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2015.07.19

読み物・コラム

「tabel」で知る、日本の薬草の滋味深き世界

薬膳、薬草茶。大陸からの古い知恵を受け継ぐ薬膳の世界。中国古来の知の体系を、あえて日本の植物にこだわって「国産の薬草茶ブランド」を展開する『Tabel』の新田理恵さんに薬草の魅力を寄稿していただきました。

日本薬草茶との出合い

植物は、ヒトが文明を持つ前から類人猿たちの健康を支えてきました。過去には聖徳太子の作った施薬院、織田信長が開いた伊吹山の薬草園、徳川吉宗の生薬国産化政策など、歴史上の名だたる人物もまた、植物の力を強く信じていました。いつの時代も「健康」は人類の永遠のトピックであり、民の健康は常に国の重要課題であったため、彼らは植物の力を借りて健やかな社会を作ろうとしたのです。

これまで栄養学と薬膳学を学んできた私は、いかに日本の食文化をアップデートできるかを考えているうちに、それぞれが個性的で愛らしく、パワフルな薬草と呼ばれる植物たちに、だんだんと惹かれていきました。しかし、ここ日本において、戦後以降の世代には残念ながら薬草の文化はあまり語り継がれていません。けれど、私たちの周りにある身近な植物たちは、実はものすごいパワーを秘めているのです。

「とっても面白いのに、もったいない!」

薬草への興味がどんどんと募り、私の長い薬草探しの旅がはじまりました。

全国津々浦々、薬草探しの旅路へ

はてさて、薬草に関わる国内の活動や状況、国産商品は、インターネットではなかなか探し出せません。それでも、ローカルな場所へ赴くと、たくさんの薬草に出会うことができました。まずは九州へ、そして四国、近畿、東北、北陸、沖縄へと、全国津々浦々のフィールドワークの旅へ向かったのです。

「tabel」で知る、日本の薬草の滋味深き世界_2

まず出向いたのは、薬草文化や薬草産業が今なお盛んな沖縄や九州。位置的に中国と近く、大陸文化の影響を強く受けているのが、その理由のひとつではないかと思います。

特に、大小さまざまな島からなる沖縄県は、昔は医師が常駐できない集落も多かったといいます。まれに現地を訪れる医師が、いざという時に役立つ身近なところにあるものを使った民間療法を授けていったことから、「自分の健康は自分で作る」という意識が強く根付いているのです。

今でも沖縄では、日頃からウッチン茶(うこん茶)やさんぴん茶(ジャスミン茶)などの薬草茶が愛飲されています。

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そんな沖縄県で出会った薬草の活動や仕事に取り組む人々は、魅力的な方ばかり。自分たちの地域のコミュニティや文化を誇りに思い、あるがままの自然や生態系を愛し、それを守ろうとしている方を多く見受けました。

すっかり彼らのファンになり、「彼らと共に生きる社会を作りたい」と強く思った私は、横のつながりを生む「風」のような存在になるべく、月に1度の薬草の旅を続けながら薬草茶を作り、深くカラダに根付いた各地の文化を紹介していくことにしました。それは、よそものである私だからこそ、まずはできる役割ではないかと思ったからです。

地域に根付く、薬草の知られざる知恵

日本の多様な気候に育まれ、各地にはたくさんの薬草が存在します。たとえば、カキドオシ(連銭草)。

畑の脇にこそっと生えていることが多く、九州や本州でよく見ることができます。シソ科の仲間のため、ミントに似た爽快な香りが特徴。のぼせるような夏の暑さの時でも、カキドオシのハーブウォーターがやさしく体をカラダをさましてくれます。

昔より婦人のカラダのトラブルや冷えには、当帰(トウキ)を食すことも多かったようです。

漢方のメッカを目指す奈良県で栽培が進められていますが、生のリーフを食べてみるとセロリのような芳香で、とってもおいしいのです。実はトマトやクリームとの相性が抜群で、我が家ではよく洋食料理に使っていますが、食べると冬でも汗ばむくらい、ぽかぽかと体が温まってくるのです。

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そして蓮の葉茶は、ベトナムでも日常的なお茶として親しまれています。あの絶世の美女として歴史に名を残す楊貴妃が美容茶として飲んでいたという伝説もあり、薬草茶の中でも人気があります。すっと気持ちを和らげ、お腹の調子を整えてくれる「癒し系」のお茶。お茶以外にも、中華おこわを包む葉にもなり、また実の部分はそのまま薬膳料理で使われます。

日々の暮らしに薬草を取り入れるには?

薬膳、薬草と聞くと、「苦そう」といった印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。けれど、百聞は一味に如かず? 薬草と呼ばれる植物には、実はびっくりするほどおいしいものもあるのです。もちろん苦みが強いものもありますが、やはりその植物をカラダが欲しているとき「案外おいしい」と言われることも多かったりもします。

自然体の植物たちに触れていると、季節のめぐりや新たな土地とのつながりを感じはじめます。そして、いつもは我慢しがちな自分のカラダも、リラックスして、ゆっくりと自身に語りかけてくれるのです。

毎日の暮らしの中で、ついつい自分のカラダのことは後回しにしてしまう。そんな頑張り屋さんにも、薬草茶なら手軽に生活に摂り入れられます。また基本的にノンカフェインなので、胃の弱い方や寝る前にも、おすすめなんですよ。

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「石垣島の香り華やか月桃茶」
鹿児島県南部から沖縄県にかけて、郷土菓子にも使われるポピュラーな植物、月桃。
ショウガ科の仲間のため、後味にキレの良さが残る独特の香りと甘みが特徴。ほんのりイヌビワを加えて。

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「霧島のカキドオシとハトムギ茶」自然豊かな霧島で育った天然のカキドオシ(連銭草)に、香ばしくしっかり焙煎した無農薬栽培のハトムギなどをブレンド。カキドオシのミントのようなすっきりした味わいが特徴で、夏にぴったりの爽やかなお茶。

薬草を楽しむことは、自分へのご褒美。そして、大切な人のカラダを慈しむ愛情表現のひとつとして、植物の底力を食卓に添えてみてはいかがでしょうか?

「tabel」で知る、日本の薬草の滋味深き世界

新田理恵/食卓研究家

武庫川女子大学食物栄養学科を卒業後、フードコーディネーターとしてE•recipeに就職。現場で写真家から撮影を習ったことがきっかけで、写真表現大学総合科に入社。その後、薬膳に目覚めて中医国際薬膳調理師を取得し、独立。2014年から日本の薬草やローカルの魅力を伝えるコミュニティ「tabel」を始動。

文: 新田理恵

写真:新田理恵

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