2025.01.05
【違いも解説】ぜんざい(お汁粉)の作り方。濃厚とあっさりの2タイプを紹介!
寒い日に食べたくなる、体がぽかぽか温まるぜんざい(お汁粉、おしるこ)。小豆(あずき)をコトコト煮て砂糖で甘みをつけ、お餅を加えれば作れるので、家庭でも気軽に楽しむことができます。
毎年1月11日(地方によっては1月15日)の「鏡開き」には、鏡餅をぜんざい(お汁粉)にしていただくこともあり、基本的な作り方を知っておきたい方も多いのでは?
ただ、ぜんざい(お汁粉)にはベースが「粒あん、こしあん」、「汁が少なめ、多め」といくつかのタイプがあり、どうやって作るか迷うところ…。そこで、日本の伝統食や季節の手仕事を得意とする、料理研究家の小島喜和さんに相談してみました!
「こしあんを一から作るのは時間も手間もかかるので、簡単な粒あんがおすすめです。今回は、粒あんを使った『汁が少なめ』と『汁が多め』の2種類の作り方をご紹介しましょう。ぜひ両方作ってみて、美味しさを食べ比べてみてください」
汁が少なめと多めでは、それぞれ違った美味しさがあり、気分によって作り分けるのもおすすめだそう。2種類を教えてもらえるのは嬉しいです!
ぜんざいとお汁粉(おしるこ)の違いとは。地域によって呼び方が異なっていた!
まずはレシピをチェックするまえに、基本情報を押さえておきましょう。
「ぜんざい」と「お汁粉(おしるこ)」という呼び方を聞いたことがあると思いますが、一般的にその違いとは、地域によって以下のように区別されています。
【関東地方】
ぜんざい(善哉)…粒あん、またはこしあんを使った汁気の少ないもの。
お汁粉…粒あん、またはこしあんを使った汁気の多いもの。粒あんのものを「田舎汁粉」「小倉汁粉」、こしあんのものを「御膳汁粉」と区別する場合もあり。
【関西、四国、九州地方】
ぜんざい(善哉)…粒あんを使ったもの。汁気の多いものを「ぜんざい」、汁気の少ないものを「亀山」「金時」と区別する場合もあり。
お汁粉…こしあんを使った汁気のあるもの。
北海道では「お汁粉」と「ぜんざい」の明確な区別はなく、沖縄では一般的にかき氷に甘い煮豆(あまがし)をのせたものを「ぜんざい」と呼びます。お餅入りのものを「お汁粉」、白玉団子入りのものを「ぜんざい」と分ける地域や、人によってはすべて「お汁粉」と呼ぶ場合もあり、実際の解釈は人それぞれともいえます。
「私は四国の高知県出身なので、わが家では、粒あんで作ったものであれば汁が少なかろうと多かろうと、どちらも『おぜんざい』と呼んでいました。『お汁粉』はこしあんで作った汁の多いものを指していました。ですので、今回ご紹介する私のレシピは『汁の少ないぜんざい』と『汁の多いぜんざい』という呼び方をします」
伝統行事「鏡開き」のとき鏡餅は刃物で切らない
一年のうち、全国的にぜんざい(お汁粉)がよく食べられる日があります。それは「鏡開き」と呼ばれる日で、一般的に関東地方は1月11日、関西地方は1月15日です。
鏡開きとは、お正月に飾った鏡餅を下げ、ぜんざい(お汁粉)やお雑煮としていただく伝統的な行事のこと。鏡餅をぜんざい(お汁粉)やお雑煮にする際は、刃物で切ることはよくないとされているので木、槌などで割り(割れない場合はそのまま)、2分ほどゆでて火を止めてふたをし、やわらかくなるまでおいてから調理しましょう。
小豆(あずき)の選び方、煮る方法、保存のポイント
主材料となる小豆について、ポイントをご紹介します。
【選び方】一体感を楽しむなら粒の小さい「小豆」、粒感を楽しむなら粒の大きい「大納言」を使う
小豆には大きく分けて、粒の小さい「小豆」と、粒の大きい「大納言小豆」の2種類があります。ぜんざい(お汁粉、おしるこ)にする場合は、どちらを使っても構いません。
「小豆」は幅広いあんこ菓子に使われています。皮がやわらかくつぶれやすいので、ぜんざい(お汁粉)にすると、皮との一体感のある美味しさが楽しめます。
「大納言小豆」は大粒ながら、皮はやぶれにくく食感はとてもやわらか。ぜんざい(お汁粉、おしるこ)にすると、上品な香りや深い味わいとともに粒感も楽しめます。
どちらも鮮度がよく、色が濃く光沢があり、粒の大きさが均一で丸みを帯びたものを選びましょう。
※取扱い:日本橋三越本店 新館地下2階
【煮る方法】小豆は浸水不要! 新豆は早くやわらかく煮える
一般的に乾物の豆は、大豆のように調理するまえに一晩ほど浸水させる必要がありますが、小豆(大納言小豆)は粒の大きさに関係なく浸水は不要。皮がかたいので浸水させても吸水しにくいのですが、内部はでんぷんが多いので、浸水せずにゆでてもすぐに吸水し、やわらかく煮えるからです。
豆がやわらかく煮えるまでの時間は、豆の大小のサイズ違いではなく、品種や保存状態など個体ごとに異なります。また、収穫から間もない「新豆」は水分が多いので、早くやわらかく煮えます。収穫から時間が経った「ひね豆(古い豆)」ほど、新豆より水分が少ないため味は濃いですが、やわらかくなるまでに時間がかかる傾向にあります。
【保存方法】開封後に残った小豆は密閉して、冷蔵庫や冷暗所で保存する
小豆は商品や保存状態にもよりますが1年ほどもちます。開封後に小豆が残った場合は、チャックつきの密閉袋に入れて空気を抜くか、清潔な保存容器に隙間なく入れ、冷蔵庫や冷暗所で保存しましょう。高温多湿や直射日光に当たる場所で保存すると劣化がすすみ、味や食感が悪くなるので気をつけましょう。
それではお待たせしました! 「汁の少ないぜんさい」のレシピから教えてもらいましょう。
【レシピ①】「汁の少ないぜんざい」の作り方。小豆の濃厚な風味とほくほく感を堪能!
