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2016.12.22

漆器の使い方&お手入れQ&A。選び方・カビ・修理までを徹底解説

漆器の使い方&お手入れ

ちょっと敷居が高いけれど、いつかは使ってみたいアイテム「漆器」。そんな憧れの器を、WEB FOODIE編集部が実際に使ってみました。想像以上に気軽に使える反面、使うなかで出てくる疑問もいろいろ。

そこで、漆器専門店・玉川漆器株式会社の本宮ひろみさんに、ビギナーが気になる使い方の疑問、扱いのコツ、長く愛用するためのポイントを教えてもらいました。

ケアもやっぱり大変なの!? 漆器にまつわるQ&A

【買い方・値段】
Q. 最初はお手頃なものを買った方がいいの?
A. 「木製・天然漆」がおすすめです

天然漆の器

「漆器は材質も塗装の種類もタイプはさまざまですが、漆器デビューには木製・天然漆のものがおすすめです」

お客さま用に高級なもの、日常用には安価なものをと思いがちですが、本来は逆なんだそう。

「天然漆は使うほどにツヤが出てきますし、漆器はしまいこむとツヤが消え、カビや乾燥の心配があります。自分用には高品質なものを愛用するのがいいと思います」

Q. 値段に大きく差があるのはどうして? 何で変わるの?
A. 材質、塗料、作業工程、加飾によって値段が変わってきます

まず「材質」は一番高価な天然木から、安価な樹脂タイプまでピンキリ。樹脂の質によっても価格は変わり、樹脂に木の粉を混ぜ込んだものもあるそう。木製は持ったときに熱くならず、割れにくいのが特徴。漆の密着度が高く、はがれにくいのもメリットです。対して樹脂はパキンと割れる可能性があり、漆が剥がれやすいこともありますが、冷蔵庫に入れられるなど扱いが手軽なのがメリットです。

「塗装」は天然漆とそれ以外のカシュー塗り、ウレタン塗装などで価格が変わります。さらに「作業工程」は最低4回、輪島塗など多いもので50〜60回にもなり回数に比例して価格が変わります。塗り回数が多いほど丈夫になります。「加飾」は蒔絵や沈金などいろいろな技法で絵などを付ける作業です。

*「材質」「塗料」「塗り回数」の種類については、こちらで詳しく解説

【使い方・お手入れ】
Q. 毎日使っても大丈夫?
A. 大丈夫。使うほどにツヤが出ます。逆にしまいこむのはNGです

かきたま汁を盛り付けた漆器

「特別な日にだけ使うもの、と思われる方が少なくありませんが、ぜひ毎日使ってください。使うほどに手の脂でツヤが出ますし、すり傷は手の脂で目立たなくなります」。

また、漆器は湿度を好むため、使わないと乾燥の原因になることも。

 

Q. 新しい漆器を買ったら、においがちょっと気になるんですが…
A. 2〜3日風に当てるとにおいが抜けます

漆のうつわ

ごくまれにですが、塗りたてのものはにおいがする場合があります。蓋つきの容器は蓋を開けた状態で2〜3日程度風にあてましょう。茶筒の場合は、古いお茶っ葉を入れて1週間ほどおけばOK。

 

Q. 汚れがこびりついてしまったら?
A. しばらく水に浸してから洗って

ご飯などがこびりついてしまったときは、1日程度なら水に浸しておいても問題ありません。ただし傷が入っているとそこから水が侵入して塗りがはげる原因になるので注意が必要です。研磨剤入りの洗剤は、表面に傷がつくので、洗うときは中性洗剤とやわらかいスポンジを使って。

Q. お重は冷蔵庫に入れても大丈夫?
A. 材質や塗料の種類にもよりますが、冷蔵庫には入れない方がベター

漆器は土台の材質や塗装によって、扱い方が変わってきます。土台が木製、塗装が天然漆のタイプは一番繊細。冷蔵庫には入れないようにしましょう。対して、土台が樹脂製・ウレタン塗装など人工素材のものは入れても大丈夫です。

【変色・カビ】
Q. 漆器のお盆に白っぽく跡が残ってしまった。。。
A. 熱による変色のため、塗り直しが必要です

熱い飲み物などを直接置くと、漆が焼けて白い輪っかのシミができてしまうことがあります。一度焼けてしまうと塗り直さない限りは修復できません。茶碗は茶托、急須は急須台にのせてからお盆にのせましょう。同様に、照明や日光でも焼けて表面がくすむことがあります。 

Q. カビが生えたらどうしたらいい?
A. 一度、中性洗剤で洗ってみてください

カビが生えてしまった場合には、まずは中性洗剤で洗ってみましょう。それでも取れないときは塗り直しが必要な場合がありますので、買った場所に持参して相談を。
また、カビ予防のためには、きちんと乾かすことが大切。洗い終えたら水あとが残らないようやわらかい布で拭き取ります。長くしまっておく場合には、一晩置いてから薄紙に包んだりやわらかくなった手拭で包んだりするのがおすすめです。

【メンテナンス】
Q. 漆器は修理もできると聞きました。いつどうやってメンテナンスするの?
A. 傷などが見つかったら、すぐ塗り直しへ

漆がはげてしまったり、傷がついたりしたら、早めに塗り直しに出しましょう。傷が広がってしまったり、土台の木地が見えてしまったりすると修理に時間がかかり、費用もかさみます。

お椀の一番傷みやすいのは内側の底、置いた時にテーブルに接する足の部分、口をつけるフチの部分です。長年使用して表面の漆が薄くなり、その下の漆の色が見えたら塗り直しを。ぶつけて漆が削れてしまった時も、すぐに修理してください。


使い慣れないとどう扱っていいか心配になりがちですが、漆器って想像以上に丈夫。ふだん使っている食器よりも、少しだけ優しく扱えば大丈夫なんですね。毎日の食事を豊かにする漆の器。長く、育てるように愛用してみませんか?

*漆器の基本データ

【漆器の素材一覧】 
●天然木:薄くすると反りやすいので、ある程度の厚みがあるのが特徴

●木粉加工品:樹脂に木の粉を混ぜたもの。厚みや丈夫さを出し、温度を伝わりにくくするメリットがある

●木質繊維材:木の繊維質をそのまま、熱で固めたもの。反りにくい点がメリット。タンスの引き出しなど箱物に使われる

●樹脂:メラミン樹脂は比較的高価で、仕上りの風合いが木製に近い。ほか、フェノール樹脂、安価なABS樹脂などがある

【漆器の塗料一覧】 
●天然漆:国内使用の96〜98%程度が中国などからの輸入。国産の漆がもっとも高品質。日本の湿度に合っているため、長く使えるが貴重なため高価。

●カシュー塗り:カシューナッツの殻から抽出した塗料。漆には劣るが耐酸性、耐アルカリ性、耐水性に優れ、漆と似た性質を持つ。独特の匂いがあるため食器以外(お盆など)に使われることが多い。 

●ウレタン塗装:安価に漆の質感を表現。近年では技術も向上し、天然漆塗とほとんどわからないほどのものも。

文: FOODIE編集部

撮影:山田和幸
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

バイヤー・スタイリスト / 本宮ひろみ
20年以上も漆器の販売に携わる、漆器のプロ。接客のモットーは「まずはお客さまに漆器の使いやすさを知ってもらうこと」。普段は漆器にパスタなどの洋食のメニューを盛り付けることもあるそう。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館5階=キッチンダイニング/和食器にてお取扱いがございます。 

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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