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2017.01.30

北の大地が、ユニークな和菓子を生み出す【にっぽん、いとお菓子。#1】

北海道の銘菓

子供から大人までみんなに愛される和菓子。どこかホッと安心させてくれる素朴な美味しさを求めて、時々無性に食べたくなることはありませんか。「日本の和菓子は、食材がシンプルなものが多いからこそ、地域性、職人の技術が際立っているんです」と話すのは、三越伊勢丹の和菓子担当バイヤーの田中美穂さん。

今回から始まる「にっぽん、いとお菓子。」は、全国の和菓子を年間約1,500種類以上食べているバイヤーならではの視点で、北は北海道、南は沖縄まで、47都道府県の銘菓をピックアップ。それぞれの和菓子の美味しさの秘密を深掘りする連載企画です。初回は、北海道。日本の北に位置する雄大な地は、小麦に小豆、新鮮なバター、ミルクなど食材の宝庫。地元の食材を生かした、アイデア溢れるお菓子が揃いました。 

レトロなパッケージがずらり!北海道銘菓5選

北海道の銘菓

① <五勝手屋本舗>五勝手屋丸缶羊かん (1本) 270円(税込)
② <千秋庵製菓>山親爺 (1袋) 281円(税込)
③ <三星>よいとまけ (1本) 681円(税込)
④ <柳月>三方六 (1本) 630円(税込)
⑤ <わかさいも本舗>わかさいも (6個入り) 648円(税込)

カラフルでレトロなパッケージが集まる、北海道銘菓。気になる中身は、バイヤーさんと一緒に試食をしながら教えてもらいます。ではでは、実食スタート! 

①容器に付いた糸は、羊羹をカットするため「五勝手屋丸缶羊かん」

<五勝手屋羊羹>の五勝手丸缶羊かん

まずは、真っ赤なパッケージが目を引く「五勝手屋丸缶羊かん」から。

田中さん「こちらの『五勝手屋丸缶羊かん』は、付属の糸で好きなサイズに切って食べられるんですよ。せっかくなので試してみますか?」

──わぁ、容器に紐がくっついているんですね。あ、思ったよりスッと切れます!

 

五勝手丸缶屋羊かんを切るところ

箱の底を押して羊羹を出し、付属の糸を巻きつける。羊羹を縛るようにして糸を引いて切る。

田中さん「でしょう? 手を汚さないようにという工夫として考案されたそうです。まぁ、私はこれを一本丸ごと食べられるくらい甘いものが好きなんですけどね(笑)」

──ではひと口。羊羹自体は、甘みはあるけれど後味があっさりとしていて、豆の風味が感じられますね。

田中さん「豆は小豆ではなく、全国の羊羹のなかでも珍しい金時豆を使用しています。だから、甘みはしっかりとしているけれど 食べやすいんです。昔から変わらず手作業で作られていて、一日かけて材料を練り上げて作っているそうですよ」

──こだわり溢れる羊羹が入っているんですね。 

②名前とは裏腹にキュートな洋風せんべい「山親爺」

千秋庵製菓の山親爺

田中さん「ビジュアルのかわいらしさといえば、こちらの『山親爺(やまおやじ)』も負けていませんよ。一見、シンプルなおせんべいですが、絵柄をよく見てみてください……」

──あ! スキー板に乗った熊が鮭を背負ってる! (笑)「山親爺」という名前とは裏腹に、かわいらしい絵柄ですね。

田中さん「山親爺というのは、我が物顔で大地を歩く熊の愛称から名付けられたそうです。つまり、この熊は山親爺というわけです。北海道の大地を彷彿とさせる、渋い名前ですよね」

──味は、バターの風味がしっかりしていますね。おせんべいやクッキーよりも軽い食べ心地。

田中さん「この軽い食感がクセになって、食べ始めると止まらないんです……! 私は、いつもデスクに常備しています。水を一切使わず、新鮮なミルクとバターをたっぷり入れて作られているというのも食材が豊富な北海道ならではですよね」 

③製紙工場でのかけ声がお菓子の名前に! 「よいとまけ」

三星のよいとまけ

田中さん「やはり北海道は食材に恵まれていますから、材料はなるべく道内産で、というお取引さまも多いんです。『よいとまけ』で使われているハスカップのように、本州では珍しい食材もあります」

──ロールカステラの内側と表面に、甘酸っぱいハスカップジャムがたっぷり! 砂糖のジャリッとした食感がどこか懐かしいですね。ちなみに、「よいとまけ」ってどういう意味なんですか?

田中さん「『よいとまけ』が生産される地元苫小牧にある製紙工場の木場で丸太を持ち上げるときのかけ声なんです」

──かけ声が名前になっちゃうなんておもしろい! 当時の北海道の風景が切り取られたお菓子なんですね。

④白樺の木肌をチョコレートで再現「三方六」

柳月の三方六

田中さん「こちらの『三方六』は北海道開拓時代に伐採された木がモチーフ。何本か組み合わせると、本当に木の幹が完成するんです」

──チョコレートのコーティングで白樺の木肌を表現しているんですね。チョコレートとバウムクーヘンのしっとりした生地がよく合います。

田中さん「バウムクーヘンの傾向として、最近はふわふわタイプの生地が流行っていますが、こちらは昔ながらのしっかりタイプ。ほかのアイテムと同じく原材料は、小麦粉をはじめ、バター・砂糖・卵もすべて北海道産にこだわっています」 

⑤芋は不使用だけど、見た目も食感もお芋。「わかさいも」

わかさいも本舗のわかさいも

田中さん「こちらのわかさいもも素材に注目してほしいです! 原料がお芋かと思えば、まったく使っていないという(笑)。代わりに、豆を使っているんです」

──試みはユニークですが、食材が豊富な北海道、一体なぜこんなことをしたんですか?

田中さん「北海道ではもともとさつまいもが生産されていなかったのが誕生のきっかけなんです。小麦や小豆など、食材が豊富に思える北海道ですが、寒さが厳しく、北海道外のものを手に入れるには、海を越えなければならない。だから和菓子作りに使える食材は、ある意味限られていたんです」

──なるほど本土からは離れた地域だからこそ生まれたユニークなアイデアだったんですね。皮がとても香ばしい香り! 

わかさいもの断面

田中さん「醤油や昆布を使って、色味や質感もリアルに再現しているんです。ほら、割ってみると、断面もまさに焼き芋ですよ」

──本当だ、芋の筋を昆布で表現しているんですね。芸が細かいなぁ。

田中さん「中の餡は、洞爺湖周辺で採れる大福豆が主原料。ほのかに豆の味がするでしょう? 意外とボリュームがあって、1個でしっかり満足できる食べごたえです」 

北海道の大地を彷彿とさせるような、素朴で、どこか懐かしい雰囲気が漂うお菓子たち。独創的でユニークなアイデアは、北の果ての地、北海道だからこそ生まれたのかもしれません。

文: 西島恵

写真:八田政玄
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

バイヤー・スタイリスト / 田中美穂
三越伊勢丹の和菓子担当バイヤー。全国の和菓子を年間約1,500種類以上食べている。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵にてお取扱いがございます。

独自の味覚と感性で厳選した全国の銘菓をお届けするお菓子のセレクトショップ、三越オンラインストア「菓遊庵」はこちら。

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