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2016.02.29

【プロが解説】ひな祭りに飾る「菱餅」の由来・意味とは? かつては緑色だった!?

昔は1色、今は3色 菱餅の由来

女の子の健やかな成長を祝うひな祭り(上巳の節句)には、昔から菱餅やひなあられなどを食べる風習があります。菱餅は、その名の通り菱形をしたお餅ですが、あらためて考えると、なぜあの色と形なのでしょうか。和文化研究家の三浦康子さんに、菱餅をひな祭りに食べる理由や形の由来などを教えていただきました。

なぜひな祭りに「お餅」の菱餅を食べるの?

古くから、日本の行事にはお餅がつきもの。お正月には鏡餅や雑煮、端午の節句には柏餅、祝い事には餅を配るなどたくさんの例があります。米は穀霊(こくれい)が宿る神聖な食べ物とされ、米をついて作るお餅には、そのパワーが凝縮されていると考えられていました。

そこで、節句などのハレの日にお餅を供えるようになり、ひな祭りには菱餅を用いるようになったのです。菱餅のルーツは、上巳の節句とともに中国から伝わった母子草(ははこぐさ)の草餅だといわれています。

菱餅の菱形には健康と長寿の願いが込められている

菱餅が菱形なのは、宮中で正月に食べる「菱はなびら餅」を模しているから、菱の実を食べて千年も生きたという仙人の話にちなんで菱の実の形を模しているからなど、諸説あります。しかし、いずれにしても、健康で長生きできるようにとの願いが込められています。

菱餅の緑・白・赤の3色が持つ意味とは?

緑:厄除け
白:子孫繁栄
赤:魔除け

菱餅といえば緑・白・赤の3色が定番ですが、日本に伝わった頃は緑一色でした。前述の通り、中国から伝来したのは母子草の草餅でしたが、日本では「母と子をつく」のは縁起が悪いと考え、蓬(よもぎ)を用いるようになりました。蓬餅には、春先に芽吹く蓬の力で厄を払い、元気でいられるようにとの願いが込められています。

その後、江戸時代に菱の実を用いた白い餅を加えて2色になりました。菱の実は繁殖力が強いので子孫が繁栄するようにという願いが込められ、また白い色で清浄が表されています。さらに、明治時代にくちなしで染めた赤い餅を加えて魔除けを表すようになり、現在のような3色の菱餅となりました。また、蓬には増血、菱には血圧低下、くちなしには解毒の作用があるとされ、ここも健康や長寿につながる縁起物だとされるゆえんかもしれません。

年に一度、この時期にだけ食べる縁起物。緑・白・赤の重なりは、「雪の下には新芽が芽吹き、桃の花が咲いている」という春の情景を表しており、日本人の細やかな感性が感じられます。ぜひ今年のひな祭りでも召し上がってみてください。

文: 三浦康子

写真:teresa / PIXTA(ピクスタ)

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=甘の味にてお取扱いがございます。

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