汁の少ないぜんざいは、水分を飛ばしながら小豆をやわらかく煮て作ります。以前、WEB FOODIEの記事でご紹介した「粒あんの作り方」と基本的な流れは同じです。今回ご紹介するレシピをさらに煮詰めれば「粒あん」になります。
小豆の風味やほくほくとした食感、甘みがしっかりと感じられるので食べ応えがあり、焼き餅の香ばしさとの相性も抜群です。
▼関連記事もチェック!
【初心者必見】基本の粒あんの作り方>>
<材料>(約4杯分)
- 小豆(または大納言小豆)…200g
- 砂糖…160g(小豆の80%) ※写真は洗双糖(せんそうとう)。グラニュー糖、上白糖など好みのものでOK
- 塩…小さじ1/3
- 餅…適量
「砂糖はお好みのものを使っていただいて構いませんが、ぜんざいには、精製度が低くてコクが豊かな、さとうきびを原材料とした洗双糖を使うのが私のお気に入りです」
<作り方>
1. 小豆を洗う
小豆をザルに入れ、ボウルに重ねて流水でさっと2回ほど洗う。
「表面の汚れや、余分な殻を落とすためにさっと洗います」
2. 小豆を10~15分ゆでて、いったん湯を捨てる(渋きり)
直径20cm程度の鍋に小豆と3倍量の水を入れ、中火にかける。
「小豆は渋味を含んでいるので、取り除くために、まずは『渋きり』と呼ばれる小豆をゆでこぼす作業をします。水が少ないと渋味がきれないので、量はたっぷり入れるようにしてください。小豆は最終的に約2.4倍まで膨れるので、大きめの鍋を使いましょう」
煮立ったらそのまま10〜15分ほどゆでる。
「長時間加熱するわけではないので、この段階ではグラグラ沸く火加減でゆでても大丈夫です」
ゆで汁の色が変わったら、小豆をザルにあげて水気をきる。
「渋がきれているかどうかは、ゆで汁の色が濃いワイン色(豆によっては写真のように茶色くなる場合もある)になったかを見て判断します。小豆を食べてみて、雑味がないか確認してもいいでしょう。何度か渋きりを繰り返すレシピも見かけますが、小豆本来の風味が弱まってしまうので、1回でしっかり渋きりする方法が私のおすすめです」
3. 水を入れ替え、小豆がやわらかくなるまで煮る
2の鍋をよく洗い、小豆とその3倍量の水(目分量でOK)を入れ、中火にかける。
「小豆をゆでた鍋には渋がついているので、しっかり洗ってから使いましょう」
煮立ったらふつふつと沸くくらいの火加減にし、アクを取り除きながら(写真)小豆がやわらかくなるまで煮る。途中で煮汁が減り、小豆が顔を出しそうになったら、その都度常温の水をひたひたになるまで足す。
「アクにも渋味が含まれています。ゆでているあいだは絶えず出てくるので、こまめにすくうようにしましょう」
4. 火を止めて、小豆がやわらかくなったか確認する
写真のように煮汁にとろみがつく状態になったらいったん火を止め、小豆のやわらかさを確認する。一番力の入れにくい親指と小指で挟み、抵抗なくつぶれるくらいやわらかくなっていればOK。
「小豆がやわらかくなるまでの時間は豆によって違いますが、だいたい30分が目安。砂糖を加えるとそれ以上やわらかくならないので、この段階で、小豆に芯がなくなるまで充分に煮ておくことが大事です」
5. 弱めの中火にかけて、砂糖を2回に分けて加える
豆がやわらかくなっていたら、砂糖を2回に分けて加える。鍋を弱めの中火にかけ、砂糖の半量を加えて混ぜる。
「小豆に甘みを少しずつ含ませたいので、砂糖は2回に分けて加えましょう」
「砂糖を加えてからもアクは出てくるので、その都度取り除いてください」
最初の砂糖が完全に溶けたら、残りの砂糖を加えてサッと混ぜる。
6. ふつふつと沸く状態を保ったまま、ときどき混ぜながら15~20分ほど煮て、塩を加える
ふつふつと沸くくらいの火加減を保ち、15~20分ほど煮つめながら小豆に甘みを入れていく。
「甘みが加わると焦げやすいので、ときどき混ぜましょう」
好みの汁加減になったら塩を加え、混ぜ合わせる。
「塩を加えると、甘みがぐっと引き立ちます」
塩が溶けたら完成。
7. 餅を焼き、温かい6とともにお椀によそう
餅を焼き網やトースターで焼き、温かい6とともにお椀によそう。
「汁の少ないぜんざいは、時間がたつと小豆が煮汁をたくさん吸います。温め直す際は、水を適量足してのばしてください。今回は角餅を焼きましたが、お好みで、焼かずにゆでても構いません」
続いて、 「汁の多いぜんさい」のレシピを教えてもらいましょう。関東風のお汁粉です。
【レシピ②】「汁の多いぜんざい(関東風お汁粉)」の作り方。上品な甘さで、さらさらといただける!
