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2023.03.15

【上品で美しい】ほうれん草のおひたしレシピ。ゆで方や絞り方にプロの技あり!

ほうれん草のおひたしの仕上がり

ほうれん草のおひたしの「おひたし」とは、ゆでた野菜をだしベースの調味液にひたして味付けする調理法のこと。作り方はいたって簡単なのに、いざおいしく作ろうと思うと、なかなか難しいものです。

悩みの例を挙げると「ほうれん草をゆですぎてしまう」「味付け(合わせ地)はいろいろあるけど、結局何が正解?」「仕上がりが水っぽくなりがち」などなど…。和食の基本ともいえる定番おかずなので、ぜひきちんと作れるようにマスターしておきたいですよね。

そこで素朴な悩みを解決しつつ、おいしく上手に作るコツをプロに聞きました。教えてくれるのは、旬の素材を使った季節ごとの料理を得意とする、料理研究家の小島喜和さんです。

味付け(合わせ地)の決め手である、基本のかつお昆布だしのとり方まで詳しく解説します。また、ほうれん草のおひたしは「すぐに食べる」場合と「作り置きする」場合とでは、少しだけ作り方を変えるのがおすすめというから、最後までお見逃しなく!

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シンプルだからこそ奥が深い! ほうれん草のおひたしを上手に作るコツ

ほうれん草をゆでているところ

① 味付けの「合わせ地」はだし汁とうす口醤油(10:1)だけ。シンプルだからこそ、ほうれん草の味が引き立つ!

「合わせ地」と呼ばれるおひたしの味付け(調味液)には、いろいろなレシピがあります。よく見かけるのは、醤油とみりんに顆粒だしを加えた甘辛いものや、市販のめんつゆやポン酢醤油など調味料の味が強く出るもの。

一方、今回紹介するレシピは「だし汁」と「うす口醤油」(10:1)だけ、というシンプルなものです。使う調味料が少ない分、ベースとなるだし汁は、和風顆粒だしを水で溶いたものでも作れますが、ひと手間かけてかつお節と昆布でとるのがおすすめ。ほうれん草の素材の味が引き立ち、上品な味わいに驚きますよ。

② ほうれん草をゆでるときは、少量ずつが鉄則。沸騰状態をキープすることで、えぐみのない味わいに!

上手にアク抜きをするためには、ほうれん草をゆでるときに沸騰状態をキープすることが重要なポイント。一度に鍋に入れる量は、お湯がふつふつとしている状態を保てる少量にとどめましょう。

大量のほうれん草を一気に鍋に入れてしまうと、沸騰したお湯の温度が下がりすぎてしまい、ゆで時間も長くなりがちに。すると食感も悪く、シュウ酸(=ほうれん草に含まれるアクのこと)が多く残るため、食べたときにキシキシするようなえぐみを感じる原因になります。

③ ほうれん草の水気は「巻きす」で絞るのが正解! 繊維を壊さず、美しく仕上がるプロの技

ほうれん草を手で直接絞ると、力を入れすぎて繊維を壊してしまう原因になり、逆に力を入れて絞らないと仕上がりが水っぽくなってしまいます。そこでぜひ試してほしいのが「巻きす」を使った水きりテクニック。力を入れて絞っても繊維を壊さず、しっかり水気をきることが可能です。さらに形がきれいに整うので、見た目も美しく仕上がります!

ほうれん草をゆでるときは少量ずつがいいんですね! ゆでる湯の沸騰状態なんて気にしたことありませんでした。今まで、ほうれん草のおひたしが「うまく作れた」という手応えを感じた経験がないので、味付けがそんなにシンプルでいいのか、少し心配です…。

それでは実際にレシピを見ていきましょう。

丁寧に作るからおいしい! 「ほうれん草のおひたし」レシピ

ほうれん草のおひたしの材料

<材料>(2〜3人分)

  • ほうれん草…1束(200g)
  • 【合わせ地(調味液)】
    だし汁(かつお昆布の一番だし)…100ml ※和風顆粒だしを水で溶いたもので代用可
    ・うす口醤油…小さじ2(10ml) ※濃口醤油で代用可

「うす口醤油は香りと色が控えめなので、素材そのままの色や味わいを活かしたい料理に使います。濃口醤油より色は薄いのですが、実は塩分は多めです。濃口醤油で代用してもいいですが、見た目の色は濃くなります」

<作り方>

1. 味付けの合わせ地(調味液)を作る

だしに醤油を加えているところ

だし汁にうす口醤油を加える。だし汁(かつお昆布の一番だし)の作り方はこちら>>

「だし汁は、とってから長時間使わない場合は、冷蔵庫で保存しましょう。すぐにほうれん草をゆでる場合は、常温に置いておいて大丈夫です」

2. ほうれん草の根元の下処理をする

ほうれん草の根元を切りと落としているところ

根元を切りと落としたほうれん草

ほうれん草は、根が長い場合は赤い部分を少し残すように先端を切り落とす(包丁の扱いが苦手な人は、まな板にほうれん草を置いて切るとよい)。

ほうれん草の根元に十字に切り込みを入れているところ

切り込みを入れたほうれん草

根元に十字に切り込みを入れる(包丁の扱いが苦手な人は、まな板にほうれん草を置いてから、切り込みを入れるとよい)。

「根元に切り込みを入れることで、根元の泥が落ちやすくなり、火も通りやすくなります。根元は味が苦手な人もいるので切り落としてもいいですが、甘みや栄養があるので、ぜひ食べてみてください」

