2024.06.13
本場で習った!台湾焼きビーフンの人気レシピ。戻し方、うま味を含ませるコツに注目です
干し椎茸、干しえび、豚肉、野菜などの具材を炒め合わせ、そのうま味を含ませた極細麺の「焼きビーフン(炒米粉、チャオミーフェン)」。日本でも台湾料理屋さんの人気メニューです。食品売り場に並ぶビーフン(新竹米粉、シンチクビーフン)を見て、「家でもお店で食べるような、美味しい焼きビーフンが作れるのかな?」と気になっている方も多いのでは?
そこで今回は、台湾に留学経験があり、台湾料理のレシピ本も出版されている料理研究家の沼口ゆきさんに、本場仕込みの焼きビーフンの作り方を教わりました。
「焼きビーフンはビーフンや乾物をもどしたり、野菜を切ったり、具材の下準備が面倒に思うかもしれませんが、下準備をしておけばあとは順に炒め合わせるだけです。とても美味しいので、たっぷり作ってお楽しみください」
ビーフン(米粉、ミーフェン)とは?
まずは作り方の前に、ビーフンとはどんな麺なのか解説します。
●ビーフンの主原料は?
ビーフンは中国語で『米粉(ミーフェン)』と表記する通り、原材料は米(うるち米)の粉。米粉100%のものもあるが、米粉だけだとブチブチと切れやすいので、コーンスターチも加えて切れにくくしたものが多く出回っている。
●ビーフンはどこの国が発祥ですか?
ビーフンは中国南部の福建省発祥で、中国から台湾に伝わったとされている。中国大陸の南部や台湾は温暖で雨量も多く、米栽培に適した気候なのでお米をよく食べる文化。ちなみに、中国北部は寒く乾燥していて小麦粉の栽培に適した気候となっている。
●パッケージに書かれている「新竹米粉(シンチクビーフン)」とは、どういう意味?
中国、台湾では生のビーフンもあるが、日本でよく目にするのは「新竹米粉(シンチクビーフン)」と書かれたビーフンの乾麺で、ビーフンの名産地・新竹(シンチク)で作られたもの。新竹は台湾北部に位置し、冬の季節風が強く乾物作りに適していたことから、ビーフンが盛んに作られるようになった。現在ではほぼ機械乾燥。
※取扱い:伊勢丹新宿店 本館地下1階 シェフズセレクション
●ビーフンのおすすめの調理法は?
「炒めて『焼きビーフン(炒米粉)』にするか、スープに入れて『汁ビーフン(米粉湯)』にするのが定番です。どちらも乾麺を使う場合は、お湯に浸けてもどしてから使いますが、商品によって原材料の配合や太さに違いがあって、もどし方が若干異なります。
今回は日本で手に入りやすい『虎牌』(上写真)と、『鰐(ワニ)印』(下写真)のうち、『虎牌』を使ったレシピをメインに紹介し、鰐印で作る場合のレシピもご紹介しますので参考にしてください」
●ビーフン、フォー、春雨の違いは?
