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2016.03.05

写真で追う。旅する八百屋「青果ミコト屋」の四季

野菜を並べる青果ミコト屋の二人

神奈川県横浜市を拠点に、全国を旅して各地の野菜や果物を仕入れている「青果ミコト屋」。高校の同級生だった鈴木鉄平さん(写真左)と山代徹さん(写真右)が自然栽培(※)の野菜や果物の流通を広げるために、2010年に立ち上げました。

二人は、全国の農地をキャンピングカーでまわり、仕入先を開拓。顔を見て話した生産者が育てた青果を直接仕入れ、宅配やファーマーズイベントなどで販売しています。

四季折々、津々浦々で人や土、食べ物と向き合う「青果ミコト屋」の1年を紹介します。

※自然栽培:農薬や肥料を使わずに作物を育てる栽培方法

知人の畑で旬の野菜に出合う春

葉つきにんじんを手にする生産者

陽の暖かさに心がほどける春。ミコト屋は千葉県山武市にいました。二人は、友人であるEast Farmのオーナーに、このシーズンから出荷できる葉つきにんじんの状態を見せてもらいます。定番の野菜でも、旬ならではの状態で入荷できるのは、生産者と直接取引きをしているミコト屋だからこその強みです。

 

時間をかけて産地をめぐる夏

畑の状態をチェックするミコト屋の二人

北は北海道から南は沖縄まで、100軒以上の生産者とつながりを持つミコト屋がとくに楽しみにしているのが産地めぐり。通年であちこちに出かけてはいるものの、2週間近くかけて産地をまわる夏の旅は、ミコト屋の根幹を成す大切な時間でもあります。

数年ぶりに会う友人や初めて訪れる産地。多くの人と共に過ごし語り合う時間は、お互いを深く知ることができる貴重なひとときです。

きゅうりの状態を確認する鈴木さん

福岡県・糸島の畑では、おいしそうなきゅうりが育っていました。現在では流通量の少ない、ブルームと呼ばれる水分の蒸発を防ぐ成分がついたきゅうりは、自然のエネルギーをぎゅっと閉じ込めています。

海を望む産地

ミコト屋を始めたころは、かつて畑仕事を学んでいたときの知人が主な取引き相手でしたが、現在は生産者の方から「ぜひミコト屋さんで」と声がかかるようになったそう。

すべての実りに感謝する秋

ミコト屋が仕入れた摘果みかん

実り豊かな秋。たくさんの食物が市場に流れ込む一方、規格外であったり、間引きされたりして廃棄される作物もあります。ミコト屋では、間引きされたみかんを買い取って販売しています。「酸味が強く、すだちのように使えますよ」と使い方を伝えながら届けているそう。

 

熊本産のグリーンレモン、弘前産のりんごとぶどう

ミコト屋の活動のひとつとして欠かせないのがイベント出店。「ジャンルを問わず、ものを作る人に敬意を持ってくれる人なら、ミコト屋が扱う青果に興味を持ってくれるかもしれない」と、アートやファッションなど食以外の分野のイベントにも参加し、まだ自然栽培に興味がない人にもその魅力を伝えています。

 

寒さの中で育った自然の味を届ける冬

千葉県銚子から届いた小松菜

鍋に欠かせない葉物が美味しい冬、千葉県銚子市から瑞々しい小松菜が届きました。大切に育てられた自然栽培の野菜は、ミコト屋を介して個人宅配で家庭へと送られます。ミコト屋がこの栽培方法の野菜にこだわるのは、その味が好きだから。

「美味しくて、後味もよく、野性的なエネルギーも味わうことができるものを、これからも可能な限り届けていきたい」

届いた野菜を梱包する鈴木さん

鈴木さんにこれからのことをたずねると、「とくに大きなビジョンはない」という答えが返ってきました。将来のことを考え過ぎて今を犠牲にするよりは、日々を淡々と楽しく暮らしていくことを大切にしたい、と。「ただ、これからも常にわくわくするようなことをしていきたいという気持ちはあります。野菜や果物の美味しさは、自分たちが楽しんで届けてこそ伝わるものだと思いますから」

実直な彼らの働き方は、自然栽培の魅力をさらにたくさんの人へ広めていくことでしょう。

 

青果ミコト屋
高校の同級生である二人が、地元・神奈川県横浜市を拠点に展開している八百屋。全国をキャンピングカーで旅し、青果の生産地をめぐっている。
鈴木さんがネパールで食べたひとつのリンゴをきっかけに「食べるとはどういうことなのか」を考えるようになったことから、やがて農業に興味をもち、二人で自然栽培の畑仕事を学ぶ。農業の現場で直面した流通にまつわる課題を解決したいと2010年にミコト屋を立ち上げた。

文: 田中美智子

写真:新井「Lai」政廣

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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