2025.01.21
【プロ直伝】焦がしバター香る「フィナンシェ」プレーン&チョコ味レシピ。パウンド型でも焼ける!
バターの芳醇な香りと、リッチな味わいを堪能できる、フランスの伝統的な焼き菓子「フィナンシェ」。 洋菓子店の定番商品とも呼べる、幅広い世代から愛されているスイーツです。
お店で買って食べるのも楽しいですが、自宅で手作りできたらいつものティータイムが特別な時間になるはず! とはいえ、お店のような仕上がりを目指すなら、難しいテクニックや専用の型が必要になりそう…。
「フィナンシェは、バターの焦がし具合さえ気を配れば大丈夫。あとは、コツらしいコツはないくらい簡単に作れます。材料も少ないので、お菓子作り初心者でも挑戦しやすいですよ」
そう話すのは、WEB FOODIEで紹介した、スコーンやクッキーなどの焼き菓子レシピが大好評の、お菓子教室<Le Petit Citron(ル・プティ・シトロン)>を主宰する西山朗子さんです。
「型についても『フィナンシェ専用の型を持っていないと焼けない!』と思いがちですが、パウンド型でも焼けるので安心してください。今回はフィナンシェ専用の型とパウンド型、両方のレシピをご紹介しますね」
さらに、チョコレート生地にフランボワーズを加えたアレンジ、「ショコラフィナンシェ」のレシピも教えてもらえるというので、楽しみです!
目次
まずはフィナンシェとはどんなお菓子なのか、レシピのポイントをチェックする前に知っておきましょう。
フランスの伝統菓子フィナンシェとは。マドレーヌとの違いは?
フィナンシェは17世紀にフランスで発祥した焼き菓子。「お金持ち」「金融家」を意味し、金の延べ棒や金塊を模した長方形の小さな型で焼かれるのが一般的です。「豊かさ」をイメージさせるので、バレンタインデーなどのプレゼントにもふさわしいお菓子といえます。
主な材料は、たっぷりのバターと粉末のアーモンド(アーモンドプードル、アーモンドパウダー)、卵白、薄力粉、砂糖。材料はシンプルながら、バターは焦がして香ばしさを引き出してから加える作り方が特徴で、バターとアーモンドの芳醇な香りが濃く、しっとりした食感とリッチな味わいです。焼きたては外側がカリッと香ばしいのも、フィナンシェならでは。
卵白だけで作るお菓子を知っておくと、「卵の卵黄だけ使って、卵白は冷凍保存しているけど使い道に困っている…」といったときにもぴったりです。
●フィナンシェと似ている焼き菓子、マドレーヌとの違い
ちなみに、フィナンシェと似たようなフランスの焼き菓子にマドレーヌがあります。フィナンシェと同じように、材料にはバター、卵、薄力粉、砂糖を使いますが、フィナンシェと違って、溶かしバター(焦がさない)、全卵、ベーキングパウダーを使用します。焼く前に生地を寝かせる作り方も特徴で、ふんわりとした食感の軽い味わいに仕上げます。粉末のアーモンドを加えるレシピも見かけますが、フィナンシェに比べると少ない割合といえます。
外カリッ、中しっとり♡ 「フィナンシェ」を風味よく仕上げる4つのポイント
それでは、バターの香ばしさを存分に引き出したフィナンシェ作りのポイントをチェックしていきましょう!
【ポイント①】味の決め手はノワゼットバター。バターをほどよく焦がし、ヘーゼルナッツのような風味を引き出す!
フィナンシェの味の決め手となるのが、焦がしたバター。適切に焦がしたバターはヘーゼルナッツのような風味がすることから、ノワゼット(フランス語でヘーゼルナッツの意)バター、またはブールノワゼットと呼ばれます。
焦がし足りないと風味が引き出せず、かといって焦がしすぎると焦げ臭く、苦みが出てしまうので見極めが肝心! 焦げはじめたらアッという間に状態が変化するので、ベストなタイミングがきたら水を入れたボウルに鍋底を浸し、それ以上加熱がすすまないようにします。詳しくはレシピのなかで解説していきます。
【ポイント②】アーモンドプードルは鮮度のよいものを使う。焼き上がりの風味が強くなる!
