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2015.05.21

力強くしみじみする味わい「坂ノ途中」が提案する野菜が元気をくれる

力強くしみじみする味わい「坂ノ途中」が提案する野菜が元気をくれる_01

自然に近い農法で育てられた「やまのあいだファーム」の野菜。この農場を運営し、また同じスタイルの生産者の野菜を販売する京都の野菜提案企業「坂ノ途中」の有機野菜が、伊勢丹新宿店地下1階「ファーマーズクリエイション」で販売されます。期間中、ショップにも立つ代表の小野邦彦さんにお話を伺いました。

農薬や化学肥料に頼らず、耕すこともしないんです

環境負荷の少ない持続可能な農業のあり方を模索したい。からだと心の両方が喜ぶようなおいしい野菜を食卓に届けたい――5年半前、そんな思いから京都に誕生したのが野菜提案企業「坂ノ途中」です。「坂ノ途中」では西日本を中心に、農薬や化学肥料に頼らない「自然に近い」スタイルの農法に取り組む生産者の野菜を販売するだけでなく、「やまのあいだファーム」という自社農場も運営しています。 「力強い味わいが持ち味なんですよね。しみじみとしみ込むようなおいしさというか」

農場で採れたオランダ菜という葉野菜の菜の花とラディッシュを持参してくれた小野さんはそう話します。見るだけで元気さやおいしさまで伝わってきそうな野菜です。

坂ノ途中の自社農場「やまのあいだファーム」は、京都府の南丹市と亀岡市をまたぐエリアにあり、農薬や化学肥料を使わず、耕すこともしない、きわめて自然に近い農法を行っています。

「年間40種類くらいの作物を育てています。5月から初夏のシーズンは、さやえんどうやスナップエンドウといった豆類が旬。伊勢丹では今回、やまのあいだファームから4~5種、ほかの取引農家さんのものと合わせて20種くらいの野菜をご紹介する予定です。 やまのあいだファームでは必要に応じて少量の油かすを施すくらいで、それ以外のものを土に足していませんから、その作物本来の強さを持つ野菜が育ちます。野菜はきれいなのに、その隣に生えている雑草が虫に食われていたりするくらい。種取りも自分たちでしていますから、その土地になじんだ種が採れるんです」

環境への負荷が小さい農業に取り組む人を増やしたくて

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店頭販売では、小野さんや販売担当者が直接お客さまと会話したり、試食もできるそう。「伊勢丹さんの前回の催事で、菜の花のおひたし作りがうまくなりましたよ」 試食で野菜のおいしさに驚き、リピーターになる方も多いといいます。それにしても、野菜の卸売り業である坂ノ途中が、なぜ自社農場まで運営しているのでしょう?

「いま農場長を務めている山田哲は、10年以上前から自然に近い農法に独自に取り組んできました。僕たちの取引生産者は栽培技術の高い農家が多いのですが、山田はその中でも特に質の高い野菜を作れる生産者の一人です。彼の自然との向き合い方はスゴくて、農場に行くとそこに生態系ができているということが直観的にわかるくらい、いろんな生き物がいる畑なんです。 しかしある日、彼から『いまのまま子供二人を育てるのは無理や』と離農を考えていると聞かされました。確かに野菜の味は抜群にいいとはいえ、彼のスタイルでは収穫できる野菜の量が少なく、経済的にはなかなか報われにくい状況でした。その話を聞き、『環境負荷の小さい農業に取り組む人を増やしたいというミッションを掲げて会社を立ち上げた僕らが、目の前にいるこんなに技術のある農業者を辞めさせてしまうのは、どうなんだろう?』と。それで農場長として雇い入れ、研修生に作業を分担してもらうことで生産量を増やす自社農場化の話を持ちかけたんです」

