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2015.10.05

in her pocket いつものあの味  第5回/湯山玲子さん

湯山玲子さん

ゆるされるならばポケットに入れていつも持ち歩きたい、いつもの場所に常備しておきたいあの味。気になるあの人の、そんな定番の味を紹介するこのコラム。第5回目のゲストは、「私の人生、伊勢丹に貢いでる!」と、豪語する著述家、ディレクターの湯山玲子さん。

作曲家のご家庭というハイカルチャーな出自を持ちながら、サブカル、B級もどん欲に追求。守備範囲はクラブシーンから、映画、音楽、漫画と、カルチャー全般を痛快なコメントで斬りまくる。雑誌やテレビ、イベントとメディアの枠を超えて活躍する湯山さんは、食に対する造詣の深さも(執着も)人一倍! おいしいものを選ぶときの着眼点や楽しみ方も、一筋縄ではいかないようです。

甘いものを食べない湯山さんを虜にした「したたり」

京都<亀廣永>の『したたり』

「伊勢丹の食料品フロアほど財布の紐がゆるむ場所ってないんですよ! 今日はやめとこうと思ったって、気がついたら両手が品物でいっぱいになってるんだから。もう、伊勢丹に貢いでる状態よ、私!」
席に着くや否や、トークのテンションはいきなりトップギアに。美食家、健啖家として知られながら、「甘いもの」のイメージがない湯山さんですが、お話はスイーツから始まりました。「あらゆるお菓子の中でいちばん好き」といい切るほど愛してやまない一品は、京都<亀廣永>の『したたり』。祇園祭の菊水鉾に献上されることでも知られる琥珀羹で、波照間の黒糖と阿波の和三盆の風味、丹波の寒天のコシが他には無い風情の、棹もの菓子です。

「まあ、湯山的にお菓子の最高峰のひとつですね。この透き通った見た目のきれいさ、黒糖系の品の良い甘さ。伊勢丹のすごいところって、口コミで一部の人しか知らないこういったお菓子がサラッと並んでるところ。目利きバイヤーの優秀さは、ミシュランもびっくりなレベル。地方のツウな銘菓まで、もれなくあるし、それも日本だけじゃなくて世界中のね。甘いものあんまり得意じゃないんだけど、『したたり』は人からいただいて初めて食べたとき、なんじゃこりゃー! って叫んでしまった(笑)」

とびきり上等なチーズは最高の原稿のおとも

チーズを食べる湯山玲子さん

2品目に選んだのは<フロマジュリー HISADA>のチーズ。お父様の作曲家・湯山昭さんの影響で、幼い頃から輸入チーズに親しんでいた湯山さん。今回選んだのはフランス産のウォッシュチーズ『エポワスマダム HISADA』ですが、その楽しみ方が実にユニークです。

「うちは父娘二代の熱狂的なチーズ好き(笑)。私が子供時代を過ごした1960年代って、まだ輸入チーズが珍しかったんだけど、父親がチーズ大好きで我が家にはいつも『マリボー』と『サムソー』(ともにデンマーク産セミハードチーズ)があったんですよ。当時国産チーズは嫌いな食べものだったのに、この2つのチーズに出会って完全に転向。以来、いろんなチーズを食べ続けているんですけど、1つ選べっていわれたらやっぱり『エポワス』かなあ。ウォッシュチーズの定番にして王者。小さじひとつで、テンションが上がる」
フランス、ブルゴーニュのエポワス村でつくられるこのチーズは、やはりブルゴーニュ産のピノ・ノワールでつくられる赤ワインと相性が良いのは、世界の美食家の知るところ。ところが湯山さん、「エポワスはコーヒーのお供」というから驚きです。

<フロマジュリー HISADA>のチーズ

「一度やってみてくださいな、コーヒーにすごく合うから。昔、雑誌の編集部に勤めていた頃『湯山はお茶請けにブルーチーズ食ってる』って有名になったこともあったなあ(笑)。でも最近はもっぱら『エポワス』ね。いつもこの丸い箱ごとデスクに置いて、コーヒーを飲みながら原稿を書き書きちびちび食べてるわけ。それから『エポワス』って、セロリやエシャロットみたいに独特の香りや苦みがある野菜と相性がいい。キュウリもいい。味噌じゃなくって『エポワス』つけてもらえるんだから、うちに来たキュウリって幸せですよ(笑)」

 

大人味で育った湯山さんが太鼓判を押す魚の干物

めざしとたたみいわし

忙しいご両親の下で育った湯山さんは、ハンバーグやオムライスといった子ども向けの好物に触れる機会が少なく、「大人の味」で育ったと話してくれました。

「ウォッシュチーズがいい例だけれど、子どもが初めて食べておいしい! って思う味じゃないじゃない。でもうちは母があまり料理が得意で無かったから、父の嗜好も手伝って、子ども時代から食卓はデパ地下やお取り寄せ珍味のオンパレード。いわゆる学習が必要な味に早い時期からなじんで育ったとも言えます」

<魚谷清兵衛>で買うという3品目の「めざし」や「たたみいわし」もやはり、「学習の必要な味」です。
「最近の子は知らないんじゃない? めざし。スーパーで見かけなくなったもんね。めざしのいいところはさ、苦みがあるのよ。ししゃもだとこうはいかないから。炙ってオリーブオイルに漬けたらほら、自家製のオイルサーディン風になるじゃない。たたみいわしも、醤油付けて炙って保存しておいて、おやつにパリパリ食べる。そう、チーズと一緒で原稿のおとも! どっちも安いからこそ、一番おいしい店で買ったほうがいい、全然味が違うもの。そう考えると、例えば干物みたいな庶民的な食材でも、手に入る限りの最高級品がそろっているのが伊勢丹なんですよ」

そこにいるだけでテンションが上がる『食のギャラリー』

「なにしろ食に興味がありまくるもんだから、棚に並んだ商品を見てるだけで楽しいわけ。だって伊勢丹ってもはや『食のギャラリー』でしょ。パッケージがアウトサイダーアートみたいな、地方菓子があったりさ。もう、見ちゃう、買っちゃう、やめられないんですよ」

ギフトやお持たせを探しに、やる気が倍増する原稿のおともを求めに、そして多忙な中の息抜きに……。湯山さんには人の何倍も「伊勢丹に行く理由」があるようです。

Profile

湯山玲子さん湯山玲子(ゆやま・れいこ) 

東京都出身。㈱ぴあ勤務を経てフリーの編集者、そして著述家に。著作の執筆や雑誌への寄稿のほか、広告やイベントのプロデュース、コメンテーターとしてのテレビ出演とメディアの枠を超えて活躍する。『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー』(毎日新聞社)、『女装する女』(新潮新書)と著書も多数、ジャンルも幅広い。最新刊は『男をこじらせる前に 男がリアルにツラい時代の処方箋』(角川書店)。

文: 佐々木ケイ

写真:梅川良満

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=甘の道/名匠銘菓、シェフズセレクション/フロマジュリー HISADA、旨の膳/魚谷清兵衛にてお取扱いがございます。また、お電話注文(伊勢丹新宿店 電話03-3352-1111大代表)でもお買い求めいただけます。

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