2024.03.27
そら豆で作る!自家製(手作り)調味料「豆板醤」簡単レシピ。材料4つ、混ぜて常温におけばOK
麻婆豆腐の食欲をそそる辛さ! その辛さを生むのに欠かせないのが、中国・四川省発祥の調味料「豆板醤」です。この豆板醤、「そら豆(空豆)」で作られていることをご存知ですか? しかも、あとは米麹と唐辛子、塩があれば家でも簡単に作れると聞いてびっくり…!
そこで今回は料理研究家の橋本加名子さんに、旬のそら豆を使った豆板醤の作り方を教わりました。
「私がいろいろな豆板醤の作り方を試すなかで行きついた、簡単で作りやすく、失敗しないレシピをご紹介します。そのままで食べても美味しく、時間をおくほどに味の変化が楽しめますよ」
自家製「豆板醤」。米麹を使ってそら豆(空豆)を発酵させる2つのポイント
「手作り豆板醤の材料は『そら豆、米麹、塩、唐辛子』のたった4つ。『そら豆をゆでる、つぶす、残りの材料と混ぜて瓶に詰める』の3ステップで作れます。瓶に詰めてしまえば常温において、6か月ほど放置。その間に米麹によってそら豆が分解され、全体が発酵して豆板醤になります。
ポイントとなるのは発酵しやすい状態にすることと、長期間常温におくので、雑菌が繁殖しないようにすることです」
ではさっそく、次の2つのポイントを押さえていきましょう!
【ポイント①】そら豆はやわらかくゆでて、よくつぶす! 米麹となじんで発酵が順調にすすむ
そら豆はゆでてからつぶし、米麹と混ぜます。ゆで加減が足りずかたい状態だと米麹となじみにくく、米麹によるそら豆の分解が進まず発酵が遅くなってしまいます。普段、そら豆を塩ゆでで食べるよりもやわらかめ、指で押して簡単につぶれるくらいのやわらかさにゆでてください。
また、よくつぶすことで米麹とのなじみもよくなるので、ペースト状になるまでつぶしましょう。
【ポイント②】長期の常温保存は雑菌NG! 瓶の殺菌と、空気に触れさせないことで、美味しく発酵・熟成する
仕込んだ豆板醤は常温に6か月以上おいて発酵、熟成させるので、雑菌が繁殖しないように注意します。容器となる瓶はフタとともに煮沸消毒を。また、空気に触れると、温度や湿度の高い時期に「産膜酵母(※)」という白いカビのようなものが表面に発生してしまうので、豆板醤を瓶に詰めたら表面をラップで覆い、瓶の空気に触れる部分はアルコールで殺菌しましょう。
※産膜酵母は酵母菌の一種で体に害はありません。ただし、そのままにしておくと風味が劣ってしまうので、発生した場合はその部分だけを取り除きます
そら豆で作る、うま辛調味料「豆板醤」の作り方
<材料>(容量250mlの保存瓶1瓶分)
- そら豆(さやから出した状態)…100g ※さやつきで10~12本分
- 米麹(乾燥)…50g(そら豆の重量の50%) ※板状の場合はバラバラにほぐしておく。生の米麹を使う場合も50g
※米麹と乾燥と生の違いについて詳細はこちら>> - 塩…20g(そら豆の重量の20%)
- 粉唐辛子(あれば韓国産、細挽き)…10g(そら豆の重量の10%)
<下準備>
・保存瓶の瓶とフタを煮沸消毒して、よく乾かしておく
<作り方>
1. そら豆をやわらかくなるまでゆでて、ゆで汁を少量取り置いておく
そら豆のお歯黒(黒い筋状のかたい部分)を指で取り除く(上写真)。鍋に水を適量入れて火にかけ、沸騰したらそら豆を入れ、やわらかくなるまで8~10分ゆでる(下写真)。
「お歯黒を取り除いておくと、ゆでたあとに薄皮から簡単に豆を取り出せます。そら豆のゆで加減は、指で簡単につぶれるほどやわらかい状態がベストです」
そら豆がゆで上がったらゆで汁を100mlほど取りおき、そら豆をザルに上げる。
「ゆで汁はあとで豆板醤のかたさを調節するのに使います」
2. そら豆の薄皮をむいてボウルに入れ、ペースト状になるまでつぶす
そら豆が手で触れる程度に冷めたら、薄皮をむいてボウルに入れる。
「薄皮を少しむいてから指で豆を押し出すと、簡単に取り出せます」
そら豆がペースト状になるまで、マッシャーやフォークでつぶす。
「そら豆はよくつぶすと米麹となじみ、米麹による分解が早くすすみます」
3. 米麹、塩、唐辛子を加え、よく混ぜ合わせる。水分が足りないようなら、そら豆のゆで汁を足して調節する
米麹、塩、唐辛子を加え、ゴムベラで全体をよく混ぜ合わせる。
「今回は仕込む量が少なかったので塩と米麹を同時に加えましたが、倍量以上を作る場合は、あらかじめ米麹と塩をよく混ぜ合わせてから、唐辛子と一緒にそら豆に加えてください」
「混ぜ終えたとき、上写真のように全体がパサパサとしていたら、まだ水分不足です。水分が足りないと発酵がうまくすすまないので、1で取り置いたそら豆のゆで汁を大さじ1ずつ足しましょう」
