ペルー人のソウルフード「セビーチェ」と「虎のミルク」のお話_1

ペルーと言えば、マチュピチュ? ナスカの地上絵? それらも素晴らしいですが、いまやペルーと言えば「美食の最先端」として世界の名だたる料理人が熱い視線を送る国のひとつ。そのペルーで愛されるソウルフードであり、同時にトップシェフたちが個性を競う「セビーチェ」を、現地まで足を運び修行をした日本人シェフ・太田哲生さんが教えてくれました。

食材の宝庫で育まれ進化した、モダン・ペルー料理

なぜ料理人たちはペルーを目指すのか。まず、かの国にはジャガイモだけで約3,000種類もの品種が存在するそうで、そんな食材の宝庫をシェフたちが放っておくわけがないのです。今や伝説のレストランとなった「エル・ブジ」のフェラン・アドリア氏に師事し、その後いくつかの厨房を経てペルーに渡った太田シェフもそんな料理人のひとり。ペルーにおいて、モダンペルー料理の最高峰とも言われるガストン・アクリオ氏の元で修行を重ねた太田シェフに、ペルー人のソウルフードとしていま世界的にも注目される「セビーチェ」の話を聞かせてもらいました。

注目の『レチェ・デ・ティーグレ(虎のミルク)』とは?

ペルー人のソウルフード「セビーチェ」と「虎のミルク」のお話_2

「ペルーではいま2通りのセビーチェが流行っています。ひとつが5種類の調味料、塩、レモン汁、唐辛子、黒こしょう、ニンニク、だけで作る伝統的でとことんシンプルなセビーチェ。もうひとつが、魚介やタマネギをマリネした際に出る出汁汁『レチェ・デ・ティーグレ』を使ったセビーチェです。特にいま主流になりつつあるのがこちらのタイプで、それぞれ店ごとに作るオリジナルのレチェ・デ・ティーグレをベースに、隠し味やこだわりの味付け、盛りつけ方で個性を競っています。」

なかでもここ数年人気を高めているのが、レチェ・デ・ティーグレ、魚貝、レモン汁、コリアンダー、唐辛子、塩、胡椒であえたもの。変わり種としては、コンデンスミルク、牛乳、鰹節でとった出汁、アマゾンの貴重な唐辛子、などを隠し味に入れるお店もあるのだそう。

「レチェ・デ・ティーグレはペルー語で『虎のミルク』の意で、ペルー人にとって(日本で言うマムシドリンクやうなぎパイのような)滋養強壮剤のような位置づけと名付け。現地のセビーチェ屋さんでレチェ・デ・ティーグレを頼むと魚貝の汁だけがコップに入れられて出てきます。オーダーが入ってからまずセビーチェを作り、ザルでセビーチェを漉して汁だけを提供するんです」

具材はほとんど取り去って、旨味を凝縮した『虎のミルク』のみ! 何とも贅沢な一品になってしまいました。

「胃の調子が悪くあまり食欲が無い時、仕事が忙しく疲労の溜まっている時に栄養ドリンクの代わりにみんなでレチェ・デ・ティーグレを飲んでいました。二日酔いにも効果てきめんで、ペルー人にとっては日常的な栄養補助食品でもあるんですね。僕が居たレストランは規律がしっかりした厳しい職場でしたが、セビーチェ担当がシェフに隠れてコップに入れてくれたレチェ・デ・ティーグレを皆で回し飲みしたのが懐かしい思い出です」

ハードな調理の現場も乗り切る滋養と、疲れも吹き飛ぶ旨味の凝縮された『虎のミルク』、話を聞いていたら飲んでみたくなってしまいませんか? 近頃では現地さながらのペルー料理が味わえる店が都内にも増え始めているようで、太田さんイチ押しのペルーのストリートフード「パン・コン・チチャロン」専門店も登場したそう。ペルーで生まれている食の新潮流、いち早くチェックしておきたいところです。

※セビーチェとは?

もともとはスペイン人が伝えたと言われているメニュー。冷蔵庫が無かった時代に、魚貝を保存するためレモン汁でマリネしていたことが発祥。一般的には、生(または軽く茹でた)魚介類に玉ねぎやトマトなどの野菜を加えてレモンと香辛料で調味した魚介のマリネのことを指している。ペルーでは店の数だけレシピが存在するとも言われるほど。単に「セビーチェ」とひとことではくくれないほど振り幅の大きい料理としても知られている。

ペルー人のソウルフード「セビーチェ」と「虎のミルク」のお話_3太田哲雄(おおた てつお)

1980年、長野県生まれ。自転車ロードレースが盛んな白馬で育ち、大会に訪れるイタリア人選手たちとの出会いをきっかけに19歳で渡伊。帰国後、都内のレストランで修業し、2004年、再びイタリアへ渡る。各地の星付きリストランテで約6年間修業し、2010年、スペインの『エル・ブジ』へ。ミラノの企業CEOプライベートシェフを務めた後、レナート・ボスコの『サポーレ』を経て2013年にペルーへ渡る。『アストリッド&ガストン』や郷土料理店でペルー食文化の薫陶を受けて帰国。現在はイタリア在住。

文: 松浦明

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