「汁の多いぜんざい」は、小豆の2倍量の水分を保ちながら小豆を煮ていきます。前出でご紹介した「汁の少ないぜんざい」と材料は同じですが、水の分量が多いのであっさりとした甘みです。
「一晩ほどおくと小豆に甘みがなじみ、より美味しくなるので、食べる日の前日に作っておくのがおすすめです。たっぷりでき上がりますが、さらさらといただけるので、思いのほか早く食べきってしまいます」
<材料>(約6杯分)
- 小豆(または大納言小豆)…200g
- 砂糖…160g(小豆の80%) ※写真は洗双糖(せんそうとう)。グラニュー糖、上白糖など好みのものでOK
- 塩…小さじ1/3
- 餅…適量
<作り方>
1. 小豆は洗ってから15~20分ゆで、湯を捨てて渋きりをする
「汁の少ないぜんざい」の作り方1、2と同様に、小豆を2回ほど洗い、小豆の3倍量の水とともに15~20分ゆで、湯を捨てて渋きりをする。
2. 水を入れ替え、再び小豆をやわらかくなるまで煮る
鍋をよく洗い、小豆とその3倍量の水(目分量でOK)を入れて中火にかける。煮立ったらふつふつと沸く(小豆が躍る)くらいの火加減にし、ゆで汁が小豆の2倍量を常に保つよう、常温の水を適宜足しながら(写真)小豆がやわらかくなるまで煮る。
ゆでている途中にもアクが出るので、その都度取り除く。
3. 火を止めて、小豆がやわらかくなったか確認する
30分ほど煮たらいったん火を止め、小豆のやわらかさを確認する。一番力の入れにくい親指と小指で挟み、抵抗なくつぶれるくらいやわらかくなっていればOK。
4. 弱めの中火にかけて、砂糖を2回に分けて加える
豆がやわらかくなっていたら、弱めの中火にかけ、砂糖の半量を加えて混ぜる。砂糖が完全に溶けたら、残りの砂糖を加えて(写真)サッと混ぜて溶かす。
5. 塩を加える
塩を加えて混ぜ合わせる。
塩が溶けたら、火を止めてそのまま冷ます。できれば数時間~一晩おいて甘みをなじませる。
6. 餅を焼き、温めた5とともにお椀によそう
半分に切った餅を焼き網やトースターで焼き、温めた5とともにお椀によそう。
「今回は焼いた餅を盛りつけましたが、ゆでたものでも構いません。汁がさらっとしているので、つるんとした食感の白玉団子も相性がよく、おすすめです」
【まとめ】2種類のぜんざい。水分量が違うだけで、味わいが違って奥深い!
今回、小島さんが「汁の少なめ」と「汁の多め」のぜんざいを、それぞれ「小豆」と「大納言小豆」で作ってくれました。撮影スタッフで食べ比べてみたところ、「汁の少ない小豆のぜんざいが食べ慣れた感じがして、やっぱり美味しい!」、「小豆より大納言のぜんざいのほうが上品な味わいで好き!」など、人によって好みが分かれました。
個人的には翌日になって、汁の多い大納言小豆のぜんざいに白玉団子を入れてみたところ、つるんとした白玉と、さらっとした汁、小豆の粒感との相性が抜群で、新たな美味しさを知りました。
同じ材料でも汁の量で味わいがまったく違うので、みなさんもぜひ食べ比べてみてください!
▼関連記事もチェック!
【初心者必見】基本の粒あんの作り方>>
小島喜和さん
料理・菓子研究家。季節の手仕事を得意とし、梅仕事や味噌作りなど、各種ワークショップを開催。また、ニューヨーク、パリの製菓学校で製菓、製パンを学び、ディプロマを取得した経験を活かし、料理教室、お菓子教室を主催している。
高知県出身で、地元の郷土料理や食材を広める活動はライフワーク。『心ふるえる土佐の味』(高知新聞社)、『みそさえあれば。』(日東書院本社)、『四季を愉しむ手しごと』(河出書房新社)など著書多数。
商品の取扱いについて
記事で紹介している商品は、日本橋三越本店 新館地下2階 富澤商店にてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング