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2015.04.08

注目のパティスリー「パクタージュ」の齋藤由季さんが挑戦する、伝統菓子の新たな味わい

玉川学園のパティスリー「パクタージュ」のパティシエール、齋藤由季さんの画像

伊勢丹新宿店の「マ・パティスリー」で、4月8日(水)から14日(火)まで商品を提供することになった、玉川学園のパティスリー「パクタージュ」。そのお店を仕切っているのが、気鋭のパティシエール・齋藤由季さんです。

華やかなイメージの一方で、ハードな作業が多いパティスリー業界。その第一線へ挑むパティシエールの挑戦と目標をうかがいました。

素材のインパクトを打ち出すフランス菓子

玉川学園のパティスリー「パクタージュ」の店内画像

玉川学園前駅そばに約2年前にオープンしたパティスリー「パクタージュ」。シェフを務める齋藤さんは、「パリセヴェイユ」「レ・サンク・エピス」など、有名店で修業を積んだ気鋭の若手です。店に入ってまず驚くのが、その品数の多さ。美しい生菓子をはじめ、焼き菓子、ショコラ、パン、コンフィチュールなど、店内にはさまざまな種類のフランス伝統菓子がズラリと並びます。

「つい、いろいろ作ってみたくなってしまうんです」と笑う、齋藤シェフ。そんな店内のすべての菓子につらぬかれている店のコンセプトは「素材の味をしっかり伝えること」だそうです。

「『何だかわからないけど、おいしい』じゃなくて、何を食べているかがはっきりわかるお菓子にしたいんです。たとえばコーヒー味のケーキだったら、コーヒーの苦みをガツンと感じるように。さらになかに入っているアーモンドやバニラなど1つひとつの素材の味もわかって、それでいてすべての調和が取れているお菓子。そのために、材料は目的によって産地を使い分けています。日本のフルーツはそのまま生で食べておいしいので、なるべ

くフレッシュな状態で使用しますし、お菓子に混ぜるときはヨーロッパの野性的な味のフルーツを使う、という具合です」

ハードな仕事も乗り越える原動力とは?

作業中のパティシエール齋藤由季さんの画像

フランス語で女性の菓子職人を意味する「パティシエール」。男性を指す「パティシエ」に比べると、日本ではまだ馴染みが薄い言葉かもしれません。ところが、一般的に製菓専門学校を卒業する時点では、1クラスあたりの男女比は女性の方が圧倒的なのだそう。

「実務を経験していくなかで、女性の数がどんどん減ってしまうんです。やはり女性にとってはハードな作業が多いんですよね。朝が早い上に夜中まで仕上げと仕込みに追われたり、25kgの粉袋をひとりで担がなければならなかったり、クリームを立てるのも重いので腕が自然とたくましくなってしまう(笑)。女性だからといって、男性のパティシエとは違う特別な点はありませんから」

激務のなかで結婚や出産の選択を迫られ、やむなく夢を断念するパティシエールも。齋藤さん自身、かつては「どうせ女性は結婚したら辞めてしまうんでしょう?」と、心ない言葉をかけられたこともあったそう。そんななか、あきらめずに目標を叶えた齋藤さんの原動力はどこにあったのでしょうか。

「小学生のころにお菓子やさんになりたいと決めて、まわりに何を言われようが、私は絶対やってやると思い続けていたんですよね。がんこなんです(笑)。それと、自分の店を持つための準備をはじめたころに結婚が決まったんですが、彼が、『夢を応援したい』って言ってくれたことがとても大きかったですね」

パートナーとともに挑戦し続けたい

パティシエール齋藤由季さんのパートナー、久保雅彦さんの画像

そのパートナーが、現在、齋藤さんの右腕としてお店を支えている久保雅彦さん(写真上)。お店の物件を当初都内で探していた齋藤さんに、「将来子どもを持つつもりなら、両親にも支えてもらえる地元の方が絶対にいい」と、玉川学園での出店を勧めたのも彼だったそう。

久保さん自身もパティシエ。最も信頼できる相手に作業を任せることができるだけでなく、同業者だからこそわかるアドバイスをもらえるというのが、齋藤さんがここまで続けてこられた大きな理由のひとつのようです。

そんな齋藤さん・久保さんには、パティシエールの少ない業界の中で、「自分たちが前例にならなければ」という想いもあるそう。「参考がないので、すべてが手探りなんですが」と語るふたりは、そう言いながらもどこか楽しそうにも見えます。

「まだふたりでやっているだけなので、子どもができた後どうするか? という課題はあります。でも、いわゆる『街の小さなケーキ屋さん』として落ち着きたくはないんです。外からわざわざ買いに来てくれて、この街のお客さんが『うちの街にはこんなおいしいお菓子やさんがあるのよ』って自慢してもらえるようになりたいという目標があります」

夢だった「マ・パティスリー」出店

伊勢丹新宿店への催事出店は、そんな齋藤さんの目標のひとつだったといいます。「まずは、いつもの自分たちをアピールしたい」と語る、齋藤さん。今回は、お店の定番商品を中心としながら、新作の挑戦も考えているそう。

「『伊勢丹さんには、いつか自分も出してみたい』という目標があったので、お声をかけていただいてやっぱりうれしかったです。夢がひとつ叶ったかなと。ただ、『ここで結果を出して次につながるようにしなきゃダメだね』って話しています」

玉川学園のパティスリー「パクタージュ」の定番商品「ソフィ」「フレジェ」「スープ アングレース」の画像

今回の「マ・パティスリー」出店では、グレープフルーツのムースがさわやかな「ソフィ」(手前)、いちごを使ったフランス菓子の定番「フレジェ」(中央)、アングレースクリームのスープの上に苺のムースを載せた「スープ アングレース」(奥)をはじめ、お店の定番商品を中心にラインアップ予定。ほかに日替わりで「140年前のレシピをベースにしたフランス菓子」など、挑戦的な商品も展開するそうです。

気鋭パティシエールが手掛けるその味は、女性の優しさを漂わせながらも、一本通った芯を感じさせるもの。同性という立場を超えて、素直に応援したくなる、味わいとキャラクターでした。

玉川学園のパティスリー「パクタージュ」のパティシエール、齋藤由季さんの画像齋藤由季/パティシエール

2013年に開店した、玉川学園のパティスリー「パクタージュ」(住所:東京都町田市玉川学園2-18-22/電話:042-810-1111)のメイン・パティシエール。同じパティシエであるパートナー、久保雅彦さんとともに同店を経営。「素材のおいしさを伝えたい」をコンセプトに、フランスの伝統菓子を販売している。

文: 斉藤彰子

写真:八田政玄

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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