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2017.01.24

読み物・コラム

醤油は味噌から生まれた!? 意外に知らないルーツと300年続く伝統製法とは…

日本人の食卓に欠かせない醤油と味噌。料理をする上で、2つの関係は切っても切れないものですが、それもそのはず。実は醤油の原型は、「とある味噌」から生まれた副産物だったとか。

多くの醤油メーカーでほぼすべての製造工程が機械化された現在でも、江戸創業の頃と変わらず伝統的な製法を守り続ける和歌山県の<堀河屋野村>18代目当主の野村圭佑さんに、醤油と味噌の意外な結びつきを聞きました。 

 

和歌山発! 「徑山寺味噌」から生まれた醤油の原型

堀河屋野村の徑山寺味噌

<堀河屋野村>徑山寺味噌(200g)702円(税込)

醤油の原型を生んだ「とある味噌」こそ、和歌山の特産品、徑山寺味噌(きんざんじみそ)。お味噌汁用の味噌ではなく、うり、なす、しそ、しょうがなどの夏野菜が入った、ご飯と一緒に食べる「おかず味噌」の一種です。

「元々、徑山寺味噌は、中国の『徑山寺』というお寺で作られていました。鎌倉時代に宋へ渡り、この寺で修行をした覚心というお坊さんが帰国後、和歌山県の西方寺(のちの興国寺)に徑山寺味噌の作り方を伝えたと言われています」

それから700年たった現在でも、徑山寺味噌は、興国寺周辺の由良町、御坊市、湯浅町などでは伝統食材として根付き、「茶粥と徑山寺味噌」は、朝食の定番だそう。

「和歌山で定着したこの徑山寺味噌は、発酵する過程で水気が出てきます。この上澄みを舐めたところ、とても美味しく、それが醤油の原型になったと言われています。醤油といえば千葉、というイメージがありますが、紀州(和歌山)で生まれた醤油の原型が廻船によって千葉に渡ったようです。当時の紀州は紀伊国屋文佐衛門に象徴されるように廻船業が盛んでした。<堀河屋野村>も紀州徳川家の荷物を運ぶ廻船問屋で、江戸のお客さまにお渡ししていた醤油・味噌が今もモノ作りとして残っています」

覚心が鎌倉時代に徑山寺味噌の製法を体得してから700年、人間の様々な知恵や工夫によって今の醤油が完成したといえます。

そもそも醤油ってどうやって作るの?

<堀河屋野村>は、手作業で麹を作ったり、ガスではなく薪を使って仕込や火入れを行うなど、すべての行程において創業当初の手作りの製法が残っているそう。作り方は大きく①仕込、②麹づくり、③木桶での発酵・熟成の3つの工程で行われます。

①[仕込]ガスではなく薪で加熱する! 薪火によりやわらかな仕上がりに!仕込みの様子

大豆を煮蒸し、小麦を焙煎する「仕込」。ガスではなく、薪を使って和釜で火入れするというから驚きです! 大きな和釜に水を含ませた大豆を入れ、薪火で煮上げ、頃合いを見計りながら余熱で蒸していきます。翌朝、湯切りをすればふっくらした大豆が完成しています。小麦は精白していない状態のまま焙煎し、石臼で粉砕した全粒粉を使います。

「大豆を煮るのは、夜の22時〜翌2時の4時間で、30分おきに薪をくべ、火力を調整します。そのあとに蒸しを行うので夜通しの作業です」

 

②[麹づくり]現在では大変貴重な麹室での「手麹」。<堀河屋野村>ではすべてを手の力で!

麹作りの様子

煮蒸した大豆と焙煎した小麦に種麹を混ぜ、麹蓋と呼ばれる板に盛りつけ、麹室に設置します。その後、4日間に渡り、麹の状態に合わせて手入れをしたり、置く場所を変えることで天候による温度や湿度の変化に対応するなど、細かな調整をしながら麹菌を培養していきます。この「手麹」とよばれる伝統製法は、今では日本でも数軒しか残っていないと言われています。

「麹室での『麹づくり』は、醤油の出来に大きく影響を与えるので、この4日間はまったく気が抜けません」

 

③[木桶での発酵・熟成]天然の環境でもろみを育てる!

木桶で熟成する様子

完成した麹を塩水となじませながら木桶に入れ、1年半〜2年間も時間をかけて発酵・熟成させ、もろみを作ります。木桶の状態を見ながら櫂(かい)で空気を送り込み、発酵・熟成を促します。

「十分にもろみが熟成したら麻袋にいれて絞り、和釜にて薪で火入れをし、あくをとって、ようやく醤油が完成します」

 

現在の醤油とは全然違う! 江戸時代と変わらぬ味わい

堀河屋野村の野村圭佑さん

こうして完成したのが<堀河屋野村>の「三ツ星醤油」です。

「<堀河屋野村>の醤油作りで、一般的な醤油とまったく異なるのが、薪を使った『火力』。当蔵がある和歌山は、古くから『木の国』と呼ばれてきたほど、山林の多い場所です。また、私たちのルーツは廻船問屋。紀州の木材を江戸に運んでいたこともあり、木(薪)と我々は切っても切れない関係なのです。最後の火入れの行程で、適温まで温度をあげるのにガスで加熱すればものの1分です。しかし、和釜で薪にて4時間かけてじっくり火を入れることで、大量生産された醤油とはまったく異なる味わいになります。美味しいものを作るのに時間がかかるのは当たり前のことです。三ツ星醤油は、塩気の荒々しさがない、口当たりが良くコクのある醤油です。目指しているのは、素材の味を塗り替えるのではなく、素材を引き立て、後味が邪魔をしない。醤油はあくまで調味料ですから」

「三ツ星醤油」と一般的な醤油を食べ比べると、驚くほど異なる味わいです。まろやかでコク深く、それでいて自然な味わい。醤油の味がはっきりとわかる白身魚の刺身と一緒に食べるのが野村さんのイチオシだそう。

醤油は毎日使うものだからこそ、こだわりが暮らしの質に直結するもの。伝統と歴史のある味わいを食卓にぜひ。

堀河屋野村の野村圭佑さん取材協力/野村圭佑
<堀河屋野村>の18代目当主。東京の大学を卒業後、商社に勤務。様々なものを食べ、飲み歩く中で日本の食文化を伝承していく大切さに気付き、30歳を前に家業の醤油・味噌蔵に。徑山寺味噌に入れる野菜を自ら作るなど、これまでとは異なるチャレンジを行っているそう。老舗蔵元や生産者の跡取りたちによるユニット『HANDRED』のメンバーでもある。

文: 田山康一郎

写真:布川航太
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