたオリジナルです。スパイス使いの巧みさで高く評価されている、米澤シェフならではのポイントが散りばめられているのでお見逃しなく!

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そもそもチリコンカンとはどんな料理?

チリコンカンとは、メキシコ風のアメリカ料理である「テクス・メクス料理」を代表する、挽き肉や豆、トマト、スパイスを煮込んだ豆料理のこと。19世紀頃にアメリカ・テキサス州で発祥したといわれています。スパイシーな風味とトマトの酸味が絡み合うことで、肉の旨味や豆の食感が際立つ味わいが特徴です。

アメリカの国民食として多くの人に愛されていて、カジュアルなレストランやパブのほか、スポーツ観戦やアウトドア、パーティーでも頻繁に食べられています。

●チリコンカンに使う豆は「レッドキドニービーンズ」

チリコンカンに使うレッドキドニービーンズ

日本の給食に出るチリコンカンでは、水煮の大豆を使うことが多いですが、本場のチリコンカンは、レッドキドニービーンズを使います。

レッドキドニービーンズは、インゲン豆の仲間。同じくインゲン豆の仲間である金時豆に似ています。比べてみるとレッドキドニービーンズの方が、形がやや細長く、皮が厚いため煮崩れしにくいという違いがあります。

「今回ご紹介するチリコンカンのレシピでは、レッドキドニービーンズが手に入らなければ、ひよこ豆の水煮で代用するといいでしょう。ただし、日本でおなじみの大豆の水煮で代用するのはおすすめしません。大豆特有のにおいと味わいがあり、相性がよくありません」

アメリカ本場のチリコンカンの食べ方とは?

チリコンカンの食べ方はさまざま。米澤さんがアメリカでの食べ方を教えてくれました。

  • サワークリームやトルティーヤチップスを添えて、つまみとしてそのまま食べる
  • ナチョスの具にする(トルティーヤチップスにかけ、ワカモレ、トマト、チーズなどをのせる)
  • タコスの具にする(コーントルティーヤにワカモレ、トマト、チーズなどとともに挟む)
  • ブリトーの具にする(フラワートルティーヤに野菜、チーズ、肉、ライスなどとともに巻く)
  • ライス、パスタ、フライドポテトにかけて食べる
  • ホットドッグの具にする(チリソースのようにかける)

そのまま食べたり、具としてかけたり、ソースのように使ったり…。チリコンカンはいろいろなシーンに合わせた食べ方で楽しめる料理なのですね。

本格スパイシーなチリコンカンの3つのポイント

さあ、お待たせしました。続いて、レシピのポイントを見ていきましょう。

チリコンカンは豆料理なので「豆」の使い方にポイントがあると思いきや、意外にも「スパイス」「肉」「黒ビール」にポイントあり! 本場の味を知る米澤さんならではのこだわりポイントばかりです。

【ポイント①】本場の味に近づける、決め手のスパイスとチポトレの辛さは欠かせない! 隠し味にはトマトペーストを

今回のチリコンカンのレシピで使う、辛みの決め手になる調味料チポトレアドボ、4つのスパイス、隠し味のトマトペーストについて解説します。

チリコンカンはスパイス煮といえるほど、たっぷりのスパイスを使う料理です。その配合こそがシェフの腕の見せ所! とくに本場の味に近づけるために外せないのは、チリコンカンの辛みを支える「チポトレアドボ」です。

①チポトレアドボ

チポトレアドボとは、熟したハラペーニョ(メキシコ産唐辛子)を乾燥・燻製させた「チポトレ(チポトレペッパー、チポトレ唐辛子とも)」を、トマト、玉ねぎ、酢などをベースにした「アドボソース」に漬けた(煮る場合もあり)スパイシーな加工調味料のこと。

ジンワリとあとから追い込んでくる辛みが、アメリカのパブの味を再現するポイントです。チリコンカンには煮込むタイミングで加えます。

チポトレアドボ缶、チポトレペッパー缶、チポトレペッパーソース、チポトレチリアドボソース缶、チポトレペッパーアドボといった商品名でも販売されています。初めて知る人が多いと思いますが、ぜひ輸入食品専門店や通販で手に入れて使うことをおすすめします!

