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2015.10.22

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唎酒師と奈良の日本酒を飲み比べ 〜「造り」の違いを体感する

日本酒を飲むとき、あなたは何をヒントに選びますか?

銘柄の名前、吟醸や純米大吟醸といったお酒の種類……それに加えて最近は「速醸(そくじょう)」「山廃(やまはい)」といった「造り」の違いも、よく耳にするようになりました。「造り」の違いって、それほど重要なものなのでしょうか? そこで、日本の酒や肴など「和のおもてなし」を提案する「粋の座・和酒」の唎酒師・小林和恵さんを取材。日本酒の「造り」の違いを知るための飲み比べを行いました。

次のブレイク候補は日本酒発祥の地・奈良の酒

花巴 速醸純米酒、山廃純米吟醸、水もと純米原酒

<美吉野醸造>(左から)花巴 速醸純米酒 1,350円(税込)、花巴 山廃純米吟醸 1,620円(税込)、花巴 水もと純米原酒 1,512円(税込) ※すべて720ml

今回飲み比べに使用するのは、日本酒発祥の地として知られる酒処・奈良県にある「美吉野醸造」の「花巴(はなともえ)」。新進気鋭の注目ブランドです。

「現在の日本酒は白ワインのようなフルーティなタイプが人気で、通だけでなく若い女性の支持も集めていますよね。今日私が選んだ『花巴』は、そこから一歩踏み込んだ、複雑な米の味がわかるタイプです。最近はお客さまも、軽やかなだけではない、奥深い味を好まれる方が増えてきています。次のブレイク候補のお酒といえます」

お酒の源「母酒」を造る工程の違い

飲み比べの前に、まずは「造り」の意味を知りましょう。同じ「花巴」でも、左から順番に「速醸」「山廃」「水もと」と呼ばれています。これらの違いは、お酒が発酵する「源」となる「酒母」の製造方法にあります。

乳酸菌と酵母を添加する「速醸」

「速醸」は、麹に「米」、「水」、そして「酵母」と「乳酸」を添加して「酒母」を造る方法。2週間ほどの短期間でできる、効率的な方法です。現在、ほとんどの酒蔵でこの手法がとられています。

自然界の乳酸を利用する「山廃」

「山廃」とは、「乳酸菌」を添加せず、自然界の乳酸菌を取り込む昔ながらの方法です。日数は倍の1ヵ月ほど。江戸時代に生まれた手法「生もと」も同タイプです。

何も足さない、室町時代の手法「水もと」

最後の「水もと」(=菩提もと)は、なんと室町時代に奈良の寺院で生まれたという非常にレアな手法。自然界の乳酸菌を取り込む点は「山廃」と同じですが、生米と蒸米を水に浸けて乳酸菌を増殖させた「そやし水」を仕込み水に使って発酵させます。酵母さえも添加しない、自然界の力だけで造る神秘の方法です。

もう待ちきれない。早速酒器に注ぎましょう!

花巴を酒器に注ぐ

同じ銘柄なのに、まるで別のお酒!?

酒器に注いだ花巴

花巴の「速醸」「山廃」「水もと」を酒器に注ぎました。色はややイエローで、「水もと」は少し濁りが見られます。左の「速醸」が濃く見えるのは、ほかの2本よりも1年熟成させているため。どれもそれほど色に大きな違いはありません。

ちなみに酒米と精米歩合は「速醸」=山田錦・70%、「山廃」=ひとごこち・56%、「水もと」=吟のさと・70%。「造り」によって微妙に変えているのも興味深い点です。それでは、実際に飲んでみましょう。

「速醸」はスッキリと万能型!

まずは「速醸」タイプ。ひと口含んだ瞬間さらりと口内に広がり、追いかけるようにお米のうまみがやってきます。

「すっきりとキレイな味が『速醸』の特徴です。冷蔵庫で冷やしたり、常温でいただくのがおすすめです。飲みやすく、どんな料理にも合わせやすいオールマイティなお酒といえます」

口当たりが軽いので、ついつい杯を重ねたくなりそうです。

しっかり、どっしり。米のうまみを知るなら「山廃」がベスト

「次の『山廃』は、『速醸』を知った後に飲んでほしいお酒です」と小林さん。

飲んでみると……先ほどと同じひと口なのに、どっしりと『重く』感じます。ただ力強いだけではなく、しっかりしたボディの奥から複雑なお米の味がはっきり顔をだします。確かに、最初に『山廃』を飲んだらびっくりしそうですが、ライトな『速醸』で米のうまみを感じた後なら、独特の奥深さが心地よく感じます。「たとえるなら『お父さんの晩酌タイプ』でしょうか。日本酒本来の深みを堪能してください」

おすすめの温度帯は、冷やからぬる燗まで。魚の煮付けなど、味の濃い料理と合わせても負けません。口に含んでグッと目を閉じれば、全身に酒のうまみがしみ込むよう。「…くぅ〜」と、つい呑兵衛のうなり声が出てしまいます。

まるでカ○ピス!? 初めての甘酸っぱさにびっくり!

最後の「水もと」はというと……舌に触れた瞬間「!」と、乳酸由来の甘酸っぱさがガツンとやってきます。本当に日本酒? と疑いたくなるほど、新感覚の味にびっくり。

「まるで乳酸菌飲料みたいですよね。清酒というよりも、どぶろくやマッコリに近い味わいです」

それでいて、決して甘すぎず、口のなかで転がすとどんどんまろやかになっていきます。花巴すべてに共通する米のうまみもあり、初めのインパクト以上に、全体のバランスのよさに驚かされます。

「これからの季節はお鍋がぴったり。それもキムチ鍋や豆乳鍋のような、こってり味が残るもの。そこによく冷やした『水もと』を合わせると、口の中がすっきりしますよ」

同じ蔵の同じ銘柄でもこんなにも味が違うなんて……飲むほどにびっくり。違いを知った上で改めてもうひと口、もうひと口と飲み比べていると、楽しくて止まらなくなりそう。

「利き酒をするときは口に含むだけで出すことが多いのですが、私たちもついつい飲んでしまうんですよ(笑)」と小林さん。

蔵ごとに違いがあり、「造り」や「原料」によっても変わり、それぞれにぴったりの飲み方、温度、さらには料理によっても表情が変化する。日本酒の持つ無限の楽しさに触れました。

もっともっと日本酒の魅力を知るために、もう一杯、おかわり!

文: 大久保敬太

写真:尾鷲陽介
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※20歳未満の方の飲酒は、法律で禁止されています。

バイヤー・スタイリスト / 小林和恵
唎酒師の資格を持つ和洋酒担当。実は伊勢丹新宿店に勤める前は、ほとんど飲めなかったそう。日々の勉強、試飲を繰り返し、今ではすっかり日本酒の虜に。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=粋の座/和酒にてお取扱いがございます。
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