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2024.10.30

【本格】韓国料理店のゆで豚「ポッサム」レシピ。ゆで方、タレ、切り方にプロの技あり!

ポッサムの出来上がりイメージ

ポッサムとは、しっとりとゆでた豚肉の塊を切り分け、キムチとともに葉野菜で包んでいただく韓国伝統料理。似たような豚バラ肉の料理にサムギョプサルがありますが、豚バラ肉を焼いて食べる料理です。その点、ポッサムは同じ豚バラ肉をゆでて食べる料理なので、余分な脂がゆで汁に落ち、さっぱりといただけることから、幅広い世代のあいだで人気が高まっています。

大皿に盛られたゆで豚、キムチや野菜は色とりどりで見栄えも豪華。あらかじめ作っておけるので、パーティーのおもてなし料理にもピッタリですよね! そこで今回は、伊勢丹新宿店の<韓国料理 韓食 古家(こが)>の大武久人さんに教えてもらいました。

一般的にポッサムとは、ゆでた豚肉を切り分け、葉野菜やキムチ、タレ(サムジャン)など添えるイメージですが、<古家>では、ゆで豚に甘酸っぱいタレをからめて仕上げています。このオリジナルの味を目当てに訪れるお客様も多いと聞いて、期待が高まります!

<古家>のレシピ一覧はこちら>>

まずは<古家>ならではの、ポッサム作りのポイントから押さえていきましょう!

ゆで豚を美味しく仕上げる!「ポッサム」3つの古家流ポイント

【古家流ポイント① ゆで方】豚バラ肉は、香味野菜、りんご、味噌、焼酎と一緒にゆでる。酵素の作用でやわらかくなり、理想的な食感になる!

ポッサムにおすすめの豚肉は、バラやロース、肩ロースなど、適度に脂がのった部位の塊。もっとも人気の部位はバラ肉で、脂肪と赤身が三層に折り重なっていることから「三枚肉」とも呼ばれ、脂の甘みが堪能できます。

<古家>のポッサムでは、豚バラ塊肉をゆでるときには、玉ねぎ、長ねぎ、りんご、にんにく、しょうが、韓国の味噌や焼酎など、いろいろな食材と調味料を加えます。その理由は、食材に含まれる酵素が肉質をやわらかくしてくれるからです。

韓国味噌のイメージ

<古家>ではポッサムの豚肉をゆでるとき、「テンジャン」と呼ばれる韓国の味噌を加える。日本の味噌とは製法が異なり、クセが強め。手に入らなければ、日本の味噌で代用してよい

【古家流ポイント② 仕上げ方】ゆでた豚肉は、梅エキス入りの甘辛いタレを煮からめることで、香ばしさや深みがある味わいに!

一般的にポッサムとはゆでた豚肉を切り分け、葉野菜やキムチ、タレ(サムジャン)などを添えて完成というイメージですが、<古家>ではゆで豚にもうひと手間かけて、深みのある美味しさに仕上げます。

ゆでた豚肉は15分ほど休ませ、フライパンで甘酸っぱいタレをからめてから切り分けます。タレはカラメル状になるまでしっかり加熱するので、豚肉にタレの香ばしさも加わります。

タレには韓国料理に欠かせない「梅エキス」を使っています。青梅を砂糖に漬けて寝かせたもので、日本の梅シロップと似た甘酸っぱい味わいです。手に入らなければ、日本の梅シロップや水飴、はちみつで代用してください。

梅エキスのイメージ

梅エキス。「メシルチョン」とも呼ばれ、韓国では砂糖の代わりとしてキムチやナムル、煮込み料理など、あらゆる料理に使われる。水で割った健康ドリンクも一般的

【古家流ポイント③ 切り方】豚肉は繊維を断って切り分ける。歯切れがよくなり、よりやわらかく感じられる!

切る方向のイメージ

一般的に豚肉の塊を薄切りにする場合、片端から切っていませんか? <古家>のポッサムは切り方にもこだわっていて、肉の繊維を断つように薄切りにしていきます。

肉には長い繊維が一定方向に走っています。これは筋肉を組織する筋繊維と呼ばれるもので、1本1本はごく細いものの束状なので頑丈です。そのため、繊維に沿って切り分けると歯切れが悪かったり、かたく感じられたりします。

ゆで豚を切り分ける際は、断面が繊維に沿うのではなく、繊維を断ち切るように垂直に切ってください。詳しい切り方の解説は作り方で説明します。

韓国料理店のコツが満載! 本場「ポッサム」のレシピ

ポッサムの材料

<材料>(豚バラ塊肉2本分)

