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2015.07.26

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_1

もっと気軽に、もっと身近に茶道を楽しむ方法はないの? お茶に興味はあるけれど、なかなか自分から飛び込みにくいと感じている方におすすめしたい「テーブル茶の湯」というスタイル。

遠州茶道宗家の内弟子を経て、自由な茶の湯を追求する若き茶人・SOTOさんに、お茶の点て方、いただき方など、気軽に楽しめる現代流のお点前を教えていただきます。今回は、<源吉兆庵>がプロデュースする伊勢丹新宿店本館5階のリビングフロアにある、「世界に通じる日本」を表現するカフェ『賚果|RAIKA』のモダンな和空間のテーブルでお点前いただきました!

「テーブル茶の湯」は、人を心地よくもてなす現代の創意工夫

今回のような略式でカジュアルに楽しむ場合「茶道」ではなく「茶の湯」と呼びたいとSOTOさん。西洋の人たちを茶道に招くために考え出された『立礼(りゅうれい)式』ともまた異なり、時代が畳文化からテーブル・椅子の文化に移ろうなかで、「人を心地よくもてなしたい」という想いから創意工夫してできあがったスタイルと言えるとのこと。

「茶文化が中国から伝わったばかりの当時は、今で言うお点前のような体系的なものではなく、それこそ、茶碗の中の抹茶を匙でぐるぐるかき混ぜていたと言われています。現在使われているような茶筅(ちゃせん)もまだ生まれてないですし、抹茶をかき混ぜるだけで成立していたんですね。江戸中期の頃には抹茶の生産量もあがり、茶人が増え、亜流の茶人もたくさん出て来ました。そこでそのような茶人たちと差別化をするために『家元制度』は確立されていきました」

家元制度ができたことで、お点前も次第に体系化されていくのですが、それまではそれぞれの思いで、お点前の作法を作ったり、道具を作ったりして楽しんでいたのだそう。

「どの時代でも変わらず大事なことは、客人のためにお茶碗を温めて、お茶を点てるということ。とても当たり前でシンプルなことですが、これだけは時代を経ても変わらない茶の湯の原点と言えます」

外す楽しみ。お点前をさらにシンプルにするには?

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_2

自宅でのお点前に限らず、客先や野点(のだて)などでもお茶は楽しめます。気軽にテーブルの上でお茶を点てるのに必要な物はなんでしょう。

「究極は茶碗と茶筅があれば、お茶は点てられますが、一般的には茶碗、茶器(棗=なつめ)=代用可能)、茶杓(ちゃしゃく/スプーンでも代用可能)、茶筅、茶巾、そして湯を捨てる建水(ボウルでも可能)です。これらを盆に揃え、置きあわせます。茶を点てるための湯は、ポットで代用してもかまいません。ただ、ポットのままですと高温のままですので、それをおさめるために、一度湯こぼしなどを介してから茶碗にそそぐのも、相手への気遣いと言えます」

それでは、お茶を一服

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_3

①お茶を点てる道具をテーブルに置きつけ、茶碗と道具を仕込んでおきます。
②椅子についた客人の様子を見計らって、亭主は「薄茶一服、差し上げます」と声をかけます。
③茶器を左に移動し、中に仕込んだお道具を1つずつ出していきます。順番は、茶筅(ちゃせん)や茶巾を出す際に茶杓(ちゃしゃく)が邪魔なので先に移動させます。そのあとは茶筅、茶巾の順に移動。茶筅を右上に、茶巾をその下に置きます。

これですべてがなくなったので、用意が整いました。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_4

④まず、客人のことを想って茶碗を温めます。どの時代においても茶道の揺るぎない原点です。手に茶巾を持ち、茶碗に添えながら持ち上げ、お湯を茶碗の縁のところまで行き渡らせながらゆっくり時計回りに「一周だけ」させます。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_5

⑤温めたお湯を建水に捨て、濡れた茶碗の縁を茶巾で拭きます。120度ずつずらしながら3回繰り返すとちょうど1周、茶碗の正面が元の位置に戻ります。最後に茶碗の中を拭いたら、茶巾を畳み直して元に戻します。茶碗も温まり、道具も清められたので今度は手を清めます。
⑥水が無いところで手水をして手を清めることを空手水(からちょうず)と呼びます。両手の薬指に「水」の意味があるので左手の真ん中まで右手をずらして重ね、それぞれの薬指の水を意識しながら揉み手(空手水)をします。

これで手が清められたのでお茶を入れます。

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⑦茶碗の中に抹茶を茶杓で「2すくい半」入れます。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_7

