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2015.05.26

読み物・コラム

料理は油で変わる! モダンチャイニーズのシェフが教える「油とのつきあい方」

油といえば、料理の要ともいえる存在。みなさんのご家庭には普段何種類の油が常備されているでしょうか? 最近は手に入る油の種類も増えて「入手したはいいけれど使いこなせないまま酸化させてしまった!」……なんて話もよく耳にします。そこで、なんと10種類もの油を使い分け、繊細でヘルシーなヌーヴェル・チャイニーズの世界を作り出す「Chinese Tapas Renge(チャイニーズ・タパス・レンゲ)」のシェフ・西岡英俊さんにお話を伺いました。原点は油が苦手だった、という経験! 油との上手なつきあい方、教えてください。

苦手だからこそこだわり、編み出した繊細な油の使いわけ

揚げ物をするチャイニーズ・タパス・レンゲのシェフ・西岡英俊さんの画像

新宿御苑のモダンチャイニーズの名店「シェフス」の故・王恵仁氏に師事した後、料理長を経験。その後に独立し、オーナーシェフとして腕を振るう西岡さん。油を多く使うイメージの中華料理のシェフですが、なんともともとは油が苦手だったといいます。

「僕らがまだ育ち盛りだった時代、一般の家庭でよく使われていた油って結構胃に重たいものが多かったんです。僕らの世代にとって揚げ物は家庭料理の象徴みたいなもので、母の味といえばコロッケとか鶏の唐揚げとか、いまでは惣菜専門店で買われるおかずの代表格の料理でした。でも大人になるほど、そういう重たい油が体調に影響することを実感するようになり、できる限りカラダに負担をかけない油にこだわるようになったんです。いま、お店でよく使う油は10種類くらい。気づけばこれだけの数になっていました。トラディショナルなフレンチの厨房ならこのくらい常備していると思いますが、確かにチャイニーズの店では珍しいかもしれませんね」

10種の油がすべて植物油のみのワケは

たとえばコロッケにラードとか、フライドポテトはアヒルの油で揚げると旨みがのって美味しいとか「動物油」支持の声もしばしば耳にしますが、西岡さんがこだわるのは俄然「植物油」。お店で人気の春巻も、一般的には胃にヘビーなイメージのものが多いのですが、西岡さんの手にかかると全く別ものに。極めて衣が軽く、冷めてもサクサクとおいしいままなのです。その秘密はやっぱりこだわりの「植物油」にあるのでしょうか?

「うちの店では豚や鶏などの素材から自然に出てくる脂肪以外は動物性の油は使っていません。それを差し引いたとしても、使う油は98%が植物油です。やっぱり胃に断然軽いですよ。あと、リノール酸やビタミンE、最近ではオメガ3とか6とか、植物油は適度に摂る方がカラダの巡りを良くするという話もありますよね」
10種の油の中でよく使うのはグレープシードオイルだそう。無香でクセがないので燻製油やネギ油など、香りを油に移して使うのがこの油。粘度が低く冷蔵しても固まらないため食材をマリネして冷蔵保存する時にも活用できるのだそうです。
「グレープシードオイルの次によく使うのは綿実(めんじつ)油。この油は基本、揚げ物に使っています。油の切れがよいので胃に軽く、揚げ物が冷めても衣がサクッとしておいしくいただけるのがこの油の特長です。一番多く使うのでボトルではなく一斗缶で仕入れています。ちなみに、綿実油よりさらにもっと軽く揚げたい方には、ちょっと高いのですが米油がおすすめです」

揚げ物の中でも特に人気の「芹と千糸の春巻 ボッタルガ」の画像

取材中に揚げていただいた「芹と千糸の春巻 ボッタルガで」は、揚げ物の中でも特に定番人気を誇るひと品。撮影を終えて実際に冷めてしまったはずの春巻は、驚くほどサクサク。

10種の油の中には一般家庭にも馴染み深いオリーブオイルやゴマ油も含まれていますが、これらベーシックな油を上手に使いこなすポイントとは?