豚バラ塊肉1本で作る場合の分量はこちら

  • 豚バラ塊肉(あれば皮つき)…1kg(500g×2本)
  • 水…2ℓ
  • 韓国味噌(テンジャン)…30g(大さじ2弱) ※同量の日本の味噌で代用可
  • 【A】
    ・玉ねぎ(横半分に切る)…1/2個
    ・りんご(横半分に切る)…1/2個
    ・長ねぎの青い部分…1本分
    ・赤唐辛子(乾燥)…2本
    ・にんにく(半分に切って芽を除く)…2かけ
    ・しょうが(皮つき、厚切り)…1かけ分
    ・塩(岩塩)…25g
    ・黒粒こしょう…小さじ1/2
    ・韓国焼酎…大さじ4 ※日本酒で代用可
  • 【タレ】
    ・砂糖(三温糖)…大さじ3
    ・水…大さじ2
    ・梅エキス…大さじ2 ※梅シロップ、水あめ、はちみつで代用可
    ・しょうゆ…大さじ2
  • 添え物(サンチュ、えごまの葉、白菜キムチ、アミの塩辛など)…適量

※豚バラ塊肉1本(500g)で作る場合の分量と作り方
豚肉をゆでる水分量が少ないと豚肉全体が浸からないので、水、味噌、【A】の分量は同量にします。ただし【タレ】の分量はすべて半量にしてください。作り方、加熱時間は同じです。

<作り方>

1. 大きめの鍋に水2ℓと味噌を溶き入れてから、豚肉、【A】を加えて強火にかける

みそを溶くイメージ

豚肉を入れるイメージ

鍋(撮影時は直径25㎝、深さ14㎝の鍋)に水2ℓを注ぎ、味噌を溶き入れる(上写真)。豚肉、【A】を入れ(下写真)、強火にかける。

「豚肉が長くて鍋に入れにくい場合は、半分に切ってから入れても構いません」

2. 煮立ったらアクをすくって落としぶたをし、弱火で50分ほどゆでる

アクをすくうイメージ

アクをすくうイメージ

煮立ったらアクをすくい、真ん中に穴を開けた紙ブタをして弱火にする。そのまま50分ほどゆでる。

「アクは一度だけすくえばOKです。ゆでる時間は50分ほどがおすすめ。適度な弾力がありつつジューシーでやわらかい食感に仕上がります。これ以上、長い時間をかけてゆでてしまうと、豚肉の繊維がほぐれすぎて美味しくありません」

3. ゆでた豚肉をバットに取り出し、アルミ箔をかぶせて15分ほど休ませる

豚肉を取り出すイメージ

※撮影の都合上、写真は差しかえた豚バラ塊肉です。なお、ゆでると質量が70~80%に縮みます

アルミ箔をかぶせるイメージ

豚肉がゆで上がったらバットに移し、アルミ箔をかぶせてそのまま15分ほど休ませる。

「こうして休ませると肉が乾燥せず、肉汁が中にとどまり、しっとりした食感に仕上がります。残った煮汁、具材は韓国では捨てていますが、煮汁は浮いた脂を取り除き(一晩冷蔵庫で冷ますと脂がかたまって取りやすい)、ラーメンのスープやカレーに再利用してもいいでしょう」

4. フライパンに【タレ】の材料を入れて中火にかけ、煮立ったら豚肉を加える。煮詰めながら豚肉にからめ、バットに移して冷ます

豚肉をフライパンに入れるイメージ

フライパンに【タレ】の材料を入れて中火にかけ、煮立ったら3のゆで豚を加える。

豚肉にタレをからめるイメージ

豚肉をバットに置いたイメージ

タレを煮詰めながら、トングなどで豚肉を転がして全体にからめる。タレがカラメル状になり、全体に焼き色がついたらバットに移し、手で触れる程度の熱さになるまで冷ます。

「タレが煮詰まっても焦げる寸前まで加熱し、しっかりと豚肉にからめてください」

5. 断面が肉の繊維に対して垂直になるよう、ひと口大切り分ける

切る方向のイメージ

豚肉を切るイメージ

4のゆで豚をひと口大に切り分ける。一般的な市販の豚バラ塊肉は、肉の繊維が上写真のように入っている。その場合、横幅を4㎝程度に切り分け、続いて厚みを8㎜程度に切り分ける。

「繊維が逆向き(上写真のように肉を置いたとき、繊維が横)に入っている場合は、端から厚みを8㎜程度に切り分けてください。お店で提供しているのはこちらのタイプになります」

6. 器に盛り、葉野菜やキムチなどを添える

出来上がりのイメージ

器に盛り、葉野菜やキムチ(白菜の水キムチ)などの添え物を添えて完成。葉野菜にゆで豚とキムチなどをのせ包んでいただく。

【実食】ポッサム。いろいろな味わい、香り、食感が混ざり合う口福に悶絶!

葉に包んだイメージ

ズラリと並べられたゆで豚に、葉野菜や漬物類。大迫力で食べるまえからワクワクしてきます! サニーレタスにえごまの葉、ゆで豚、行者にんにくのチャンアチ、白菜キムチの添え物をのせて包み、大口を開けていざ実食。

葉野菜のみずみずしさ、シャキッとした食感、ゆで豚のコクと甘み、キムチとチャンアチの香りやパンチのある味わいが次々と押し寄せ、ひと噛みごとに口福を感じます!

ゆで豚はタレの甘酸っぱさ、香ばしさがしっかり感じられ、ムチッとした弾力が絶妙。添え物の組み合わせ次第で何通りもの美味しさが楽しめて、野菜もたっぷりいただけるので満足度が半端なし。本格的な韓国のお味、ぜひお試しください!