⑧茶杓で三の字を描きます(三随)。三随を描いたら茶杓で茶碗を2回叩いて、茶器に蓋をします。

⑨茶碗に沸いたお湯を入れる。2口半で飲むくらいの量を意識します。

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⑩茶筅を右手に持って、最初は茶碗の下の方から大きく混ぜ、大きい泡がたったら、茶筅を少しずつ上に持ち上げながら大きい泡を消すようにします。大きい泡がすべて消えたら手を止め、茶碗の真ん中から茶筅をゆっくりもちあげて、出します。

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⑪客人に茶碗の正面が向くように、90度ずつ2回まわし、客人にお茶を出します。

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⑫客人は、右手で茶碗を持って、左手で受けます。茶碗を手に納めたら、茶碗の正面(持ち主が一番愛しているところ)を自分の口で汚さないために茶碗を時計回りに90度回すこと。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_11

⑬客人は一口いただいたらご感想を。あとはお好きな具合で飲みます。飲み終わったら、右手の人差し指で右から左、そのあと同じく右手の親指で左から右として、飲み口を拭います。

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⑭客人は飲み終わった茶碗の正面を元に戻すため、茶碗を半時計まわりに90度まわします。
⑮点ててくれた相手に向けて、その茶碗の正面を戻すために時計回りに90度ずつ2回まわします。出された位置に茶碗を戻します。
⑯亭主は茶碗を右手で取り、左手で受け、盆に置きます。そして湯で茶碗を軽く清めて「いま一服いかがでしょうか?」と客人に声をかけます。

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客が「大変美味しく頂戴しましたので、いま一服お願いいたします」と言えば亭主は同じようにお点てします。十分であれば、「十分頂戴いたしましたので、どうぞお仕舞いください」と返されます。

亭主は「仕舞わせていただきます」と言い、茶碗にお湯を注いで茶筅と茶碗を清め、お湯を捨てます。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_14

1番最初の茶碗を仕込んだ状態に戻します。

亭主「お退屈でございました」のご挨拶で、お茶の点て方、飲み方は終了です。

初心者からの、茶の湯の心得を教えてください

茶の湯において何が大切かというと、相手が差し出したものを、自分の歯を使わずそのまま飲み込むという行為にすべてが集約されているように感じます。茶の湯には、煙管(キセル)、会席料理、酒、など様々なものが登場しますが、噛み砕いたりせずにそのまま飲むということは、相手を信頼していないとできないことなんです。茶が最も盛んに行われた室町時代末期などは誰が何をいれてくるかわからない。それでも茶をいただくということは、「あなたを信頼していますよ」という意思表示でもあり、いただく行為そのものが信頼の証なんです。そのような無言の会話が、人と人とのコミュニケーションにおける原点でもありますよね。

また相手や場によってどんな対応もできるけれど、持てる技術や経験を常に全部出していたら相手が胸焼けするので、いかに削ぎ落としてシンプルにするかも大切なポイントです。大切なのは何事も「これだ」と決め込まないことです。仮に「これだ」と感じても、それを最終地点にせず、常に柔軟に対応できるようたくさんの引き出しを開け閉めできることが大切です。

お茶菓子選びでおさえるべきポイントは?

大切なのは、自分がお点前する時々のテーマに合わせて用意することです。生菓子とお干菓子の連携で物語をつくるのもよいですね。節句にあわせたり、個人的な行事やお祝いごとなど、それぞれのテーマに沿って用意しますが、何よりもまずその人を想って用意したことが相手に伝わることが大切です。

茶人SOTOさんの「テーブル茶の湯」入門_15

逸品紹介

嘉門工藝『更紗の数寄屋袋』

高度な伝統技術を現代の暮らしに繋ぐことで定評のある嘉門工藝の手による数寄屋袋(すきやぶくろ)。茶席には欠かせない数寄屋袋は職人がひとつひとつ手仕事で仕上げ、上質な麻の生地と留め具の水牛の角が高級感を表現します。大きいサイズは古帛紗(こぶくさ)をたたまずにそのまま入れられるサイズ。 インド更紗などの珍しい裂地(きれじ)を使ったもので、バッグ イン バッグとしても使える商品です。 これからの季節に向けて爽やかな色合いのアイテムをを多数揃えています。
【サイズ 小:タテ13×ヨコ22cm 12,960円/大:タテ17×ヨコ25cm 19,440円】

SOTOさん

SOTO

遠州流茶道宗家の内弟子として修行、宗道の号をうける。独立し、茶人SOTOの名で、洋の東西をまたいだ文化の交流と、茶の湯に親しむ場をつくり続けている。

文: 松浦明

写真:鈴木慎平

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品(数寄屋袋)は、伊勢丹新宿店本館5階=茶道具コーナーにてお取り扱いがございます。
色、柄は他にも多数ございます。写真掲載の商品は数に限りがありますのでご了承ください。
また、お電話注文(伊勢丹新宿店 電話03-3352-1111大代表)でもお買い求めいただけます。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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