【連載】盛りつけにセンスが見える～祐真朋樹さん

阿闍梨餅には濃いめに入れた緑茶が合う。湯呑みは田中直純さん作。

僕の大好きな「阿闍梨餅」が伊勢丹新宿店で買える。

阿闍梨餅は京都に生まれ育った人なら誰でも知っている銘菓だ。阿闍梨餅を食べるたびに、僕は父を思い出す。僕が20歳のとき、父は63歳で肺がんを患い、余命半年と宣告された。その父がある日、「朋樹、阿闍梨餅買うてきて」と言った。

僕は出町柳の＜満月＞に阿闍梨餅を買いに行った。それまで父との仲は決して良好とは言えなかったのだが、がんがわかって以降、僕はすっかり親孝行モードに入っていた。親父と一緒に食べた、京都が誇る阿闍梨餅は、「うまっ！」のひと言だった。

そういえば、僕の事務所で打ち合わせをするとき、お茶うけに阿闍梨餅を出すこともある。そんなときは、なるべく手軽につまめるよう、ひと口大にカットしてぎんなん串を刺して出す。これなら打ち合わせしながらでも簡単につまめて手も汚さない。幸い、みんな気に入って食べてくれる。

今回、伊勢丹で阿闍梨餅を買おうとしたら、なんとレジに並ぶ僕の前後の人々もカゴに阿闍梨餅を入れていた。まさか3人揃って京都出身というわけでもなかろう。阿闍梨餅、全国的に愛されているのだなあと、嬉しい気持ちになった。

もちもちとした食感が最高！ トースターでカリッと焼いてもまた旨い。1個119円でみんなを幸せにしてくれる、父が大好きだった阿闍梨餅。最高なのである。

阿闍梨餅は程よい甘さの餡ともっちりした皮の組み合わせが絶妙。

※取扱い：伊勢丹新宿店

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