もう一つの味の決め手となるのが、たっぷりのアーモンドプードル(アーモンドパウダー)。粉末状のアーモンドで、薄力粉の約倍量も使うことでしっとりとした食感と芳醇な香りを生みます。
粉末状なので空気に触れて酸化しやすく、未開封でも鮮度が落ちるもがとても早い食材です。鮮度が落ちるとせっかくの香りが飛んでしまうので、なるべく新しく鮮度のよいものを購入し、早めに使いましよう。
アメリカ・カリフォルニア産のアーモンドを100%使用したアーモンドプードル。
「今回は皮無タイプを使いましたが、皮つきタイプを使っても美味しく焼けます。余ったアーモンドプードルは保存用密閉袋に入れ(大容量の場合は小分けにする)、空気を抜いて密閉し、冷蔵庫、もしくは冷凍庫で保存して早めに使いきりましょう」
※取扱い:日本橋三越本店 新館地下2階 富澤商店
【ポイント③】生地は泡立てず、ゆっくり混ぜて乳化させる。焼き上がりがパサつかない!
生地を混ぜる際は泡立て器を使いますが、シャカシャカと気泡が立つように混ぜるのは、フィナンシェの場合は避けましょう。焼き上がりの生地がパサつく原因になってしまいます。
グルグルと円を描くよう、ゆっくり混ぜるとバターの油分と卵白の水分が乳化(本来は混ざり合わない油分と水分が混ざり合うこと)し、キメ細かく、ふんわり、しっとりとした食感に仕上げることができます。
【ポイント④】フィナンシェの型は連結タイプと個別タイプどちらを使ってもOK。パウンド型で大きく焼けば、さらにしっとり仕上がる
今回使用したフィナンシェ型。熱伝導率に優れたアルミ製の型にフッ素樹脂加工が施してあるので、生地がくっつきにくいのが特徴。サビにくいので長く使用ができます。
フィナンシェの型には今回使用した個別タイプの他に、6個取りや8個取りなど連結された天板タイプがあります。どちらをお使いいただいてもよいですが、個別タイプは使用するオーブンの天板のサイズに合わせて個数を揃えれば、一度に多く焼くことが可能(一般的なオーブンの天板サイズの場合)。重ねて収納ができ、場所を取りません。
※取扱い:日本橋三越本店 新館地下2階 富澤商店
また、フィナンシェはパウンド型に生地を流し入れて、大きく焼くこともできます。フィナンシェ型で焼くよりもしっとりと焼き上がり、こっくりとした味わいになります。
フィナンシェは一般的なパウンドケーキよりも味わいがリッチなので、切り分けるときは8㎜程度の薄めにするのがおすすめ。味のバランスがよくいただけます。
「基本のフィナンシェ」のレシピ。バターとアーモンドの風味抜群、口溶けよし!
<材料>(容量40ml、長方形フィナンシェ型6個分)
- バター(食塩不使用、約10等分に切り分ける)…75g ※発酵バターで代用可
- 卵白…60g
- グラニュー糖…35g
- 【A】
・アーモンドプードル(アーモンドパウダー)…40g
・薄力粉…20g
・粉糖…25g
「発酵バターとは原料となるクリームを乳酸菌で発酵させたもの。一般的なバターに比べ、コクが深く、風味が強いのが特徴。一般的なバターで充分風味豊かに仕上がりますが、より強い風味がお好きなら、発酵バターで作るのがおすすめです」
<下準備>
・【A】のアーモンドプードル、薄力粉、粉糖は合わせて、粉ふるいでふるっておく
・オーブンを200℃に予熱しておく
・バターを加熱する小鍋が入る大きさのボウルに、冷却用の水を入れておく
<作り方>
1. ノワゼットバターを作る。小鍋にバターを入れ、うす茶色になるまで加熱し、鍋ごと水につけてからこす
小鍋にバターを入れ、弱めの中火にかける。バターが溶けたら弱火にし、ときどきゴムベラで混ぜる。
「最初は上写真のように大きな泡が立ち、低めの音がします。徐々にバターの水分が飛び、下写真のように気泡が小さくなり、高音になっていきます」
より細かい気泡がワーッと上がってくるようになり、写真のようなうす茶色になったら、すぐに準備しておいた水を入れたボウルに鍋ごと浸す。
余熱で焦げがすすまないよう、ゴムベラで混ぜながら鍋の温度を下げる。
「ノワゼットバターは60℃程度の温かい状態で生地に加えたいので、冷まし過ぎないようにしましょう」
別のボウルに、厚手のキッチンペーパーを敷いたこし器(またはザル)を重ね、ノワゼットバターを流し入れる。
キッチンペーパーを内側に畳み、ゴムベラを押しつけてノワゼットバターをこす。
「これで使用したバターの70~75%の量になります(今回は49~53g)。焦げカスが含まれているので、必ずキッチンペーパーを使ってこしましょう」
ノワゼットバターが完成。室温が低い場合は湯煎などにかけ、約60℃を保つ。