ビーフンと同じ米粉を主原料とするフォー。見た目が似ている春雨。同じように見えても、まったくの別物。それぞれの主に食されている国、主原料、製造方法、食感などを比べてみました。
【ビーフン】
中国南部、台湾で主に食されている。主原料は米粉。中国、台湾ともに米粉100%のものもあるが、コーンスターチを加えたものが多い。練った生地を蒸してから小さな穴から押し出し、麺状にして製造する。食感はふんわり、もちっととしていて、コーンスターチ入りのものはコシが強め。日本で手に入るビーフンは春雨と同じくらいの細さのものが多いが、現地では種類豊富でさらに太いもの、細いものもある。
【フォー】
ベトナムの汁麺料理で用いられる麺で、北部(ハノイ)が本場。主原料はビーフンと同じく米粉で、コシを出すためにタピオカ粉を混ぜたものが主流。粉を水と混ぜた液状の生地を、薄く平らにして蒸し、平麺状にカットして製造する。ビーフンよりさらに食感がもちもちとしていて、ツルッとした口当たりが楽しめる。現地では生麺が多く流通しているが、日本で販売されているものは乾麺がほとんど。
【春雨】
中国、タイ、ベトナム、韓国、日本など、東アジア地域で広く食されている。主原料であるでんぷん(でん粉)を水で練り、小さな穴から麺状に押し出してゆで、多くは冷凍してから乾燥させて製造する。
主原料のでんぷんには種類がいくつかあり、中国、台湾、タイなどでは緑豆の粉、韓国ではさつまいもの粉、日本ではじゃがいも、さつまいもの粉で作られていて、味わいや食感が異なる。どの春雨もゆでると透明がかり、弾力が出るが、特に緑豆、さつまいものでんぷんで作られたものは熱に強いので煮崩れしにくく、弾力も強い。
※参考文献・サイト/『世界の麺図鑑 59の国と地域の多彩な麺料理230種類を旅の雑学とともに解説 地球の歩き方BOOKS W 26』(学研プラス)、80C[ハオチー]中華料理がわかるWEBメデイア(https://80c.jp/)
本格的な味わいにする「台湾焼きビーフン」3つのポイント
「焼きビーフンは、台湾の食堂や屋台、家庭で食べられている庶民的な料理です。お店や家庭ごとに具材や味つけなど、作り方が違います。
今回は、私がビーフンの産地である台湾・新竹の家庭で教わったレシピをベースに、日本で手に入りやすい食材を使って、なるべく台湾の味に近くなるようアレンジしました。いくつか押さえておきたいポイントをご説明します」
【ポイント①】ビーフンは少しかためにお湯でもどすこと。 調味料や乾物のもどし汁を吸って、ちょうどよい食感に!
ビーフンはまずお湯でもどし、水分(乾物のもどし汁やスープ)を吸わせながら炒めます。もどしすぎるとビーフンがふやけてしまい、ブチブチと切れてコシのない食感に。かといってもどし足りないと、ゴワゴワと口当たりの悪い仕上がりになります。
ふんわりしつつコシがある状態がベストなので、少しかためにもどすのがコツ。まずはレシピ通りのもどし方をしてみてください。
※ビーフンはメーカーによってもどし方が異なります。今回ご紹介した「虎牌米粉」と「鰐印米粉」以外のビーフンを使用する場合は、パッケージ裏の表示を参考にしてください
【ポイント②】鶏ガラスープは不要! うま味たっぷりの食材を使ってビーフンに吸わせることで、本格的な美味しさに
ビーフンそのものにうま味はないので、いかにたっぷりのうま味をビーフンに吸わせるかが美味しさのポイントに。お店では鶏ガラスープを加えることが多いですが、今回のレシピでは、うま味がたっぷり含まれている、干し椎茸、干しえびをもどし汁ごと使うので、鶏ガラスープを加えなくても美味しく仕上がります。
また、現地ではラード(豚脂を精製した油脂)を使ってうま味を出すこともありますが、脂の多い豚バラ肉を使えば、同じように風味をアップさせることができます。
【ポイント③】香ばしく炒めた長ねぎを使うと、風味、うま味がグンと増して、本場の味に近づく!
