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2016.04.08

銘菓「阿闍梨餅(あじゃりもち)」。京都で愛され続ける美味しさの秘密。東京で買えるスポットも紹介!

阿闍梨餅

地元のみならず全国の人を魅了する京都の銘菓、「阿闍梨餅」。多くの人が一度は食べたことのある人気の京土産で、その美味しさからデパートなどで販売される際には、まとめ買いする人も少なくありません。

阿闍梨餅といえば、もっちり弾力のある卵入りの餅生地と、スッと口どけのよい粒餡の至福のコンビネーション。そんな感動の美味しさの秘密を知りたくて、京都にある<満月>本店を訪ねました。

大正時代から、京都人に愛され続ける味

満月本店外観

京都御所のほど近くにある<満月>は、江戸末期の安政3年(1856年)、出町橋の東詰めで創業しました。幕末の乱世、戦争の疎開などを経て、現在の地へ。名物、阿闍梨餅は大正期に2代目が開発したもので、砂糖や卵が贅沢品だった当時から90年以上を経た現代まで、長くに渡って京都人に愛されてきました。

<満月>5代目店主・西浦裕己さん

<満月>5代目店主・西浦裕己さん

「菓名にある阿闍梨とは比叡山で修行する高僧のことで、厳しい千日回峰修行中に、餅を食べて飢えをしのいだことに由来します」と教えてくれたのは、<満月>5代目店主・西浦裕己さん。

今も昔も京都で愛され続ける阿闍梨餅。その美味しさを支えるこだわりについてうかがいました。

 

一品集中の商いが味わいをより洗練なものにした

昔の満月

<満月>のこだわりのひとつめは、取扱う商品の種類を絞る「一品集中の商い」です。

「第二次世界大戦後、今ある自分たちの力で店を立て直すため、先代の店主は一品集中の商いを選択しました。あちこち手を出して散漫になるなら、数を減らしてひとつのお菓子に情熱を注ぎたい。そうして残ったのが、阿闍梨餅と京納言だったのです」と西浦さん。

現在、<満月>で取扱いのある商品は、「阿闍梨餅」をはじめ「京納言」「満月」「最中」の4つのみ。商品の種類はわずかな分、各商品の味わいは洗練されていったのです。

また、同じ品質をキープするためにどこよりも早く機械化を進めたのも<満月>の特徴。阿闍梨餅がこれほど全国的な有名菓子になった理由のひとつです。

「手作りのすばらしさ、もちろんあります。でも我々のような菓子屋にとってもっとも大切なのは、今日食べたもの、明日食べるもの、1年後に食べるものもすべて、同じ品質であること。ぶれなく応えるのが職人の仕事なのです」

一種類の餡で一種類の菓子しか作らない

餡の材料、小豆をもつ手

次に挙げられるのは、味の決め手となる餡へのこだわりです。<満月>では、「一種類の餡で一種類の菓子しか作らない」という基本方針があります。餡を作る作業には、洗うところから炊き上げて混ぜるところまで、すべてに職人の手がかかっています。釜の傍らには職人がいて、砂糖、小豆、砂糖……と少しずつ分けて加えながら炊き、炊き時間もその日の気候に合わせて、縮めたり伸ばしたり毎日調整され品質を維持しています。

「阿闍梨餅に使う小豆は、大き過ぎても小さ過ぎてもいけません。大きいとつぶれにくく、小さいと皮が多くなりすぎてしまいますから。また、機械化が進んだ今も小豆洗いは必ず職人の手で行います。けっこうな量ですし冬は特に厳しい作業ですが、素材に触れて培われる職人の感覚がきっとあると思うのです」

商品の数を絞り、職人たちの情熱を一心に受けることで、あの阿闍梨餅の唯一無二の美味しさは守られているのです。

出来たての阿闍梨餅は、さっくりとした食感

阿闍梨餅

本店で阿闍梨餅を買うと袋が蒸気でぷっくり膨れていて、手の平にのせるとほんのりあたたか。早速いただいてみると、表面はさっくり歯切れ良く、餡もいつもよりとろりとなめらかです。せっかく本店を訪れたなら、玄関横の床几(しょうぎ)に座ってひとつ頬張ってみるのがおすすめです。

「工房から運んで間もないものは、出来たてならではの味わいが楽しめます。品質を保つため冷やす工程が不可欠ですが、中の餡は60〜65度の温度を保ったままなんです」

自宅では温めて食べるのがおすすめ

阿闍梨餅

<満月>阿闍梨餅 1個 108円(税込)

また、自宅で食べる際は、トースターであたためるなど加熱しても美味しいそう。阿闍梨餅の賞味期限は5日間。時間の経過によって糖分が多少固まってしまいますが、加熱することによって糖分が溶け出し、やわらかく美味しく感じます。

ちなみに日々、試食のため口にする西浦さんのお好みを伺うと…「私は、製造当日よりしっとりが増す翌日が好きですね。もっといえば湿気の多い梅雨、6月ごろが一番美味しいような気がいたします」とマニアックなご返答。

それぞれの季節、それぞれの好みを見つけられるのも、いつも変わらぬ阿闍梨餅の醍醐味かもしれませんね。

文: 立原里穂

写真:高見尊裕
取材協力:阿闍梨餅本舗 京菓子司 満月
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵、伊勢丹新宿店本館地下1階=甘の味/名匠銘菓、ジェイアール京都伊勢丹地下1階=和菓子/京銘菓にてお取扱いがございます。
また、ジェイアール西日本伊勢丹オンラインストアでもご紹介いたしております。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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