レンギョウ

「雨水」の頃から土はにわかにやわらかく湿って、大気も潤いに満ちてきました。春の陽気に誘われるように眠っていた命は身じろぎし、やがてもぞもぞと蓋を開け、地表はあっという間に賑やかになります。暗い冬の帳(とばり)はもう上がるでしょう。

陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也(暦便覧)

二十四節気のひとつ「啓蟄」は、「蟄中の虫、戸を啓く」です。野兎や熊などのけものたちが冬眠から覚め、寒さに凍えていたり、硬くなっていたり、縮こまっていた生命が、そこから解放され、開かれ、生命を更新する時節なのですね。地上だけではなく川や海など水中でも同じです。

蜥蜴や蛇や蛙が穴から陽だまりに顔を出したり、野が緑の和毛(にこげ)に覆われ小さな花が咲いたり、膨らみを増した木の芽が艶々と凛々しかったりする頃。春の海では若芽が揺れていることでしょう。

熊は冬眠から覚めると、精力に満ちた野草を食べるそうです。野山に生えた蕗(ふき)の花もそのひとつ。蕗は日本原産のキク科の植物。今日も庭仕事で見つけたので花の蕾をひとつ、摘まんでいただきましたが、目が覚めるような鮮烈な苦味。苦い蕗の花には冬に貯まった老廃物を追い出すデトックスの効果もあるそうなので、熊の胃も眠りから覚めるのかもしれませんね。蕗の名前は、大地から緑が吹くように広がるからでしょうか。それとも中が空洞で「吹く」ことができるからでしょうか? 名前をたどって、いろいろ連想していくのは道草や庭仕事の楽しみです。昔はこれでお尻を拭いたのよ、という人もいましたが、一方でそのやわらかなみずみずしい蕗の葉でおにぎりを包んで頬張っていた人もいました。いろいろで微笑ましいです。

「五つの〈しょく〉」から連想するイメージのかたち

「五つの〈しょく〉」から連想するイメージのかたち

三月三日は「ひな祭り」。旧暦ではまだ少し先です。

「ひな」は「彦(ひこ)」や「姫(ひめ)」の「ひ」と同じで、小さいもの、「ひよこ」や「ひよめき」のように、生まれたてでやわらかいもの、「ひい、ふう、みい……」の「ひ」で、始まりのことなどを意味します。ちょっと出たり、萌たりしたもので、かわいいものでもあります。

五感に根ざしたものではありますが、お節供や行事は「五つの〈しょく〉」を思いつくままにあげてみると、それぞれの特色がわかります。頭の整理ができるので、10年くらい前からワークショップなどでみなさんに聞いてきました。

「五つの〈しょく〉」とは、「食」「植」「色」「飾」「触」です。たとえばひな祭りにいただく食べものは? ひな祭りから連想される色は? 植物は? どんな飾りや室礼(しつらい)をするでしょう? そしてその行事に何か思い出=「触」はありますか? というものです。最後の「触」は香りや皮膚感覚や、記憶に触れているものを挙げてもらいます。簡単にいうと何かその行事にまつわる「思い出」がありますかということです。

さまざまな機会にみなさんに聞いていますが、季節感や、旬などある程度共通のイメージがあって、そこに地方色や、風土に根ざした行事の形などが乗ってきて、大変おもしろいのです。でも、あまりやらないで来てしまった方も多いのが実情ですから、こうやって形や型となって受け継がれているものの意味を辿ってみるのです。ぜひみなさんも書き出してみてください。そして、たとえば「ひな祭り」であれば西洋の「イースター」などと比較してみましょう。