「写真がバターの香ばしい風味が存分に引き出された理想的な色味です」
「ノワゼットバター(焦がしバター)」加熱の失敗例
参考までに、ノワゼットバター(焦がしバター)の加熱が足りない状態と、加熱し過ぎた状態を比較した写真がこちら。
「加熱が足りていないと香ばしさに欠け、反対に加熱し過ぎると焦げ臭く、苦みが出てしまいます。加熱が足りない場合はそのまま使ってください。味わいは軽くなりますが、充分美味しくいただけます。加熱し過ぎた場合は、もったいないですが、新たに作ることをおすすめします」
2. 生地を作る。ボウルに卵白とグラニュー糖を混ぜる。合わせてふるっておいた【A】を加え、すり混ぜる
ボウルに卵白とグラニュー糖を入れ(上写真)、とろりとした状態になるまで、泡立て器でやさしく卵白を溶きほぐす(下写真)。
合わせてふるっておいた【A】を加える。
泡立て器でグルグルと円を描くよう、ゆっくりとすり混ぜる。
「泡立てないよう、ただグルグルと混ぜればOKです」
3. ノワゼットバター1/4量を加え混ぜてから、残りを加えて全体がなじむまで混ぜ合わせる
粉気がなくなったら、1の温かい状態(約60℃)のノワゼットバター1/4量を加え(上写真)、同様にグルグルとゆっくり混ぜる(下写真)。
「温かいバターを入れた容器も熱くなっているので、持つときは軍手などをして作業をすると安心です。バターが冷めてしまった場合は、湯煎にかけて約60℃に温めてから加えてください」
バターの筋が消えて全体がなじんだら、残りのノワゼットバターをすべて加える。
同様にグルグルとゆっくり混ぜ、バターの筋が消えて全体がなじんだら生地の完成。
「バターの油分と卵白の水分が乳化し、とろりとした状態になります」
4. 型の内側全体に、指でバターを塗り広げる
型にバター(食塩不使用、分量外)を塗る。少量を型にのせ(上写真)、指で型の内側全体に塗り広げ(下写真)、オーブンの天板にのせる。
「バターを塗ることで生地の型離れがよくなり、より風味も増します。ハケを使ってもよいですが、指を使うと四隅までしっかり塗り広げることができます」
5. 絞り袋に生地を入れ、型に生地を均等に流し入れる
3の生地を、型に均等に流し入れる。
「スプーンを使うやり方でもOKです。私は口金をはめない絞り袋を使っています。慣れると楽ですし、量が多い場合はこの方が圧倒的に早いのでおすすめです。絞り袋を使うときは、絞り口に指を添えておき、生地を流し終えたら写真のように指で絞り口をギュッと挟み、それ以上入らないようにするのがポイントです」
6. 200℃に予熱したオーブンで5分焼き、180℃に落として10~12分焼く
200℃に予熱したオーブンに入れて5分焼き、180℃に落として10~12分焼く。10分ほど焼いたところで焼きムラを防ぐために天板の向きを入れ替え、焼き上がったらケーキクーラーにのせて型ごと冷まし、粗熱がとれたら型から外す。
「生地の縁が香ばしく色づいた状態になれば焼き上がりです」
「基本のフィナンシェ」をパウンド型で作るときの焼き時間
フィナンシェは専用の型がなくても、パウンド型でも焼くことができます。型が変わると、焼き時間が変わってくるのでご紹介しましょう。
▼細めのパウンド型(底面50×175×H40㎜)の焼き時間
生地の量が少なめなので、細めのパウンド型で焼くのがおすすめです(上写真)。
【基本のフィナンシェと同じ生地の量で焼く】
焼き時間は200℃で10分、180℃に落として20分、さらに160℃に落として10分。25分ほど焼いたところで天板の向きを入れ替える。
▼一般的なパウンド型(底面80×170×H60㎜)の焼き時間
一般的なサイズのパウンド型で焼く場合、生地の量を増やすといいでしょう。1.5倍量はカリッとした食感が強く、2倍量はしっとり感が強くなります。
【生地を1.5倍量で焼く】
焼き時間は200℃で10分、180℃に落として20分、さらに160℃に落として10分。25分ほど焼いたところで天板の向きを入れ替える。
【生地を2倍量で焼く】
焼き時間は200℃で10分、180℃に落として30分、さらに160℃に落として15分。30分ほど焼いたところで天板の向きを入れ替える。
【実食】「基本のフィナンシェ」1日おくとより美味しい! 余った卵白の活用にもおすすめ
焼きたてフィナンシェは外側がカリッと香ばしく、バターとアーモンドの香りがダイレクトに感じられます。翌日いただいてみると、全体にバターがなじんでしっとり感が増し、バターとアーモンドの香りはおだやかになり、より一体感のある味わいに!