台湾では紅葱というエシャロット(赤い小さな球状のねぎ)を揚げた、「油蔥酥(ヨウツォンスー)」を焼きビーフンに入れます。魯肉飯(ルーローハン)にも欠かせない食材で、料理に香ばしい風味とうま味を与えてくれます。
ただ日本では手に入りにくいので、よく炒めた長ねぎで代用しましょう。玉ねぎでも良いのでは? と思うかもしれませんが、長ねぎを使うと甘みが出すぎず、シャープな香ばしさになり油蔥酥の味わいに近づきます。炒めた油にも香ばしさが移っているので、油ごと使います。
豊かな風味とうま味!「台湾焼きビーフン(炒米粉)」の作り方
「今回ご紹介するレシピは、虎牌のビーフンを使用しますが、鰐印のビーフンで作る場合のアドバイスも紹介します。鰐印のビーフンは虎牌のビーフンよりもやや太く、小麦粉が入っているので、よりコシが強く仕上がります。1袋あたりの内容量は虎牌よりも多いので、もどし方や炒める時間、麺の量、一部の材料、加える水分量が少し違ってくるので参考にしてください」
<材料>(2人分)
- ビーフン(新竹米粉、虎牌)…1/2袋(125g) ※鰐印の場合は、1/2袋(150g) ※虎牌と鰐印の違いはこちら>>
- 【ビーフンをもどすときに加える油】
・ごま油…小さじ1/2 - 干し椎茸…5枚(10g)
- きくらげ(乾燥)…3g
- 干しえび…8g ※鰐印の場合は10g
- 桜えび(乾燥)…3g
- にんじん…4cm
- 玉ねぎ…1/4個
- キャベツ…120g ※鰐印の場合は150g
- 豚バラ肉薄切り…60g ※鰐印の場合は75g
- 【下味】
・塩…少々
・白こしょう…少々 - 【合わせ調味料】
・しょうゆ…大さじ1強 ※鰐印の場合は大さじ1と1/3
・酒…大さじ1
・オイスターソース…小さじ2
・塩…小さじ1/4 ※鰐印の場合は小さじ1/3
・きび糖(または砂糖)…1つまみ - 【炒めねぎ】
・長ねぎ…10cm
・サラダ油…大さじ1 - 白こしょう…小さじ1/4~1/3
- 黒酢(または酢)…小さじ1
- 好みで香菜、豆板醤…適量
<下準備>
・干し椎茸は、水に一晩浸けてもどす
干し椎茸は容器に入れ、水250ml(分量外)を加えて冷蔵庫に一晩入れてもどす(もどし汁も使用する)。
「この焼きビーフンのレシピでは、干し椎茸の味と香りが重要なので、ぜひスライスではなく丸ごと干したものを使ってください。もどした干し椎茸は冷凍保存も可能なので、何回分かをまとめてもどしておくと便利ですよ」
・きくらげは水に1時間ほど浸けてもどす
きくらげは小さめのボウルに入れ、水(分量外)をたっぷり注ぎ、1時間ほどおいてもどす。
・干しえびは水と酒に20分ほど浸けてもどす
干しえびは小さめのボウルに入れ、かぶるくらいの水と酒少々(ともに分量外)を加え、20分ほどおいてもどす(もどし汁も使用する)。
<作り方>
1. 【合わせ調味料】の材料は混ぜ合わせる。具材は切り、豚肉は下味をつける
ボウルに【合わせ調味料】の材料を入れ、混ぜ合わせる。
<下準備>でもどした干し椎茸は軸を取り除いて4~5mm厚さの薄切り、干しえびは粗みじん切りにし、それぞれのもどし汁を合わせて200ml(※鰐印の場合は250ml)にする(足りない場合は水を足す)。きくらげは石突きがあれば取り除き、4~5mm幅の細切りにする。
【炒めねぎ】の長ねぎは縦半分に切り、2~3mm幅の小口切りにし、キッチンペーパーで水気をおさえておく。にんじんは2mm厚さの細切りにする。玉ねぎは繊維にそって2mm幅の薄切りにする。キャベツは1㎝幅の食べやすい長さに切る。豚肉は1㎝幅に切り、【下味】の塩、白こしょう各少々をまぶしておく。
2. ビーフンは熱湯でもどす。ごま油を加え、湯をきり、キッチンバサミでカットする
大きめの鍋に湯をたっぷりと沸かし、火を止めてビーフンを入れる。箸でざっとほぐし、そのまま1分(※鰐印の場合は2分)おいてからごま油を加え、ザルに上げて湯をきる。
「ごま油を加えると麺同士がくっつきにくくなり、乾物特有の匂いもやわらぎます。ビーフンのパッケージに『熱湯でもどしたビーフンを冷水にとって…』と書いてある場合でも、冷水にとらなくてOK。コーンスターチ入りのビーフンはコシがあるので、すぐに炒めれば問題ありません。ただし湯に入れっぱなしにして、もどしすぎないように気をつけましょう」
