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2017.03.26

旅人に愛された宿場町の銘菓。中部後編【にっぽん、いとお菓子。#7】

「にっぽん、いとお菓子。」は、全国の銘菓を年間1,500種類以上食べ尽くしている三越伊勢丹和菓子担当バイヤー・田中美穂さんが、特に食べてほしい! というアイテムを47都道府県ごとにセレクト。北から順に日本銘菓の味わい深さを紹介する連載企画です。

今回は、中部前編(富山、石川、福井、新潟)中部中編(静岡、山梨、長野)に続く、中部後編。愛知、三重、岐阜の銘菓が登場します。

地元のみならず、旅人にも愛された中部地方の銘菓4選

きよめ餅総本家のきよめ餅、深川屋の関の戸、田中屋せんべい総本家のみそ入大垣せんべい厚焼き、つちやの柿羊羹

①  【愛知県】<きよめ餅総本家>きよめ餅(5個入り) 601円(税込)
※毎月15日の入荷になります。
②   【三重県】<深川屋>関の戸(6個入り) 501円(税込)
③   【岐阜県】<田中屋せんべい総本家>みそ入大垣せんべい厚焼き(4枚入り) 540円(税込)
④  【岐阜県】<つちや>柿羊羹(1本/155g) 864円(税込)

「今回紹介する3県は、江戸時代に交通の要所だった地域。愛知、三重には五街道のひとつ東海道。岐阜には、東海道と中山道をつなぐ美濃路が通っていたんです。そのためこのエリアは宿場町など人の往来によって発達した町が多く、現地の人はもちろん、参勤交代の大名や旅人たちにも愛された銘菓が多いんですよ」(田中さん)

① 【愛知県】有名神社の参拝客に人気を博した「きよめ餅」

きよめ餅総本家のきよめ餅

田中さん「まずは、愛知県のお菓子から。東海道の名所・熱田神宮に本店を構える<きよめ餅総本家>。『きよめ餅』は、江戸中期に熱田神宮の参拝客のために商売をはじめたお茶屋さんに因んで作られたお菓子です」

──純白のお餅から、中の餡がうっすら透けていますね。「きよめ」の焼印も味があって素敵。

田中さん「大福のような見た目ですが、外側はとろけるような口当たりが楽しめる羽二重餅です」

きよめ餅総本家のきよめ餅

よくのびる羽二重餅は、黒文字楊枝でなかなか切れない

──う〜ん、お餅がふわふわでマシュマロみたい! 口の中で、餡と一体になります……。

田中さん「このやさしい食感と甘さに癒やされますよね」

 

② 【三重県】参勤交代で訪れた大名の間で話題に!「関の戸」

深川屋の関の戸

田中さん「<深川屋>は東海道の宿場町・関宿(現在の三重県亀山市)で、徳川家光の時代から続く老舗和菓子屋。こし餡を求肥で包んだ『関の戸』は、その美味しさから東海道を行き来する諸大名の間で人気となり、評判が京都の朝廷にも伝わったほど」

──和三盆がたっぷりとまぶしてあって、はかなげな見た目ですね。では、ひと口いただきます。う〜ん、これはまた不思議な食感。餡を求肥で包み、和三盆をまぶしているという構造は理解できるのですが、口の中に入れるとなんだかよくわからなくなるというか……。

田中さん「不思議ですよね。最初に和三盆の甘さが口の中に広がって、餡とひとつになったと思ったら、みるみる溶けていくという。食べた後の余韻も楽しめる上品なお菓子ですね」

③ 【岐阜県】歯が弱い方はご注意を! 「みそ入大垣せんべい」

田中屋せんべい総本家のみそ入大垣せんべい

田中さん「<田中屋せんべい総本家>は幕末に、中山道と東海道を結ぶ街道『美濃路』が通る町・大垣の一角に創業した老舗。とっても堅いので、食べるときは気をつけてくださいね」

──見た目はピカピカしていて、独特のツヤがありますね。堅いですが、噛むと「バリッ」といい音! 味は、味噌の風味だけでなく、香ばしいごまの味がしっかりしてますね。

田中さん「独特のツヤは、焼く前の型に油を何層にも塗り重ねることで生まれるのだとか。せんべいに使う味噌は、このために作ったというこだわりの自家製こうじ味噌。コクが違います。<田中屋せんべい総本家>は最近、ミントや甘酒を使ったユニークなせんべいも作っていて、どんな商品が出てくるのかいつも楽しみなんです」

④ 【岐阜県】柿よりも柿らしい!? 干し柿で作る「柿羊羹」

つちやの柿羊羹

田中さん「<つちや>も、今から260年ほど前に大垣で開かれたお店。柿羊羹には、岐阜名産の干し柿が使われています。岐阜の干し柿は、時代を越えて愛される名品。<つちや>によると、平安時代には、「干柿1個に米1升」で年貢として納められ、かの豊臣秀吉も茶会のためにわざわざ取り寄せたほどだとか」

本物の竹に流し入れて作られるつちやの柿羊羹

──羊羹が竹の容器に入っているというところが風流でいいですね。ほんのり竹の香りもする! 味はあんこが少量なので、羊羹というより、ほぼ柿ですね(笑)。干し柿の濃厚な甘さが、美味しい!

田中さん「柿よりも柿らしい味わいですよね。生の甘い柿では、水っぽくて、濃厚な甘さが出せないそう。岐阜の干し柿を使用したからこそ、生まれた銘菓です」

昔から、人々の往来が盛んな、愛知、三重、岐阜の3県。旅人に愛されてきただけあって、どこか心と体を癒やすやさしさが感じられました。

文: 西島恵

写真:八田政玄
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

バイヤー・スタイリスト / 田中美穂
三越伊勢丹の和菓子担当バイヤー。全国の和菓子を年間約1,500種類以上食べている。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、日本橋三越本店本館地下1階=菓遊庵にてお取扱いがございます。
独自の味覚と感性で厳選した全国の銘菓をお届けするお菓子のセレクトショップ、三越オンラインストア「菓遊庵」はこちら。

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