3. ほうれん草を洗う

ほうれん草を洗っているところ

ほうれん草を洗っているところ

ボウルにたっぷりの水を入れ、まずはほうれん草の根元を水にひたし、振り洗いする。次に葉の部分を水にひたし、軽く振り洗いする。

「泥はほうれん草をゆでるときや、その後水にさらすときにも落ちます。ものにもよりますが、水の中で数回振り洗いするだけで大丈夫です。見るからに葉や根元に泥がたくさんついている場合は、流水でざっと洗ってから、水の中で振り洗いするといいでしょう」

4. ほうれん草を少量ずつゆでて、冷水にとる

ほうれん草をゆでているところ

ほうれん草をゆでているところ

ほうれん草を水にさらしているところ

ボウルにたっぷりの冷水を入れたものを用意しておく。鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩少々(分量外)を加える。ほうれん草1株(細いものなら2株)だけをとり、まずは葉の部分をもって根元の部分だけ湯に入れてゆでる。根元がしんなりしてきたら、葉の部分も湯に入れて、さっとゆでて(1株トータル30秒ほど)、すぐに用意しておいた冷水に取り出す。

「ゆでる湯に塩を加える理由は、ほうれん草の甘さを引き出すためです。ゆで時間は、ほうれん草の太さにもよりますが、トータル30秒ほどで十分。ゆですぎると食感も悪くなり、栄養も逃げてしまいます」

ほうれん草を水にさらしているところ

ほうれん草の芯の熱がとれたら、冷水から引き上げる。同様に残りのほうれん草もゆでる。途中でボウルの冷水がぬるくなったら、新しい水にかえるとよい。

「冷水の温度は、冬場は水道水で大丈夫です。夏場は氷を加えるといいでしょう。ゆでたほうれん草はすぐに冷水にさらすことで、彩りをキープし、食感の良い仕上がりに。冷水にさらすことはアク抜きにも役立ちます。ただし、長時間冷水にさらしすぎると、風味や栄養が逃げてしまう場合も」

5. ほうれん草を巻きすで巻いて、水気をしっかり絞る

ほうれん草の水気を絞っているところ

巻きすにほうれん草を並べているところ

ほうれん草の熱がとれたら、1、2株ずつ縦に持って上から下に手で握って軽く水気を絞る。広げた巻きすの手前に、太さを均一にするため1株ずつ根元の部分が交互になるように置く。

巻きすでほうれん草を巻いているところ

ほうれん草の水気を絞っているところ

巻きすを手前からくるくると巻いたら縦に持ち、上から下の順にぎゅっとしっかり力を入れて、ほうれん草の水気を絞る。これを2回ほど繰り返す。

「ほうれん草の水気をしっかりきることで、味付けの合わせ地(調味液)が含みやすくなります。この巻きすを使った水きり方法は、簡単なうえに形を美しく仕上げることができるプロのテクニックなので、やったことがない人が多いと思います。巻きすは卵焼きやのり巻き、厚焼き玉子の成形にも大活躍する便利なアイテム。最近は100円ショップでも扱っているので、ぜひ購入をおすすめします!

とはいえ、巻きすがない場合は、根元の方を上にして両手で持ち、上から下に水気を絞るといいでしょう。ただし、ほうれん草の繊維が壊れやすく、食感が悪くなってしまうこともあります」

6. ほうれん草を切る

水気を絞り終わったほうれん草

ほうれん草を切っているところ

ほうれん草を切っているところ

巻きすを広げ、その形をキープしたまま、まな板に移す。食べやすい長さに切り分ける。まず半分の長さに切ってから、さらにその半分に切ると均等な長さに仕上がる。

7. 食べる直前に器に盛り、合わせ地(調味液)を注ぐ

調味料を注いでいるところ

器に6のほうれん草を立てて盛り、7の合わせ地を器の縁から注ぐ。好みで削りかつおや白炒りごま各適量(分量外)をのせる。

「ほうれん草をひたしておく時間がなくても、おひたしはすぐに食べられます。ほうれん草の中心には空洞があって、そこから合わせ地を吸うので、ほうれん草の上から合わせ地をかけなくても大丈夫です。すぐに食べない場合は、ひたす方法も紹介しているので、そちらのやり方を試してみてください」

ほうれん草の旨さが引き立つ! 上品なおひたしの完成

ほうれん草のおひたしの仕上がり

一つひとつの工程を丁寧に調理したほうれん草のおひたしは、見るからに美しく、上品。いざ口に入れてみると、まずはほうれん草のシャキシャキとした食感に驚きます。

食べるまえは「こんなにシンプルな味付けで大丈夫かな…」と気になっていましたが、塩分が控えめでだしの風味がとっても豊か! 噛めば噛むほど、素材の味はしっかり感じられ、特有のえぐみなどは一切なく、「ほうれん草ってこんなにおいしかったんだ」と再確認させられる一品です。

【作り置きする場合】すぐに食べないなら、ほうれん草は合わせ地にひたして冷蔵庫へ!