②クミンシード

カレーによく使われる芳醇でエスニックな香りがする、粒状のスパイス。香りをしっかり立たせるために、最初にじっくり炒めて(テンパリングする)油に香りを移して使うのがコツ。チリコンカンの味に奥行きを出します。

③チリパウダー

チリ(唐辛子)にクミン、オレガノ、クミン、クローブなど複数のスパイスをブレンドした、辛みのあるミックススパイス(配合はメーカーによって異なります)。チリコンカンには煮込むタイミングで加えます。

④スモークパプリカパウダー

一般的なパプリカパウダーに比べて、スモーキーな香りが強く、うま味もあるスペイン発の注目のスパイスです。タパス(小皿料理)の仕上げにかけたり、グリルの下味や煮込みに加えたりします。チリコンカンには煮込むタイミングで加え、味わいに深みを出します。

⑤ドライオレガノ

トマトと相性が良い爽やかな香りを添えるドライハーブ。地中海沿岸を原産で、パスタやピザなどのイタリア料理、ギリシャなど地中海料理、タコスなどメキシコ料理によく使われます。和名「ハナハッカ」、別名「ワイルド・マジョラム」とも呼ばれます。チリコンカンには煮込むタイミングで加えます。

⑥トマトペースト

トマトペーストとはトマトを何倍にも凝縮させたもので、強いうま味とコクが特徴です。ラタトゥイユ、カスレ、パエリア、ビーフシチューなどにも、プロはよく使います。チリコンカンには煮込むタイミングで加えます。

【ポイント②】牛と豚の厚切り肉を粗く切った、手作り合い挽き肉で食べ応えをアップ!

厚みのある豚肉と牛肉を1cm角にカットして、手作りの合い挽き肉にして使うことで、チリコンカンの食べ応えがグッと増します。豚肉の甘みと牛肉のうま味とコクをどちらも活かしたいので、1:1の配合にしました。さらに、ベーコンも加えることで香りやうま味に奥行きを出します。

なお、市販の粗挽きの挽き肉で代用する場合、市販品は牛7:豚3など配合が偏っていることが多いので、1:1の配合に調整するといいでしょう。

【ポイント③】コクと甘味をもたらす黒ビールで、本場の味に近づける!

アメリカのチリコンカンに入れる定番食材といえば黒ビールです。コクや甘味があるのでアメリカではBBQソースでも使われていて、今回も深みを出すために外せません。肉を炒めた後に黒ビールを加え、煮込んでアルコールを飛ばして調理します。

米澤さんは、黒ビールは必ず「ギネスビール」を使うといいます。もともとアメリカのパブ文化で成熟した料理ということもあり「ギネス以外は考えられない」そうです。もちろん、手に入りやすい国産黒ビールでも作れますが、手に入るのであれば、ぜひギネスビールを使用して本場の雰囲気を味わってください。

【シェフ直伝】本格チリコンカンのレシピ

今回使う材料一覧

※写真はイメージです

<材料>(8人分)

  • レッドキドニービーンズ水煮…200g ※ひよこ豆水煮で代用可
  • 豚肩ロース肉(または豚もも肉)…200g ※1cm厚さのとんかつ用や塊肉を切ってもよい
  • 牛肩肉(または牛もも肉)…200g ※1cm厚さのステーキ用や塊肉を切ってもよい
  • 厚切りベーコン…150g
  • クミンシード…3g(約小さじ1)
  • 玉ねぎ(5mm角に切る)…1個分(約200g)
  • にんにく(芽を除き粗みじん切り)…2片分(約10g)
  • ピーマン(ヘタ、ワタ、種を除き5mm角に切る)…2個分(約45g)
  • セロリの茎(5mm角に切る)…1本分(約180g)
  • 黒ビール(あればギネスビール)…1本(250~350ml)
  • トマト水煮…250g 
  • トマトペースト…5g
  • チポトレアドボ…60g ※辛さが苦手な場合、ケチャップ120gで代用可
  • チリパウダー…25g(約大さじ3と大さじ1/2)
  • スモークパプリカパウダー…4g(約小さじ1強)
  • ドライオレガノ…3g(約大さじ2)
  • サラダ油…大さじ3
  • 塩、こしょう…各適量

