桜を追って東北へ。食の理想郷、鶴岡のお花見_01

東京が新緑につつまれる頃、東北の山や里はようやく雪の覆いをはずして桜前線の到着を待ちます。昨年、ユネスコ創造都市ネットワークの国内初の食文化部門認定を受けた山形県鶴岡市で、在来作物や食文化の魅力を発信している「山形食べる通信」編集長の松本典子さんが、山形の春を教えてくれました。

梅、桃、桜の花の競演。雪国、山形の春

山形の風土を愛し、最上川を描き続けた洋画家・真下慶治がこんな言葉を残しています。

「岸の柳が芽吹き、やがて梅、桃、桜が次々と花咲き、春を謳歌する。私も何からか開放された思いで、残雪の葉山のもとに咲く対岸の桜桃を好んで描くのである」 3月半ばまで雪のちらつく山形では、4月になると梅、桃、桜が一斉に咲き始めます。さらにリンゴや梨やサクランボなども次々と開花して、まさに百花繚乱!冬が長かっただけに喜びもひとしお、4月中旬にはあちこちで「桜まつり」が開催され、町の雰囲気も華やぎます。

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私の暮らす鶴岡市の、定番のお花見スポットは鶴岡公園。ここは旧庄内藩鶴ヶ岡城の城跡で、日本さくら名所100選にも選ばれています。ソメイヨシノをはじめ730本の桜が咲き乱れるさまは圧巻。

公園内には多くの出店が並びます。その中に、鶴岡ならではのフードがあるんです。それは「あんだま」と「キャンドルボーイ」。「あんだま」(別名きんつま焼き)は、水とき小麦粉をたこ焼きの鉄板で焼いたもので、中にはあんこが入っています。鶴岡のお祭りでは必ず見かける、いわば市民のソウルフード。行列ができていることも珍しくありません。「キャンドルボーイ」は、串に刺したウィンナーにお餅を巻きつけて揚げたもの。こちらは北海道と鶴岡のみで食べられているそうですが、とても人気があります。

周辺は江戸時代の和風建築「致道館(ちどうかん)」や明治初期のモダン建築「大宝館」といった文化財も美しく、屋台のフードをほお張りながら楽しくお花見ができます。夜はぼんぼりに照らされ、一転して幻想的な雰囲気に。お堀の水面に映る夜桜もムードがあります。

城下町ならではの風情で、桜を楽しむ川下り

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そしてもう一つ、鶴岡独自の桜の楽しみ方といえば「海坂(うなさか)桜小祭り」。鶴岡市出身の直木賞作家・藤沢周平さんの地元である庄内藩をモデルに描かれた、時代小説の舞台「海坂藩」の情緒を楽しむお祭りです。このお祭りでぜひ体験してほしいのが「内川の舟下り」。満開の桜の下、木舟に乗って、鶴岡中心部を貫くように流れる内川をゆっくりと下っていきます。和服の方は舟下りを無料で体験できるため、着物女子率も高く、水音に耳を傾け川面から桜を眺めていると、本当に江戸時代へとトリップしたかのような気分に。庄内平野の昔、城下町鶴岡をしっとりと感じることのできる、風情あるお花見なのです。

お花見の時期だけ開く、お米農家の絶品だんご屋

花と言えば団子、実は鶴岡には一年で一ヶ月だけひらくお団子屋さんがあるのです。市内日和田町にある「菅原だんご屋」と「サイトウだんご」の2軒。2軒は隣同士で、近くの橋の名前にちなんで「松の木橋の団子屋さん」と呼ばれ、連日行列ができるほど親しまれています。

朝8時半に「菅原だんご屋」さんを訪ねると、お店の中はすでにおだんごを待つ人で賑わっていました! だんご作りの手を絶えず動かしながら、店主のタミ子さんがお話を聞かせてくれました。

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「だんご屋を始めたのは私のおばあさんの頃からなので、60年以上にはなると思います。昔は行商の人たちがこの辺りをよく通っていたから、その人たちの休憩所としてだんごを作り始めたとのことです。」

菅原だんご屋のメニューは、上にこしあんがたっぷり載った「あんこ」と自家製の黒みつにからめた後、きな粉をまぶした「きな粉」の2種類、各100円。どちらも注文を受けてから仕上げます。

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「添加物を入れていないから、作り置きすると固くなってしまうの。毎日、その日の朝に粉をつくるところから始めて、先代から教わった昔ながらの作り方でおだんごづくりをしています。」

タミ子さんが嫁いできた1961年から変わらず、お米は自家製うるち米「はえぬき」100%の無添加。米をとぎ、乾かして、2度びきで粉にするなど、手間ひまかけた製法で、伝統の味を守ります。

「毎年必ず来てくれる人や、遠くからわざわざ買いに来る人もいるから、やっぱりおいしいと言われるだんごを作りたいと思っています」

こんなにおだんご作りに情熱を注ぐタミ子さんだけれど、5月には田植えが始まって農作業が忙しくなるため、営業期間は4/5〜5/5の1ヶ月間だけなのだそう。お米農家が作るおいしいおだんごに出会えるのも、米どころの鶴岡ならでは。

4月になると日本海から赤川を遡上してくるサクラマス、桜が終わる頃にやってくる孟宗竹(鶴岡は北限の産地で、タケノコの消費量は日本一)、本当に美味しい庄内米。在来作物では、芽の部分を食す「うるい」や「あさつき」が、浅漬けや酢味噌和えになって食卓に上ります。花と共に咲き誇るような色とりどりの郷土食も鶴岡の魅力。ぜひ春の鶴岡に訪れて、湧き出るような生命力を見て食べて体でたっぷり味わってください。

「菅原だんご屋」(鶴岡市日和田町8-48/TEL 0235-22-8882
営業時間:午前8時〜午後17時頃まで

山形食べる通信

『美しき、ミチノクの食文化』をコンセプトに2015年3月創刊の「食べ物付き情報誌」。編集長の松本典子、映画「よみがえりのレシピ」監督の渡辺智史、デザイナーで羽黒山伏の三浦雄大など、バラエティに富んだ制作チームで山形県の食の魅力を発信している。

文: 松本典子(山形食べる通信編集長)

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