京都の銘菓

「にっぽん、いとお菓子。」は、全国の銘菓を年間1,500種類以上食べ尽くしている三越伊勢丹和菓子担当バイヤー・田中美穂さんがイチオシの銘菓を紹介する連載企画。47都道府県ごとにセレクトし、北から順に日本銘菓の魅力をお届けしています。

今回は、老舗和菓子店が多く存在する京都の銘菓をピックアップします!

京都で愛されてきた老舗銘菓5選

京都の銘菓

<三條若狭屋>祇園ちご餅 (1包・3本入) 389円(税込)
② <本家尾張屋>そば餅(1個) 108円(税込)
③ <河道屋>蕎麦ほうる(1袋) 540円(税込)
④ <亀屋良長>烏羽玉(6個入り) 486円(税込)
⑤ <長久堂>雲錦(うんきん)(1箱) 1,458円(税込)

「京都の和菓子といえば、見た目に漂う品格や洗練された味わいが印象的ですが、生まれた背景にもぜひ注目を。古くから和菓子の文化が根付く京都だけに、歴史の深みが違います」(田中さん)

① 祇園祭の厄除けとして振る舞われた「祇園ちご餅」

三條若狭屋の祇園ちご餅

田中さん「毎年7月に開催される京都の風物詩・祇園祭。かつて、厄除けの餅として振る舞われていたのが『ちご餅』。古くは室町時代の記録が残っていますが、いつの間にか廃れていたところを<三篠若狭屋>二代目が大正初期に再現したそうです」

──カラフルな短冊には、「疫を除き福を招く」と書いてありますね。竹の皮を模した容れ物も趣がありますね。

三條若狭屋の祇園ちご餅

田中さん「祇園ちご餅は、甘い白味噌を求肥で包み、周りには餅を水に浸して凍らせ、乾燥させて粉状にした氷餅がまぶしてあります。包み紙にくっついてしまうほど求肥がふわふわなので、ていねいに開けてください」

──うわぁ、求肥が本当にやわらかくて、よく伸びる! まぶされた氷餅のザラッとした感じも印象的です。優しく甘い求肥に対して、中に入っている白味噌がいいアクセントになっていますね。

② 菓子屋が手がける蕎麦の味「そば餅」

本家尾張屋のそば餅

田中さん「こちらの<本家尾張屋>は、室町時代(1465年)に尾張国から京都で商いを始めた菓子屋でしたが、江戸中期(1700年頃)になって禅寺に納めるために蕎麦作りを始めたというお店。現在もお店では、蕎麦とお菓子の両方を扱っています」

──お菓子屋さんが蕎麦作り。ちょっと意外な組み合わせですが……。

田中さん「<本家尾張屋>によると、そもそも蕎麦が「麺」として食べられるようになったのは、室町時代以降のこと。日本では主にお寺で食べられていましたが、江戸時代になると『練る・伸ばす・切る』の技術をもったお菓子屋にお願いするように。そのお菓子屋のひとつが<本家尾張屋>といわれています」

──なるほど。そんな理由があったんですね。

田中さん「前段の話しが長くなりましたが、<本家尾張屋>のそば餅は、明治時代に十三代目当主が考案したお菓子。蕎麦粉がたっぷり入った皮でこし餡が包まれていて、餅というより饅頭に近いですかね。蕎麦の風味が際立ったすっきりとした味わいですよ」

──皮は、厚みがあってしっとりとしていますね。口に含んだ瞬間、蕎麦の香りが広がります。こし餡に香ばしい蕎麦の香り、シンプルな組み合わせがホッとする味ですね。

③ 南蛮菓子の影響を受けて生まれた「蕎麦ほうる」

河道屋の蕎麦ほうる

田中さん「<河道屋>も<本家尾張屋>と時を同じくして江戸中期から、蕎麦の扱いを始めた菓子屋。こちらの『蕎麦ほうる』は南蛮菓子の影響を受けて生まれたお菓子で、名前の「ほうる」は、オランダ語の「Pole」、ポルトガル語の「Bolo」の語感に由来しているそう」

──食感はサクッとしたクッキーのよう、蕎麦と卵の風味がしっかりとしていますがあっさりした後味。素朴で、パクパクつまみたくなる美味しさですね。お年寄りから子どもまで、みんなが好きそう!

