Foodie(フーディー)は、三越伊勢丹グループが運営する食のメディアです。

2015.07.16

スイーツ

口の中でふわりとほどける 老舗「京菓司 岬屋」の絶品「水ようかん」

蒸し暑い夏は、冷たくてさっぱりしたデザートが食べたくなりますよね。つるりとしていて喉ごしがよく、見た目にも涼しい水ようかんは、昔ながらの日本の甘味。数ある水ようかんのなかでも、はるばる遠方からお客さまが訪れるほど高い人気を誇っているのが、東京・富ヶ谷にある「京菓司 岬屋」です。創業80年、老舗が作るおいしい水ようかんの秘訣を、店主の渡邊好樹さんに伺いました。

初代から受け継いだレシピを現代に合わせて微調整

「京菓司 岬屋」の目印、鳥獣戯画ののれん画像

住宅街を少し歩いたところに、その店はあります。「京菓司 岬屋」。書家の方が書いた趣のある看板と、鳥獣戯画ののれんが目印です。店主の渡邊好樹さんは3代目にあたり、30歳で2代目のお父様の跡を継ぎました。以来、約40年にわたって水ようかんを作り続けています。

水ようかんの作り方は、じつにシンプル。水と寒天を熱して溶かしたら、砂糖と餡を加えます。沸騰する直前に火を止めたら冷まし、型に流し入れて固めます。

キーになるのが、寒天の量。絶妙なフルフル感を出すためには、細かな条件が変わるごとに微調整が必要だと言います。小豆や寒天の産地が変わった場合はもちろん、ようかんのサイズによってもちょうどいい固さが変わってくるため、レシピの配合を変えていくのです。

それに対して、意外なことに「材料」にはこだわらないんだそう。

「小豆は北海道産ですが、本当に普通のもの。材料にこだわる意識はまったくないんです。こだわるのは『技術』と『知識』ですね」と渡邊さんはきっぱり。どんな材料でもおいしく仕上げてみせるという矜持が感じられます。また、技術のみならず、食材の情報など日々知識を更新することも欠かせないんだとか。

「ベースとなるレシピは初代から受け継がれていますが、ここまで積み上げてきた歴史を壊さないように、日々微調整しながら味を再現しているんです」

守りすぎず、変えすぎず。日々、淡々とおいしい和菓子を作り続ける。その姿はすがすがしくすらありました。

やさしく上品な甘さに惚れる 絶品水ようかん

「京菓司 岬屋」の水ようかんを黒文字で切っているところの画像

ではさっそく、岬屋さんの水ようかんをいただいてみましょう。

「岬屋」の水ようかんは、5月中旬から9月中旬までの季節限定商品。こしあん、つぶあんと、白小豆を使ったこしあん、つぶあんの全4種類です。

最近はカップ入りで手軽に食べられるタイプも多いですが、こちらの水ようかんは切り分けていただく棹タイプ。水ようかんといえばやわらかいイメージでしたが、岬屋さんのようかんは切り分けてお皿にのせても、しっかりと立ってくれます。

京菓司 岬屋」の水ようかんを黒文字で食べているところの画像

ある程度の硬さのおかげで黒文字もスッと刺さるのに、口に入れるとなめらかにほどけていく……。なんて絶妙なバランス! 品の良い甘さに、思わず目を閉じて感動してしまいました。

こしあんに次いでつぶあんをいただくと、小豆の粒をしっかりと感じ、噛むほどに風味が際立って感じられます。「やっぱりあんこ好きが選びますね」とのこと。「ここまで白く仕上げるのもなかなか難しい」という白小豆は、小豆よりややあっさりめ。

食べ比べてみると、その違いがよくわかります。あっさり目か、しっかり目か、好みで選べるのもうれしいですね。

『餡作り』が水ようかんのクオリティを左右する

先ほど述べたように、水ようかんの作り方は極めてシンプル。材料も餡に砂糖、水、寒天と最小限なので、「餡の質がそのまま味に出る」と渡邊さんは話します。

「結局、和菓子は餡作りがすべて。良い餡ができないと、おいしくならないんです」

とはいえ、餡作りは労力がかかり、技術が必要。そのため、製餡から行っている和菓子屋は少ないのだとか……。ですが、渡邊さんは『手作り』にこだわり、毎日20kgの餡をお店で作り続けています。

「炊き具合が気に入らないとやり直すこともあるんですよ」と、渡邊さんの奥さまがこっそり教えてくださいました。水ようかんといえば、シンプルにそのままいただくことが多いですが、「変わった食べ方はありますか?」と尋ねると、「生クリームを添えるとおいしいですよ」という答えが。

生クリームをかけた「京菓司 岬屋」の水ようかんの画像

「ようかんが甘いので、生クリームは砂糖抜きで。餡と乳製品は相性がいいんです」

確かに、パンやスイーツだと餡にバターやホイップクリームを合わせたものもありますよね。ちょっとおしゃれな趣は、お客さまのもてなしにも喜ばれそうです。

つるりとしたのどごしだけに、ついサラッと食べてしまいがちな水ようかんですが、実は職人の力量が試されるものだったとは……。ある意味、和菓子の神髄ともいえそうです。そう思うと、大切に味わっていただきたいなと感じますね。

暑い夏は水ようかんに涼をもらいながら、日本の文化に想いを馳せるのもいいかもしれません。

文: 西島恵

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

本記事でご紹介している商品の一部(水ようかん こしあん/つぶあん のみ)は、8月13日(木)までの毎週木曜日限定で、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵にてお取扱いがございます。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。