「まずオリーブオイルは2種類、イタリア産のやや廉価なものと、タスマニア産のフレッシュオリーブオイルを使っています。特にタスマニア産のほうは絞り立てで香り高いので、調理の仕上げに加えて香り付けする油として活用しています。ちなみにオリーブオイルは沸点が低くて焦げやすいので、高温で炒めたりする際はサラダ油と1:1で割って使うようにしています。ゴマ油も白と茶の2種類を使っているのですが、茶の方は香り高く風味が出やすいので野菜を炒めた際の最後の香り付けに。白は香りが強過ぎずほどほどなので、旨みたっぷりの海鮮料理などで最後の仕上げに使っています」

西岡さんが常備する10種の植物油の画像

西岡さんが常備する10種の植物油は左奥から、イタリア・ウンブリア州産のEXVオリーブオイル、タスマニア産のフレッシュオリーブオイル、高級オイルブランド「ルブラン」のくるみ油・ヘーゼルナッツオイル・ピーナッツオイル、グレープシードオイル、廉価版のピーナッツオイル、(手前グラス左から)綿実油、太白胡麻油、岩井のゴマ油

ピーナッツオイルや、ヘーゼルナッツオイル、くるみ油などはちょっと変わり種の油たち。高級オイルのイメージも手伝って、なかなか手が出しにくい油のように思えます。これらはどんな料理に使うとその特徴が活かせるのでしょうか?

「この3種のナッツオイルは単体ではなく、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、くるみの順で2:2:1でブレンドして、特に料理に香りとコクを添加したい時に使っています。うちのお店で出しているメニューで言えば、白トリュフ塩で仕上げる『空豆の炒めもの』が分かりやすい料理のひとつ。炒め終わるタイミング、仕上げにブレンドしたナッツオイルを加えてで乳化させるのですが、このワンステップで風味が格段にアップします」

良い油ほど繊細で劣化しやすいので、仕上げに使うこと

西岡さんはグレープシードオイルや綿実油、(1:1でサラダ油で割った)オリーブオイル以外は、ほとんどの油を料理の仕上げに使っています。ついつい「良い油を使えば料理も風味を増すだろう」と調理の頭からゴマ油を使ったり、香り高いオリーブオイルを使ってしまうこと、ありませんか?

「芹と千糸の春巻 ボッタルガ」を揚げている様子

「良質な高いオイルほど香り高いものが多い傾向にあると思うのですが、香り高い油ほど長い加熱には不向きで、せっかくの香りも加熱時間が長ければ長いほどえぐみが出て風味が劣化してしまいます。なので、油の香りを活かしたい料理には、最後の仕上げにサッとかけてぱっとからめるのが大切なポイントです」

どんなジャンルの料理においても、味の決め手となるのは「油と塩」。特に油は、調味料の中でも一番気を遣うべき要素と言っても過言ではないと西岡さんは言います。そう、良い油は使い手次第なのですね。それぞれの個性や特性をちゃんと理解した上で上手に付き合うことができれば、油はいつだって食卓の心強い味方になってくれるはずです。さあ、料理の世界を一段と深めてくれる油たちを、もっと冒険してみませんか?

西岡英俊さん

「Chinese Tapas Renge(チャイニーズ・タパス・レンゲ)」のオーナーシェフ。新宿御苑のモダンチャイニーズの名店「シェフス」の故・王恵仁氏に師事した後に、料理長を経験し、独立。イタリアンやスペイン料理、和食の経験も活かしてモダンチャイニーズの世界を深める。その軽やかで繊細な中華料理はファンが多く、現在は予約困難な人気店として名を馳せている 
※2015年6月23日に銀座へ移転予定。新宿三丁目の現店舗は6月14日まで。

文: 松浦明

写真/小野広幸

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