2024.06.07
夏土用の丑の日はいつ? うなぎ(鰻)の温め方は? 関東、関西の焼き方の違い?【プロが解説】
2024年の「夏土用(なつどよう)の丑の日(うしのひ)」は、7月24日(水)と8月5日(月)。昔から土用の丑の日には「う」のつく食べ物が良いとされていますが、その代表格といえば、やはりうなぎ(鰻、ウナギ)ですよね。
でも、そもそもどうして土用の丑の日にうなぎを食べる習慣ができたのでしょうか? 関東と関西でのうなぎの蒲焼きの違いって…? 今回は「土用の丑の日」をはじめ、そんなうなぎにまつわる素朴な疑問を、東京・日本橋のうなぎ専門店<日本橋いづもや本店>の三代目、岩本公宏さんにきいてみました。
意外と知らないうなぎの知識から、テイクアウトうなぎの美味しい温め方、2024年の夏土用に日本橋三越本店で買えるうなぎ弁当のご紹介まで、情報盛りだくさんです。ぜひ最後までチェックしてみてください!
▼うなぎの関連記事もチェック!
【プロが解説】うな丼・うな重、並・上・特上の値段の違い、旬はいつ?の記事>>
目次
▼「土用の丑の日」って何? うなぎの歴史と食べ方の変化とは
・「土用の丑の日」とは、いつのこと?
・「うなぎを食べる夏土用」が広まったのは?
・うなぎを食べるようになったのは、いつから?
▼東西で異なるうなぎの蒲焼きのスタイルとは? 地域ごとに食べ方に違いも
・関東と関西で食べ方が違う?
・全国のご当地うなぎ料理とは?
「土用の丑の日」とは? うなぎの歴史と食べ方の変化とは
●「土用の丑の日」とは、いつのこと?
「土用」とは、中国で生まれた暦「二十四節気」の補助的な節気として、日本で生まれた独自の暦「雑節(ざっせつ)」のひとつ。雑節には「土用」のほかに「節分」「彼岸(春、秋)」「入梅」「半夏生」「八十八夜>>」などがあります。実は「土用」とは夏に限らず、四季ごとに定められているもので、立春、立夏、立秋、立冬前の18日間の期間が土用にあたります。そのうち、立秋前の18日間が「夏土用」というわけです。
「丑」とは、十二支の「丑(うし)」のこと。昔の暦では日付を十二支に当てはめ、「子(ね)の日」「寅(とら)の日」など、12日周期で数えていました。その土用と丑の日が重なる日が、「土用の丑の日」というわけです。
ちなみに立春とは、中国で考案された暦の区分方法「二十四節気」に基づく、春の節目のひとつ。1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれ6つに分けて名前がつけられ、春は「立春、春分」、夏は「立夏、夏至、大暑」、秋は「立秋、秋分」、冬は「立冬、冬至、大寒>>」などがおなじみです。
「土用の丑の日は毎年変わり、2024年の夏土用の丑の日は、7月24日(水)と8月5日(月)の2回です。12周期の暦とはズレが生じるため、周期が合えば、18日の間に2回『丑の日(一の丑、二の丑)』がある年もあります。」
●「うなぎを食べる夏土用」が広まったのは?
四季それぞれに設けられている「土用の丑の日」ですが、特に「うなぎを食べる夏土用」が広く知られるようになったのはどうしてなのでしょうか? 諸説ありますが、通説として広く知られているのは、江戸時代中期に蘭学者・平賀源内が考案したキャンペーンです。
「養殖技術がなかった当時は、うなぎといえば天然もののみ。天然のうなぎは、夏は痩せて細く、脂ものっていないので、あまりおいしくないんです。夏に売り上げが下がることに困ったうなぎ屋が、平賀源内を頼ったと言われています」
そこで平賀源内が提案した「夏土用の丑の日に、精がつくうなぎを食べよう」というキャンペーンが大当たり。以降、夏土用の季節になると、毎年うなぎ店がこぞって店先に看板を出すようになったため、夏土用にうなぎを食べるという習慣が根づいたと言われています。
●うなぎを食べるようになったのは、いつから?
平賀源内が生きた江戸中期にうなぎのキャンペーンを提案していることから、その当時、すでにうなぎが一般的であったことが分かりますが、さらに時代を遡ると、いつごろからうなぎを食べるようになったのでしょうか?