食べやすいよう、キッチンバサミで十字に四等分する。※鰐印の場合は、鍋にもどしてフタをして、炒める直前まで蒸らしておく。
3. フライパンで【炒めねぎ】を作る
大きめのフライパンに、サラダ油と長ねぎを入れて中火にかける。フライパンを手前に傾けて油を一か所に集め、ときどき混ぜながら、長ねぎが部分的に濃いきつね色になるまで加熱し(写真)、ボウルなどの耐熱容器に油ごと取り出す。
「このフライパンで焼きビーフンを仕上げるので、大きめサイズを使ってください」
4. もどした干し椎茸、干しえび、桜えび、豚肉、キャベツ以外の野菜(にんじん、きくらげ、玉ねぎ)を順に加えて炒める
3のフライパンに水気を絞った干し椎茸を入れ、うすく焼き色がつくまでしっかり炒める。干しえびを加え(写真)、香ばしい香りが立つまでしっかり炒めたら、桜えびを加えてさっと炒める。
「干し椎茸、干しえびをしっかり炒めることが、美味しさの秘訣です。乾物特有の匂いが良い風味に変わり、うま味が増して食感もよくなります」
豚肉、3の【炒めねぎ】の油だけを加え、豚肉をほぐすように炒め、豚肉の色が変わったら(上写真)、にんじん、きくらげ、玉ねぎを加えてさっと炒める(下写真)。
5. 合わせ調味料、キャベツを加えて混ぜる。乾物のもどし汁を加えて沸騰したら、もどしたビーフンを加える
【合わせ調味料】を加え、よく混ぜ合わせる。
「調味料に入っているオイスターソースと砂糖が、味に深みとまろやかさを出します」
白こしょう、キャベツを加えてざっと混ぜる。1で用意しておいた干し椎茸と干しえびのもどし汁を加え、沸騰したら(上写真)、2のビーフンを加える。ビーフンを箸でほぐしながら全体を混ぜ合わせ、フタをして中火で2~3分(※鰐印の場合は約3分)、ほぼ汁気がなくなるまで加熱する(下写真)。
6. 火を強めて汁気を飛ばしながら炒め、残りの【炒めねぎ】、黒酢を加えて仕上げる
フタを外して火を強め、汁気がしっかりなくなるまで炒める。残りの【炒めねぎ】をすべて加え、混ぜ合わせる。
最後に黒酢を加え、好みで刻んだ香菜をちらす。器に盛り、好みで豆板醤を添える。
「台湾では烏醋(ウーツー)という酢、野菜、香辛料から作られた、ウスターソースに少し似た黒酢を加えることが多いのですが、日本の黒酢(または酢)で代用可。酢を加えることで全体の味が引き締まります」
【実食】台湾焼きビーフン。乾物、野菜、豚肉のうまみをしっかり吸って、しみじみ美味しい!
ビーフンを口に運ぶと、揚げたねぎや干しえびの香ばしさ、豚肉のコク、乾物のうま味、野菜の甘さが一気に押し寄せます。ふんわりとしたビーフンと、シャキッとした野菜の食感の違いも絶妙ですが、しっかり炒めた干し椎茸は「アワビ?」と思うほど、コリコリ食感でうま味たっぷり。これだけたくさんの具材が見事に調和していて、しみじみ「美味しい…」とため息がもれました!
「焼きビーフンは商品によってもどし方、使うもどし汁の量、炒め煮する時間(フライパンの大きさにもよる)が微妙に違います。といってもあまり難しく考えず、何度かお作りになって自分の理想の焼きビーフン作りを楽しんでいただけたら嬉しいです」
自宅で本場・台湾の美味しさを味わえるレシピ。みなさんもぜひ作ってみてください!
沼口ゆきさん
料理研究家。ル・コルドン・ブルー東京校、リッツ・エスコフィエ・パリ料理学校等で料理と製菓を学び、料理研究家の有元葉子氏に8年間師事し、独立。1996 年より料理教室開始。雑誌、料理本、テレビの料理番組等でレシピを提案している。2015年秋に台北へ留学したのをきっかけに、台湾の飲食店アドバイザーとしても活動中。『台湾調味料 いただきます手帖』(誠文堂新光社)、『おうち台湾菜』(主婦の友社)など著書多数。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店 本館地下1階 シェフズセレクションにてお取り扱いがございます。
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