一日でこんなにも違う? と思うほどの変化で、焼いている時に漂う甘いバターの香りの幸福感を含め、手作りおやつの良さを再確認できました。
フィナンシェは材料がシンプルなので、バターやアーモンドパウダーの種類を変えて違いを楽しむことも簡単。何より卵白が余って困っていたので、これからはフィナンシェに生まれ変わらせることができるのは嬉しい限りです。みなさんもぜひ作ってみてください!
【アレンジ】「ショコラフィナンシェ」のレシピ。甘酸っぱいラズベリーがたっぷり♡
基本のフィナンシェの材料に、ココアパウダーとラズベリーを加えるだけで作れます。甘酸っぱいフレッシュラズベリーを入れ、ほろ苦いチョコレート生地とのマリアージュを楽しめる大人な味わいに。
<材料>(容量40mlの長方形フィナンシェ型6個分)
- バター(食塩不使用、約10等分に切り分ける)…65g
- 卵白…60g
- グラニュー糖…35g
- 【A】
・アーモンドプードル(アーモンドパウダー)…40g
・薄力粉…15g
・ココアパウダー…8g
・粉糖…30粉糖 - ラズベリー(冷凍、または生)…60g
<下準備>
・【A】のアーモンドプードル、薄力粉、ココアパウダー、粉糖は合わせて、粉ふるいで2回ふるっておく
「ココアパウダーは混ざりにくいので、2回ふるってください」
・オーブンを200℃に予熱しておく
<作り方>
基本のフィナンシェの作り方1~4と同様にする。作り方5で型に生地を流し入れたあと、ラズベリーを1/6量ずつ入れ、作り方6と同様に焼く。
フィナンシェの保存期間・保存方法について
フィナンシェの保存には、3通りの方法があります。以下の【保存方法】①<②<③の順に密閉度が高く保存性がアップするので、プレゼントするときの参考にしてみてください。
【保存期間】
基本のフィナンシェなど具を入れないタイプは常温で(夏場は冷蔵庫保存)保存。ラズベリーなどフレッシュフルーツを入れたタイプは冷蔵庫で保存してください。
【保存方法①】【保存方法②】は3日程度の保存が可能です。【保存方法③】のように脱酸素剤を入れて密閉すると14日ほど保存が可能です。
【保存方法①】保存容器や密閉袋にまとめる
乾燥しないよう密閉容器、または密閉袋に入れる。すぐに食べ切る場合はこの方法で。
【保存方法②】袋に小分けにする
製菓用の小袋に1個ずつ小分けして保存。【保存方法①】よりも乾燥が防げて、酸化等による風味の劣化も防げます。
【保存方法③】脱酸素剤入りの袋に小分けにする
脱酸素剤とともに脱酸素剤に対応した袋(ガス袋)に入れて保存。密着シーラーを使って密封すると無酸素状態になり、14日程度の保存が可能。上写真のように1個ずつ小分け保存すれば、プレゼントにも最適です。
※取扱い:日本橋三越本店 新館地下2階 富澤商店
レシピ/西山朗子さん
お菓子研究家。東京・二子玉川で「Le Petit Citron(ル・プティ・シトロン)お菓子教室」を主宰。生徒からは「あっこちゃん先生」と呼ばれ親しまれている。
パリ「ベルエ・コンセイユ」でお菓子作りを学び、「ピエール・エルメ」でスタジエを務める。日本橋三越のフランス展や三越伊勢丹オンラインストアにて、フランス地方菓子の販売(不定期)も行っている。
著者『世界一かんたんな手作りお菓子』(主婦の友社)、『生地を冷凍しておける かんたん焼き菓子レシピ』(マイナビ)、『フランスの季節を楽しむお菓子作り』(エイ出版社)など。
@akiko_citron商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、日本橋三越本店 新館地下2階 富澤商店にてお取扱いがございます。
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