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2015.06.12

タケイファームで作られる驚きの野菜。ナポリ野菜やマイクロハーブなど

TAKEI FARMの代表・武井敏信さんの画像

日本ではまだ珍しい、マイクロハーブやナポリ野菜、アーティチョークなど、日々新しい野菜で伊勢丹新宿店に「驚き」を届けている農場、TAKEI FARM。サラリーマンから一転、農業をはじめて13年という代表・武井敏信さんが掲げるコンセプトは、「心を動かす野菜」だといいます。他の農場とは一線を画した野菜作りの秘密を探るべく、千葉県の松戸からほど近いTAKEI FARMを訪れました。

年間140種類の野菜を「パズル」のように栽培

さっそうと登場した武井さんは、カーゴパンツにフランス製の長靴といういでたち。これまでの農業イメージを覆したいと、ビジュアルにもこだわっているんだそう。

住宅街に囲まれているTAKEI FARMの第一ファームの画像

最初に訪れたのは、3つある畑のひとつ、第1ファーム。四方を住宅に囲まれたそこは、想像していたよりもずっとコンパクト。

「こんな場所に畑があるなんて、びっくりしたでしょう?」と話す武井さんの後をついて畑の中を歩くと、各野菜の株数が少ないことに気づきます。1本の畝(うね)やトンネルに数種類の野菜が並び、時期や土との相性などを考慮して、パズルのように入れ替えていくんだとか。

TAKEIFARMでは、これまでに350種類を超える野菜を栽培、年間でもその数は140種類以上だそう! どうしてそれほど多品目の野菜を育てているんでしょうか?

TAKEI FARMの畑で育つ野菜の画像

「うちの野菜はレストランに届けるものがほとんど。常に飲食店の人を驚かせたいという気持ちがあります。露地栽培の野菜は、季節と場所で作るものが大体決まってくるので、同じエリアの人が同じものを作ることになる。それだと野菜を作る側も、料理する方もつまらないですよね。だから、作りたいものを作って、買ってくれるところに売るんです」

海外のレストランが、インスピレーションの原点に

鮮やかな花をつけたナスタチュームの画像

「まずはこれを食べてみてください」

そういって武井さんがしゃがんだ先には、オレンジ色のお花が(写真左)。観賞用の花かと思いきや、葉っぱを食べるようです(写真右)。口に含むと、ピリっと辛い! かなり驚きの味わいですが、フレッシュな辛さが心地よく、すごくおいしい。

「ナスタチュームといって花も食べられるんですが、収穫するのは主に葉っぱ。マスタードのような辛味が特徴です。サンドイッチにしたらおいしいですね。今は甘い野菜が求められがちですが、味にインパクトが必要なレストランでは、苦味や辛味のある野菜が重宝されるんです」

フランスではカルパッチョでレモンを絞る代わりに使われることもあるオゼイユの葉っぱの画像

続いて手渡されたのは、筋が紫色の不思議な葉っぱ。口に含むと、何これ!? 酸っぱい!

「これはオゼイユ。フランスのレストランで出会って、すごくびっくりしちゃって! 現地では、カルパッチョでレモンを絞る代わりに散らしたりします」

海外の畑やレストランでヒントを得る以外にも、日頃から野菜の情報にはアンテナを張っているという武井さん。

「種苗メーカーが出している野菜の種のカタログは見ません。ほかの農家さんと同じになってしまうので。参考にしているのは、プロ向けの料理雑誌。一流のシェフがどんな野菜をどんなサイズで使っているかに注目していますね」

中東や北アフリカなどで栽培されているひよこ豆と生牡蠣の味がするオイスターリーフの画像

農場にはほかにも、イギリスの海岸に生えているという、生牡蠣の味がする(!)オイスターリーフ(写真左)、中東や北アフリカなどで栽培されているひよこ豆など(写真右)、生えているところを初めて見る野菜がたくさん並びます。

朝、食べごろの野菜だけを収穫する

武井敏信さんが野菜を収穫している画像

TAKEI FARMの野菜は、収穫した日に約30店の飲食店に直接届けられますが、内容はおまかせ。量もその日の野菜の状態次第。一般の人がTAKEI FARMの野菜を購入できるのは、基本的に伊勢丹新宿店のみですが、こちらに届く野菜も同様のルールです。

「各店ごとに届ける曜日は決まっていますが、雨が降ると野菜の状態がわからなくなるため出荷できません。それでも、レストランの方も伊勢丹さんもその価値観を理解してくれています。そのせいもあり、レストランに届ける野菜はすべて1個売り。野菜の状態で収穫数が変わるので、数よりもクオリティを保つために、そうしているんです」