「豚肩ロース肉は脂が多いので、お好みで脂の少ない豚もも肉にするのもいいでしょう。牛肉は、脂が少ない牛肩肉を使っています。脂が少ない牛もも肉でも構いません」

<作り方>

1. 豚肉、牛肉、ベーコンを切る

肉は粗目にカットしていく

豚肉、牛肉は1cm角に、ベーコンは8mm角に切る。肉にスジがある場合は、包丁で叩いて繊維をつぶしながら切るとよい。

「肉は食べ応えが欲しいので、大きめに切ることがポイントです。ベーコンは、食感よりも味に深みを出すために入れるので、豚肉や牛肉よりも小さくカットします」

2. クミンシードを油で加熱し香りを出す

クミンシードを鍋で炒める

大きめのフライパン鍋(今回は直径24cm、深さ10cmを使用)にサラダ油大さじ2とクミンシードを入れ、強火(※)で加熱する。

「クミンの香りが立ってきてすぐに火を弱めるのではなく、クミンの香りが立ったあとに、パチパチと弾けるまで強火のまま待ち、しっかりテンパリングしてください。クミンが弾け飛ぶこともあるので、やけどに注意してください」

※強火とは、フライパンの底に火が当たっている状態です。ただしフライパンの底面から火が側面にはみ出さないよう調整してください。

3. 香味野菜を順に加え、その都度しっかり炒める

セロリとピーマンを加える様子

パチパチと弾けるまでクミンを炒めたら、玉ねぎとにんにくを加える。強火のまま玉ねぎが透き通るまでしっかり炒めたら、ピーマンとセロリ(写真)、塩ひとつまみ(小さじ1/4程度)加え、さらに強火のまましっかりと炒める。

「野菜に塩を軽くふることで、水分が出やすくなり、早く炒めることができます」

炒め終わった香味野菜

セロリや玉ねぎが茶色に色づいてきたら中火に弱める。水分を飛ばすように炒め続け、写真のようにピーマンとセロリを加えたときから1/3量に減ったら火を止める。

「怖がらずにしっかりと炒めることで香味野菜に焼き色がつき、これがうま味になります。野菜は多い方がおいしいので、ぜひたくさん入れてください。ピーマンは彩り野菜としてではなく、香味野菜として入れています」

4. 肉とベーコンをしっかりと焼きつけて、うま味を引き出す

肉をフライパンで焼く

別の大きめのフライパン鍋(今回は直径24~26㎝を使用)にサラダ油大さじ1を入れて強火で温める。フライパンから煙がうっすら出るくらいまでしっかりと温まったら(※)、豚肉、牛肉、ベーコンを入れる。強火のまま触らずに加熱し、片面に焼き目がついたら上下を返す。

「肉にしっかりと焼き目をつけたいので、洗い物が増えてしまいますが、別のフライパンで肉を焼き、あとで3のフライパン鍋に合わせる方法がおすすめです。別のフライパンがなければ、3のフライパンから香味野菜をいったん取り出して、肉を焼いてください」

※フッ素樹脂加工のフライパンには、強火での空焚きや調理を推奨していないものがあります。ご確認のうえお使いください。

焼き終わった肉

写真のように、全体にしっかり焼き色がつくまで強火で焼きつける。

「肉から出てくる水は肉の水分なので、しっかりなくなるまで加熱してください。ここでつけた焼き目がうま味になり、煮込んだときのコクになります。このとき焼き目がつくまえにひんぱんに肉を触ったり、フライパンをゆすったりしないのがポイントです。フライパンの温度が下がってしっかりと焼き目がつきません。つい肉に触りたくなりますが、ここはあえて我慢です」