「日本では、うなぎは5千年ほど前から食べられていたようです。縄文時代の貝塚からも骨が見つかっています。ただし、食べ方は現在の蒲焼きのスタイルとは違い、身を開かずにそのまま棒を刺して焼いたものでした。<日本橋いづもや>本店で提供しているメニュー『蒲(がま)の穂焼き(写真)』は、そんな古(いにしえ)の時代の形と味を再現したもの。味付けは塩のみ。素朴ですが、タレとは違ったおいしさがありますよ」
5千年も前から食べられていたなんて、歴史の長さに驚きます! その後、現在一般的な蒲焼きの形になるまでは、江戸時代まで待つことに…。
「蒲焼きが誕生したのが江戸の中期、今から200年くらい前のこと。平和な世の中になり、江戸城下で歌舞伎や能、浮世絵などの伝統文化が発達するのと同時に、食文化も花開いたのですね。当時、うなぎは庶民の食べ物でした。まずはうなぎを開いてみよう、焼くと丸まってしまうから串を打ってみよう、脂が多いのは江戸っ子には受けないから蒸してみよう。そんな探求心から少しずつ現在のスタイルに近づいてきて、さらに三河(現在の愛知県東半部)から入ってきた三河みりんと、下総(現在の千葉県北部と茨城県西部近辺)の醤油からタレが生まれて…といった流れではないかと想像しています」
東西で異なるうなぎの蒲焼きのスタイルとは? 地域ごとに食べ方に違いも
●関東と関西でうなぎの食べ方(さばき方、タレの味)が違う?
うなぎのかば焼きの作り方や味付けは東西で異なるといわれます。具体的には、何が違うのでしょうか?
うなぎのさばき方の違い。背開き?腹開き?
「関東は背開き、関西は腹開きというのが、まずは大きな違いです。江戸時代、武家社会の関東では『切腹』を想起する腹開きは敬遠され、商人社会の関西では『腹を割って話す』ことが好まれ腹開きが受け入れられた、という説もあります」
調理の面でも、このスタイルの違いは理にかなっているとか。
「関西のうなぎのかば焼きは開いたらそのまま直火焼きをするのに対して、関東のうなぎのかば焼きは一度蒸してから(写真)火を入れます。蒸すことでより身がやわらかくなるからです。背開きだと厚みのある背の部分が外側にくるため、そこに串が刺せるので安定し、蒸したあとも身を崩さずに焼くことができるんです」
東西ではタレの味わいの違い。みりんや砂糖で甘め? しょうゆですっきり?
さらに、東西ではタレの違いもあるのだとか。
「タレは西にいくほど甘く、東にいくほど甘さは控えめで塩気がたつ傾向があります。九州などは醤油自体が甘いですし、みりんと醤油のほか、水飴で甘みを足す地域もありますね。とはいえ現代では地域差が薄まり、関東で関西風のうなぎが食べられたり、関西で関東風のうなぎを出したりするお店も増えましたね」
★スマートフォンなどの場合、表をスクロールさせて閲覧してください
地域 | うなぎの開き方 | うなぎの火の入れ方 | うなぎのタレ |
関東 | 背開き | 蒸してから焼くことでふっくら仕上げる | 甘さは控えめな傾向 |
関西 | 腹開き | 直火焼きすることで、パリッと香ばしく | 甘めの傾向 |
●全国のご当地うなぎ料理とは?
中部地方の愛知県名古屋の「ひつまぶし」をはじめ、各地域にはその土地ならではのうなぎ料理も。代表的なご当地うなぎ料理を紹介します。
★スマートフォンなどの場合、表をスクロールさせて閲覧してください
地域 | うなぎの料理名 | 特徴 |
愛知県名古屋市近辺 | ひつまぶし | 蒲焼きにしたうなぎを切り分け、お櫃などに入れたご飯に乗せたもの |
福岡県柳川市近辺 | せいろ蒸し | 蒲焼きのタレをまぶしたご飯の上にうなぎの蒲焼きと錦糸卵をのせ、蒸し上げたもの |
滋賀県の湖北地方 | うなぎのじゅんじゅん | うなぎをすき焼き風に調理した鍋料理 |
静岡県 | ぼくめし | うなぎとごぼうを米と一緒に炊いた炊き込みご飯 |
大阪市内 | 半助豆腐(はんすけどうふ) | 蒲焼きにしたうなぎの頭を豆腐と一緒に煮た煮物 |
関西全域 | まむし | うなぎの蒲焼きを炊き立てのご飯の間に挟み、余熱で蒸したもの |
これだけの多様なうなぎ料理があるなんて知りませんでした! どれも個性的で食べてみたくなります。
テイクアウトのうなぎをおいしく食べる「温め方」の秘訣は?