ほうれん草のおひたしの仕上がり

おひたしを作ってから食べるまで30分以上時間がある場合は、保存容器でひたす方法を試してみてください。ひたす場合は、すぐに食べる場合よりも、ほうれん草に味がつきやすいので、しっかりした味が好きな人におすすめです。ひたす時間は30分でも2〜3時間でもOK。

<作り方>

調味料を注いでいるところ

保存容器に入ったほうれん草のおひたし

ゆでて切ったほうれん草を保存容器に入れ、箸で軽くほぐす。合わせ地を注ぎ入れ、ふたをして冷蔵庫に入れておく。ひたす時間は30分でも2〜3時間でもOK。食べるときに好みで炒り白ごまをふってもよい。

「この状態なら冷蔵庫で保存もできるので、作り置き可能です。ただし風味が落ちやすいので、保存期間は一晩程度を目安に食べ切ってください」

いかがでしたか? ほうれん草をゆでて調味料をかけるだけなのに、意外と奥深いおひたしのレシピ。シンプルな料理だからこそ、細部を丁寧にこだわることで、仕上がりに差が出るはず。ぜひ、プロのポイントを意識して、作ってみてください。

和食の決め手! 基本のかつお昆布だし(一番だし)のとり方

今回、ご紹介するほうれん草のおひたしレシピは、シンプルな調味料で作る分、だし汁の鮮度と風味の豊かさができあがりの味を大きく左右します。忙しい場合は、和風顆粒だしでも構いませんが、自分でとったかつお昆布の一番だしのおいしさは格別ですよ!

だしの材料

<材料>(作りやすい分量)

  • 水…1000ml
  • かつお削り節…25g(2つかみ強)
  • 昆布…4〜5cm幅×10cm長さ ※今回は日高昆布を使用

<作り方>

1. 昆布を水につける

昆布を水にひたしているところ

鍋に分量の水、昆布を入れ、10分ほどおく。

「昆布は、流水でさっと洗ってから使用してください。水につける時間は昆布によって異なります。日高昆布は戻りやすいため、短時間で構いません」

2. 弱めの中火にかけ、沸騰直前で取り出す

昆布を入れて煮ているところ

昆布を取り出しているところ

昆布が開いてきたら、弱めの中火にかける。鍋底から小さな気泡が沸いてきたら昆布を取り出す。

「弱〜中火の火加減で、じっくり昆布の旨みを引き出します。昆布は沸騰させるとぬめりなど余計な成分が出てしまうので、必ず沸騰直前に取り出しましょう」

3. 沸騰したらかつお削り節を加える

かつお削り節を加えているところ

だしをとっているところ

だしをとっているところ

沸騰したらかつお削り節を加え、再び鍋の縁がふつふつとしてきたら火を止め、そのまま1〜2分おく。

「昆布を取り出しただし汁は、一度沸騰させることで、昆布の臭みを消すことができます。かつお節を加えてからは、ぐつぐつと煮出すと雑味が出てしまうのでNG。かつお節を加え、鍋の縁がふつふつとしてきたらすぐに火を止めることが大切です」

4. だしを濾して絞る

だしを濾しているところ

ボウルにザルを重ね、その上から一度濡らしてかたく絞ったネル地のこし布(または不織布や厚手のペーパータオル)をのせ、3を濾す。

「だしを濾すときは静かに一気に注ぎます」

だしを濾しているところ

だしを絞っているところ

だし汁のイメージ

こし布の端を持ち、菜箸などで押さえたまま、こし布をねじってだしを絞る。

「雑味が出てしまうので、手でぎゅっと力を入れて絞るのは避けましょう」

【保存法】だしをすぐに使わない場合、冷凍がおすすめ

できあがっただし汁は、風味が損なわれないうちになるべく早めに使い切ってください。すぐに使わない場合は、冷蔵保存よりもペットボトルなどに入れて冷凍保存する方がおすすめです。

【活用法】だしをとった残りの昆布とかつお削り節は捨てないで!

「だしをとり終わった昆布は、大豆やひじきの煮物などを作るときに、食べやすい大きさに切ってから、一緒に煮て食べるのがおすすめです。かつお節はそのまま塩揉みしたきゅうりと和えたり、甘辛い調味料で煮て佃煮にしたり、捨てずに活用するといいですよ」

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小島喜和さん

小島喜和さん

テーブルトップディレクター。季節のめぐりとともに暮らす日々。手仕事を行う楽しさ、美味しさを伝えることをライフワークに、自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、【季節の手仕事教室】を開催している。『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。

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撮影:矢野宗利
文:ケイ・ライターズクラブ

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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