採ったばかりのかぶを洗っている画像

ちょうど食べごろだとすすめられたかぶをかじると、信じられないくらいにジューシー! 食べどきならではの勢いが感じられます。

そんな、野菜の状態を繊細に感じ取るため、武井さんが作業をするときは常に素手。

「細かな見極めはやっぱり素手でないとわかりません。根元を触っただけで、虫がついているかどうかもわかりますよ」

生でも葉っぱでも、自由に食べるのが武井流

採った野菜をかじる武井さんの画像

武井さんは野菜に触れるだけでなく、すぐに一口かじります。さらに、一般的には食べないような葉っぱや皮まで食べてしまうんです。

グリーンピースの実を見せる武井さんの画像

「このグリンピースは生で食べるんですよ。レストランのお皿にのせたら、それだけで特別感のある1皿になるでしょう。このおいしさを知ってしまったら、もう実が硬くなった加熱用のグリンピースは出荷できません」

半信半疑で豆を食べると、すごくフレッシュで甘い。グリーンピースが食べられない人が食べられるようになった、というエピソードにも納得です。

TAKEI FARMに実っているクレソンの画像

さらに面白いのが、クレソンの実。

「かわいいなーと思って食べてみたら、クレソンの味がしたんですよ。料理の仕上げにふりかけたら、きっと食べる人はびっくりするはず。付け合せとしてお皿に残されがちな脇役から主役へ立場が逆転します」どんな野菜にも固定概念を持たず、自由な食べ方を見つけて新たな価値を与えるというのが、武井さんの哲学なんですね。

お店とお客さまを繋ぐ、コミュニケーションツール

野菜やハーブの芽を摘んでいただくマイクロハーブの画像

最後に見せてもらったのは、野菜やハーブの芽を摘んでいただくマイクロハーブ。TAKEI FARMでは、コリアンダー(写真手前)や春菊、シソ、クミン、バジル、赤水菜など15種類ほどを栽培。水耕栽培が多いなか、土で育てることで豊かな香りを生み出しています。

「2年前、フランスの星つきレストランで初めて食べて、こんなに面白い野菜が日本で流行らないわけがないと思いましたね。たとえばシソは刺身の下に敷かれることが多いですが、マイクロサイズになれば、上から散らして調味料のように使える。サイズが小さくなることで料理の可能性が広がります。知っている味なのに形が違うところがポイントです」

同様に、武井さんは定番野菜もサイズを変えて出荷。その発想は野菜をデザインするかのようです。

「農家の出荷のしやすさを考えると、サイズの基準は必要。でも、この大きさで食べなきゃいけないという決まりがあるわけではない。だからうちでは、小松菜を5cm程度のサイズで出荷しています。そうすると、普段は切って使っていたものが丸ごとお皿の上に乗るんですね。見た目にもかっこいいし、調理法が変わってきます」。

小さな小松菜を見たレストランのお客さまは、お店の人に質問をし、コミュニケーションが生まれる。お客さまとお店の間を取り持つことが、武井さんの野菜の使命だといいます。

「うちの野菜のコンセプトは、『心を動かす野菜』。食べてみて、何か作ってみようかなという動機になったり、食べられなかった野菜が食べられるようになったりするとうれしい。だから、インパクトがあって記憶に残る野菜作りを目指しています」

話を聞けば聞くほど、新しい野菜づくりのアイデアがあふれ出てくる武井さん。次はどんな野菜が生まれるんだろう−−−そんなワクワクを胸に、伊勢丹新宿店・フレッシュマーケットをのぞいてみてはいかがでしょうか。きっと、TAKEI FARMから届いたうれしい「驚き」に出会えるはずです。

TAKEI FARM代表、武井敏信さんの画像

武井敏信さん

TAKEI FARM代表。13年前、自動車販売会社に勤務するサラリーマンから一転、子どものころから頑なに拒否していた「農業」に携わるように。多くの紆余曲折を経ながらも農業の奥深さに惚れ込み、現在では多くのレストランシェフ、料理研究家に信頼される存在に。テレビ、雑誌などでも多く取り上げられる注目の存在。

文: 佐々木智恵美

写真:八田政玄

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介した「TAKEI FARM」の野菜は、伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケットにてお取扱いがございます。
※天候などの事情により入荷がない場合がございます。
※一部取扱いのない商品がございます。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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