●テイクアウトのうなぎの美味しい温め方は?
テイクアウトで購入したうなぎの蒲焼きを自宅で温め直す場合、電子レンジにかけるとうなぎの身がかたくなってしまいがちです。おすすめの方法はあるのでしょうか?
「おすすめは、炊き立てアツアツのご飯にうなぎをのせ、ふたやラップをふんわりかけて、ご飯の蒸気で温めるという方法。うなぎは身が薄いので、ご飯の余熱であっという間に温まります。また、買ってきたうなぎは冷蔵庫に入れる前に食べるのがベストですが、一度冷蔵庫で冷やしたうなぎをいただく場合は、常温に戻す程度に電子レンジで数秒ごく軽く温めたあと、同じように炊き立てご飯にのせて蒸らすと良いでしょう」
そのまま炊き立てご飯の上にのせるだけで美味しくいただけるなんて、手軽ですね。ちなみに真空パックの場合は、表示にしたがってパックごと湯煎にかけて温めるのがおすすめとのこと。
では、うな重やうなぎ弁当の場合は、どうでしょうか?
「うな重やお弁当の場合、少し手間ですが一度うなぎとご飯を別々に分けて、電子レンジでご飯のみをしっかり温めます。そのあと、うなぎをご飯に戻してのせ、蒲焼き同様にご飯の蒸気で温めるか、うなぎだけを少し温めて、熱々のご飯に乗せていただくのが良いでしょう」
自宅でおいしく食べる方法を教えてもらったところで、最後に日本橋三越本店の店頭でテイクアウトできる<日本橋いづもや>の人気メニューを紹介します!
【日本橋三越本店のテイクアウト】で土用の丑の日に食べたい<日本橋いづもや>のうなぎ弁当
<日本橋いづもや>では笹、竹、松、桐、葵まで、大きさの異なる5種のうなぎ弁当をご用意。日本橋三越本店の店頭で購入できます。
国内最大のうなぎの養殖地である宮崎や鹿児島を中心に九州産の活鰻を仕入れ、三越内の店頭に併設された厨房で、関東風の伝統スタイルに則り、割き、串打ち、素焼きの工程を経て、せいろで蒸し上げたあと炭火でじっくり焼いています。丁寧に仕上げたうなぎは、ふっくらとした身と皮目の芳ばしさがたまりません! 1尾丸ごとサイズの蒲焼きがのせられた松を含め、蒲焼きとお弁当は全て、お客さまからのご注文を受けてから焼き上げます。
ご飯はお店で提供するうな重と同じく、甘辛いタレを引き立たせる宮城県のひとめぼれを使用。タレをかけても水っぽくならないよう、炊き加減にもこだわっているとか。ご飯、タレ、うなぎの三位一体を楽しめるお弁当。土用の丑の日に相応しい美味しさを、ご自宅でぜひ!
※取扱い:日本橋三越本店 本館地下1階 和惣菜
三越伊勢丹オンラインストアで<日本橋いづもや>の商品をみる>>
うなぎについての背景を知ると、一層じっくりと味わいたいという気持ちが湧いてきますね! 2024年の土用の丑の日は、いつもとはひと味違う気分でうなぎ料理を楽しんでみてください。
▼うなぎの関連記事もチェック!
【プロが解説】うな丼・うな重、並・上・特上の値段の違い、旬はいつ?の記事>>
取材協力/日本橋いづもや本店
初代、岩本六右衛門が昭和17年(1942年)にはじめ、戦時中に一時中断するも、戦後、現在と同じ日本橋本石町の地で再開。本館と隣接する別館のほか、日本橋三越本店に店を構える。岩本氏は3代目。うなぎの食文化を絶やさぬよう、初代からの味を引き継ぎながら、さまざまな新しいうなぎ料理を提供している。
店舗のご案内について
記事でご紹介している<日本橋いづもや>は、日本橋三越本店 本館地下1階、三越伊勢丹オンラインストアにてお取扱いがございます。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Ranking
人気記事ランキング