ひな祭りの「植」といえばまず挙がるのは「桃」でしょう。続いて「菜の花」。「チューリップ」や「パンジー」などもあがることがあります。

「桃(もも)」は「百」とも通じます。たくさんの実が成る子宝の象徴ですし、桃は色といい形といい、女性的な優しさややわらかさをもっともよく表すものでもあったでしょう。崑崙山(こんろんさん)にはグレートマザーである西王母がお住まいで千年に一度実るという仙果である桃李の里を管理しているとか。「桃源郷」が山の奥にある仙境であるように、延命長寿の果実でもあります。またその呪力から杖や矢にもされています。卯杖や節分に鬼を祓う矢ですね。春のこの花はですから、子宝をもたらし、みのりを約束する先駆けとしてお供えされるのです。花びらをひたした「桃花酒」もいただいたそうです。

古くまだ大陸からの「上巳の節供」が習合する前は、春の訪れを祝い野や磯に出て、祖霊を迎えお供えし、神人ともに遊ぶ慣わしだったと言います。まだ紙はないので、草人形(くさひとがた)を作り、穢れをうつし流す禊(みそぎ)をして神遊びをしたのです。また今年も春を迎えられたそのめでたさを祝うお祭りだったのですね。

お節供がそれぞれの季節のあわいにあるのは、四季が滞りなく流れ、季節が巡ること、そしてあらゆる命が生き生きとして、恵がもたらされるようにという祈りが込められているからだと思います。「ひな祭り」は春の訪れを愛(め)づべきものとして、節目節目に野山に出かけ、祖霊へ感謝をし、造化の力のお裾分けをいただくのでしょう。また、雛流しの行事は、若くして亡くなった魂を迎え、饗応し、再び海彼の果てにある常世に送る行事でもありました。

やがて女の子のお祭りとなっていくわけですが、そこには子孫繁栄や、家督の存続の願いなども込められ、江戸時代には豪華な雛段飾りとなっていきます。貝合わせも夫婦和合を願う遊びですね。

蓬餅

「食」はどうでしょうか? ちらし寿司もよくあがりますが、「蓬(よもぎ)餅」や「菱餅」が有名ですね。蓬はその香ばしさといい、効能といい、春の味覚として欠かせません。草餅によくしますので「餅草」とか、「もぐさ」という呼び名にはお灸に使われることから「燃える草」のことでしょう。学名は「アルテミシア」という大地と月の女神の名前が付いています。荒地を覆うたくましい生命力や、薬としての効能が強いということなのだと思います。「菱餅」は桃色に白、緑が層になった菱形のお餅。その三色になったのは明治頃ではないかといわれています。菱は水生植物で、かつては沼や池に繁茂していました。実に角(つの)があって、忍者が使う「撒菱(まきびし)」の原型だそうです。その菱の実の粉で昔は作りました。尖った角のある実と、おそらくは繁殖力の強さに肖(あやか)ったのではないかと思います。

節供にいただくお菓子、こうしてみてくると手のひらの小さな世界でも、魂振りと魂鎮(たましずめ)は常に一対なのですね。縁起物や行事に欠かせない食べものは色や形や味に「謂(いわ)れ」があります。また、「いただきます」にはお供えとして捧げ持ち与えてくれた力に感謝する気持ちと、植物や動物の命を尊ぶという思いも込められていそうです。

日天の中を行て昼夜等分の時也(暦便覧)

日天の中を行て昼夜等分の時也(暦便覧)

桃の花のほころびる頃、紋白蝶の舞い始める頃を過ぎて、次の二十四節気は「春分」です。百花繚乱の春。関東では桜も咲きます。

花いっぱいのお彼岸。桜をはじめとした花の儚さと生を重ね、墓前や棚や壇の前で手を合わせます。供えた花はその時、黄泉の国との交信のアンテナとなり、その声は私たち今を生きているものの背中を押してくれるかもしれません。

振り仰げば、周りの山々は笑っています。「山笑う」春。日本列島はその自然の多様さ、生命の多様性から「花綵(かさい)列島」と呼ばれます。「花綵」とは「花の首飾り」のことです。染められた紐で結んだ花は、咲いては枯れて、揺れながら明滅しているのでしょう。