田中さん「蕎麦ほうるは、製造がなかなか追いつかないほどの人気の商品。優しい味にハマる人が多いんでしょうね。私はちょっとアレンジして、シリアルのようにヨーグルトに入れることも。少しふやかして食べても美味しいんです」

④ 今も昔も新鮮に映る、つややかな美しさ「烏羽玉」

亀屋良長の烏羽玉

田中さん「京菓子の名門と言われ、江戸にまでその名を轟かせていたという<亀屋良安>から、暖簾分けする形で江戸時代後期(1803年)に創業した<亀屋良長>。『烏羽玉』は創業当時から作られ続けている銘菓で、黒糖を練り込んだあんこ玉を寒天でコーティングしています」

──濡れたようにつややかで、キレイですね。金箔のようにケシの実があしらわれていて、こういう美意識も京都ならではという感じがします。

田中さん「現代の私たちが見ても惹きつけられるビジュアルですが、江戸時代の感覚でもかなり斬新だったんじゃないでしょうか」

──砂糖ではなく、黒糖を使用した餡の甘みも新鮮です。

田中さん「ただ甘いだけでなく、食べたあとに風味や香りが広がるのも、黒糖ならでは。ちなみに、時代に合わせて配合を変えているそうで、明治時代ごろのレシピだと今より砂糖の割合が多かったそう。長年愛されるのは、時代に合わせて微妙に変化を加えているからかもしれませんね」

⑤ 雲のように軽い歯ざわりと優しい口溶け「雲錦」

長久堂の雲錦

田中さん「<長久堂>はもともと天保 2年(1831年)に<新屋長兵衛>という屋号でお菓子の製造販売を始めたお店。『新屋』は『新しいことに何でも挑戦する』という初代の意気込みを表していたそうです」

──『雲錦』は見た目がまず美しいですよね。ピンクの方は「花の雲(はなのさくら)」、緑は「紅葉の錦」を表現しているんですね。

田中さん「さくらの方には、梅肉糖。紅葉の方には、柚子糖が裏側に塗ってあります。麩焼きのせんべいなので、優しい口溶け。口の中で消えていくときに、裏側に塗られた砂糖の甘みと香りがじんわりと広がっていきます」

──本当だ、雲みたいに軽い! 目を閉じて、じっと余韻を味わいたくなるような……。京都のお菓子ならではの美的感覚のある一品ですね。

祭りの厄除けとしての役割があったり、お寺の依頼がきっかけで生まれたりと、お菓子の背景にある歴史の深みが違うのは、古くから和菓子の文化が根付く京都だからこそ。歴史の背景まで楽しむと、その美味しさが一層味わい深く感じられました。

「にっぽん、いとお菓子。」で過去に紹介した地域はこちら。
第1回 北海道編 北の大地が、ユニークな和菓子を生み出す
第2回 東北編   地元の食材をまっすぐ伝える東北銘菓
第3回 関東前編 地元の食材をひとひねりした銘菓が勢揃い。
第4回 関東後編 全国の和菓子が集まる関東で、愛される銘菓。
第5回 中部前編 北陸の銘菓に光る日本の「美」。
第6回 中部中編 銘菓に宿る、手作業のぬくもり。
第7回 中部後編 旅人に愛された宿場町の銘菓。

文: 西島恵

写真:八田政玄
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

  • スタイリスト/田中美穂

    三越伊勢丹の和菓子担当バイヤー。全国の和菓子を年間約1,500種類以上食べている。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵にてお取扱いがございます。独自の味覚と感性で厳選した全国の銘菓をお届けするお菓子のセレクトショップ、三越オンラインストア「菓遊庵」はこちら。

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