【おすすめ】ポッサムがより美味しくなる添え物7品

ポッサムの「サム」は韓国語で「包む」を意味し、ゆで豚やキムチなどを葉野菜で包みながらいただきます。<古家>では通常、ポッサムには白菜のキムチと水キムチ、旬野菜のおかず類などを添えていますが、今回は、大武さんおすすめの添え物を用意していただきました。

添え物のイメージ

【添え物①】サニーレタス

みずみずしく、シャキシャキとした食感のサニーレタス。葉が大きくてやわらかいので包みやすい。

【添え物②】サンチュ

サムギョブサルなど、韓国で焼いた肉を包む野菜といえばこれ。レタスの仲間でクセがなく、サニーレタスよりも厚みがある。サンチュとは韓国の呼び方で、和名では包み菜、掻きチシャ、茎チシャ。

【添え物③】えごまの葉

青じそと見た目が似ていて同じシソ科に属するが、ごま油に似た独特の芳香を持つ。韓国ではしょうゆ漬けにしたり鍋ものに入れたりと、とてもポピュラーな野菜。少量でも香り、味わいのアクセントになる。

【添え物④】白菜の水キムチ

水キムチは米や果物、野菜、アミの塩辛などで作った汁に白菜や大根を漬け、乳酸発酵をさせた漬物。通常のキムチにように辛くなく、熟成させないのでさわやかな酸味が特徴。汁には豊富な乳酸菌が含まれているので整腸作用が期待でき、冷麺のスープにも使われる。

▼関連記事もチェック!
<古家>が教える水キムチのレシピはこちら>>

【添え物⑤】白菜のキムチ

日本でもおなじみの、唐辛子やにんにくを効かせた辛いキムチ。乳酸発酵、熟成によりグルタミン酸、イノシン酸などの旨味成分が豊富に含まれ、独特の味わい、風味がアクセントになる。

【添え物⑥】アミの塩辛

オキアミに似たプランクトン「アミエビ」を塩漬けにしたもの。韓国では「セウジョ」と呼ばれ、味に深みやコクを加えてくれることから、キムチ作りやチゲ作りに欠かせない。

「ポッサムに添えるとゆで豚の味が引き立ち、風味が増します」

【添え物⑦】行者にんにくのチャンアチ

チャンアチとは野菜を酢、しょうゆ、砂糖などで漬けた甘酢漬け。野菜は大根、玉ねぎ、きゅうり、にんにくなどさまざまな旬野菜が使われる。

「今回は韓国人スタッフの洪さんお手製、行者にんにくのチャンアチを用意しました。チャンアチの漬け汁は煮立たせれば何度でも使えますし、その季節ごとの野菜を加えることで汁がどんどん美味しくなるんです。レシピをご紹介するので、ぜひ一度試してみてください」

▼チャンアチのレシピ

<材料>(作りやすい分量)

  • 【漬け汁】
    ・水…1カップ
    ・酢…大さじ4
    ・しょうゆ…大さじ4
    ・砂糖…大さじ5
    ・にんにく(半分に切り芽を除く)…3かけ
    ・赤唐辛子(乾燥)…2本
  • 行者にんにく…100g ※好みの野菜で代用可
    【代用野菜の例】大根、きゅうり、玉ねぎ、にんにくの芽、アスパラガスなど。または、香味野菜の組み合わせ(行者にんにく、玉ねぎ、みょうが、新しょうがなど)、根菜の組み合わせ(大根、にんじん、れんこんなど)、きのこの組み合わせ(エリンギ、椎茸、マッシュルームなど)で代用してもよい。代用野菜は食べやすい厚さや長さに切る

<作り方>

  1. 鍋に【漬け汁】の材料を入れて火にかけ、沸いたら火を止めボウルに移す。
  2. 1の漬け汁が熱いうちに、行者にんにく(好みの野菜)を入れる。
  3. 冷めたら清潔な保存容器(密閉袋でもよい)に移し、冷蔵庫に入れ、3日ほど漬ける(5日以内に食べ切ること)。
    ★残った漬け汁を再利用して野菜を漬け込む場合、もう一度煮立たせてから使うこと

「行者にんにくは3日、大根は2日、きゅうりは1日、玉ねぎは2日ほど寝かせると食べごろですが、あくまでも好みなので、漬かり具合による味や香り、食感の変化を楽しんでみてください。野菜の切り方や、味つけの濃さを変えるのもおすすめです」

取材協力/韓国料理 韓食 古家 伊勢丹新宿店

スタッフお顔写真

料理を教えてくれた大武久人さん(中央)と、大武さんとともに本場韓国の味を支えるスタッフの洪 銀順さん(左)と崔 鎭筆さん(右)

韓国金浦市郊外にある韓国料理屋<古家>の日本1号店。宮廷料理を主とした現代風の韓定食などが楽しめる。化学調味料に頼らないナチュラルな味わいは、心和むおいしさと評判。

韓国料理店<古家>のレシピ一覧はこちら>>

撮影:難波雄史
文:香取里枝

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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