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2016.04.28

究極の貝類を選び抜く、築地の目利きの技

新鮮な貝類

ひときわ威勢のいい声が響き渡る、伊勢丹新宿店の鮮魚コーナー<東信水産>。日々店頭をうめつくす魚貝類の品質を支えているのは、築地市場のプロの技だと知る人は少ないのではないでしょうか。2016年11月豊洲への移転直前の今、知られざる築地の目利きの技に迫ります。今回は、魚貝類のなかでもとくに鮮度管理が難しいという「貝類」に注目。貝専門の仲卸業を営む三清(サンキヨ)商店の田中さん、清水さんにお話をうかがいました。

生きたまま店頭に並ぶ貝だからこそ、最高の状態に

生きたまま並ぶ新鮮な貝類

この日の東信水産には、発泡スチロールや水槽の中にぎっしりと入った新鮮な貝類がずらりと並びました。しかも、そのどれもがまだ生きているということにびっくり。鮮度を保つためには、どんな秘密があるのでしょうか?

「生きたまま売られているのを見ると、水揚げされてすぐに運んできていると思われがちですが、実は違うんです。水揚げされたあわび、サザエなどは、一度私たちが専用の水槽で活かし込んだのち、卸しています。海にいたときのような状態にコンディショニングするんですね。この品質管理は専門店だからこそできること。最高に美味しいと思える状態の貝だけを卸しているんです」(清水さん)

この品質管理のことを、三清さんでは「手当て」と呼ぶんだそう。弱っている貝にはエサを与えたり、塩分濃度は1%以下の単位で調整したりしているというから、その徹底ぶりには驚くばかりです。 

毎年変わる旬、漁場の変化を見極める

手にのせられたホタテ、あわび、サザエ

この日店頭に並べられたのは、青森県産の蝦夷あわび、長崎県産のサザエ、北海道産のまつぶ貝、北海道産の特大あさり。全国の漁場から、厳しい目で選り分けられた貝が集まりました。

聞けば、付き合いのある漁師さん、仕入先の漁場はある程度決まっているものの、毎年同じように美味しいものが獲れるとは限らないんだそう。

「漁場と合わせて日々気にしているのは『旬』。旬の盛りを見極めることが大切だと考えています。野菜や果物と同じように、貝にもある程度の旬はありますが、これが毎年微妙に変わる。あの漁場の貝はまだ成熟が足りないから、明日はもう少し青森側のものを仕入れようなど、微妙な調整を日々繰り返しています」(田中さん)

その日仕入れた貝の状態、漁場の情報を関係者みんなで把握し、翌日の漁に生かし続ける。1日たりとも気を抜けない日々の努力が、貝の美味しさを支えているんですね。

プロ同士の情報交換こそが、品質を支える要

左から、田中さん、橋口店長、清水さん

情報交換をする田中さん、橋口店長、清水さん

店頭に並ぶ貝について、東信水産店長の橋口さんを囲んで話をする田中さんと清水さん。その日の貝の状態や、美味しい食べ方などについて、日々の情報交換が欠かせないそう。

「三清さんとは『これは時期が早かったね』といった旬の話をしたり、お客さまのニーズをお伝えしたり。さらに、漁師さんの情報、目利きのポイントを教えてもらうなど、密な情報交換を日々行っています。貝を扱うもの同士の信頼関係があるからこそ、お客さまに品質の約束ができるんです」(橋口さん)

あらゆるものがデータ、数値化される今、どれだけ技術や情報網が発達しても「これだけは機械には任せられない、人の感覚があってこその仕事」と田中さんは語ります。

プロが選び抜いた貝を、いざ試食!

貝類の刺身盛り合わせ

この日入荷された、あわび、サザエ、まつぶ貝を実際に試食させてもらいました。

食べてみてまず圧倒されるのが、その臭みの少なさ! 刺身でいただく貝というと、磯の香りが強すぎたり、独特の生臭さを感じたりといったことが少なくありませんが、貝の甘み、食感がストレートに感じられて、箸が止まりません。

あわびのバター炒め

さらに、あわびをさっとバターで炒めたものもいただくと、「不思議」としかいいようがないやわらかさ! しかも小さいものなら1個1,500円ほどと意外にお手頃なんだそう。炒めるだけでこんなに美味しく食べられるなら、ぜひ自宅でもいただきたいです。

 

プロの目利きを知ろう! 美味しい貝の見分け方

最後に、新鮮で美味しい貝を選ぶ、プロの目利きの一例を教えてもらいました。私たちが店頭で選ぶ際にも、すぐに実践できる簡単テクニックです!

サザエ

サザエ

POINT1
貝殻のツノが長く立っている
POINT2
ふたの部分がうっすら青みがかっている
POINT3
ふたが奥に入り込まず、盛り上がっている

 

まつぶ貝

まつぶ貝

POINT1
貝殻の縦と横の模様がくっきりしている
POINT2
ふたが奥に入り込まず、盛り上がっている

 

あさり

あさり

POINT
甲高で厚みがある

 

あわび

あわび

POINT
身に厚みがある

 

2016年11月、豊洲への移転を前に思うこと

「新しい環境にすぐに順応できるかなど、築地から豊洲へ移転することへの不安はあります。現在の築地市場という古き良き伝統と歴史、そして人との絆を途絶えさせることなく、我々にしかできない仕事に誇りをもって、新天地の豊洲でも臨みたいです」

三浦商店の清水将登さんと田中雅規さん

左:清水将登さん、右:田中雅規さん

株式会社 三清商店
東京都中央卸売築地市場内に店を構える貝専門店。全国から新鮮な貝を仕入れ、伊勢丹新宿店をはじめとした小売店に貝類を卸している。その品質や美味しさには定評がある。

文: 黒飛紗代子

写真:島村緑
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

商品の取扱いについて

記事で紹介している商品は、伊勢丹新宿店本館地下1階=フレッシュマーケット/東信水産にてお取扱いがございます。 また、2016年4月30日(土)と5月28日(土)の午後12時~4時まで、東信水産では三清商店の貝を拡充販売いたします。

※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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