「写真のようにお味噌くらいのやわらかさになっているのがベスト。今回は大さじ2杯分のゆで汁を足して、ちょうどよいやわらかさになりました。生の米麹を使う場合は、乾燥麹よりもそら豆になじみやすいので、ゆで汁を足さなくても良い場合が多いですが、なじみが悪いようであれば大さじ1程度足せば充分です」
4. 煮沸消毒した瓶に詰め、表面をラップで覆ってからフタをする。常温で6か月以上おいて熟成させる
煮沸消毒して乾かした瓶に3を詰める。スプーンで何回かに分けて入れ、そのつどスプーンの背で中の空気を抜き(上写真)、抜けきらない空気はラップごしに指で押さえて抜き、指が豆板醤に直接触れないようにする(下写真)。
全部詰めたら表面が空気に触れないよう、新しいラップで覆う。
「豆板醤とラップの間に空気が入ると酵母菌が発生しやすいので、空気が入らないよう、ぴっちりと覆ってください」
キッチンペーパーにアルコール度数の高い酒(焼酎など)、または食品用アルコールを適量染み込ませ、瓶の内側の空気に触れる部分と、外側のフタで隠れる部分をふいて消毒する。
フタをして、冷暗所において6か月以上常温発酵させて完成。途中で混ぜる必要はない。
「1週間くらいで写真のように変化します。6か月程度おくと充分に発酵して食べられるようになりますが、10か月以上おくとより熟成して深い味わいになります。3年熟成したものはこちら。
もし表面に白いカビのようなもの(産膜酵母という酵母菌の一種で、体に害はないが風味を悪くする) が現れたら、その部分を取り除き、再度キッチンペーパーでアルコール消毒してからラップを新しいものに替えてください」
【1年熟成を実食】そら豆で作った豆板醤。辛さだけでなく、甘み、うま味もあるから、そのまま食べても美味しい!
橋本さんが1年熟成させたという豆板醤をいただいてみました。市販の豆板醤はただ辛くてしょっぱいイメージがあるので恐る恐る口に入れたところ、思わず「美味しい!」と声が出てしまいました。辛いだけではなく、味噌のようなコクとうま味、甘みもあって、このまま野菜につけたり、ご飯にのっけて食べたりしたくなる…。まさにこれは「食べる豆板醤」です!
【手作り豆板醤】おすすめの使い方
麻婆豆腐などの中華料理以外にも、手作り豆板醤は万能調味料として幅広い料理に使えます。橋本さんに、手軽で美味しい使い方を教えてもらいました。
① マヨネーズと合わせて「豆板醤マヨ」に
豆板醬とマヨネーズを好きな割合で混ぜるだけ。生野菜スティックや温野菜につけていただきます。
② 砂糖、酢、みそと合わせて「豆板醤酢味噌」に
辛子酢味噌の辛子の代わりに豆板醤を使います。ゆで野菜や生野菜、蒸し鶏のタレとして。その他、お刺身につけて韓国風の甘辛酸っぱいタレとしても。
③ 肉じゃがに加えてピリ辛風味に
肉じゃがに少し加えると、ピリ辛風味になって慣れた味わいも新鮮な一品に。肉や野菜を炒めるときに豆板醤を一緒に炒めると、より豆板醤の風味が引き立ちます。
④ お刺身にのせてカルパッチョ風に
お魚のカルパッチョに豆板醤を使うと、味のアクセントに。塩、オリーブ油(ごま油)、レモン(酢)とともに、お刺身にのせてください。酢や油に混ぜてもOKです。お刺身は「ぶり」や「かんぱち」がおすすめ。
【どのくらい熟成させてもいい?】手作り豆板醤は、10年くらい熟成させても美味しいです
「実は、豆板醤は時間をおくほどに熟成して美味しくなるんです! なので、ある程度使う分だけ冷蔵庫に移し、残りはそのまま常温で熟成させるのがおすすめですよ」と橋本さん。
実際に、橋本さんのキッチンにずらりと並んだ年代違いの豆板醤のなかから、せっかくならばと、3年ものの豆板醤も味見させてもらいました!
1年ものと3年ものを比べたのがこちら。3年ものは色味が赤色から茶色になっていて、まるで赤味噌(豆味噌)のような見た目に。お味は辛さがよりマイルドになって、しょうゆや赤味噌を思わせる味わいに変化しています! さらに、タイの唐辛子を使った豆板醤も味見させてもらったところ、こちらは激辛麻婆豆腐にぴったりのパンチのある味わいでした。
熟成期間や唐辛子の違いで、こんなにも楽しめる豆板醤。そら豆が出回る時期に、ぜひ作ってみてください!
橋本加名子さん
料理研究家、栄養士、フードコーディネーター、国際薬膳調理師。タイ料理、ヴィーガンタイ料理、和食、発酵の料理教室「おいしいスプーン」主宰。企業で働きながら子育てをした経験を活かし、「体にやさしくて、作りやすい家庭料理」を提案し続けている。飲食店のプロデュースやフードコーディネートにも携わる他、雑誌、書籍、ウェブサイト等で活躍。『ホットクックお助けレシピ』シリーズ(河出書房新社)、『たんぱく質の10分おかず』(ART NEXT)など著書多数。
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