3月11日の、5年目を迎える震災人災のこともありますが、世界中で悲惨な戦争は止まりません。せめて花を捧げ、悼み、偲びつつ、横溢(おういつ)する想いを花々に重ねたいと思っています。

また今年も春の訪れを知る。ただそれだけのこととはいえ、人それぞれこの地上で、奇蹟のような、微かで尊い時に触れているのだろうと思います。

「晴明」から始まった二十四節気をめぐるこの連載も、今回でひとまわりとなりました。お読みいただいたみなさま、ありがとうございました。

花と食で彩る日本の暦〜二十四節気『清明』_4塚田有一(つかだ ゆういち)

ガーデンプランナー/フラワーアーティスト/グリーンディレクター。 1991年立教大学経営学部卒業後、草月流家元アトリエ/株式会社イデーFLOWERS@IDEEを経て独立。作庭から花活け、オフィスのgreeningなど空間編集を手がける。 旧暦や風土に根ざした植物と人の紐帯をたぐるワークショップなどを展開。 「学校園」「緑蔭幻想詩華集」や「めぐり花」など様々なワークショップを開催している。温室( http://onshitsu.com/)

文: 塚田有一

写真:みやはらたかお

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まるでお茶漬け!? だしで食べる和風グラノーラ

久右衛門のだしで食べるグラノーラセット
久右衛門のだしで食べるグラノーラセット

<久右衛門>だしで食べるグラノーラセット(1セット/グラノーラ200g・久右衛門だし×5包)1,685円(税込)

新感覚のグラノーラが<久右衛門>から登場しました。大麦をベースに、大豆、そば、えのき茸、くるみを加え、味噌で焼き上げた国産素材の和風グラノーラ。ここに、だしパック「久右衛門だし」で抽出した相性抜群のだしをかけていただきます。いわし煮干し・かつお節・焼きあご・昆布・椎茸など国産素材だけを贅沢に使用した芳醇なだしと、滋味豊かなグラノーラが混ざり合い、味わいや食感の変化を時間とともに楽しめます。クセになるこの美味しさを、ぜひ一度お試しあれ。

※取扱い:伊勢丹新宿店、伊勢丹オンラインストア
※販売期間:2018年9月19日(水)~10/2(火)

文: 香取里枝

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は2018年9月19日(水)~10/2(火)の間、伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座/久右衛門にてお取扱いがございます。また、<久右衛門>の一部商品は伊勢丹オンラインストアでもお取扱いがございます。

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期間限定の甘い幸せ♡ ピエール・エルメの焼きたてヴィノエワズリー

クロワッサン オ ザマンド
クロワッサン オ ザマンド

<ピエール・エルメ・パリ>クロワッサン オ ザマンド (1個/日本製)486円(税込) 

<ピエール・エルメ・パリ>からこの期間、伊勢丹新宿店限定でクロワッサン オ ザマンドがお目見え。クロワッサンの中に、コクのあるくるみと華やかな香りのヘーゼルナッツ風味のアーモンドペーストが入っていて、今まで食べたことのない深みのある味わい! 外はサクサク、中はしっとりした生地の食感も楽しめるところは、さすが“パティスリー界のピカソ”と称される巨匠のヴィノエワズリー。1日2回焼き立てが届けられる、2週間だけのお楽しみです。お見逃しなく!

※取扱い:伊勢丹新宿店
※販売期間:2018年9月19日(水)~ 10月2日(火)、各日平日100点限り、土・日・振替休日各日120点限り
※販売時間:午前10時30分~、午後14時~

文: 松本いく子

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、2018年9月19日(水)〜10月2日(火)までの期間中、伊勢丹新宿店本館地下1階=グラン アルチザン/ピエール・エルメ・パリにてお取扱いがございます。<ピエール・エルメ・パリ>の商品は伊勢丹オンラインストアでもお取扱いがございます。

