2016.01.14
作って育てる楽しさがある! みんなの「手前味噌」自慢
毎日の食事に欠かせない日本の調味料「味噌」。近年、この「味噌」を手作りすることが静かなブームとなっています。料理研究家の小島喜和先生曰く、そのわけは「驚くほどおいしい味噌ができるから!」なのだとか。そこで今回は、先生と一緒に味噌作りをしている2名が集まって、自慢の「手前味噌」を見せてくれました。
安心で簡単、自宅で味噌作り
「味噌作り」というと大変なイメージがありますが、そのレシピは驚くほどシンプル。まずは大まかな味噌の作り方(今回は冬に仕込む「寒作り」)を紹介。
<材料>
- 大豆
- 塩
- 麹
<作り方>
- 米麹と塩を合わせる
- 蒸した大豆を潰す
- 1.と2.と水を合わせて桶に入れ、寝かせる
あとは冷暗所で保管しておけば、発酵が進んで半年ほどで食べられるようになるそうです。
みんなの「手前味噌」見せて!
「手前味噌」という言葉もあるように、もともと各家庭で「ウチの味」を作っていた味噌。小島先生たちは2015年の1月に同じ材料で仕込みましたが、出来上がりは三者三様。それぞれの味噌を見てみましょう。
味のPOINT① 麹の量→多いほど甘くなる。
味のPOINT② 保管方法→発酵させる容器や環境によって味が変わる
※一般的に東日本では辛口、西日本では甘口の味噌が作られます
小島先生:ちょっと甘めのコク味噌
麹の量 |
やや多め(甘め) |
---|---|
保管環境 |
木桶→頃合いを見てホウロウに移し替える |
水分が多めでしっとりとした印象。毎年味噌を作るなかで見つけた「自分好みの味」は麹の量を増やしたやや甘めなタイプ。甘みと塩気の絶妙なバランスはさすがプロといったところ。
体験者① 昌子さん:木が香る、関東の定番スタイル
麹の量 |
標準 |
---|---|
保管環境 |
木桶(秋田杉の新桶) |
昌子さんの味噌はやや固めの固形タイプ。東日本出身の人が「懐かしい」と感じるオーソドックスな塩気が特徴です。秋田杉の新桶を使っており、豊かな木の香りが楽しめます。
体験者② 有紀さん:九州の甘い味噌を2タイプ
麹の量 |
多い |
---|---|
保管環境 |
タッパー(途中で半分を冷凍) |
大分県出身の有紀さんは3人でもっとも多くの麹を使用し、九州ならではの甘い味噌に挑戦。発酵の途中で味噌を2つに分けて1つを冷凍保存することで、発酵段階の異なる2つの味を作りました。
みんなでおいしく味噌トーク!
麹? 手? 同じ材料でも「うちの味」ができる秘密
小島先生:手作り味噌の一番の魅力は、作る人によって全然違う味になるところ。西日本出身の私と有紀さんは甘めの味噌で、東日本出身の昌子さんは辛め。やっぱり慣れ親しんだ味を作りたくなるんですね。あっ、有紀さんの味噌すごく好き! 有紀さんの家の味がする!
有紀さん:先生と私では少しの麹の違いしかないのに、味も見た目も全然違うんですね。
小島先生:味噌を保管する容器や保管する環境が家によって違うから、それも影響しているんでしょうね。あとはほら、自分の手で麹を混ぜるから、肌の常在菌も関係しているのかも。昌子さんの味噌もいい香り! 木の香りがしっかりついていますね。
昌子さん:今年は容器を木桶にしてみたのですが、新しい木が味噌の水分を吸い取ったみたいで、やや固めですね。塩気が多いので、そのままより料理に使いたいかな。
小島先生:木桶は毎年使っていくうちに水分を吸い込まなくなりますよ。そうなると楽しみなのが、発酵途中に出てくる水分「たまり醤油」。そのまま豆腐なんかにのせると……もう絶品!
完成後もどんどん成長する! 味噌を「育てる」醍醐味
小島先生:冬に仕込んで、食べられるようになるのは9月頃。その間に桶の中の味噌をひっくり返す「天地返し」をしますが、たまに忘れることも(笑)。でも、それでもちゃんとおいしくできるみたいですね。味噌は結構な重さがあるので天地返しの作業にも労力が必要。だから、置いておくだけでできるのはいいですね。
昌子さん:私がすごいと思ったのは、発酵が進むほど味噌の味がどんどん変化すること。最初に味見したときには塩がとがって辛く感じたのに、翌月にはまろやかになっていました。
有紀さん:私は、若い味噌も発酵が進んだ味噌もどちらも味わいたかったので、半分を冷凍保存してこれ以上発酵しないようにしてみました。料理に使うなら明るい色の若い味噌だときれいですよ。
小島先生:冬に仕込んだ味噌は秋口には食べられるようになりますが、完成後も日ごとに発酵が進みます。ちょっとずつ味を見つつ、自分の好みの発酵具合を見つけるといいですよ。
みんなでやるから楽しい、手作り味噌の魅力
小島先生:料理教室では毎年15人ほどずつ集まって、計50人の方が味噌作りをしていますが、最初はスタンダードな味になる人がほとんど。そこから麹の量を変えたり、保存方法を工夫したりして、少しずつ自分の味を作っていきます。
有紀さん:毎年みんなで集まって仕込む日が本当に楽しみ。大豆をつぶす力仕事もみんなとやれば苦じゃないし、もうすっかり年間行事になっています。
昌子さん:手作りの味噌って、誰かに自慢したくなるんですよね。自宅に友人が来たときに「味噌作ってみたの!」って話のトピックになるし、「おいしい!」と言ってもらえるとすごくうれしい。おすそ分けし過ぎて、つい自分の分がなくなってしまうほどです(笑)。手作り味噌のおいしさに感動して、味噌作りを始める友人が増えてきています。
小島先生:普段自分が口にするものだからこそ、安心できるものにこだわりたいですよね。毎年の季節の行事として味噌を作るのは、日本人としてとても大切で楽しいこと。子供の食育にもぴったりだと思います。
味噌トークの後は、愛情たっぷりの「手前味噌」の味噌汁をひと口。一緒に食卓を囲むこの瞬間も、味噌作りの楽しみのひとつです。毎日の味噌で「自分らしさ」にこだわってみると、普段の食生活がもっとおいしく、愛おしくなるはず。
2016年、友人や家族と一緒に、自宅で味噌作りを始めてみませんか?
取材協力/小島喜和
テーブルトップディレクター。年に数回アメリカやフランスを巡り、その土地の伝統料理や伝統菓子を食べ歩き、研究。自身の料理教室では「味噌」や「梅干し」など、四季に合わせてさまざまな食品を手作りしている。『高知のおいしい料理帖』、『和の台所道具おいしい料理帖 使って覚える活用術』(ともに日東書院本社)など著書多数。
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