5. 焼き目をつけた肉に黒ビールを加える

焼いた肉にギネスビールを入れる

肉全体にしっかりと焼き目がついたら、黒ビールを加える(アルコールに引火しないように注意する)。フライパン鍋についた肉の焦げを洗い流すように混ぜる。強火で煮立たせ、アルコールの香りがしなくなったら、火を消す。

「アルコールを飛ばすため、煮込むタイミングではなく肉を炒めたあとに黒ビールを加えます。黒ビールはメーカーによって1本の容量が異なりますが、最低250mlは入れるようにしてください」

6. 3の香味野菜のフライパン鍋に、5の肉、トマト類、チポトレアドボ、スパイス、豆を加えて煮込む

野菜の入っている鍋に肉と材料を入れる

3の香味野菜が入ったフライパン鍋に、5の肉を加えて混ぜる。トマト水煮(大きければ手でつぶす)、トマトペースト、チポトレアドボ(大きいものがあればヘラでつぶす)、チリパウダー、スモークパプリカパウダー、ドライオレガノを加えて混ぜる。汁気をきったレッドキドニービーンズを加えて混ぜ、強火にかける。煮立ったら弱めの中火にする。

5で加えた黒ビールの量や煮立たせ具合によるが、全体の水分量が少ないと感じたら、水100ml(分量外)を目安に加えてから煮るとよい。

「スパイスは最後に加えて煮ることで味をなじませます。煮込む時間によって味が大きく変わることはないので、水分が飛ぶまで煮込んでOKです」

野菜の入っている鍋に肉と材料を入れる

写真のように水分が飛ぶまで10~15分煮込んだら、味見をする。好みで塩、こしょうを加える。皿に盛りつけ、刻んだイタリアンパセリやパクチーなどをのせてもよい。好みでトルティーヤチップスを添える。

【保存方法】チリコンカンは多めに作っても冷凍できる!

「煮込み料理は多めに作ったほうが美味しいので、今回のレシピはでき上がりの量が多めです。食べきれなかったチリコンカンは、完全に冷ましてから小分けにしてラップで包み、密閉できる保存袋に入れて空気を抜き、冷凍保存するといいでしょう」

【実食】辛みとスパイスが複雑に融合した、本場のチリコンカン。パーティー料理にもおすすめ!

ナチョスと合わせてチリコンカン実食

刺激的なスパイスの香りが食欲をそそる、本場アメリカ仕込みのチリコンカンが完成しました。口に運ぶと、豆のホクホク感と大きめに切った肉のゴロゴロ感がマッチし、食べ応えも抜群!

肉と野菜からたたうま味を感じていると、あとからチポトレの辛みがジンワリと追いかけてくる…。スパイシーという言葉には収まらない、香りとうま味が複雑に重なり合った奥行きがあり、食べる手が止まらなくなる初めての美味しさ。ライムを絞ったビールやテキーラで流し込みたくなります!

「仕上げにサワークリームを添えても美味しいですよ。ナチョスの具やパスタソースにするのが定番ですが、ご飯とチーズを合わせてドリアにするのもおすすめ。このチリコンカンはスパイシーな大人の味わいですが、わが家の高校生と中学生の子どもたちは、タコスの具にして食べるのが大好きです」

一度にたくさん作れて冷めても美味しい、パーティー料理にもぴったりな本場のチリコンカン。ぜひいろんな食べ方を試して、楽しんでください!

取材協力/<No Code>米澤文雄さん

米澤文雄シェフ

2002年に渡米し、ニューヨークの三つ星フレンチレストラン「Jean-Georges(ジャン・ジョルジュ)」で腕を磨き、アジア人初のスー・シェフに就任。帰国後は東京・赤坂「Jean-George Tokyo」の料理長など国内の名店で料理長を歴任し、2022年東京・西麻布にオーナーシェフを務めるレストラン「NoCode」をオープン。

「ジャンルに縛られない新しい食のスタイル」をテーマに、独自のアプローチで世界の食文化を融合させた料理を提供しているほか、減少する海洋資源や医療福祉といった社会課題についても積極的に関わり継続的に活動を続けている。 

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撮影:菅井淳子
文:オフィスK2M(江六前一郎)

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