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2016.01.24

「生きている酒」の力を味わう、寺田本家の「自然酒」~本物の酒造り

蒸米を竹のさなに広げて冷ます様子

千葉県香取郡神崎町で、340年もの歴史を持つ酒蔵<寺田本家>。『自然酒 五人娘』、『発芽玄米酒 むすひ』など、生もと造り(水、米、麹で酵母を起こして酒造りをする昔ながらの製法)をはじめとした、微生物の働きを活かした酒造りに取り組んでいます。マクロビ・自然食ファンのみならず、根っからの酒好きからも熱い視線を浴びている酒蔵の当主、寺田優さんにお話をうかがいました。

お酒は生き物! 酒蔵は小さな科学の世界

寺田本家24代目の寺田優さんは、大阪出身の元カメラマンという異色の経歴の持ち主。2004年に婿入りしてから酒造りを勉強し、2012年に当主に。微生物の底知れぬ神秘的な力に魅了され、自然酒の奥深さ、おいしさを探求し続けています。昔は米どころ、水どころとして酒蔵も多く並んでいた神崎町ですが、今では寺田本家を含め2軒のみです。

 

伝統の生もと仕込み・もと摺り作業の様子

蔵の近所には米を農薬を使用せずに作る自社の田んぼもあり、酒造りに使われています。麹菌は、田んぼの稲穂につく稲麹を自家培養し、乳酸菌や酵母菌は発酵の場ができると自然に働いてくれます。

昔ながらの製法なので、温度や熟成度合いによって菌の具合も刻一刻と変わっていくのだそう。まさに一期一会の酒の味。

そんな寺田本家には生もと仕込みの酒造りの様子を感じてみたいと、酒蔵祭りや蔵見学に多くのファンが訪れるのです。

 

古来より続く本物の味、濃醇な味わいがクセになる『自然酒 五人娘』

自然酒 五人娘

看板商品の『自然酒 五人娘 純米酒』は、生もと仕込みならではの深い旨みと、酸味が楽しめる無濾過の酒です。その琥珀色の日本酒をじっくり味わいながら飲むと、なるほど、この濃醇な味はクセになる!

江戸時代ごろより受け継がれてきた生もと造りの酒は、乳酸菌の生み出してくれる酸味、麹菌・酵母たちが醸してくれるさまざまな酵素・旨味が特徴。まるで体が欲してるような味わいで、農薬を使用せずお米からできた微生物の生命力を感じられます。

『発芽玄米酒 むすひ(むすび)』はさらにクセのある味わい。「ぬか漬けのよう」と寺田さんが表現するように、飲んだ時、まずその酸っぱさに驚く人が多いといいます。玄米が主原料のため、香りも五人娘より野性味があり、独特の風味と酸味があります。酵母や乳酸菌などの微生物が瓶詰め時に生きているので、開栓前も開栓後も日々味は熟成し、変化していきます。いわば「生きた」酒なので、開栓するとシャンパーニュのように勢いよく吹き出すことも! 玄米のパワーと微生物たちが醸してくれる豊かな味わいが楽しめます。

乳酸菌の可能性は無限大!

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お酒以外にも寺田本家の発酵や乳酸菌の知見が活かされた商品があります。乳酸菌の効いた発酵甘酒『マイグルト』は、酒米をアルコール発酵させないギリギリのところで引き上げたノンアルコール飲料。ヨーグルトは入っていませんが、天然の麹菌・乳酸菌・そのほかいろいろな菌たちが生み出した分泌物や代謝物がいっぱい詰まっています。昔ながらの添加物を使用しない手造りの製法にこだわったマイグルト。構想から10年というこだわりの一品です。

 

世界の有名レストランでも採用された「本物の酒」に注目

ちなみに微生物を扱う蔵元は、人間が持ち込む菌に対して敏感です(たとえば、納豆を食べたあとそのまま蔵に入らないなど、繊細な気遣いが見受けられます)。しかし寺田本家では、『発酵場』がしっかりとできているため、邪魔な菌の介入を受けないのだそうです。

人間界に自然に存在する、多種多様な菌がお酒に加わることで毎年味が変化し「昨年は酸味とキレ」、「今年は甘み」というように、生き物としてのお酒を愛する寺田本家ファンにとっての毎年の楽しみになっているのだといいます。

「すべて手仕事のため造れる量が限られており、販路を限定しなければならないので大変なのですが」と寺田さん。最近では、前衛的なメニューで世界一のレストランとして名高い、コペンハーゲンの「Noma」で菩提もと造りのお酒『醍醐のしずく』が採用されました。この刻一刻と変化する「生きた酒」を寺田本家がどう流通させていくかは、国内のみならず世界中から注目されそうです。 

 

文: 海老原悠

写真提供:寺田本家
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