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山田哲さん(左)と、やまのあいだファームのメンバー

それ以前より小野さんには、「環境負荷の少ない農業を志す新規就農者が、農業を学べる場を作りたい」という思いもあったそうです。現在約60におよぶ坂ノ途中の取引生産者のうち、9割の人が新規就農者。代々の農家ではなく、元会社員などで農業を始めた方々です。生産規模も小さく、農業を十分に学ぶ機会もないままに苦労し、途中で農業を断念せざるをえない人もいます。そういった状況を少しでも改善するため、小野さんは学びの場が必要だと考えるようになっていました。この自社農場は「学校」でもあるのです。

「やまのあいだファームは、ガソリンで動くものが草刈り機と軽トラしかない農場。できうる限り人力でやりましょうという考え方です。でも、そのことで『スコップへの体重の乗せ方』や『鎌を使う際の角度の入れ方』といった、昔の農家の人なら絶対知っている、だけど若い人に受け継がれていない技術が学べます。 新しく農業を始めるときには多額のお金がかけられず、手間ひまかけて作物を作るとなれば、生産も小規模にならざるをえません。生産者の皆さんのところを回っていても、『結局は売り先やで』というお話が出てきます。そういう農家を応援したくて、生産が少量だったり安定していなくとも、品質さえ良ければ野菜が売れる仕組みを作ろうということでスタートしたのが坂ノ途中なんです」

自然を身近に感じながら生きたほうが、人はハッピーに暮らせます

いまでは坂ノ途中の知名度も上がり、直販店「坂ノ途中soil」も京都・九条大宮と東京・代々木に構えるまでに成長しましたが、会社を2人の仲間と立ち上げた頃は試行錯誤の連続だったそうです。そんな小野さんを支えたのは、環境負荷の小さい農業を広げたいという強い意志。その思いは大学生の頃芽生えたといいます。

「(農業に関心を持ったきっかけで)一番大きいのは学生時代にバックパッカーをしていたことですね。チベットの山岳地帯やパキスタンでは、自然の力強さをリアルに感じることができました。自然を身近に感じながら生きたほうが、人間がハッピーに見えるんです。そういう体験をするうちに『人と自然の関わり方はもうちょっとよくなるべきだろう』と思うようになりました。農業は人と自然との結び目にあるもの。つまり、『どんな農業のスタイルを選ぶか?』ということは、僕らが『どういう態度で自然と向き合うのか?』ということなんだと気づいたんです。 当初事業がなかなか軌道に乗らないなかで、その原点に戻り、わかる人だけに伝わればいいと思いきって『未来からの前借りをやめましょう』というメッセージを出したら、僕ら自身ビックリするくらい坂ノ途中の取り組みを応援したいという方々と出会えるようになりました」

坂ノ途中は現在、東アフリカのウガンダで「ウガンダオーガニックプロジェクト」という活動も展開中。農薬や化学肥料の流入の続くウガンダに有機農法を広めるだけでなく、バニラやはちみつといった現地のオーガニック産品を日本に紹介するプロジェクトです。

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「農業って世界中で行われていることだから、どこの国の農家を訪問しても土や肥料といった共通の話題でつながれるんです。高い技術を持つ農業者が育つ環境を作り『(国内だけでなく)海外で勝負したい』という人たちが生まれはじめ、アジアやアフリカの農業のあり方も日本発で変わっていけば素晴らしいですね」

小野さんは、なにがなんでも自然農法でなければならないと考えているわけではないとのこと。「各地域ごとに『どうやれば、キチンと資源が循環して、持続可能な農業になるか?』を考えられる生産者が増えることが一番大事」だと言います。そのためにも学びの場が大切なのでしょう。無理のないスタイルで生産者のネットワークを作り、就農志望者をじっくり育てながら自然に近い農法の魅力を伝えていこうとする小野さん。坂ノ途中の事業に向かい合う彼のスタンスそのものも、オーガニック的と言えそうです。

「僕たちはどうしても生産者とのやり取りに力を割きがちになってしまうのですが、今後は野菜を食べてくださる新しいファン作りにもっと力を入れていきたいですね。お値段や味、健康、安心安全といった物差しに加えて、『環境についてどう考えるか?』という視点からも野菜や農産物を見る方が増えるとうれしいです」

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文: 河尻亨一

写真/鈴木慎平(※野菜と小野氏ポートレイト)

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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