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優雅なお月見にいかが? <ピエール・エルメ・パリ>のオリジナル月餅(ムーンケーキ)

Assortiment de 4 Mooncakes ムーンケーキ 4個詰合せ
Assortiment de 4 Mooncakes ムーンケーキ 4個詰合せ

<ピエール・エルメ・パリ>Assortiment de 4 Mooncakes ムーンケーキ 4個詰合せ (1箱・要冷蔵/日本製)3,888円(税込)

9月24日は、中国の中秋節。1年でもっとも美しい満月がみられる日として、古くから月餅を食べる習慣があるのだとか。その月餅を、パティスリー界の巨匠、ピエール・エルメが作ったら……。昨年発表して人気を博した「ムーンケーキ」が、今年は伊勢丹新宿店に登場します。風味あふれるローズ入りアーモンドビスキュイ、ライチのパート・ド・フリュイ、フランボワーズの3つが見事に調和する「イスパハン」は、優雅なおいしさにうっとりしてしまいます。ほかに、柚子と抹茶が香る「テベール エ ユズ」、ショコラとプラリネを組み合わせた「プラリネ エ ショコラ」、アーモンドとバニラの香り高い「アンフィニマン ヴァニーユ」の全4種類が1箱に。パリや香港では“お月見”に家族や親しい人と食べる、人気のアイテムなのだとか。満月の夜の手土産にしたら自慢できそう。

※取扱い:伊勢丹新宿店
※販売期間:2018年9月1日(土)~ ※予定数なくなり次第、販売終了

文: 松本いく子

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、2018年9月1日(土)〜数量限定で、伊勢丹新宿店本館地下1階=グラン アルチザン/ピエール・エルメ・パリにてお取扱いがございます。<ピエール・エルメ・パリ>の商品は伊勢丹オンラインストアでもお取扱いがございます。

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海苔のかわりにトマトを巻く!?新感覚のカラフルロール寿司

有職の三色の巻き寿司
有職の三色の巻き寿司

〈有職〉三色の巻き寿司(1折)1,944円

ころんとかわいい三色の巻き寿司。巻かれているのは海苔……かと思いきやなんと野菜のシートなのです! 原材料100%でできているという驚きのこのシート、赤はトマト、緑はほうれん草、薄いオレンジ色は玉ねぎからできているのだそう。シートの力強い野菜の味にフレッシュな具を合わせた味わいは新感覚でクセになりそう。見た目に楽しい、食べてびっくりの巻き寿司は集いの場でも活躍してくれるはず! 手土産に持っていけば話題の的になること間違いなしです。

※取扱い:伊勢丹新宿店
※販売期間:2018年9月19日(水)~10月2日(火)

文: FOODIE編集部

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=旨の膳/有識にてお取扱いがございます。

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ふわふわのお肉!? 熟成松阪牛ヒレ肉の衝撃

松阪牛専門 麻布日進の三重県産松阪牛 ヒレ肉
松阪牛専門 麻布日進の三重県産松阪牛 ヒレ肉

<松阪牛専門 麻布日進>三重県産松阪牛 ヒレ肉(100g) 6,480円(税込)

焼き肉で「ふわふわ」な食感は未知の領域でした。が、満を持しての「ふわっふわ」です。熟成松阪牛の「ヒレ肉」、100gあたり、なな、なんと6,480円。松阪牛の美味しさを追及する<松阪牛専門 麻布日進>が施すエージングによって、松阪牛のうまみが十二分に引き出されました。そのやわらかな食感は、まさにふわふわ。クセがなくあっさりとした味わいなのに、濃厚なうまみ! 週1ペースで不定期入荷のため、遭遇できた人はぜひ。

取扱い:伊勢丹新宿店
※週1ペースで不定期入荷

文: 斉藤彰子

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケット/松阪牛専門 麻布日進にてお取扱いがございます。
また、伊勢丹オンラインストアでは松坂牛専門 麻布日進の一部商品をお取扱いしています。

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