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2017.09.11

シュガーロードがもたらした甘~い銘菓。九州前編【にっぽん、いとお菓子#12】

九州のおすすめ和菓子前編

「にっぽん、いとお菓子。」は、全国の銘菓を年間1,500種類以上食べ尽くしている三越伊勢丹和菓子担当バイヤー・田中美穂さんが、特に食べてほしい! というアイテムを47都道府県ごとにセレクト。北から順に日本銘菓の味わい深さを紹介する連載企画です。

今回の舞台は、福岡県、長崎県、佐賀県、大分県の九州地方前編。南蛮文化の入口だった土地のお菓子は、どれもお砂糖たっぷり。本州の和菓子とはひと味もふた味も違う「主張のあるキャラクター」が新鮮です!

しっかり甘い。キャラクターが際立つ九州銘菓4選

石村萬盛堂の鶴乃子、菓秀苑 森長の黒おこし、北島の丸芳露、ざびえる本舗のざびえる

①【福岡県】<石村萬盛堂>鶴乃子(4個入) 389円(税込)
②【長崎県】<菓秀苑 森長>黒おこし(箱物12枚入) 540円、(袋物8枚入) 324円(ともに税込)
③【佐賀県】<北島>丸芳露(10個入) 864円(税込)
④【大分県】<ざびえる本舗>ざびえる(6個入 白餡×3個、ラム酒漬刻みレーズン餡×3個) 648円(税込)

田中さん「長崎の貿易港から砂糖が輸入されていたことから、九州北部はシュガーロードと呼ばれた長崎街道の入口でもありました。また暖かい気候もあってかほかの地域の和菓子に比べると、砂糖をふんだんに使ったお菓子が多く見受けられるように思います。本州とは違う自由な発想で作られた和菓子は、一度食べると忘れられないものも多いんです」

①【福岡県】マシュマロの饅頭!? 「鶴乃子」

石村萬盛堂の鶴乃子

田中さん「石村萬盛堂の『鶴乃子』は、マシュマロの中に黄身餡が入った斬新なお饅頭。もともと鶏卵素麺を作るのに卵黄をたくさん使っていた<石村萬盛堂>さんが、余った白身をお菓子に使えないかと考えられた際に、舶来のマシュマロに思い至ったそうです」

フワフワのマシュマロの中身は黄味餡

――マシュマロをお饅頭にしてしまうなんて、すごい発想力ですね。外の生地はフワフワで、確かにマシュマロだ……。口に入れるとジュワ~っと溶けていきます。中の黄身餡と混ざって、かつてない味わいです。これはハマりそう!

田中さん「最近改良を加えられて、黄身餡を引き立たせるためマシュマロ生地の甘さが少し控え目に。個人的にはそこからさらに『好き』に拍車がかかりました(笑)。また<石村萬盛堂>さんはホワイトデーを最初に考案されたお店と言われているんですよ。ホワイトデーに『鶴乃子』を贈れば、ちょっと粋かもしれませんね」

②【長崎県】黒糖の味わいが新鮮な 「黒おこし」

菓秀苑 森長の黒おこし

田中さん「<菓秀苑 森長>さんのある長崎県諫早(いさはや)は、昔から県内唯一の米どころとして知られている土地柄なんです。全国各地にあるおこしですが、黒糖味というのは珍しいのではないでしょうか」

――黒糖の味が濃いですね。独特の香ばしさとコクがたまりません。干し飯(ほしいい)を使っていて口当たり良く、歯応えも良いので何個でも食べられてしまいそう!

田中さん「どんどん食べてしまうので、ちょっと危険なんですよね(笑)。諫早は長崎街道の宿場町でもあったそうです。おこしは日持ちもするので、当時から旅のお供として人気が高かったお菓子だったことが想像できます」

③【佐賀県】南蛮菓子を食べやすく改良した「丸芳露」

北島の丸芳露

田中さん「もともとはポルトガル船員の保存食だったマルボーロ。それを<北島>の八代目と九代目が日本人が食べやすいように工夫を加えてできたのが『丸芳露(まるぼうろ)』です。そんなエピソードがいかにも九州ならではという感じがしますよね」

――クッキーとも違う、このしっとりとした食感と卵感、素朴なのに、しっかり甘い味わいがたまりません。口に入れるとぽろぽろとほぐれて、溶けていく感じもいいですね。これは牛乳に合わせたくなります。

田中さん「主に、筑紫平野の良質な小麦粉、厳選された砂糖、卵を用いて手仕事でこさえられています。非常にシンプルな材料なのに、ほかにはない味わいですよね。お子さまからご年配の方まで幅広い年齢の方に愛されているお菓子です」

④【大分県】パッケージもまさに「ざびえる」

ざびえる本舗のざびえる

田中さん「大分土産としていただいたことがある方も多いのではないでしょうか。その名も『ざびえる』というこのお菓子は、かつてフランシスコ・ザビエルが大分県に南蛮文化を伝えた功績を称えて作られたお菓子。ビスケット生地に白餡という和洋折衷菓子の代表格ですね」

――ビロードのような手触りのパッケージからして雰囲気抜群ですね! 洋風の生地と中の白餡とよく合います。小さいのにねっとりと甘く濃厚で、すごく食べ応えがある。これも牛乳と合いそうです。

田中さん「1つのパッケージに、白餡入りとラムレーズン入りの2種類が入っています。ラムレーズンはひと味違う大人の味わいですね。地元の人にも愛されているお菓子で、一時入手できなくなったこともあったのですが、熱い要望から再び復活したという歴史があります。初めてパッケージを見た人はお菓子の箱とは思えないその物々しい雰囲気に驚くと思いますが、このビジュアルも相まって、しみじみとやっぱりこのお菓子は『ざびえる』だなあ、という気持ちになるから不思議です(笑)」

砂糖をふんだんに使い、自由な発想で作られた九州の銘菓たち。パンチの利いた甘さとお菓子に宿る豊かなイマジネーションが、お茶の時間をいつもと違うひとときに演出してくれそうです。

文: 斉藤彰子

写真:八田政玄
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

バイヤー・スタイリスト / 田中美穂
三越伊勢丹の和菓子担当バイヤー。全国の和菓子を年間約1,500種類以上食べている。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵にてお取扱いがございます。 独自の味覚と感性で厳選した全国の銘菓をお届けするお菓子のセレクトショップ、三越オンラインストア「菓遊庵」はこちら。

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